新晶氏

商品知識や営業力、提案力を高め、
お客様が喜ぶ提案を連打する
シャープ株式会社
執行役員 国内営業本部副本部長 兼
シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社 社長
新晶氏
Akira Atarashi

4月の消費税増税をにらむ駆け込み需要が顕在化しつつある。各種スポーツイベントも含め景気を左右するさまざまな要素がちりばめられた2014年、元気な販売活動を推進するシャープエレクトロニクスマーケティングの新社長に意気込みを聞く。

 

苦しい時こそチャンス
同志と一丸となり、元気にやっていく

増税前の駆け込みを刺激し
増税後に新商品を投入

── 景気を左右するさまざまな要素を含んで2014年が始まりました。

 我々はお客様に欲しいと思われる商品、需要を喚起できる商品をご提案しようと日々奮闘しておりますが、昨年1年間は事業部とともにそれを実現してきたと自負しています。今の時代はスーパーヒット商品を出すのはなかなか難しいですが、スモールヒット商品を次々と送り出せるよう、新たな1年をますます頑張って参ります。

昨年を振り返りますと、11月後半から12月にかけて、消費税増税をにらんでの住宅着工、株価の上昇などで景気が上向き、大型テレビの需要が盛り返し始めており、久しぶりに金額ベースで前年をクリアしています。新しい方式である4Kテレビも各社から出揃い、営業の立場として“ツカミ”の説明がしやすくなりました。また2011年以降高まっている節電意識から大型冷蔵庫も活況を呈しています。さらにガソリンの値上がりで暖房器具としてエアコンが見直されており、家電にとっていい状況が続いています。

この2月後半から3月いっぱいまでは、消費税増税の駆け込み需要が見込めますが、4月以降にその反動が来るはずです。シャープの商品では先日新商品が発売された電子辞書や、シングル向けのテレビや冷蔵庫の中小型モデルなどが早めに動くと思いますが、懸念されるのは駆け込み需要で物流が追いつかなくなること。お客様が購入したのに商品をお届けできない状態とならないよう、早めに手を打ちます。

さらに当社では、例年3月に地域販売店様の個展や合展、量販店様でのフェアなど販促イベントを開催しますが、これを前倒して2月に行い、さらに3月にもう一度行います。イベントの前日などに販売店様向けの内覧会も設定し、4月以降の新商品の説明もしっかりと行います。こうしてイベントの回数をこなすことで販売店様と気持ちを合わせて、前倒しの商売を成功させたい思いです。先手必勝、駆け込みが来る1月〜3月に早めにお客様を刺激して、実利を多くとっていきたいということです。

2月〜3月の駆け込みで、今年度第4四半期は前年比2桁増に達するのではと見ています。現段階でも冷蔵庫やエアコンのような大型商品は20%以上増加、年末より年明けによくなっていますから、駆け込み需要は確実に始まっているのです。

落ち込むとすれば4月〜5月、ここは前年比クリアは難しいかと思います。しかし6月〜8月に昨年並みの暑い夏となれば盛り返せるでしょうし、サッカーのワールドカップも開催され、日本代表がもし勝ち進めばテレビやレコーダーの大きな盛り上がりが期待されます。

2014年度の第1四半期はゆるやかに前年比クリアするかというところ。ただ上半期全体では下手をすると前同比に到達しないかもしれません。夏の動向もありますが、4月〜5月の落ち込み対策も必要です。

そこで新しいジャンルの商品を数種類投入します。ひとつはキッチン家電の分野で、リーズナブルで求めやすくカラフルなものになると思います。シャープ独自の健康志向の展開であるヘルシオと組み合わせ、楽しい使い方を提案し、店頭でもしっかりと演出して参ります。

新しい時代をけん引する
セールスリーダーを育てる

新晶氏── 2014年の戦略を、さらにお聞かせください。

 シャープが強みをもつ商品で勝負します。1つは液晶テレビAQUOS。4Kと、他社にはないクアトロンプロ。そしてワールドカップではレコーダーもしっかり訴求していきます。2つめはヘルシオ。健康調理を全面に出し、新商品と既存のシリーズとを合わせて台所を楽しく、食べて健康にと訴求します。3つめはプラズマクラスター関連の空気清浄機です。シャープではエアコンと連動させ、部屋の湿度をセンサーが察知して空気清浄機の加湿機能を作動するシステムがあります。特に地域販売店様が上手に演出し、組み合わせ販売をされていますが、こうした方向性をしっかりと打ち出したいと考えます。

4つめは電子辞書。先日発売した新商品は画面をクルリと回転できる新デザイン。中学・高校生からビジネスマンに向けてバリエーションを揃え、さまざまな用途に対応しています。またA6サイズの電子ノートも投入しました。これまでなかなか表舞台に出てこなかった分野ですが、我々にとって競合が少ない有利な位置づけにあります。店頭で徹底的に演出し、訴求していきます。

5つめは新しい製品。我々が展開しているロボットクリーナーのココロボや充電式クリーナー、これに続く新しいジャンルです。電気代の安い夜間に充電して、無駄のない使い方のできるものとして、4月以降に数種類投入したいと思います。

