トップインタビュー オンキヨー 小林佳紀 氏 オーディオ市場を再生 「オーディオ市場を創り変えたい」という強い信念のもと、オーディオ責任メーカーを自負するオンキヨーから、単品システムコンポーネント「インテック275」が12年ぶりのフルモデルチェンジで登場する。お客様に本当の感動を…、新しいハイファイ時代を担う商品として、オーディオビジネスの再構築を高らかに宣言した。オーディオ回帰が叫ばれる中、<More EMOTION >をスローガンに、マーケットを果敢にリードしていく構えを見せる同社小林部長にその意気込みを聞く。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 お客様に感動していただくと同時に
―― インテック275が全国各地の内覧会で凄い反響のようですね。 小林 びっくりしました。もちろん、商品そのものに対する自信はありましたが、市場の心の奥底でくすぶっていたものが、ようやく形になって出てきたということではないでしょうか。昨年も国内ハイファイ市場サイズは10%強も下がっていますし、何より単価ダウンがあまりにも激し過ぎます。だからこそ今、原点に返り、オーディオの本質である怏ケ揩フ部分から、ユーザーに感動を与えられる商品が渇望されているのだと思います。 ―― 275は93年のデビューですから、今年で実に12年目になります。 小林 これまで追加機種としてMDデッキを発売したりなどの小変更はありましたが、音とデザインを含めた本格的な変更は今回が初めてになります。3、4年前にモデルチェンジをしようと企画もありましたが、マイナーチェンジでは市場を変えることはできません。スピーカーもアンプもすべて革新的な技術を採り入れ、市場を創り直そうという思いのもとに、本当に我々が思い描いていた、感動できる音づくりができました。 ―― 今までの275とは次元の異なる商品。オンキヨーの考えるオーディオのこれからのカタチですね。これだけ注目が集まるということは、良質にオーディオ商品への期待や、売れる商品への待望がすごかったということでもありますね。 小林 マーケットそのものは間違いなくあります。年々ニッチな市場になりつつあったのは、何より、お客様を感動させられるような商品が少なかったからです。そういう面から言うと、私共オンキヨーは、オーディオの質や高い感性を担う「音の責任企業」として、社員全員が大きな自覚をもって臨んでいます。
―― 275と205は単品販売としました。 小林 ベースとなるセットは設けずに、すべて単品販売にしました。お客様が必要なものだけをチョイスし、必要なときに買い足すことができます。例えば、275もアンプ/CDプレーヤー/スピーカーの組み合わせなら、100万円出しても欲しくなる音が、25万円くらいから手に入る! それほどの自信を持っています。 ―― 今回の275のターゲットユーザーはどのように想定されていますか。 小林 まず、団塊世代があげられます。これから定年を迎え、経済的にも、時間的にも余裕がある世代ですね。ゆっくりと音楽を楽しみたいという方がいっぱいいらっしゃいます。 ―― カメラもオーディオも、家庭の趣味のモノ文化は彼らが引っ張ってきました。そうしたお客様をオーディオに回帰させることができる商品ですね。 小林 間違いなく戻ってきますよ。それから、今の275のお客様をみると、意外と年齢層が幅広いのもひとつの特徴として挙げられます。年代別には、20代18%、30代29%、40代24%、50代16%、60代以上13%という構成比です。この点からは、上にも下にも年齢層に分け隔てなく、いいものが欲しい、いい音が欲しいと思っている方がたくさんいらっしゃる。新しい275も、この幅広いお客様の期待と分厚い購買層をさらにボリュウムアップしていくと思います。 ―― 販売店も納得のいく、まさに本物志向の商品ですね。 小林 当社の企画部隊、設計部隊は、ミニコンも単コンも分け隔てがないのが特長です。きわめて高いレベルの商品設計を行っているプロスタッフが、同じマインドで普及クラスの商品を手掛ける。ですから本物の商品ができあがってきます。 ―― これまでのシステムコンポの音を、飛躍的に高めることができた275は、次のお客様を創ることができます。 小林 今回は、これまでシステムコンポを取り扱っていなかった専門店へも商品を持ち込んでご説明しています。そこへ寄せられた評価や情報をフィードバックして、今後のスピーカーや単品コンポーネントのグレードをさらにあげていきたいと考えています。 ―― オンキヨーのオーディオ事業戦略の中では、275と単品コンポはどのような関係になりますか。 小林 275は、オーディオのジャーナリズムにも立派に通用する単品コンポーネントです。それを完成品としてセットアップすればシステムになります。ですから、良い商品に対し、供給側が、単品かシステムかという既成のボーダーを引いたり、ランク付けをすることはありません。お客様にとっては音を含めた満足度が大切なのです。専門店であれ、量販店であれ、お客様に対してきちんとした説明ができるご販売店には、売り場づくりまで含めて、がっちり手を組んでいただきたいと思います。
