話題のiPod/iPod miniに専用設計されたオーディオシステム

いま話題のデジタルオーディオプレーヤー「iPod/iPod mini」専用に開発されたサウンドシステムである。対応機種は第3・第4世代以降のiPod、およびiPod miniとなっている。

いまさら言うまでもないことだが、iPodはアップルコンピューターが作り上げたハードディスクによるポータブルオーディオプレーヤーである。大量の音楽ソースが収録できるだけでなく、可逆圧縮の「Appleロスレス」コーディングに対応している点が大きな魅力だ。MDなどと違って「Appleロスレス」は単なるテクニカルな圧縮だから、情報のカットがない。元の形に引き伸ばせば理論的にはオリジナルのPCMに戻る仕組みで、音質的に極めて有利だ。

扱いやすさという点でも従来の記録メディアとは比較にならない。CD1枚が数分程度でコピーできるので、オーディオ機器の感覚とは全く違うのである。車載用にもアプリケーションが増えているそうで、オーディオのスタイルをがらりと変える可能性すら秘めていると言える。

本機はこのiPodをポンとセットするだけで、スピーカーによる高音質な再生が可能だ。機器どうしをつなぐ配線や難しいセッティングはいっさい必要ない。その上接続中はiPodへの充電も行える。付属の名刺サイズ・リモコンで操作も簡単である。

コンパクトな外見から想像できない、その再生音はいかにもボーズらしい。高低のバランスを巧みに取って、非常に豊かな音調を再現している。TrueSpaceステレオ・シグナル・プロセッサーの搭載によるところもあるが、小型ユニットに定評のあるボーズならではのリッチな音だ。

決してワイドレンジを指向した出方ではないが、ボーカルなど声の質感が落ち着いてたっぷりとした感触を描き出す。ジャズのビッグバンドも楽器の輪郭が明瞭で濁りがなく、音離れのいい楽しさがある。ノイズは全く感じられず、デジタル的な歪みも排除している。音量を上げると広がりが増して、少々離れても物足りなさがない。ヘッドフォンでは得られない充実感は、iPodユーザーを喜ばせるに違いない。

（text:井上千岳）