VGP2012 金賞受賞メーカー特別インタビュー
そのすばらしさを伝えていく
パイオニアマーケティング(株)
代表取締役社長
山崎一彦氏
ネットワークを使った使用シーン別提案が鍵
−− 昨年に引き続き、音響を評価された技術賞を受賞されました。
山崎 ありがとうございます。AVアンプ「SC-LX56」は、販売店様との先行商談でも高い評価をいただいていますが、今回の受賞がバックボーンとなり、さらに勢いがつくことと思います。
−− 金賞を数多く受賞されましたが、昨年来御社がさまざまなカテゴリーで投入された新製品の評価の結果です。
山崎 パイオニアは今、既存事業を強化、新規事業を育てるとともに、アライアンスを強化しつつ新興国で当社の強みを活かした事業を拡大するという成長戦略をとって進んでいます。ここ2年間は、パイオニアの根幹であるホームAV事業をいかに輝かせるかという思いで、オーディオメーカー本来の商品と呼ぶにふさわしいアイテムの充実に努めてきました。
そしてこれからは、圧倒的な技術シーズだけでなく、使用シーンに応じてマーケットサイドと技術サイドをつないで商品づくりを強化したいと思います。パイオニアならではのものを打ち立てるためのキーワードのひとつがネットワークですが、ネットワーク機能を充実させたAVアンプでは、様々なソースでコンテンツが楽しめる工夫を盛り込んでいます。
VGP2012SUMMERで音響技術賞・金賞を受賞した「SC-LX56」のほか、金賞を受賞した「SC-LX85(写真)」など、ネットワーク機能に対応するAVアンプ製品が揃う。
今後膨らませたいシステムオーディオのカテゴリーでは、ネットワーク機能をそのまま展開するのではなく、個々の使用シーンに応じて展開していくべきだと考えます。一般のお客様にとって、ネットワークはまだわかりにくいものですので、流通の方々の力をお借りしながら、どれだけわかりやすくきちんと伝えられるか、商品をつくっていけるかが課題であり、当社のテーマとしているところです。
−− 使用シーンとは、どういったものが想定されるでしょうか。
山崎 日常の生活シーンを考えますと、家の中心にあるテレビのまわりに家族が集い、多くの時間を過ごしています。そういったシーンにいい画、いい音でコンテンツを楽しむための提案というものがあります。
一方オーディオは、個人的な時間を使って音楽コンテンツと向き合うという楽しみ方です。今は刺激のあるテレビの映像コンテンツに大半の人が時間を振り向けるようになり、その隙間、移動時間などを使って、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)とヘッドホンで音楽が楽しまれるようになったと認識しています。DAPが、隙間時間を有効に使う価値を提供しているのです。
今後音楽の楽しみ方はどうなるのか。音と正対する大事な時間を過ごすシチュエーションはなくなってしまうのか。いいえ、音楽のすばらしさは、DAPやカーオーディオを通じて、私たちはもちろん、若い人たちも皆体験しており、音楽のない生活は考えられないものだと思います。
DAPとヘッドホンで聴くというスタイルは続くと思いますが、今の若い人もある程度の年齢になったときには、音楽と向き合って自分の心を癒す時間が欲しいという願望が、間違いなく出てくると思いますし、音楽とのふれあい、オーディオの価値は失われることはないと思います。
逆に言えば、これがいかにすばらしいものかということを地道に継承しながら伝えていくことが、我々と、我々のパートナーである販売店様の役目であると思います。我々のミッションは音楽のすばらしさをお客様に提供することであり、そういう時間をもっていただくお手伝いをしたい。「より多くの人と、感動を」ということですね。ネットワークの切り口で、従来のセットオーディオやポータブルオーディオの概念を超えて使用シーンに合わせた提案をさせていただきたいと思います。
AV市場に刺激を与えお客様を呼び戻す
−− ピュアオーディオでは、今回受賞され市場でも好調のネットワークプレーヤーに加えて、SACDプレーヤーも新たに加わりました。
山崎 ネットワークプレーヤーは今大変注目されており、おかげさまで高い評価をいただいています。一方でオーディオには所有する価値という側面もあり、パッケージでソフトをコレクションしたい方に向けて、あらたにDSDディスクにも対応したSACDプレーヤーをご提案しました。このネットワークプレーヤー、SACDプレーヤーのラインは新鮮に受け止めていただいており、若い方に対する新しいマーケットとして取り組む気持ちです。ピュアオーディオではすべてのアイテムを揃え、より一層注力して参ります。
VGP2012SUMMERで金賞を受賞したネットワークプレーヤー「N-50(左)」と、DSDディスクも再生可能なSACDプレーヤー「PD-30(左)」。
−− 新提案のダンサーオーディオ、STEEZもいよいよ頭角を現してきました。
山崎 これは使用シーンというより、ライフスタイルに照らし合わせた商品です。ダンスは一種の祭りであり、本能に訴えるカテゴリーとしての展開で、手応えを感じています。ブランドを生み出してからこれまでの1年間で認知度はだいぶ高まり、ブランディング構築は進められたと自負しております。新たな商品展開も含めて、じっくり育て、大きな領域にしたいと思います。
地デジ化以降、AV業界は苦戦が続いていますが、新しいもの、新しい価値を投入できなくては、このままでは戻りません。このタイミングで、我々は専門店様にも量販店様にも、魅力的な商品を投入することで集客に貢献していければと思います。夏商戦、そして下半期に向けてしっかりとやって参りますので、ご期待いただきたいと思います。