特別インタビュー(2) ソニー担当者が語るベルリンフィル《ワルキューレ》4K&DSD収録秘話
IFAの開幕直前、ソニーとベルリンフィルからパートナーシップ提携のニュースが同時に発表された(関連ニュース)。「デジタル・コンサートホール」の画質・音質の改善を含め、オーディオビジュアルの再生技術の品位向上という大きなテーマに向けて共同で取り組んでいくという内容である。
こちらの記事でベルリンフィル・メディアのメラー氏、フランケ氏にうかがったお話しを掲載している。ソニー側は、企画マーケティングの小室弘行氏と音響設計部の宮地茂樹氏に、画質アップグレードの話題と4K収録のエピソードを中心にお話をうかがうことができた。
◇ ◇ ◇
ーー 「デジタル・コンサートホール」のクオリティ向上を目指した背景を教えて下さい。
小室(敬称略) ソニーとベルリンフィルの間には、テレビで「デジタル・コンサートホール」を楽しめるようにすることで、パソコンよりもいい画、いい音で楽しんでもらいたいという、マーケティング上の共通の目的がありました。その次の段階として、テレビやBDプレーヤーにふさわしいソースとは何かと考えた時に、ソース側も一緒に良くしていきたいという話が両者から持ち上がったのです。
その話を具体的に進める過程で、ヨーロッパのHD撮影の標準が720pで、「デジタル・コンサートホール」の撮影システムにも720pが採用されていることが話題になり、共同作業を進めるのであれば、まずはフルHDにしたいということになったのです。
ーー 具体的な機材と導入時期はもう決まっているんですか。
小室 機材は決まっており、時期もほぼ決まっています。ベルリンフィルからもできるだけ早い時期に入れ替えたいという要請があり、なるべく早く進める予定です。
宮地(敬称略) ベルリンフィル・メディアのフランケさんには日本に来ていただいて私達の製品を紹介しました。また、今回は私達がフィルハーモニーのスタジオを見せてもらいました。そうやってエンジニア同士のコラボレーションを深め、次世代に向けて作業を進めたいと思っています。
ーー IFAで上映した《ワルキューレ》の製作プロジェクトはどんな具合に立ち上がったのですか。
小室 4Kの収録に関しても共同作業のアイデアが出て、急遽IFAで発表するべきだということになりました。ソニーとしては、いまの技術力のベストを尽くしたものを出そうということになったのです。4Kに見合う音声としてDSDを組み合わせるアイデアも生まれ、そのためにメンバーも集めました。
その話が出たのが今年の4月、撮影をしたのは5月ですから、かなり急ピッチに作り上げることになりましたが、最善を尽くして製作していますので、クオリティには満足しています。
ーー 150インチの4K映像の迫真力にも驚きましたが、音響的にも聴きどころが多かったですね。映像の表現力と音の表現力が同じ次元でバランスしていました。また、分厚い管弦楽のスケール感に加えて、意識して耳を傾ければ細部がすべて聞こえてくることが素晴らしい。映像の緻密さと共通するものがありました。
小室 映像、音声ともに音楽が分かっている人間が作っていることの強みだと思います。今回は単なるデモンストレーション映像ではなく、作品として楽しんでいただけるように作ることを目指しました。
音声のチーフエンジニアは、元テラーク(TELARC)のロバート・フリードリッヒですし、ベルリンフィル・メディアのフランケさんにも中心的なポジションで参加していただきました。
ーー 今回の再生システムの概要を教えて下さい。
小室 送り出しの装置はSR-R1000というデータストレージユニットです。その出力をコンバーターでHDMIに変換し、HDMIケーブル1本でVPL-VW1000ESに30Pで出力しています。音声はSonomaのPCで再生した出力をEMMラボの「DAC8 MK 4」に入力し、4chで鳴らしました。スピーカーは「SS-AR1」を4本使っています。
ーー 映像はステージを間近からとらえていますが、音声もそれに近い距離感ですね。
宮地 はい。指揮者のラトルのすぐ後方上部に基本のマイクを置いて録音し、映像と同じようなバランスを狙っています。音楽の分野で4Kコンテンツを本格的に収録したのは初めてですが、今後はソニーとしても3D/4Kの両方を見据えてやっていきたいですね。
ーー 画も音も際立ったなめらかさが印象的です。
