■CDプレーヤーの基本構成
CDやSACDのディスクフォーマットの違いや仕組みはわかりましたね。今回はプレーヤー編といきましょう。まずCDプレーヤーの基本構成です。ふだん皆さんがCDを聴くとき、プレーヤーの中ってどうなってるのかな? と思うでしょう。また背面の端子にはアナログ出力とデジタル出力もあるけど、それぞれCDの信号をどんなふうな経路で処理しているのかも、よく分からないところなのではないでしょうか。それを思いきりシンプルに示したのが下の図です。
好きなCDを取り出してください。盤面は0、1のピット情報がびっしりと刻まれていますが、もちろんミクロン単位のものなので目には見えません。一方プレーヤーは、大きくわけてメカ部であるトランスポートと信号処理を行う回路ブロック、すなわちD/Aコンバーター部とに分かれます。普通の一体型プレーヤーではこれらがワンボディに納められているのです。
まずトランスポートは、ディスクを回転させレーザーピックアップで信号を読み取る役目をしています。トレイにのってプレーヤーの内部に引き込まれたディスクはしっかりと上下をクランプされ、所定のスピードで回転しますね。レーザーピックアップは下側にあります。細くしぼったレーザービームが光のペンのようにディスクの信号面に照射。まず最初に読み取るのが、TOC(トック:テーブル・オブ・コンテンツ)という、ディスク情報が書き込まれた「CDの目次」です。するとプレーヤーの方では「いま入っているのはCDだよ。演奏時間は58分31秒で曲数は12曲」だなんてことがわかります。間違ってSACDやDVDなんか入れたら、それは読めないディスクと判断してはきだす仕組みです。
実際はトランスポートには、正しく回転し信号を正確に読みとるように、さまざまなサーボ(制御)技術が入っていますよ。回転数を制御するスピンドルサーボに、ピントを合わせるフォーカスサーボ、コース外れをしないよう見張るトラッキングサーボなど、サーボ5人組といわれるものです。
次のD/Aコンバータはトランスポートからもらったデジタル信号を、元のアナログ音楽信号に変換して出力する役目。CDに記録され、ピックアップで読み取られたデジタル信号は、アナログのステレオ信号になってはじめて、アンプで増幅しスピーカーを鳴らすことができるわけです。
D/A変換するにはその前に波形を整えたり、余計な信号(サーボやエラー訂正:またのちほどお話します)から音になるデジタル信号だけを選び出したりする作業が必要ですが、簡単に言えば、D/Aコンバータを通ることで、アナログ2chの音楽信号が得られます。これがアナログ出力端子から出される信号です。
ではデジタル出力端子はどこから信号をひっぱるのでしょうか。そう、D/Aコンバーターを通らず、デジタル信号のままストレートに出力するのです。同軸デジタルと光デジタルの2タイプがありますが、扱う信号をSPDIF(ソニー・フィリップス・デジタルインターフェース)と呼ぶことも覚えましょう。CDなどのリニアPCM信号を伝送する形式をいうのです。エス・ピー・ディー・アイ・エフは、デジタルオーディオ機器ではしばしば出てくる端子ですよ。
■DAC(ダック)って何?
改めてD/Aコンバータの解説をしましょう。Digital to Analog Converterの略で、カッコよく「DAC(ダック)」と呼んだりしますね。
ところでD/AコンバーターはCDプレーヤーに内蔵されるだけではありません。この機能を取りだした単体のDACがオーディオファンに人気です。どんな感じの製品なのか、図を見てみましょう。
背面を見れば一目瞭然。デジタルで入力され、アナログのL/Rで出力される。ただそれだけです。フロントパネルもシンプルで、CD専用DACであればサンプリング周波数は44.1kHzのみですから、その切り替えスイッチさえありませんね。少し多機能なモデルだと、32kHz/44.1kHz/48kHzの3ポジションを備えたり(32k、48kはBS放送の音声やデジタルオーディオテープのDATなどです)、さらにサンプリング周波数を高めたアップサンプリング機能なども装備。超マニア用としては、外部の精密なクロック信号で駆動できるクロック入力端子までも備えています。こういった機能は、エソテリックなど超高級なCDプレーヤーにもありましたね。ここではあまり深追いしませんが、そういった製品もあることは知っていてよいでしょう。
ところで、D/Aコンバータをどういったときに使うかですが、実はふたつのケースがあげられます。ひとつは手持ちの一体型プレーヤーが古くなった場合。もうひとつが、トランスポートとDACを別々に用意し、徹底的に音をつきつめたい場合です。
初心者におすすめなのが前者です。DACは半導体チップなので世代交代があり、どんどん新しい技術が出てきますね。それに比べてメカの方は半導体よりも長い期間、性能を保つことができます。であれば古い技術になってしまったDACを新調しようというわけです。DACは3万円前後からあり、使ってみると意外なほど音がリフレッシュされますよ。
ここで一体型プレーヤーと、セパレート型のメリット・デメリットを比べてみましょう。プレーヤーの形態としてポピュラーなスタイルの一体型は、入門機から百万円以上の製品まで幅の広い価格の製品が揃っています。接続が簡単で場所をとらないなどがメリット。近ごろはSACD/CDプレーヤーが増えていますよ。
一方トランスポートとDAC部を分離したのがセパレート型です。マニアむけに特化してとことん音を磨きあげようとういうスタンス。製品数は、特にトランスポートが少なくDACの方も以前ほどバラエティに富む品揃えが難しくなってきています。もともとはプロの世界からきたもの。一体型プレーヤーの精度や完成度が高まったことが理由といえるでしょう。トランスポートとDAC間の接続が必要だったり、場所をとるなどの問題もあります。また一般にはCD専用というケースがほとんどで、SACDはそのメーカー独自のリンク(例えばデノンリンク)が必要だったりします。
ではSACD/CDプレーヤーの中身は、一般のCDプレーヤーとどのように違うのでしょうか。ズバリ図4をご覧ください。ごくごく大ざっぱなものですが、大きく異なるのがピックアップとデジタル処理回路です。
CD専用機であれば、レーザーピックアップもCD用の780ナノでよかったのですが、もうひとつSACD用の短波長(650ナノ)ピックアップが必要です。回路では、CD専用プレーヤはDACなどすべて、マルチビットのリニアPCM処理でしたね。これももう一系統SACDのDSD信号を扱うべく、それ用の処理回路がダブルで必要。つまりピックアップと処理回路を2系統積んでますよ、ということ。もちろん電源回路その他は共通で、出力端子についても、同軸/光デジタルとアナログのL/Rを備えていますよ。
このSACD/CDプレーヤーで、CDを読み込んだときは、図の「赤」の系統で信号が流れます。SACDソフトなら「青」の流れです。ハイブリッドディスクをかけると、普通はSACDエリアを優先して読みにいくので、あれこれ迷うことはありません。音比べでCDエリアを聴くような場合は、ディスクを一旦停止して、そこでSACD/CDの切り替えキーを操作しましょう。
次回はもう一歩深めて端子の話と繋ぎ方です。
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