前回までスピーカー編・アンプ編と解説してきました。今回からはさらに流れをさかのぼって、音の入口「光ディスク」とそのプレーヤーについてのお話です。CDが1982年に生まれてから、今年で26年。この間に色々な光ディスクの仲間が生まれました。映像付きのDVDや次世代音声といわるSACD、DVDオーディオなどです。同じ12センチの光ディスクでもフォーマットが違えば、プレーヤーによって再生できる/できないがありますね。それをスッキリ整理しようというのが、光ディスク編・第1回のテーマです。
■光ディスクの特徴
CDが生まれる以前は、アナログレコードの時代でした。アナログレコードは、溝に刻まれた音を針(ピックアップ)を使って読み取り、その再生針の振動を電気信号に変換します。CDを代表とする12センチの光ディスクは、これとは全てが対照的ですね。図にまとめましょう。
光とはレーザー光線です。細く絞ったレーザービームで盤上に刻まれた0、1のデジタル信号を読み取る。「レーザー」と「デジタル」というこの2つが先進的なイメージですね。CDが出始めの頃は、“ぴかぴかのデジタルサウンド”という言葉が随分流行りました。光ディスクに保存できるのは、デジタルであれば信号の内容は問いません。音声だけじゃなく映像も、コンピューター用のデジタルデータも何でもウェルカムなのです。
取扱いもアナログレコードよりずっと簡単です。汚れや少々のキズなら平気で、曲の頭出しやリピートに加え、順番どおり聴くことに飽きたら、シャッフルでランダムな曲順で楽しむことだってできます。音質、機能、操作性の三拍子そろったスグレモノといえますね。CDの仕組みや構造は次回以降でまた詳しく解説します。
■光ディスクの仲間たち
ここで12センチ光ディスクの仲間をまとめてドーンと紹介しましょう。「どれがどれだか区別がつかないよ〜」と困っている人はいませんか。見分けるポイントは「ロゴマーク」です。ケースやディスクそのものにも、必ずフォーマット(規格)のロゴが記載されることになっているので、よく見てくださいね。
光ディスクで現在主流となっているのはCD、SACD(スーパーオーディオCD)。そしてDVD、DVDオーディオの4つです。
まずコンパクトディスク、CDです。ステレオ2チャンネルのデジタルオーディオディスクとしておなじみですね。ソニーとフィリップスが共同開発した規格で、リニアPCM方式で音楽を収録しており、周波数レンジは20kHzです。ちなみにCDの記録時間は約80分。これはカラヤンの「第9」(約70分)がまるごと入るということから記録時間が決められた、という話もあります。
DVDはAVファンむけです。2時間の映画や音楽などの映像を入れ、音声はドルビーデジタル、DTSなどの圧縮音声を5.1チャンネルまで収録可能です。マルチチャンネル再生して楽しむにはAVアンプや沢山のスピーカーが必要ですね。もちろん、2チャンネル音声にダウンミックスして、2本のスピーカーで楽しむこともできますよ。
次は、SACDとDVDオーディオです。CDは収録できる高音域信号が20kHzまででしたが、SACDはこれを100kHzまで拡大しました。あわせてダイナミックレンジ(音の強弱)も大幅にアップ。自然音や音楽には含まれる高い周波数成分を、CDより多く収録することができます。どちらも5.1のマルチチャンネルに対応しますが、SACDの方がピュアオーディオ指向が強いのが特徴です。最近ではCDとのハイブリッドディスクが主流になってきました。これは一枚のディスクにSACD層とCD層を備えたものです。一方DVDオーディオはDVDのファミリーで、音楽だけではなく映像も観ることができます。
おやおや、遠くでBD(ブルーレイディク)さんが仲間に入れて欲しがってるけど、こちらは主に映像用の光ディスクですね。オーディオ講座である本講座では、残念ですが遠慮してもらいましょう。
■プレーヤーの選び方〜どのプレーヤーにどのディスクが再生できるのか
ソフト(ディスクフォーマット)の話は以上で分かりましたね。では再生するプレーヤーにはどんなタイプがあるのでしょうか。大きくわけて5タイプです。
