スペシャルインタビュー
メッセ・ベルリン社 ハイテッカー氏が語る − IFA2012のハイライトは「コネクティビティ」
4月にクロアチア・ドブロヴニクで開催されたIFA2012グローバル・プレスカンファレンスの会場にて、メッセ・ベルリン社 IFAグローバル統轄本部長のイエンズ・ハイテッカー氏へ、日本人記者によるラウンドテーブル形式のインタビューを行った。
“つながる”エレクトロニクスの最新製品&技術がIFA2012に集まる
− 昨年のIFA2011は過去の実績を超える大きな規模で開催され、これまでのイベントの記録をいくつも塗り替えてきました(関連インタビュー)。今年開催のIFA2012についてはどのような見通しを立てていますか。
ハイテッカー氏(以下 敬称略):とても良い手応えを得ています。大きな展示ホールについては、既に大手メーカーにご予約をいただきました。今年はモバイル/IT系のメーカーや、ホームアプライアンス系メーカーの出展がさらに増える見込みです。8月末の開幕まであと半年を切って、総展示面積は既に昨年を超える勢いで拡大しつつあります。私たち主催も全ての出展スペースにて、展示の効果を最大化できるホールレイアウトを実現することに全力を尽くします。中小規模の展示スペースはまだお申し込みいただけますので、ぜひご検討いただければと思います。
− デジタルイメージングやモバイル・コミュニケーションについては、ヨーロッパで大規模な見本市が開催されていますが、これらのショーとIFAはライバル関係にあると考えていますか。
ハイテッカー:IFAはクリスマスセールス前のベストなタイミングで、新商品を市場にアピールできるショーだと考えています。デジタルイメージングについても同様で、昨年のIFA2011に出展いただいたメーカーの方々にはそのメリットを実感いただけたと考えています。
モバイル・コミュニケーションについては、春にスペインのバルセロナで開催される「Mobile World Congress」もありますが、こちらのイベントはインフラ業界の先端技術を含む「B to B」の展示がメインになっています。一方でIFAは、モバイル・コミュニケーションでもコンシューマー向けのプロダクトやサービスが中心であり、「B to C」と「B to B」の両面でイノベーションを見せられる世界最大のエレクトロニクスショーです。モバイル・コミュニケーションの分野については、今後もIFAならではのメリットをアピールできると考えています。モバイル・コミュニケーションについては、日本のメーカーも独自の技術や商品を携えてワールドワイドにビジネスを展開されています。ぜひ海外でのビジネスを成功へ導くために、IFAのプラットフォームを活用して欲しいと思います。
− ホームアプライアンスの展示も規模を拡大しそうですか。
ハイテッカー:大手メーカーではパナソニックがホームアプライアンスをメインとしたブースを新しく設けられる予定です。パナソニックのコンシューマー・エレクトロニクスとホームアプライアンス製品をつないだ「コネクテッドワールド」が展開されるものと、私も期待しています。その他にも、ホームアプライアンスの大手メーカーや専業メーカーから数多くの出展申し込みをいただいており、昨年にも増して賑やかなホールになりそうです。
− オーディオの展示はいかがですか。
ハイテッカー:オーディオのホールも昨年と同様以上の出展規模になりそうです。オーディオのマーケットは厳しい状況にあると言われていますが、一方でヨーロッパではコンシューマーのオーディオに対する関心が、再び高まりつつあります。というのも、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーのユーザーが増えて、音楽をより高品位に楽しみたいという欲求がユーザーに生まれているからです。市場の状況は明らかに数年前と変わりつつあります。出展者の方々にとっては、今こそオーディオの進化をアピールする効果的な時期だと考えています。
− IFA2012の成功には前向きな予想を示されていますが、ヨーロッパ経済不安に影響を受けることはないと考えていますか。
ハイテッカー:2008年もヨーロッパに経済危機が訪れたことがありました。その後、翌年以降も経済的な不調は続いて、IFA2009の成功を危ぶむ声も聞かれましたが、実際にはイベントは大成功に終わり、参加された出展者の皆様からもビジネスの飛躍につながったという満足の声を数多くいただきました。困難な状況にあるからこそIFAに出展して、イベントに集まるトレードビジターやコンシューマーに自分たちの健在ぶりをアピールして、信頼感を与えることが大事、ということが証明されたのです。その後も、世界的な経済環境は大きく好転してはいないものの、近年IFAに出展されたメーカーの多くが見事に成功を勝ち取られています。
