アンプには色々なつまみがついていますね。電源スイッチやボリュームは誰でもわかるでしょうが、そのほかにも難しそうな各種のつまみ、スイッチ類がズラリと並んでいます。そこで今回はアンプ丸ごと機能解説といきましょう。
音楽信号の流れにそって、ひとつひとつ機能をみていきます。下の図は一般的なプリメインアンプの基本構成です。
最初にくるのが入力セレクター。もしCDプレーヤーだけし接続しないのであれば、ソースの切り替えなんて必要ないわけですが、そうはいきません。FMやアナログのLPレコードも聴きたい。テープやMD、さらにAUX(外部入力端子)につないだ他の機器の音も聴きたいとなると、それらを選択する機能が欠かせませんね。入力ソースの交通整理をするのが入力セレクターというわけです。次にプリアンプ部のボリューム(音量調整)やトーンコントロールなどの音質調整を経て、、パワーアンプで電力増幅され、スピーカーを鳴らすという手順になります。
これが実際のアンプではどうなるでしょうか?アンプも色々で、図2-Aはもっともシンプルな簡単プリメインです。電源をポンと入れ、好きなソースを選んだらあとはボリュームで音量をいじるだけ。アナログレコードを聴くためのフォノ入力さえ省かれていますね。最近はこうしたライン入力だけのタイプが主流ですが、アナログ再生の話はまたのちほど。
では本題の多機能プリメインを見てみましょう。解説なしに図2-Bを見たら、「アンプって操作が難しそう!」と身構えてしまいますね。でも「セレクター系」「ボリューム&バランス系」「トーンコントロール系」そして「電源系」4のパートに分かれていると思えばわかりやすい。パネルの左から右へと信号の流れにそってつまみや機能を配置しているので、図1と見比べて下さい。
★「セレクター系」
入力ソースのセレクトはもちろん、録音機器をつないでのダビング操作や、ステレオかモノかのモードセレクターも含まれます。二組のスピーカーがあれば、スピーカーセレクトで音の違いを楽しむことだってできますよ。
■セレクター
アンプ側からみれば、沢山ある外部入力機器から希望のソースを選ぶ機能ですが、一方ソース側にしてみると、アンプに入れるかどうかの関所ともいえるもの。セレクターで選択され、通行手形をもらった信号だけが通過できるわけです。
CD、FM、AUXなどのライン入力は150mV程度のハイゲイン(高出力)な信号を受け取ります、一方アナログレコードからの信号を扱うフォノ入力は極めて微小レベルですから、イコライザーアンプという回路が余計に入っています。RIAA(リア)の音質補正とあわせて、音楽信号をラインレベルまで増幅し、足並みを揃えているわけです。これは別途アナログ編でくわしく解説します。
ちょっと難しいのがMDやテープデッキなどのレコーダーをつないだ場合です。これはREC(録音)とPB(またはTAPE:再生)があり、ほかのソースの音を録音したり、録った音を聴いたりできますし、この図では省いているのですが、RECセレクターという機能のついたアンプであれば、入力セレクターがどの位置にあっても好きなソースをウラ録できるなど、もっと楽しいことが色々できますよ。
■モードセレクター
モードセレクターというのは、ステレオやモノラルの切り替えで、通常はステレオのポジションにしておきます。再生ソースがステレオの2チャンネルなので、この位置でよいのです。聴いていて左右がどうも逆だな(管弦楽で第一バイオリンが右から聞こえるなど)、と感じたときにはリバースにしてみましょう。これで正しい再生になれば、信号ケーブルのつなぎ方が反対になっているのです。またモノ音源の場合は、モノ(R+L)の位置の方が音がよい場合があります。
■スピーカーセレクト
これは入力ではなく、鳴らすスピーカーを選択できる機能。スピーカー端子にA、Bと二組あれば、そこに2タイプのスピーカをつないで、好きな方の音や両方をミックスした音で楽しむことができるのです。「スピーカーA」「スピーカーB」「スピーカーA+B」などと書かれていますよ。
★「ボリューム&バランス系」
信号の通り道にあって、一番アンプらしい働きといえるのがボリューム機能です。音量の大小だけでなく音質を決める最重要なパーツなのです。左右のバランスを加減するバランス調整も大切なものです。
■ボリューム
右にまわすほど音が大きくなるつまみです。以前はスライド式もありましたが、回転式がやはり手になじむようです。名前はボリュームですが、実はアンプの音量を絞っている抵抗減衰器だと覚えましょう。MAX(最大音量)は減衰のない状態で0デシベル、左へまわすほど−10、−20、−30デシベルと音量が下がるのです。このようにデシベルで目盛った製品は、高級アンプに多く見られますね。
■バランス
左右の音の片寄りを修正してバランスをとるためのつまみです。アナログなど特にそうですが、ソースによっては左と右で僅かに音のレベルが異なる場合があり、それを調整するのです。テクニックとしては先ほどのモードセレクターをモノ(R+L)のポジションにして、左右のスピーカーのちょうど真ん中から音が聞こえるようにすればグッドです。
★「トーンコントロール系」
いわゆる音質調整。アンプの特性はフラットですが、手持ちのスピーカーや部屋との関係で、「どうも低音が出ないなあ」「いや高音がもっと欲しい」などということがあるでしょう。そんなときの助っ人がトーンコントロールです。
■トーンコントロール/バス&トレブル
つまみを見ると、バス(低音)とトレブル(高音)を独立していますね。下の図3に特性カーブを示していますが、中域を境にしてバスのつまみを+にするほど低音がブースト(増強)され、ドラムやベースがぶ厚くなってきます。一方トレブルのサジ加減ひとつで高域が華やかになったり、抑えた渋い音色になったりするのです。音質調整というより音色調整といったほうがしっくりしますね。ただし使い過ぎは禁物。味付け程度に使うよう心がけましょう。
さらにこの機能を発展させたグラフィックイコライザー(通称グライコ)もありますね。アンプ内蔵では少ないのですが、周波数帯域を5バンド、7バンドなどと細かく分けて音質を調整することが可能です。
このほか「ラウドネスコントロール」という、夜間など小音量で聴く際の補正機能もあります。聴覚の特性上、どうしても低音と高い音のレベルが下がって聞こえてしまう。それを逆補正してバランスよく聞かせようという古くからある機能です。
■各種のフィルター(スクラッチフィルター、サブソニックフィルター)
フィルターとは不要な帯域をカットする機能。主にアナログ再生用の機能ですが、針のパチパチ音を目立たなくするのがスクラッチフィルター。つまりハイカットフィルターです。その逆にハウリングやモーターのゴロ音などをカットするローカット機能として、ランブルフィルターやサブソニックフィルターというものあります。いずれにせよ、ノイズといっしょに音楽信号もカットしてしまうので、功罪相半ばという感じですね。
■ソースダイレクト、CDダイレクト
「〜ダイレクト」というのは、トーンコントロールや各種のフィルターをすべてジャンプして、最短直結で音楽信号をスピーカーに送り届ける機能です。すべてのソースにこの機能をもたせたソースダイレクトや、とにかくCDの音をトコトンよくしようというCDダイレクトがあります。普通の使い方が渋滞でノロノロ運転の一般道路だとすれば、「〜ダイレクト」は高速道路のように爽快なスピード感の味わえるモードと言えるでしょう。
次回は「アンプのタイプには何がある?」を解説します。
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