整然として優雅な立体的表現

ドイツのウルトラゾーネ社は、徹底した音場解析の結果、ヘッドホンの欠点である頭内定位を大幅に解決。独自の前方定位“空間聴覚効果”を持ったヘッドホンの開発に成功している。本機はその上級モデルで、EPS SOUND SYSTEMによる前方定位特性、過大入力信号に対する聴感保護構造に特徴がある。

再生音の総合的なサウンドバランスは、レンジが両翼にスムーズに広がり、クリアでよく伸びるが量感に満ちた低域、ナチュラルなフォーカスの中域音像、キメ濃やかでよく粒立つ高域という、整然としたフォーマルなパターンである。その優雅なサウンドは、ダイナミックタイプでありながらコンデンサータイプのようなニュアンスを備えている。本機のテーマである音像の前方定位感は、通常ヘッドホンの頭の中心部を貫く定位ではなく、頭の前面から額のあたりに音像が並ぶ前方定位が実現されている。ポピュラー系ソースではアコースティックが一段と豊かになり、クラシック系ソースでは中央ステージに奥行きを感じる独特の立体感がもたらされる。SACDではレンジの広がりも確認され、スピーカーシステムで聴くような豊かな立体感とプレゼンスが楽しめた。

単純なホールド機構であるが、開放型特有の音抜けのよいキャビティ構成が自然な軽量感を実現、感覚的に独特のフィット感を演出する。75Ωの標準的インピーダンスであるが、プレーヤー出力ではやや鳴らしにくく、プリメイン及び専用アンプでのドライブが使いこなしのポイントになろう。

（text：斉藤宏嗣）