これもパネルのロゴマークで見分けましょう。CDプレーヤーはCD専用のスタンダードなプレーヤー。SACDは専用プレーヤーというのはなくて、必ずCDもかかります。つまりSACD/CD兼用プレーヤーとなっている。とりあえずCDを聴いておいて、SACDソフトを購入したら、ちゃんとかかって楽しめるというものです。細かなことを言うと、同じSACD/CDプレーヤーでも、ステレオ専用モデルと5.1チャンネルマルチまで対応した製品とがあるのですが、これはまたのちほどの講座で詳しく解説しましょう。
さてDVDプレーヤーですが、これは映像付きのDVDとCDが再生できます。CDはすべての光ディスクプレーヤーで再生できるのが大原則だからです。ところがDVDプレーヤーでも、DVDオーディオのソフトが再生できない要注意。DVDオーディオソフトを楽しみたいなら、「DVDオーディオ」に対応したプレーヤーが必要なのです。
また同じ高品位オーディオでも、SACDとDVDオーディオは互換性がありませんから、それぞれ用のプレーヤーが必要ということは覚えておきたいですね。
最後に何でも来い!の「ユニバーサルプレーヤー」です。メンドーなことを言わず、SACDもDVDオーディオもオールOKよ、と言う、とても融通のきくプレーヤーなのです。すべてのロゴマークがずらっとならべてありますね。
さきほどCDとSACDはピュアオーディオ指向が強いと言いましたが、SACDプレーヤーとDVD(DVD-Audio)プレーヤーの違いは、映像回路の有無。DVD(DVD-Audio)プレーヤーとユニバーサルプレーヤーは、動画再生のためのビデオ回路を内蔵しているのです。背面の端子をみても、テレビにつなぐためのビデオ端子がついていますね。いま流行りのHDMI端子を備えたものもあります。CD/SACDプレーヤーにはそれがありません。
基本的なルールは以上お話したとおりですが、では実際にどのソフト(ディスクフォーマット)がどのプレーヤーで再生できるのか。縦横の表にまとめましょう。
例えばCDを聴くならどのプレーヤーでもよいので、〇(マル)が全部についていますね。SACDのソフトを聴きたいときは、SACD/CDプレーヤーかユニバーサルプレーヤーが〇(マル)。DVDオーディオソフトの場合は、DVDオーディオプレーヤーとユニバーサルプレーヤーが〇(マル)、というわけです。
融通がきくのがSACD/CDのハイブリッド盤です。これはSACDエリアとCDエリアもあるので、かけてみて「音がでないよ〜」というプレーヤーはありません。でもSACDエリアに収録された音を聞くには、当然SACD対応機が必要ですね。
一方、タイプ5のプレーヤーでは、それぞれ何のディスクがかけられるのでしょうか。いちいち説明しませんが、例えばDVDプレーヤーがあればDVDとCDのほか、ハイブリッドディスクのCDエリアが再生可能。SACD/CDプレーヤーは、映像回路がないのでDVDは見られませんが、ハイブリッドディスクをかけた場合はSACDかCDエリアかを選んで音を聴くことができるのです。あとは、表をみながら自分で確かめましょう。
■おまけ・最近多いパッケージのタイプ
最後にちょっと応用編です。近ごろはビジュアルのブームで、「CD+DVD」など異なるフォーマットをカップリングしたソフトが目立ちます。CDプレーヤーしかない場合、どうなるでしょうか。残念ながらDVDは見られせんが、ゆくゆくDVDプレーヤーやユニバーサルプレーヤーを買うまでの楽しみとしましょう。映像に興味がなければ、DVDがムダになるだけです。もちろん、DVDはパソコンで見るという手もありますね。
珍しい例として「CD+DVDオーディオ」のカップルもあります。ミキサーズ・ラボの「ビッグバンドステージ」で、オーディオマニアに人気の優秀録音盤です。これも同様で、手持ちのCDプレーヤーでまずCDの音を聞きます。のちのち予算にゆとりがでて5.1チャンネルの環境が整ったら、ユニバーサルプレーヤーを買い増して、その時点でDVDオーディオを楽しんでください。
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