6月17日に、フェーズメーションのフラッグシップ・管球式セパレートアンプ「CA-1000」+「MA-2000」と、アリオンの新製品プリメインアンプ「A-10」の対決試聴会が、都内西蒲田にある出水電器ALLION試聴室にて、オーディオ評論家の村井裕弥氏を進行役に開催された。
この試聴会は毎月1回、さまざまなテーマで開催されているもので、今年に入ってからは、他のメーカーのアンプと技術者を迎えての聴き比べ企画が実施されており、これまでに第1回マックトンの「XX-5000」と「MS-2000」から始まって、第2回ヒット開発研究所の「LTC101055S」、第3回バクーンプロダクツの「PRE-5410mk3」および「AMP-7511A」とで比較試聴を実施し、毎回好評を得ている。
第4回目となる今回は、フェーズメーションの管球式セパレートアンプ、CA-1000+MA-2000が登場。ゲストに協同電子エンジニアリング(株)のオーディオ技術部長である斉藤善和氏を迎え、両機の特徴や狙い、技術ポイントなどを解説の上で、村井氏お薦めのソフトを順に聴き比べていった。
組み合わせるプレーヤーのエソテリックK-03XとスピーカーのB&W 803Dは、当試聴室に常設の機材で共通である。フェーズメーションのCA-1000(250万円、税抜)とモノラルパワーアンプMA-2000(125万円、1台、税抜)のセットは、合計500万円のシステム。
「300B」「無帰還」「パラレル・シングルの大出力」という、同社が考える理想を具現化した駆動系と、徹底して左右の信号やノイズの干渉を排除したピュアな信号コントロール系を組み合わせたシステムの音は、たいへんに見通しが良く、各楽器は澄み渡って力感も十分に備えていた。余計な付帯音やにじみなどが微塵も感じられず、またノイズ感は極小。来場者からの感想も、もっと聴いていたくなる、たいへんに鮮度が高くて心地よい音楽が奏でられているという印象であった。
一方のアリオンA-10(120万円、税抜)は、ブランド設立10周年記念の最高峰プリメイン。大型の電源トランスによる強力な電源部、左右チャンネル分離のパワーアンプ部を採用するほか、シャーシは頑丈かつ重厚な4mm厚のアルミ製を採用している。
ソリッドステート方式でも特筆できる効率の良さで、発熱がたいへん少ない設計とし、非常に高い駆動力を備えるのを特徴とする本機。これまでにも聴いた、ワイドレンジでニュートラルでありながら陰影の豊かな音の特徴が、先般この試聴室に導入された究極の電源「マイ柱」の実現によって、さらに盤石なものとなった印象を来場者は感じたようだ。奥行き感や彫りの深さに、楽器のニュアンスも十分でダイナミズムの豊かな音が、静寂から強奏まで余裕を持って聴かせてくる感触だった。
管球式とソリッドステート式、それぞれのアンプの方式による音の違いというよりも、「作り手が音楽をどのように聴かせたいのか」「どういった音の狙いで、このこだわりの製品を作り上げたのか」を、改めて感じる試聴会となった。月1回開催されているこの試聴会では、次回以降にも、こうした試聴の機会が設けられる予定となっている。興味のある方は、下記の(有)出水電器サイトのALLION掲示板を参照。
また、『季刊analog』誌の最新号vol.56からは、新たに「真空管アンプへの誘い」の連載を開始。併せて新企画「真空管アンプビルダー」をスタート、第1回としてフェーズメーションの鈴木信行氏(協同電子エンジニアリング株式会社取締役会長)が登場。MA-2000をはじめとする真空管アンプに込めたポリシーを語っていただいているので、ぜひご覧いただきたい。
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フェーズメーション
1970年に電子計測機器のメーカー(有)協同電子システムとして設立。1974年に協同電子システム(株)となり、そこから2004年に分社された、協同電子エンジニアリング(株)のオーディオブランド。2002年当初はブランド名を「フェーズテック(Phase Tech)」でスタート、2010年より「フェーズメーション(Phasemation)」へと移行し、デジタルからアナログまで広範な技術を備える。
〒223-0058 横浜市港北区新吉田東8-40-17 TEL/045-710-0975
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(有)出水電器
オーディオ専用電源工事やアース工事、"マイ柱上トランス"などで知られる同社のオリジナルアンプブランドが、アリオン。電源回路への注力はもとより、音質、表現力、デザイン、使い勝手など先端ピュアオーディオファンに向けたアンプを新開発している。
〒144-0051 東京都大田区西蒲田1-23-16 TEL/03-3755-5558
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