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インタビュー

VGP2012 金賞受賞メーカー特別インタビュー

ソニー商品を通じて感動や興奮を提供するためにハードルをさらに高く、そして乗り越えていく
ソニーマーケティング(株)
代表取締役
執行役員社長
河野 弘
VGP2013 批評家大賞
液晶テレビ “BRAVIA”「KD-84X9000」
VGP2013 映像特別賞
BDレコーダー「BDZ-EX3000」
VGP2013 開発賞
ヘッドホンアンプ「PHA-1」
VGP2013 企画賞
BDレコーダー機能「もくじでジャンプ」/スピーカー「SRS-BTV5」
VGP2013 技術賞
BDレコーダー機能「ハーモニクスイコライザー」/4K対応画像処理エンジン「4K X-Reality PRO」
VGP2013 金賞受賞モデル
KD-84X9000/KDL-65HX950/KDL-32HX750/KDL-26EX540/HMZ-T2/VAIO L series/SGPT123JP/S/VAIO DUO 11/NW-F807、806、805/ VPL-VW1000ES/BDZ-ET2000/BDZ-EW1000/CECH-ZNR1J/TA-DA5800ES/RHT-G15/XBA-10/MDR-1R/MDR-1RNC/MDR-1RBT/PHA-1
(VGP各部門の詳細はこちらをクリック)
ソニー初の4K対応液晶テレビ「KD-84X9000」がVGP2013批評家大賞を受賞した。これからのテレビの新しい楽しみ方を切り開くソニーが世に問うた新たな一歩。市場から寄せられる大きな期待にいかに応えていくのか。4月にソニーマーケティング社長に就任した河野弘氏に、その想いを聞く。

市場に強く示すソニーの存在意義

−− KD-84X9000が批評家大賞を受賞しました。ご感想をお聞かせください。

河野 市場では、テレビへの価格重視の傾向が強まる中、最高の画質と品質を目指した、ソニーのテレビづくりの原点にチャレンジした商品です。このような高い評価をいただき、社内でも大変喜んでおりますし、とりわけ、エンジニアにとっては感慨ひとしおです。

−− テレビではネットワーク環境の構築など様々なテーマが出てきていますが、大画面になればなるほど、求められるのは画質と音質です。

4K(3,840×2,160)液晶パネルを搭載した84V型の液晶テレビ“BRAVIA”「KD-84X9000」。映像エンジンには、4K対応のために新開発した「4K X-Reality PRO」を搭載する。

河野 商品にはそれぞれサイクルやトレンドがありますが、その中で、原点にあるものを見直すタイミングが必ず何度か巡ってきます。テレビはいままさにそういうタイミングであり、見直すことはチャンスでもあります。テレビのものづくりでは画質、音質、臨場感や空気感といったものをどのように伝えられるかが求められています。

テレビに限らず、ソニーが再認識しなければならないものづくりのポイントはもっと様々にあるはずです。今回、KD-84X9000以外にも数多くの商品が賞をいただきましたが、品質やつくり込みの完成度を評価された商品が数多く受賞しています。ソニーとしてはまさにこれから、そうした部分をきちんと打ち出していかなくてはいけませんし、認めていただけるための努力を行っていきます。それがエンジニアのモチベーションにもつながり、さらに高次元の製品へとつながっていくと考えています。

−− 4Kという観点からは、コンテンツ不足が指摘される中で、鍵を握る4Kアップコンバートで高い評価を得る「BDZ-EX3000」も映像特別賞を受賞しています。お客様も今、ソニーというブランドに対し、市場創造をリードするクオリティを強く期待されていると思います。

河野 その思いはひしひしと感じます。私が2年前までいた米国のビジネスはマスコントリビューション中心で、今と真逆でした。1つの国に匹敵する量をハンドルするリテーラーが存在し、商品ラインナップの構成がだんだんと彼らの価値観に沿う方向にシフトしていってしまう。それが行き過ぎたきらいもあり、エンジニアが本心から商品づくりにチャレンジしたい気持ちにさせられなかったのではないかと反省しています。