そして6つめは太陽光発電システムや蓄電池です。来年3月までは全量買取制度がありますから、この1年しっかりと取り組んで参ります。

── 興味深い商品を連打されますが、販売店の反応はいかがですか。

 得意分野がそれぞれ違いますから、チャネルによってご反応はさまざまです。そこで我々営業の現場のスタッフはタブレット端末のAQUOS PADを活用しています。お客様への説明やお手入れの実例情報、調理家電を活用していただくためのノウハウを紹介したり。また店の展示の仕方といった成功事例を網羅した毎週のセールスレポートなど、たくさんの情報を共有して素早く発信し、販売店様を刺激しています。私一人が奮闘するばかりでなく、全員で戦わなくてはなりません。どんな商品でも扱えて、説明できる営業マンが揃っていれば理想的です。

研修所もソムリエ、匠の技、スーパーマンを育てる養成所になるよう内容を充実させています。仕事人間になってしまうのでなく、視野を広くもてるよう、よく遊んで、遊びの中から気づきや提案が生まれるようでありたいですね。話し方を工夫したり、好感の持てる身だしなみにするのも大事です。営業マンとして「いつも元気で頑張っているね」と言っていただけるような、どんな困難な時でも先頭切って走れるようなリーダーを育てたい。

ここまでやり切れば、シャープは総合力で必ず勝てるはずです。商品知識、営業力を高めて、提案力を高め、リーダーシップをとれる営業マンを育てられれば、より効果的な店頭演出やお客様におもしろがっていただける提案ができるはずです。それを実現するのが私の役目です。

シャープは今、チャンスの中にあります。苦しい時こそ一致団結して、それを乗り越えるチャンス。今この会社で一緒に戦っている同志として、メンバーには本当にありがたい気持ちでおります。皆一丸となって元気にやって参ります。

── 家電業界はどうしてもテレビが中心に見られ、テレビの苦戦で業界全体が頭打ちのように思われがちですが、ヒット商品の芽は無数にあり、それぞれ工夫を凝らして訴求すれば必ずお客様に伝わるはずです。

 この1年はそのとおりに、白物家電が業界をけん引し、テレビ販売が落ちた中でも何とかやってくることができました。そこにアベノミクスで景気も上向きの兆しが見えて、いい商品が注目されるようになりました。

しかしどんなにいいものでもただ店頭に置いてあるだけでは伝わりません。我々は見せて、触らせて、体験させて、納得させて、買っていただく「MSTNK作戦」を展開して積極的な訴求を続けています。海外メーカーには真似のできないような面白い商品を出して、お客様に納得して買っていただく。それを追求するのがシャープの真骨頂だと思っています。

店頭は新提案の場
体感を伴う実演で仕掛ける

── テレビが厳しい状況になったからこそ、メーカーも販売店も工夫を凝らして売る気概が盛り上がっています。

 2014年はテレビ復活の元年と言われていますが、むしろ私は電機メーカー復活の元年、電気店復活の元年であると捉えます。日本の皆様に使っていただく家電商品をつくる一員として、お客様に便利さや楽しさを訴える元年だと思います。

ただ店頭に商品を並べて、チラシで値ごろ感をアピールするだけの商売では何も変わらず、店舗が存在する意味がありません。来店したお客様が、店員さんに聞けば便利なことをいろいろ教えてくれると実感して、またこの人から買いたいという気持ちになってくださることが、日本の商売だと思います。

ここのところそれが忘れられていましたが、店舗の在り方や店頭演出、お客様をひきつける接客を考え直すときが来ました。もちろんシャープの営業マンもそういう時代に対応できるよう、今一度営業の原点にもどってやっていきたいと思います。

また物づくりにおいても、お客様目線で商品をつくることの大切さをあらためて感じています。お客様が何を望んでおられるか、また生活に則した便利さとはどういうものか、見極めていかなくてはなりません。これまでテレビに注力して勢い良くやってきましたが、一過性のブームで終わるのでなく、長く使っていただけて、長く売っていけるようなものをどんどんと提案して参ります。

消費税増税が実施される4月以降に向け、これまでにない新しいものをどんどん提案します。これまでどうしてもテレビのような大型商品に手を取られてしまいましたが、今年はさまざまな商品を店頭で積極的に展開していきます。

店頭は提案の場です。購入を後押しするだけでなく、購入した後の商品をどう使うか、お客様の生活がどう便利になるかをしっかりと見せていかなくては。それができなければ実店舗の役割は果たせません。重要なことは何よりもまず体感、それを伴うための実演です。最初から何もしないでヒットする商品は少ないもので、ヒット商品は営業が売りながら作り出すもの。また、お客様がヒットに育ててくださるものです。作り手が一方的に売れる、売れないを決めつけることはできません。

営業が力強く販売を推進して、市場を活性化し元気にする。2014年も国内家電メーカーがリードしていきたいですね。新提案の小型調理家電も、シャープが先陣を切って頑張ります。どうぞご期待ください。

◆PROFILE◆

新晶氏 Akira Atarashi
2003年6月シャープエレクトロニクスマーケティング(株)常務取締役 西日本広域第二統轄就任、2005年4月同社専務取締役 西日本広域第一統轄就任、2008年8月シャープ(株)健康・環境システム事業本部 副本部長 兼 国内営業統轄就任、2009年10月同副本部長 兼 冷蔵システム事業部長就任、2011年10月シャープ(株)執行役員 国内営業本部長就任。2012年4月より現職。

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