常に新しいことに挑戦し
「お客様目線」を徹底する


パナソニック(株)
デジタルAVCマーケティング本部
本部長
西口史郎氏


 
ディスプレイ製品/薄型テレビ
Vシリーズ
(左からTH-P65V1、TH-P58V1)


画質を極めたビエラVシリーズが、ビジュアルグランプリ2009SUMMERに続き連続で総合金賞を受賞したパナソニック。「ビエラにリンク!」の進化など新たなテーマにチャレンジし続け、お客様への価値創造を図る同社の西口本部長に話を聞く。

インタビュアー:音元出版社長 和田光征

■店頭訴求のキーワードは「お客様目線」の商品展開

――薄型テレビビエラのVシリーズが、ビジュアルグランプリ2009SUMMERに続き再び総合金賞を受賞しました。


西口 本当に有り難うございます。テレビを中心にリンク商品との操作性を上げようと取り組んで来たことを認めていただけ、非常に嬉しく思います。同時に、皆様からの我々のテレビやAV商品に対する期待感がひしひしと伝わり、それにお応えしていかなくてはという思いで一層の責任を感じる次第です。

Vシリーズは高付加価値商品にも関わらず販売台数が非常に好調に推移しております。特に50インチクラスの激戦区では、モデル別でシェアナンバーワンとなりました。これもトータル的なバリューフォーマネーの価値を認めていただいたおかげかと思います。

またSDカードによる「番組持ち出し」を企画賞として評価していただいたことも、企画意図を汲んでいただけ嬉しい思いです。これはレコーダーのディーガと、ビエラの新製品でHDD内蔵の録画テレビRシリーズ双方に対し、録画したものがSDカードを通じてワンセグテレビに持ち出せることになります。

我々は常に新しいことにトライし、リンクを年々進化させることにチャレンジしています。ビジュアルグランプリでは商品そのもののみならず、そういったことに対するご評価もいただき、大変有り難くメーカー冥利に尽きると思っております。


――SDカードによる持ち出しはお客様にとって大きな価値訴求となりますが、店頭ではどのように展開されていますでしょうか。

西口 リンク時代以前は、テレビ、ビデオなど単体展示でしたが、これからはテレビやレコーダー、ラックシアターがセットで展示され、さらにワンセグ持ち出しやドアホンなどとのセキュリティ対応ができるという展示、つまりビエラリンクの全容を、テレビ売り場やリンクの特設コーナーで訴求していただいています。お客様にも自然に使い勝手を理解していただけるような工夫です。

特に今年から店頭訴求で注力しているのは、お客様目線ということです。お客様がどういうところにお困りで、ビエラリンクを使うとどう解決できるのか、それがわかるようなお客様目線のPOPに変更を図っています。

我々メーカーにとって、リンクは簡単にできるものと手前味噌で思ってしまいがちですが、特にご年配のユーザー様にとっては、リンクと言われると却って難しく感じられる場合があるのです。それより実際に、例えばテレビのリモコンひとつでレコーダーやラックシアターも使えるとか、録画したものはカードに入れて病院の待合室でもポータブルテレビで見ることができるとか、提案やお困りの解決などをわかりやすく訴求しようと心がけています。「お客様目線」はマーケティング本部の今年の合い言葉なのです。


――ビエラの新製品、HDD内蔵のRシリーズも金賞を受賞されました。

西口 これはもともと、ブラウン管時代からあったテレビデオのような存在ですね。薄型テレビや録画機器が技術的、価格的に普及期に入り、次の付加価値として録画型というものが操作性やスペースセービングという意味でもメリットがあると判断し、今年から導入しました。内蔵メディアはHDDとディスクメディアの選択肢がありましたが、HDDの操作感、起動の早さ、お買い求めやすさが、現時点ではよりコストメリットがあると考えています。そして録画タイプのテレビはパーソナル使用まで幅広くカバーできることも想定しております。

録画機は未だVHSを使用されているお客様が沢山いらっしゃいますが、これも地デジ化を図らなくてはなりません。録画機能内蔵テレビはそこにもお応えできると思います。


2010年に向けさらなるチャレンジを

――レコーダーで金賞を受賞したブルーレイディーガのDMR-BW970は、ホームシアターのインストーラーにも高く評価されています。操作性のよさがお客様にも評判で、セッティングもしやすいということです。