2年前に日本に戻り、今年からソニーマーケティングを担当するようになりましたが、日本のマーケットは米国で経験した大量生産大量販売の構図からはガラリと変わります。特にテレビは、お客様に付加価値をきちんと提案していかなければいけない時期にあり、それはそもそもソニーが常に忘れてはならないことです。いい商品であるからこそそれを伝える説明をし、価値をわかっていただけるよう提案していくことの大切さを噛みしめています。

AVの世界だけでなく、デジタルイメージングも含め、ソニーの存在意義を示せる商品をきちんと世に出していこうという気持ちが、エンジニアにいい仕事をしてもらうことにもつながってくる。もちろん、お客様が買いやすい値段で提供することも大事なことですが、価格だけの話をしていては将来が開けてきませんよね(笑)。これまでになかったもの、人が見て感動するもの。そうしたハードルを上げていくことがソニーらしい商品を生み出す取り組みであり、いくつか兆しが見えてきています。

 

こだわりを凝縮 MDR-1R

−− 市場に元気がないのではなく、元気を出すための考える時間を与えられていると捉えたいですね。

河野 同質競争ではどんどん値段が下がり、業界が疲弊していくだけです。大切なのは、自分たちの得意なポジショニングを今一度思い出すことだと思います。今回、受賞した商品の中でうれしかったもののひとつが、ヘッドホンの「MDR-1R」です。音質、デザイン、装着性などにとことんこだわった商品。音質はソニーミュージックとコラボして、今の時代に合う音を徹底して研究しました。現在は音のピークがかなり低いところへシフトしていて、それを忠実に出せないと音楽のバランスを崩してしまうことにもなる。そこで、音のチューニングはロンドンのソニーミュージックのスタジオにこもりきりで行っています。装着性は数多くの人に実際に装着していただき、チェックしていますし、デザインを含めた仕上がり感も抜群です。

ヘッドホン「MDR-1R」。型番の「1」には「Origin」「Start」といった意味が、「R」には「Reality」といった意味が込められており、同社では本製品を「ヘッドホンの本質を追究したシリーズ」だとしている。

もう一度、ソニーのヘッドホンの良さを思い出すという意味を込めて型番に「1」を入れました。型番に「1」の付いたヘッドホンは30年前、それと、ソニーの技術の粋を集めたブランド「QUALIA」で2004年に発売した「Q010-MDR1」の2機種しかありません。エンジニアにとってはかなりプレッシャーもあったようですが、王道のヘッドホンを目指し、やり遂げることができたと思います。

「MDR-1」を最初に見た時には、私も思わず「あっ、これ欲しい」と思いました。ヘッドホンはお客様が手にとり、外出する時も一緒に持ち歩くことの多い愛着が深まっていく商品です。こうしたところできちんと認めていただくことが大切だと思います。

−− ソニーにはコンテンツもあり、コンテンツを製作されている方々もそこにいらっしゃるわけですね。

河野 「MDR-1」でも、サウンドエンジニアやミュージシャンからのアドバイスがかなり大きかったと聞いています。彼らの良さを商品として伝えていくためにも、お互いが高めあっていくためにも、我々ハード側のエンジニアが重要な役割を果たします。ソニーの中にはそうした環境が整っており、画作りについてもソニー・ピクチャーズ エンタテインメントから、色々な意見が常に出できますし、ゲームとエレキでも、ソニー・コンピュータエンタテインメントといろいろなコラボレーションが行えます。皆さんにもっと楽しんでいただけるよう、より一層強みを活かしていきたいですね。

 

河野弘氏 プロフィール

1962年6月11日生。1985年4月ソニー(株)入社。03年4月 ソニー・エレクトロニクス・インク(米国)Consumer Sales Company 担当SVP、05年5月 Sony Style 担当SVP、09年4月 Home Division担当SVP。10年4月(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)プレジデント(現職)、12年4月 ソニーマーケティング(株)代表取締役 執行役員社長(現職)、12年6月 ソニー(株)グループ役員(現職)、12年6月(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント取締役(現職)