宮地 音が立体的だと画もさらに立体的に見えるということをあらためて実感できました。ソニーとして音と画の最高峰を目指しただけに、ブース来場者の反応も良く、デモ終了後に「ブラボー!」が出たこともあったほどです。
ーー どうもありがとうございました。
こちらの記事でベルリンフィル・メディアのメラー氏、フランケ氏にうかがったお話しを掲載している。ソニー側は、企画マーケティングの小室弘行氏と音響設計部の宮地茂樹氏に、画質アップグレードの話題と4K収録のエピソードを中心にお話をうかがうことができた。
ーー 「デジタル・コンサートホール」のクオリティ向上を目指した背景を教えて下さい。
小室(敬称略) ソニーとベルリンフィルの間には、テレビで「デジタル・コンサートホール」を楽しめるようにすることで、パソコンよりもいい画、いい音で楽しんでもらいたいという、マーケティング上の共通の目的がありました。その次の段階として、テレビやBDプレーヤーにふさわしいソースとは何かと考えた時に、ソース側も一緒に良くしていきたいという話が両者から持ち上がったのです。
その話を具体的に進める過程で、ヨーロッパのHD撮影の標準が720pで、「デジタル・コンサートホール」の撮影システムにも720pが採用されていることが話題になり、共同作業を進めるのであれば、まずはフルHDにしたいということになったのです。
ーー 具体的な機材と導入時期はもう決まっているんですか。
小室 機材は決まっており、時期もほぼ決まっています。ベルリンフィルからもできるだけ早い時期に入れ替えたいという要請があり、なるべく早く進める予定です。
宮地(敬称略) ベルリンフィル・メディアのフランケさんには日本に来ていただいて私達の製品を紹介しました。また、今回は私達がフィルハーモニーのスタジオを見せてもらいました。そうやってエンジニア同士のコラボレーションを深め、次世代に向けて作業を進めたいと思っています。
ーー IFAで上映した《ワルキューレ》の製作プロジェクトはどんな具合に立ち上がったのですか。
小室 4Kの収録に関しても共同作業のアイデアが出て、急遽IFAで発表するべきだということになりました。ソニーとしては、いまの技術力のベストを尽くしたものを出そうということになったのです。4Kに見合う音声としてDSDを組み合わせるアイデアも生まれ、そのためにメンバーも集めました。
その話が出たのが今年の4月、撮影をしたのは5月ですから、かなり急ピッチに作り上げることになりましたが、最善を尽くして製作していますので、クオリティには満足しています。
ーー 150インチの4K映像の迫真力にも驚きましたが、音響的にも聴きどころが多かったですね。映像の表現力と音の表現力が同じ次元でバランスしていました。また、分厚い管弦楽のスケール感に加えて、意識して耳を傾ければ細部がすべて聞こえてくることが素晴らしい。映像の緻密さと共通するものがありました。
小室 映像、音声ともに音楽が分かっている人間が作っていることの強みだと思います。今回は単なるデモンストレーション映像ではなく、作品として楽しんでいただけるように作ることを目指しました。
音声のチーフエンジニアは、元テラーク(TELARC)のロバート・フリードリッヒですし、ベルリンフィル・メディアのフランケさんにも中心的なポジションで参加していただきました。
ーー 今回の再生システムの概要を教えて下さい。
小室 送り出しの装置はSR-R1000というデータストレージユニットです。その出力をコンバーターでHDMIに変換し、HDMIケーブル1本でVPL-VW1000ESに30Pで出力しています。音声はSonomaのPCで再生した出力をEMMラボの「DAC8 MK 4」に入力し、4chで鳴らしました。スピーカーは「SS-AR1」を4本使っています。
ーー 映像はステージを間近からとらえていますが、音声もそれに近い距離感ですね。
宮地 はい。指揮者のラトルのすぐ後方上部に基本のマイクを置いて録音し、映像と同じようなバランスを狙っています。音楽の分野で4Kコンテンツを本格的に収録したのは初めてですが、今後はソニーとしても3D/4Kの両方を見据えてやっていきたいですね。
ーー 画も音も際立ったなめらかさが印象的です。
宮地 音が立体的だと画もさらに立体的に見えるということをあらためて実感できました。ソニーとして音と画の最高峰を目指しただけに、ブース来場者の反応も良く、デモ終了後に「ブラボー!」が出たこともあったほどです。
ーー どうもありがとうございました。