今年のヨーロッパの経済危機をある意味で楽観視しているもう一つの理由があります。いま確かにヨーロッパ圏内には経済危機に立たされている国々がありますが、これらは比較的小さな国で、ヨーロッパ経済全体に影響を及ぼすことはないと考えています。2011年もヨーロッパ経済は不調と言われていましたが、コンシューマーエレクトロニクス市場は11%の成長を遂げています。今年も同市場は2%の成長予測を立てています。またIFAが開催されるドイツは、いくつかの好調な産業が市場を牽引していることもあり、経済環境は良好です。
− IFAの成長を支える“核”となるものは何だと考えていますか。
ハイテッカー:人々がエレクトロニクスに対して、常に“革新=イノベーション”を求める好奇心だと思います。イベントに来場されるコンシューマーやトレードビジターの期待感は衰えることがありません。その期待がメーカーにとって新しい技術や製品を生み出す原動力になります。
実際にヨーロッパのテレビ市場はとても元気だと思います。コンシューマーがテレビを買い換えるサイクルは、かつては10〜15年でしたが、近年の調査では5〜7年に縮まっているそうです。テレビは単純なテレビ番組の受像機としてだけではなく、「SmartTV」や「3D」といったエンターテインメント性を獲得したことで、コンシューマーは絶えず「新しいテレビ」に期待を寄せるようになりました。
ドイツでは車市場が活況を呈していますが、これはコンシューマーの間に価値ある車であれば相応の対価を払うという、つまり価格至上ではなく、価値至上のマインドが確立されつつあることが背景にあると言われています。コンシューマーエレクトロニクス市場はいま、価格至上主義による商品価格の下落という問題に苦しんでいると言われています。IFA2012では高付加価値製品の魅力を商品のコネクティビティも含めてしっかりと見せていくことで、価値提案型の商品訴求をサポートしていきたいと考えています。
− IFA2012はオリンピックイヤーでの開催となりますが、実際にオリンピックによる経済効果はあると思いますか。
ハイテッカー:オリンピックの効果自体はさほど大きくないと見ています。むしろ、サッカーの国際大会「UEFA欧州選手権2012(EURO2012)」による効果に期待しています。ヨーロッパではサッカーの人気がとても高く、大画面テレビの売上げ増に貢献すると見ています。またヨーロッパリーグで活躍するアジアの選手も多くいますので、大会の注目が高まることは世界各国のテレビ市場に良い効果をもたらすのではないでしょうか。3Dの放送についても、現在ヨーロッパで放送されているものはそう多くはありませんが、オリンピックやEURO2012の開催後には、よりコンテンツが増えて欲しいと期待しています。
− iPhoneやiPadの周辺機器を中心に集めた「iZone」の展示、電子書籍やタブレットなどを取り上げる「eLibrary」の展示(関連ニュース)については、今年も力を入れますか。
ハイテッカー:もちろん、今年のIFA2012でもハイライトしたいと考えています。iZoneはスタートしてから、特に中小規模の企業の方々から、IFAに出展できる機会として好評を得ています。ホールのコンセプトやデザインも洗練されていますので、効果的に商品の魅力が見せられるということで高い評価をいただいています。ぜひ日本からの出展を検討されている企業の皆様にも、ビジネスチャンスの場として、あるいはヨーロッパでのテストマーケットの場として「iZone」を活用して欲しいと思います。
− 今年はどんな製品や新しい技術にスポットが当たると思いますか。
ハイテッカー:さて、どうなるでしょうか、私も楽しみです。サムスンはIFA2012 グローバル・プレスカンファレンスのプロダクトセミナーで、今年のIFAで新しいハイエンド・テレビを出展すると予告しました(関連ニュース)。有機ELテレビが商品として幾つかのメーカーから出てくることも期待できます。
「コネクティビティ」を核にした製品も、トレンドから商品へと進化するはずです。“つながる”エレクトロニクスの最新製品&技術が、IFA2012の会場を賑わせてくれそうです。
また、先に申し上げた通り、高品位にオーディオが楽しめるコンポーネントや、エネルギー効率の性能を高めたホームアプライアンスの製品にも注目が集まるでしょう。
IFAの展示は、人々のライフスタイルに根付いたかたちで商品の魅力を見せ、それぞれの「ネットワーク」のかたちまでもが一望でき、体験できることが他の見本市にはない特長だと考えています。エレクトロニクスのトレンドセッターであり、また世界中のトレードビジターとコミュニケーションが築ける場としても、ぜひIFA2012のメリットを最大限に活用していただきたいと思います。
