透明感のあるサウンド　自然に伸びる低域も魅力

フォーカスは、ベストセラーのオーディエンスの後継として2005年に発売された。360は新たに加わった最も大型のフロア型。現在のディナウディオの看板技術は「Esotec＋テクノロジー」をはじめ、同社独自のMSP（珪酸マグネシウム・ポリマー）を素材としたウーファー・コーン、大口径軽量のアルミニウム・ワイヤー製ボイスコイル、特殊処理のソフトドーム・トゥイーター振動板などである。フォーカスにも、このディナウディオの新たな技術が盛り込まれている。本機には、新開発200mmダブルウーファー、150mmミッドバスにMSP製コーン、ソフトドームにEsotar2が投入されており、同社の最新技術のエッセンスを味わうことができる。ピアノ再生はディナウディオの特徴が最も発揮される分野。どの演奏でもワイドレンジで帯域のバランスがよく、音が綺麗に揃っている。一音一音に透明感があり切れ込みがよく、色づきと余分な響きがない。エンクロージャーの余裕で低域が詰まらず、自然にローエンドが伸びている。

「プーランク」は低域のffが潰れず伸び伸びと鳴る。部屋から受ける影響が軽微で鳴らしやすいことも特徴。ジャズボーカルはハスキーな声の質感を良く解像し、ベース低域もぼやけず良く伸びる。ピアソラのタンゴはスケール感がありシャープで切れ味のある演奏。しかし、ニュートラルな音色の反面、やや単調で楽器のバラエティに見あった色彩感が欲しい。奥行き感で描くタイプだが、こうしたアグレッシブな音楽だと音場が混み合ってやや煩くなる傾向もある。

（text：大橋伸太郎）