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ついに販売開始

新ドライバーユニットの詳細を明らかに − SHURE担当者が語る「SE115」の秘密(後編)

公開日 2009/06/15 10:36 Phile-web編集部
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6月12日、SHUREからエントリークラスのカナル型イヤホン「SE115」がいよいよ発売された。新開発のダイナミック型ドライバーを搭載し、SEシリーズとして初めて4色のカラーバリエーションを揃えるなど、音質面とデザイン面の両方に配慮した期待の新製品だ。Phile-webでは、本製品の発表にあわせてSHURE ASIAのマーケティング・ディレクター、ウィリアム・チャン氏の独占インタビューを行った。前編ではSE115の概要についてお伝えした。後編となる今回は、気になるSE115の新ドライバーや音質のチューニングなどについてくわしく話を伺った。(Phile-web編集部)

ーーSE102は日本で高い人気を得ています。この理由についてどのように分析されていますか?

4色カラバリと新ユニットを搭載した「SE115」。6月12日に販売が開始された

昨年発売され人気モデルとなった「SE102」

チャン氏:競合の多い価格帯でありながら、高い評価を得ることができたのは、プロのオーディオブランドとして頂いてきた評価と、今まで発表してきたイヤホンが日本の顧客の皆様に認められてきたことに起因すると考えます。

また、SE102のターゲットとなるお客様にマッチしたセールスチャンネルの選択や、広告宣伝を行ったことも成功の要因の一つだと考えます。

ーー実はSE102について、ソフト・フォーム・イヤパッドを使えないことを少し不満に感じていました。SE115でそこが改善されたことをとてもうれしく思います。ユーザーからのフィードバックとして「エントリークラスでもソフト・フォーム・イヤパッドを使いたい」という声はあったのでしょうか?

チャン氏:確かに、そういった声も聞かれました。オプションでフォーム・イヤパッドも用意していますが、ソフト・フォーム・イヤパッドの方が装着感も扱いやすさも優れているため、そのような要望が多かったのでしょう。

■新ダイナミック型ユニットを開発した背景

ーーSE115ではノズルの径が小さくなって、そのソフト・フォーム・イヤパッドなど上位機種と共通のアクセサリーが使えるようになりました。これは新開発のユニットによって結果的に実現したことでしょうか。それともノズルの径を小さくしてアクセサリーを共通化することも、新ユニット開発の目的のひとつだったのでしょうか。


SHURE ASIAのマーケティング・ディレクター、ウィリアム・チャン氏
チャン氏:SE115のノズルの径を、BAドライバーを使用している他のSEモデルと同じにして、ダイナミック・ドライバーでありながら、BAドライバー使用のモデルと同様の快適な装着性を実現させることは、SE115の開発時の最重要課題の一つでした。アクセサリーの共通化も、この装着性へのこだわりから実現したことであり、当初の目的の一つだったと言えるでしょう。

ーー上記の質問とも関係しますが、新ユニット「Dynamic MicroSpeaker II」を開発された背景、また開発期間について教えてください。

チャン氏:SE115の販売価格のプレミアムイヤホンにおいて、最もバランスがとれた満足の高い製品を開発することを目指しました。例えばBAドライバーを採用したSE110の経験から、私たちは、中音域の緻密さを実現することができた一方で、たとえばロックやポップスを聴く際に大切な音の低域成分が失われがちになったことを自覚していました。

そこでSE115においては、Dynamic MicroSpeakerII によって迫力のある低音を実現し、中域のディテールを抑え、バランスのとれた音づくりをすることを目指しました。開発期間については、申し訳ありませんが、公表を控えさせていただきます。

■「Dynamic MicroSpeaker II」が搭載したテクノロジー

ーーDynamic MicroSpeaker IIの機構について教えてください。ダイナミック型ユニットでは、ダイアフラムの径を大型化することでより豊かな低域を得るというのが一般的な手法だと思います。しかしDynamic MicroSpeaker IIはそのような手法を採っていません。ユニットを小型化しつつ低域を増すというのはとても難しいことだと思います。小型化と音質の両立はどのような工夫や技術で実現されているのでしょう。ユニットの構造やパーツの形状、使用した素材など、具体的な技術の内容についても教えて下さい。

