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まさに真の“革命児”、「Wooo」UTシリーズが、テレビ市場に旋風を巻き起こしている。新しい時代の“テレビのある暮らし"を提案、実現したのは、その強力なデザインコンセプトだ。注目される市場創造戦略を、コンシューマ事業グループ・渡辺修徳事業部長に聞く。 インタビュアー:音元出版社長 和田光征 |
■マーケットイン発想で生まれ変わった研究所 ――薄型化・軽量化に加え、その特長を活かした素晴らしいデザインコンセプトを打ち出された「UTシリーズ」が、新しいジャンル、市場を創造できる商品として高い評価を集め、特別金賞、さらにハイデザインコンセプト賞を受賞されました。 渡辺 日立としても大変画期的なことで、市場からも、物凄い手応えを感じているところです。技術陣に対し、これを誇りにこだわりを持ち続けて欲しいと鼓舞しています。 実は技術陣も一時、「次はどうすればいいのだろうか」と迷いがあった時期があります。今回のUTシリーズのデザインにしても、デザイン本部と、それを実現するための様々な技術的なバックグラウンドが必要で、そうした部分でのより強固な連携は、これからの商品づくりにおいて、より大きなポイントのひとつになってくると思います。 ――UTシリーズの登場には、従来の商品づくりと違った背景があるように感じられますがいかがでしょう。 渡辺 2002年、いまから6年ほど前になりますが、当時、ユビキタスプラットフォームグループ技術戦略本部で特許や開発マネージメントを担当していた時に、研究所の制度を大きく変更しました。象牙の塔の博士をつくるような研究もいいけれども、それが事業につながらないのはいかがなものかと。そこで、「先行研究」「基盤研究」「依頼研究」という3つに大きく括り分けました。 「先行研究」は、商品化のイメージでいうと2〜3年後くらいの技術開発を、テーマを決めて重点化して行います。テーマは研究者から出してもらいます。研究者自ら、持っているテーマを売り込んでくるわけです。それが製品に使えるかどうかを、各事業部門と「こうして欲しい」「これではダメだ」とディスカッションしていきます。「依頼研究」は、製品化の方向が決まっていて、1年後くらいには商品化するもの。「基盤研究」はそれとは反対に、レンジで言えば10年後にものになるかどうかはわからないけれど、研究所の見識で進めるというものです。 当時、研究者に対して私は、もっと市場に出てこないとだめだ、商売に近いところで仕事をしてほしいと言い続けていましたが、この組織改革が、日立の研究者がマーケット志向になるきっかけになりました。今では、ものづくり側とデザイン側のコンセプトをあわせて実現していくにはどうすればいいかということを、研究者が言い出すようになりました。UTシリーズでも、3.5cmの薄さだけでなく、360度、どこから見ても美しいものを創ることが実現できたのも、かつてのエンジニアや研究者の発想では無理だったと思います。本当にムードが変わってきて、私には隔世の感があります。 光る素材が出てきたわけですから、今度は、これをいかに売るか。お客様に「こんなに素晴らしい商品があります」とお伝えしていくのは、私どもマーケティング事業部のミッションであり、大きな責任です。 |
液晶テレビ HITACHI UT770シリーズ |
プラズマテレビ HITACHI P50-XR02 |
UT770シリーズは別売りのスタンドを使えばリビングの中央などに置いて使用することも可能 |
■360度美人のこだわりが生活空間を心地よくする ――店頭においても、UTシリーズには、これまでと違った視点やアプローチが必要になりますね。 渡辺 いままでの商品とは売り方も異なりますし、価格帯も付加価値を備えた分、高級ゾーンにシフトします。そうした中で、お客様にご納得いただける販売のアイデアをご提供し、それに対するリアクションをご販売店にフィードバックいただきながら、UTシリーズの売り方のノウハウをご販売店と一緒になってつくっていかなければいけない。発売から半年が経過しましたが、ここにきて、売り方のノウハウも積み上がって参りました。 実際にこれまでのUTシリーズの販売実績を見てみると、部屋のインテリアとマッチするホワイトのタイプが予想を上回る構成比になっています。また、UTシリーズご購入者の1/3以上の人が壁掛けやフロアスタンドを使っています。間違いなく、お客様の要望を叶えることができる商品なんです。