西口 これは発表直後から注目されました。まさにホームシアターとして使用することも想定し、シアターモードなど商品企画の際にいろいろと研究を重ねた結果です。プロ中のプロであるインストーラーの皆様のご評価は、大変嬉しいことですね。

レコーダーはまず画質がきれいであること、簡単操作、そしてエコというコンセプトで、さらにお客様目線でものづくりや訴求をしていこうと展開しております。録画機能として“何倍録画"というところが競争にもなりましたが、当社は長時間8倍録画としながら高画質を実現し、こちらも高い評価をいただいています。

操作性はリンクを含めて年々改善していますが、たとえば自分専用のラベル名で管理ができるなど、お客様自身がお使いになった声を集め、細かいところを商品作りにひとつひとつ反映させていきました。また待機消費電力も新製品のたびに極限まで下げるチャレンジをし、リンクによる省エネにも取り組み単品だけでなくかけ算での省エネを実現できるようになりました。もちろんまだまだ進化系ですから、今後の商品についても大いに期待していただきたいと思います。


――先月発表させていただきました当社のデジタルカメラグランプリにおいても、御社はDMC-GF1で総合金賞を受賞されています。

西口 当社はマイクロフォーサーズ規格の一眼として、DMC-G1、DMC-GH1と発売してきましたが、この商品はある意味満を持しての登場です。小型・軽量化が進化し、動画撮影機能の搭載も実現しました。一眼の世界で何とか15%くらいのシェアをとりたいと思っておりましたが、おかげさまで発売直後からその水準をずっと維持しております。

黒と赤、そして今回初めて白をとりいれた色展開をしておりますが、現状では白が未だに注文に追いついていない状況です。あの白の質感を出すためにかなりの時間と労力を費やしましたが、ここまで支持していただけて大変嬉しく思っています。


――来年以降のご計画はどのような方向性になるでしょうか。


西口 マーケティング本部をつくってから、新しいことに常にチャレンジしていく思いでいます。お客様の嗜好はこれからますます多岐にわたってくるでしょう。テレビは2011年のアナログ停波を控え、初めてデジタルを購入される方に加え、デジタルからデジタルへの買い替えも進むでしょう。2〜3年前までは想定できなかったような新たな要望、新たな市場を想定し、より品揃えを増やす必要があります。

先進性という観点では、やはり3D。業界もお客様も期待しています。パナソニックではコンテンツ制作を含めて引っ張っていけるよう、来年の3D元年に向け注力していきます。

もうひとつのトレンドは、使い勝手。ご高齢の方などからより厳しく試される時代だと思います。リンクだけでなく単品の操作感も改善してはおりますが、さらに磨きをかけていく必要があると思っています。

さらにエコに関する考え方。パナソニックでは昨年、ブランド統一を図りましたが、それ以前はどちらかというとナショナルブランドの白物家電で「エコアイディア」を訴求していました。パナソニックに統一された今、エコはビエラやディーガなどAV商品に対しても積極的に取り組んでいます。お客様のエコに対する関心度も高く、白物も合わせてトータルパナソニックとしてより進化させ、商品も強化していきたいと思います。

来年はバンクーバーオリンピックが開催されます。当社はオフィシャルスポンサーとして開催100日前からアピールしておりますが、これからさらに取り組みを強化します。今年からデジタルカメラのルミックスもオリンピックの公式商品となりました。これまでのAV商品に加え、デジタルカメラ、また、リンク関連商品をテーマに、オリンピック商戦を盛り上げていきます。



西口史郎氏 プロフィール
Shiro Nishiguchi
1957年生まれ。三重県出身。1980年4月、一橋大学卒。80年、松下電器産業(株)(現パナソニック(株))入社。その後、アメリカ松下へ出向。テレビ事業部国際部部長、テレビ事業部商品企画部部長、LCDテレビビジネスユニット長を経て、2007年4月より、パナソニックマーケティング本部本部長に就任。2008年4月より役員。


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