―― 現在の市場を見ますと、ひとつの物差しとして、テレビのステージが上がりました。50万円以上もする薄型テレビが普通になった時代に、オーディオの20万、30万円というのは、抵抗のない価格帯と言えると思います。 小林 本当にいい商品をつくれば単価を上げるチャンスが生まれる。275は非常にいいタイミングで提案できました。ふたを開けてみないことにはわかりませんが、もしかすると、275の方が205より数が多かったということもあるかもしれません。275の売り場をきちんとつくり、205、FR―B、FRシリーズというストーリーがきちんと表現できれば、ますます需要が205へ、さらに275へと、高付加価値商品へシフトしていく確率が高くなると思います。 ―― 新しいライフスタイルを創造させるもの、本当の本物であれば、今の日本のマーケットは反応します。音楽を聴く行為そのものは同じですが、時代時代で姿、形、機能は変わっていかなければなりません。ところがオーディオは、サイズが大きいわりに中が貧弱だったり、リビングに置くのに似つかわないデザインだったり、というのも良くありましたね。 小林 275ではそうした点から、商品知識や売り場づくりも重視しています。オンキヨーの強みは全国ベースでの営業戦力で提案営業ができること。これは他には決して負けないと自負しています。販促部隊も、大型店や量販店では、これまで棚割りの提案などが中心でしたが、今回の275では改めて、商品の音づくりや音の説明、音の鳴らし方など、オンキヨーの音のDNAを伝えていく部隊として組織し直しました。また、各地の内覧会では、エージェンシーが必死になってご販売店スタッフの皆様に説明しています。あれだけきちんと勉強できていれば、彼らは地元にいますから、何度でも繰り返して効果的な勉強会ができます。 ―― オーディオの楽しさや感動を伝えられる販売員が少なくなりました。 小林 ニッキュッパやサンキュッパのミニコンばかり売っていた販売員さんが、フルセットで33万円の275を1台売っていただけば、これは間違いなく自信になるはずです。1台売れれば、2台、3台と売れていく。ですから、その1台目を売るための勉強会に対し、我々もそのサポートを真剣にやっていこうと思います。今の275もそうですが、売れると担当セールスに「売れたよ」と電話がかかってくるんです。販売員の方にも非常に喜んでもらえる商品だと思います。 ―― 買った人も、売った人も、つくった人もうれしい、価値観の共有ができる、それがオーディオですね。時代が変わり、ビジュアルはプラズマで変わりました。次はオーディオの番ですね。 小林 価格だけで見ると、リスクがある。けれど、「音の責任企業」として、とにかく最高の満足度にチャレンジしたかった。技術者はここでランドマークをつくる、商品企画では275をずっと待っていた方に新しいものを提供する、そして何より大きいのは、オーディオのマーケットを変えたい、創り直したいという強い責任感です。 ―― 音楽は嗜好品です。システムコンポでは、それがなぜ5万円ばかりなのか。275は新しい時代のひとつのステイタスになり得る満足感を感じさせる商品です。あとは店頭で、そういう見せ方、売り方ができるかですね。 小林 275、205、FR―B、FRと、この力強いラインナップを面で押しすすめて、すばらしい価値をお客様に感じて、喜んでいただきたいですね。 ―― それでは最後に、販売店にメッセージをお願いします。 小林 販売店と一緒になって、お客様に感動を販売していきたい。オーディオ商品は、感動を売ることがお客様に一番喜んでもらえることだと思います。そうした付加価値販売の部分に軸足を据えて、オーディオ市場をもう一度、雑貨商品から、感動を与えられる本物志向の商品へと、主役を変えていきましょう。 ◆PROFILE◆ Yoshinori Kobayashi 1945年2月23日生まれ。神奈川県横浜市出身。67年法政大学経営学部卒業。69年4月大阪音響(現オンキヨー)入社、国内営業部横浜営業所に所属。83年国内営業部第1営業部長、89年国内営業部西日本営業部長、91年東日本営業部長、95年国内営業部長。02年執行役員。趣味は、ゴルフ、音楽ライブ。 |