ご販売店が自信を持って取り組んでいただければ、テレビの新しいステージは必ず切り拓けます。UTシリーズにより世の中が変わっていくと確信しています。 ――お客様に「これなら自分の部屋に置きたい」と思っていただけるような消費者目線が常にあったからこそ、ここまで完成度を高められたのだと思います。薄型テレビを誰もが買えるようになり、これからは多様なニーズに訴える「横マーケティング」の展開が本格化してきます。インテリアを志向する動きも俄かに強まり、店頭でもそうしたコーナーをつくらないと“遅れている"という心理が働いてくると思います。 渡辺 UTシリーズには2つの方向性があります。ひとつは「壁に掛けたい」、もうひとつは「生活空間を心地よいものにしたい」というものです。薄くて軽いから、宣伝でも「もはや、壁に貼るテレビ」と謳っていますが、もうひとつの生活空間を創るという面も非常に大切で、店頭でも、お客様の志向に合わせた提案を行っていかなければなりません。 広義には、壁掛けもレイアウトフリーの一種ですから、どちらもレイアウトフリーと言えるのですが、「360度どこから見てもキレイでなければ、生活空間の中で真のレイアウトフリーとは言えない」というこだわりが、もうひとつの「生活空間をより心地よいものにしたい」という側面を強力なひとつの柱にしました。日立の従来のものづくりの発想だったら、どちらかが強くなってバランスを失っていたと思います。しかし、「これは日立の商品ではない」という声が聞かれるほど、意外性のあるものを出せました(笑)。反対に、これからはここを、当社の強みにしていきたいと思います。 ――これからの強いメーカーとは、市場(新しいジャンル)を創ることができるメーカーだと思います。価格の波に飲み込まれないためにも、扇の要となるコンセプトが必要です。そこがしっかりとしていれば、扇を大きく広げても絶対に崩れない。それがUTシリーズにはありますね。今後、お客様自ら色々な使い方を考え、それらがどんどん伝播していくのではないでしょうか。 渡辺 頑張ってこの世界をしっかり創っていきたいですね。 |
■超薄型化・軽量化は価値創造の第1ステップ ――今後日立では、プラズマテレビも超薄型になり、日立のテレビはすべて超薄型にするという方針を打ち出されています。 渡辺 35mmのプラズマテレビと20mmを切る液晶テレビを09年度中に商品化する計画です。分離型にするか、一体型にするかなど、その辺りの見極めで各社試行錯誤されているようですが、当社の提案した分離型がひとつのリファレンスになったと思います。 薄くて軽い、この方向性は間違いありませんね。今後、さらなる薄型化の競争が待ち構えていますが、しかし、単に薄くなるだけでは、お客様に本当の価値をご提供することはできません。さらに、生活空間を創る中で、どのような価値を提案していけるか。そのための、一番目のステップとしての薄型化、軽量化として捉えなければなりません。さらにその上で、利便性を考えれば、ワイヤレスによる分離型が理想ですが、これはコストとの兼ね合いの中で、お客様がどこまで認めていただけるかだと思います。 テレビはこれまで、部屋のコーナーと、置く場所がほぼ決められていました。それに合わせて家具等のインテリアを決めていたので、生活のパターンを変えることは容易ではありませんでした。ところが、UTシリーズを購入されたお客様の間からは、「家具選びを含めて楽しんでいます」という声がたくさん届いています。そういう風に喜んでいただけるのは本当にうれしいですね。テレビの楽しみ方がUTシリーズで確実に変わってきたので、生活空間の創造にさらに力を入れて参ります。 |
渡辺修徳氏 プロフィール |
1948年3月4日生まれ。茨城県出身。1970年3月東北大学工学部卒業、同年4月(株)日立製作所入社。横浜工場テレビ設計部に配属になり、カラーテレビ、プロジェクションテレビの設計に従事。1994年AV機器事業部商品企画部長、1996年から日立ホームエレクトロニクスヨーロッパ出向を経て、2002年(株)日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループ技術戦略本部長。2004年日立コンシューマ・マーケティング(株)代表取締役・取締役社長。2008年4月から現職。 |
【関連リンク】
■ 日立製作所 AV機器情報ページ
http://av.hitachi.co.jp/
■ Phile-web「Wooo WoRLD」
http://www.phileweb.com/wooo/