“つながる”エレクトロニクスの最新製品&技術がIFA2012に集まる
− 昨年のIFA2011は過去の実績を超える大きな規模で開催され、これまでのイベントの記録をいくつも塗り替えてきました(関連インタビュー)。今年開催のIFA2012についてはどのような見通しを立てていますか。
ハイテッカー氏(以下 敬称略):とても良い手応えを得ています。大きな展示ホールについては、既に大手メーカーにご予約をいただきました。今年はモバイル/IT系のメーカーや、ホームアプライアンス系メーカーの出展がさらに増える見込みです。8月末の開幕まであと半年を切って、総展示面積は既に昨年を超える勢いで拡大しつつあります。私たち主催も全ての出展スペースにて、展示の効果を最大化できるホールレイアウトを実現することに全力を尽くします。中小規模の展示スペースはまだお申し込みいただけますので、ぜひご検討いただければと思います。
− デジタルイメージングやモバイル・コミュニケーションについては、ヨーロッパで大規模な見本市が開催されていますが、これらのショーとIFAはライバル関係にあると考えていますか。
ハイテッカー:IFAはクリスマスセールス前のベストなタイミングで、新商品を市場にアピールできるショーだと考えています。デジタルイメージングについても同様で、昨年のIFA2011に出展いただいたメーカーの方々にはそのメリットを実感いただけたと考えています。
モバイル・コミュニケーションについては、春にスペインのバルセロナで開催される「Mobile World Congress」もありますが、こちらのイベントはインフラ業界の先端技術を含む「B to B」の展示がメインになっています。一方でIFAは、モバイル・コミュニケーションでもコンシューマー向けのプロダクトやサービスが中心であり、「B to C」と「B to B」の両面でイノベーションを見せられる世界最大のエレクトロニクスショーです。モバイル・コミュニケーションの分野については、今後もIFAならではのメリットをアピールできると考えています。モバイル・コミュニケーションについては、日本のメーカーも独自の技術や商品を携えてワールドワイドにビジネスを展開されています。ぜひ海外でのビジネスを成功へ導くために、IFAのプラットフォームを活用して欲しいと思います。
− ホームアプライアンスの展示も規模を拡大しそうですか。
ハイテッカー:大手メーカーではパナソニックがホームアプライアンスをメインとしたブースを新しく設けられる予定です。パナソニックのコンシューマー・エレクトロニクスとホームアプライアンス製品をつないだ「コネクテッドワールド」が展開されるものと、私も期待しています。その他にも、ホームアプライアンスの大手メーカーや専業メーカーから数多くの出展申し込みをいただいており、昨年にも増して賑やかなホールになりそうです。
− オーディオの展示はいかがですか。
ハイテッカー:オーディオのホールも昨年と同様以上の出展規模になりそうです。オーディオのマーケットは厳しい状況にあると言われていますが、一方でヨーロッパではコンシューマーのオーディオに対する関心が、再び高まりつつあります。というのも、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーのユーザーが増えて、音楽をより高品位に楽しみたいという欲求がユーザーに生まれているからです。市場の状況は明らかに数年前と変わりつつあります。出展者の方々にとっては、今こそオーディオの進化をアピールする効果的な時期だと考えています。
− IFA2012の成功には前向きな予想を示されていますが、ヨーロッパ経済不安に影響を受けることはないと考えていますか。
ハイテッカー:2008年もヨーロッパに経済危機が訪れたことがありました。その後、翌年以降も経済的な不調は続いて、IFA2009の成功を危ぶむ声も聞かれましたが、実際にはイベントは大成功に終わり、参加された出展者の皆様からもビジネスの飛躍につながったという満足の声を数多くいただきました。困難な状況にあるからこそIFAに出展して、イベントに集まるトレードビジターやコンシューマーに自分たちの健在ぶりをアピールして、信頼感を与えることが大事、ということが証明されたのです。その後も、世界的な経済環境は大きく好転してはいないものの、近年IFAに出展されたメーカーの多くが見事に成功を勝ち取られています。
