オーディオはなんだか楽しそうだ。アンプやスピーカで音を出し、色々とグレードもあるらしい。でもどこから始めればよいのだろうか?
そんなオーディオ初心者のための、基礎講座のスタートです。コンセプトは「あらゆるソースをよい音で!」。これからほぼ1年間(25回)の連載で、楽しくわかりやすく進めていきましょう。
オーディオにはまず、音楽ありきです。オーディオに興味をもつ人はみな音楽が好きですね。ジャズやポップス、ロック、クラシックなどジャンルを問わず、何らかの方法で音楽を聴いているでしょう。ある人はミニコンやラジカセで。またある人はデジタルオーディオプレーヤー(DAP)や音楽配信を活用しているかもしれませんね。デスクトップのPCで音楽にひたる、という人もいるでしょう。
でもそのあたりでウロウロしているようでは、本当の音を知っているとはいえません。もっと違う世界がある。それがオーディオへの道です。同じCDを、もっと本格的なオーディオ装置で一度でも聴いたことがあれば「こんなに素晴らしいサウンドがが入ってたんだ!」と、感動を新たにするはずです。例えばダイアナ・クラールの曲をかけたとします。DAPでは何だか薄っぺらに感じられたボーカルやピアノ、リズムセクションの表情が、ぐっと厚みや深みを増し、生気はつらつとした表情に変わってしまいます。まさに眼前にミュージシャンがいるような生々しさです。どうせ聞くなら、いい音で聴きましょう。
■オーディオ装置を知ろう − プレーヤー、アンプ、スピーカーの3アイテムが基本
まずどんなオーディオ装置が必要なのかをみてみましょう。
プレーヤーとアンプ、スピーカー。この3つは三種の神器ともいえるもので、ひとつひとつをコンポ(コンポーネントの略)と呼びます。コンポの組み合わせがオーディオシステムで、入門者用のエントリーシステムから音にこだわるマニアむけの高級システムまでさまざまです。色々なグレードがあるのも、趣味のオーディオのおもしろさです。
それぞれの機器の役目をみてみましょう。ただ「プレーヤー」というと、普通はCDプレーヤーのことです。しかしほかにもDVDビデオプレーヤーやSACD(スーパーオーディオCD)でもDVDオーディオでも何でもかかるユニバーサルプレーヤーがあります。古くからあるアナログプレーヤーもその仲間ですね。
これは、どんなタイプのディスクをかけるのか。かけるソースによって対応プレーヤーが違うのは当然で、何をメインに楽しむかによって、選ぶことになります。詳しいことはあとで解説するとして、CDプレーヤーの役目とは、CDに記録されたデジタルの音楽情報を読み取り(レーザービーピックアップ)、ステレオ音声として出力するというもの。
CDやアナログディスクのような音源をプログラムソースといい、ほかのソース機器としては放送を受信するFM/AMチューナーや、録音機であるレコーダーなどがありますね。レコーダーとしてはカセットデッキやMDデッキCD&HDD(ハードディスク)レコーダーなどもその仲間です。たくさんありますね。いずれにせよ、そこから得られる出力は小さいので、そのままスピーカーをつなぐことはできません。そこで増幅のはたらきをするアンプ(アンプリファイヤー:増幅器の略)が必要になるのです。
アンプの役目は増幅と入力ソースの切り替え。CDやFM音楽など好みの音楽ソースを選んで、小さな信号をぐんと大きくし、最終的にスピーカーを鳴らすわけです。
こまかくいうと、アンプは前段のプリ部(電圧増幅)と後段のパワーアンプ部(電力増幅)に分かれるのですが、初級やミドルクラスであれば、一体型のプリ・メインアンプを使うのが一般的です。これに対してプリアンプ、パワーアンプを独立させたのが高級ユーザーむけのセパレートタイプ。もっとマニアになると、モノラルのパワーアンプを2台揃えた大がかりなシステムになったりします。