チャン氏:まずユニットの構造や使用した素材などについてですが、今回のSE115では、カスタム仕様のネオジウムマグネットを採用しています。このマグネットは非常に高磁力で、ダイアフラムを強力に駆動するため、口径の小さいドライバーでも十分な低域が得られます。また、非常に追従性の高いダイアフラムを採用したことにより、低域から高域まで、すべての帯域で音色バランスが整ったサウンドを実現しました。さらに、薄い銅コーティングを施したカスタム仕様のアルミボイスコイルを用いることで、通常のボイスコイルに比べて周波数特性を高めることに成功しています。

次に弊社での設計手法についてご説明しましょう。弊社の音響エンジニアは、ドライバーの前後に設けられたエンクロージャーの容積などはもちろん、ドライバーの材質、電気的な特性に至るまで、音質に有効なすべてのディテールに細かな注意を払っています。

また弊社の機械エンジニアは、音響エンジニアと共に開発を行っています。素材や仕様が耐久性を満たしているか、機械的な信頼性があるかなどについて確かめるためです。こうやってエンジニアたちが選んだ素材は、耐久性と音響パフォーマンスの双方を満たしています。

ーー御社が説明される“迫力のある低音”を生み出している大きな要因のひとつはダイナミック型ユニットだと思います。順番としては、ダイナミック型ユニットを採用するという前提があって、この音に行き着いたのでしょうか。それともこういった音を目指すためにダイナミック型ユニットを採用したのでしょうか。

チャン氏:後者です。“迫力のある低音”を実現させるために、ダイナミック型ユニットを採用しました。

■SE115とSE102、どちらを選ぶべきか

ーーSE102とSE115は価格帯が近いですが、Shureのイヤホンを初めて買うユーザーはこの2製品をどのように選び分ければよいのでしょう?


「低音の迫力を求めるならSE115がおすすめ」と語るウィリアム・チャン氏
チャン氏:もし、ビートの効いたロックやポップス、HIP HOPをよく聞かれる方であれば、低音に迫力のあるSE115をお薦めします。SE102はオールマイティーですが、低域の迫力に関してはSE115の方が優れています。

また、ファッション性を重視し、イヤホンにもファッションの要素を取り入れたい、という遊び心のある方には4色のカラーバリエーションを用意したSE115がお薦めです。逆に、シンプルなものが好き、という方にはSE102をお薦めします。

装着性も重要な要素です。これは実際にお試しになられた上で、よりご自身の耳に気持ち良くフィットするモデルをお薦めしたいと思います。特にSE115はイヤパッドの選択肢が広いため、SE102がどうしても耳にあわないという方の選択肢としてお薦めできると思います。

ーー「低域の迫力に関してはSE102よりもSE115の方が優れている」ということですが、たしかにSE115は上位モデルと比べれば情報量を少し整理してまとめた印象があります。SHUREのようにハイグレードな製品を展開し、ハイグレードなサウンドを期待されているブランドが、「あえて情報量を整理する」という方向性を採るのは、ある意味でチャレンジングな決断と感じました。この点についてはどのようにお考えですか?

チャン氏:おっしゃる通りです。ただSE115の開発時には、ロックやポップスなどに最適な低域の充実したサウンドを作ることが大命題としてありましたので、今回のSE115によって音のグレードを下げたとは決して考えておりません。Dynamic MicroSpeaker II の開発時には、迫力のある低音を創り出すことに開発陣が大変な努力をしたことだけは申し上げておきたいと思います。

ーーSHUREには“ゴールデンイヤーズ”と呼ばれる熟練エンジニアがいらっしゃると聞いています。彼らは今回のSE115にどのようなかたちで関わったのか、具体的に教えてください。

チャン氏:大変申し訳ありませんが、ゴールデンイヤーズの働きの詳細について、詳しくお話をすることができません。

ーー今回のSE115発表により、SEシリーズのラインナップが完成したとご説明されていました。今後登場するはずのイヤホン新製品がどういった方向性に向かうのかとても気になります。今後のロードマップをお教え下さい。

チャン氏:今後のロードマップに関して、現時点でお答えすることはできません。しかし、プロのオーディオブランドSHUREならではの、革新的な新製品を開発していくつもりです。期待してください。

ーーありがとうございました。

(インタビュー:高橋敦 構成:Phile-web編集部)

前後編に分けてお伝えしたウィリアム・チャン氏インタビュー。SE102というヒットモデルの後に続く製品だけに、同氏の並々ならぬ意気込みが感じられた。4色カラーバリエーション展開、新ユニットの採用など多くの特徴を備えたSE115が市場でどのように受け入れられるのか、今後の動向に注目したい。(Phile-web編集部)

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