今年のヨーロッパの経済危機をある意味で楽観視しているもう一つの理由があります。いま確かにヨーロッパ圏内には経済危機に立たされている国々がありますが、これらは比較的小さな国で、ヨーロッパ経済全体に影響を及ぼすことはないと考えています。2011年もヨーロッパ経済は不調と言われていましたが、コンシューマーエレクトロニクス市場は11%の成長を遂げています。今年も同市場は2%の成長予測を立てています。またIFAが開催されるドイツは、いくつかの好調な産業が市場を牽引していることもあり、経済環境は良好です。
− IFAの成長を支える“核”となるものは何だと考えていますか。
ハイテッカー:人々がエレクトロニクスに対して、常に“革新=イノベーション”を求める好奇心だと思います。イベントに来場されるコンシューマーやトレードビジターの期待感は衰えることがありません。その期待がメーカーにとって新しい技術や製品を生み出す原動力になります。
実際にヨーロッパのテレビ市場はとても元気だと思います。コンシューマーがテレビを買い換えるサイクルは、かつては10〜15年でしたが、近年の調査では5〜7年に縮まっているそうです。テレビは単純なテレビ番組の受像機としてだけではなく、「SmartTV」や「3D」といったエンターテインメント性を獲得したことで、コンシューマーは絶えず「新しいテレビ」に期待を寄せるようになりました。
ドイツでは車市場が活況を呈していますが、これはコンシューマーの間に価値ある車であれば相応の対価を払うという、つまり価格至上ではなく、価値至上のマインドが確立されつつあることが背景にあると言われています。コンシューマーエレクトロニクス市場はいま、価格至上主義による商品価格の下落という問題に苦しんでいると言われています。IFA2012では高付加価値製品の魅力を商品のコネクティビティも含めてしっかりと見せていくことで、価値提案型の商品訴求をサポートしていきたいと考えています。
− IFA2012はオリンピックイヤーでの開催となりますが、実際にオリンピックによる経済効果はあると思いますか。
ハイテッカー:オリンピックの効果自体はさほど大きくないと見ています。むしろ、サッカーの国際大会「UEFA欧州選手権2012(EURO2012)」による効果に期待しています。ヨーロッパではサッカーの人気がとても高く、大画面テレビの売上げ増に貢献すると見ています。またヨーロッパリーグで活躍するアジアの選手も多くいますので、大会の注目が高まることは世界各国のテレビ市場に良い効果をもたらすのではないでしょうか。3Dの放送についても、現在ヨーロッパで放送されているものはそう多くはありませんが、オリンピックやEURO2012の開催後には、よりコンテンツが増えて欲しいと期待しています。
− iPhoneやiPadの周辺機器を中心に集めた「iZone」の展示、電子書籍やタブレットなどを取り上げる「eLibrary」の展示(関連ニュース)については、今年も力を入れますか。
ハイテッカー:もちろん、今年のIFA2012でもハイライトしたいと考えています。iZoneはスタートしてから、特に中小規模の企業の方々から、IFAに出展できる機会として好評を得ています。ホールのコンセプトやデザインも洗練されていますので、効果的に商品の魅力が見せられるということで高い評価をいただいています。ぜひ日本からの出展を検討されている企業の皆様にも、ビジネスチャンスの場として、あるいはヨーロッパでのテストマーケットの場として「iZone」を活用して欲しいと思います。
− 今年はどんな製品や新しい技術にスポットが当たると思いますか。
ハイテッカー:さて、どうなるでしょうか、私も楽しみです。サムスンはIFA2012 グローバル・プレスカンファレンスのプロダクトセミナーで、今年のIFAで新しいハイエンド・テレビを出展すると予告しました(関連ニュース)。有機ELテレビが商品として幾つかのメーカーから出てくることも期待できます。
「コネクティビティ」を核にした製品も、トレンドから商品へと進化するはずです。“つながる”エレクトロニクスの最新製品&技術が、IFA2012の会場を賑わせてくれそうです。
また、先に申し上げた通り、高品位にオーディオが楽しめるコンポーネントや、エネルギー効率の性能を高めたホームアプライアンスの製品にも注目が集まるでしょう。
IFAの展示は、人々のライフスタイルに根付いたかたちで商品の魅力を見せ、それぞれの「ネットワーク」のかたちまでもが一望でき、体験できることが他の見本市にはない特長だと考えています。エレクトロニクスのトレンドセッターであり、また世界中のトレードビジターとコミュニケーションが築ける場としても、ぜひIFA2012のメリットを最大限に活用していただきたいと思います。