さてスピーカーは音を出す装置です。アンプによってドライブされ、最終的に音声としてあなたの部屋に美しい音楽を響かせるのです。スピーカーにも色々な形状やタイプがありますね。今主流なのは小型のブックシェルフと、背の高いトールボーイタイプでしょう。こちらはフロアスタンディングとも呼びます。 床にそのまま立つからフロアスタンディングで、キャビネットの容積を大きくでき(低音の再生に有利)、スタンドが不要というのがメリットです。それに対してブックシェルフの方は、そのまま床置きはできないので、スピーカースタンドが別途必要になりなりますね。手軽に出窓やラックの上などに置くのもOKですが、予算ができたらやはりスタンドにのせてあげるのが正しいのです。スタンドや置き方で音が変わるという話は、またのちほどしましょう。
■さまざまな端子とそのつなぎ方
これらのオーディオコンポは、つないではじめて音が出るものです。音楽信号の流れは上の図にあるとおりですが、信号のとおり道がケーブル(音のライフラインです)。信号の種類によってつなぐ端子の形やケーブルも異なりますね。
つなぎ方で大事なのは、「出力から入力へ」という考え方です。川の流れのように上流から下流へと音楽信号が流れる、と覚えましょう。つまりプレーヤーの出力をアンプの入力端子につなぎ、一方アンプのスピーカー端子からの出力をスピーカーへとつなぐのです。ただし、上流と下流とでは電気信号のパワーが違いますね。微弱なラインレベルの信号(ほぼ1V)を扱う上流ではRCAのラインケーブルを用い、下流のたっぷりと電力を流すアンプ=スピーカー間にはスピーカーケーブルが使われます。
■オーディオのグレードと楽しみ方とは
ここでは、オーディオのグレードについてお話しましょう。クルマでもカメラでも、およそ趣味の製品にはグレードというものがあります。初心者がいきなり運転の難しい高級スポーツカーは乗りこなせないでしょうし、一眼レフの高級カメラでうまく撮影なんてできません。オーディオも同じで、こだわり度や予算のかけ方によって、いくつかのグレードに分かれ、グレード別に製品が用意されているのです。
これをまとめてみたのが上の図の「オーディオのピラミッド」です。広い裾野をもつエントリー層(初心者層)が一番下で、その次にある程度オーディオ暦のあるミドル層がきます。マニア層やハイエンド層と呼ばれる、高級オーディオを楽しむ人たちは、いわばオーディオの達人。ピラミッドの頂点に立つ人たちです。
ピラミッドを眺めている人たちがいますね。DAPやPCミュージックで音楽を聴く、10代20代の若者世代という感じですが、そこまで裾野を広げてオーディオ予備軍などというのです。予備軍ですから、ちょっとしたきっかけで、オーディオ入門層となりうるわけです。
それがオーディオ製品とどう対応しているかを見てみましょう。まず一番下のエントリークラスでは、ハイコンポ(最近復活しました)や総額10万円くらいの単品のエントリー製品を愛用。プレーヤー・アンプ一体型の製品もありますね。次のステップでミドルクラスになると、プレーヤーもプリメインアンプも横幅44センチのフルサイズ。スピーカーにも予算をまわし、総額30〜50万円のシステムという感じです。
さらにその上になると、予算50〜100万円以上の高級オーディオの世界が広がります。上をみたらキリがないのですが、ここではアンプがプリとメインのセパレート型になったり、プレーヤーもトランスポート(メカ部)とDAコンバータ(電気回路部)を別個に揃えたりします。スピーカーも大型の著名ブランド品などを愛用します。
さあ、あなたはこのピラミッドのどこにいるのでしょうか?オーディオの間口はとても広く、楽しみ方のスタイルも人それぞれです。こうでなければならないというルールなんてありません。予算や好みに応じた、自由なコンポ選びを楽しみましょう。
次回はソフト(ソース)の話を中心にオーディオの楽しみ方を解説します。
>>
「林 正儀のオーディオ講座」記事一覧はこちら
http://www.phileweb.com/magazine/audio-course/archives/summary.html