■CDプレーヤーの端子ととのつなぎ方
さあ今回は実践的な話で、光ディスクプレーヤーの端子とそのつなぎ方についてです。CDプレーヤーやSACDプレーヤーの内部の仕組みは前回学んだので、ディスクの情報を読み取ってから出力するまでの流れはわかりましたね。
早速CDプレーヤーから、背面端子を覗いてみましょう。
プレーヤーなので色々な機能を持ったアンプとは違い、シンプルそのものですね。図1のようにアナログ出力と、デジタル出力については同軸と光の2系統を持つタイプがポピュラーです。通常使うのは、アナログ出力の方です。読み取ったCDのデジタル情報はプレーヤーの内部でA/D変換され、もとのアナログ音楽信号としてこの端子から出てきますから、そのままRCAのピンケーブル(ラインケーブル)で、アンプのCD入力につないであげれば良いのです。
出力レベルは一定(ラインレベルにて規定)で、ボリュームはアンプ側での操作になりますが、中には出力レベル付きの端子を持つ製品もありますよ。さらに端子の形も通常のアンバランス型とは別に、XLRのバランス出力を装備している場合もあります。これはよりノイズに強いバランス伝送が可能です。アンプまでの距離が遠い場合などに有利ですね。
一方デジタル出力の方はどうでしょう。同軸はCOAX.(コアキシャル)、光の方はOPT.(オプティカル)などと記載されています。いずれもD/Aコンバータの前から、0、1のデジタル情報のまま取り出すのですが、このままアンプにつなぐことはできません。オーディオアンプにはデジタル入力がないからです。前回も話したとおり、これは外部に単体のD/Aコンバーターをつなぎ、アナログ音声に直してからアンプのライン入力端子などにインプットすれば良いのです。
図1ではCD入力とライン入力に、CDプレーヤーからの2種類の信号をつないでいます。内部DACの音が良いのか、それとも外部に追加した専用DACのクオリティが高いのかによって、2種類の音の違いを味わうのもオーディオの趣味のひとつ。プレーヤーが古くなったなと思ったら、このようなトライをお勧めします。
■なぜデジタルケーブルは1本でステレオ信号が伝送できるのか?
ところで、アナログ伝送ではL/Rという2本のケーブルでステレオ信号を送るのに、なぜデジタル伝送の場合にはケーブル1本で済むのでしょうか。「そりゃデジタルからだよ!」では答えになりません。
図2を見てみましょう。
実際に音楽を聞いていると、左と右とでは楽器の位置や音そのものが違って聞こえる。だからステレオなのですが、L/Rの波形は当然異なっていますね。同じ波形ならモノラルになってしまいますし、左右の接続を間違えたら、LチャンネルとRチャンネルとが入れかわってしまいますね。このように左右の独立した音声を別々のケーブルで送るのが、アナログ伝送の大原則なのです。
デジタル伝送の場合は、もとのアナログ波形をサンプリングという処理によって、左右別々に、トビトビの情報としてピックアップしているのです。その際LとRをそれぞれ「1、2、3、4……」とピックアップするのじゃなく、図の上下(LとR)を交互にスイッチングするように拾い出す。「L1、R2、L3、R4、L5……」といった具合です。
この交互のデジタル信号はケーブル内を図のように、「L、R、L、R……」と仲良く交互に並んで伝わっていき、最後にD/A変換される際に「L、君たちは左だよ、R、君たちは右だよ!」という感じで、正しくチャンネル配分されてステレオ再生するのです。デジタル伝送のもとになるサンプリングについては、また次回に詳しく解説します。
■SACDのサラウンド音声を楽しむためのつなぎ方
次にSACDプレーヤーです。CD/SACDプレーヤーでも、2ch専用モデルであれば、CD専用プレーヤーの場合と基本な端子や接続方法は同じです。問題はSACDのマルチチャンネル再生のできる、5.1ch対応プレーヤーの場合です。
図3にその背面端子例を示しました。
ここで注意したいのは、アナログの出力端子が、ステレオ用のL/Rと、マルチチャンネル出力との2系統になっている点です。通常のステレオアンプで2ch再生をするだけならば、5.1ch出力に何にもつなぐ必要はないのですが、せっかくSACDのマルチに対応するプレーヤーなら、ここはぜひ5.1chのサラウンド再生に挑戦したいもの。
アナログ5.1ch出力端子をご覧ください。RCAのピン端子がずらっと6つ並んでいますね。フロントのL/Rとセンター、それにサラウンド用がL/R。最後にサブウーファーチャンネルのあわせて6チャンネルとなります。SACDのフォーマットでは、100kHzまでの高帯域信号がサブウーファーを除く5本のスピーカーへ送り出されます。サブウーファーへは100〜120Hzの超低域信号のみが出力される。これはホームシアターなどのマルチチャンネル再生と同様ですが、SACDはあくまで音楽再生なので、全てのディスクが5.1chとは限りません。サブウーファー信号を省いた5.0chや、センターなしの4.0chなど、色々なパターンがありますよ。
ではアンプをどうするかですが、ホームシアターを楽しんでいる人なら簡単です。AVアンプと5.1chのスピーカーが用意されているので、プレーヤーとAVアンプのアナログマルチ端子同士を6本のピンケーブルでつなぐだけ。本数が多いので接続ミスには注意が必要です。ステレオ用の同じケーブルを3組用意して接続しましょう。
でもケーブルを6本なんて大変だなあ。デジタル1本で簡単につなげないのでしょうか。できます!ちょっと条件付きではあるのですが、i.LinkやHDMI端子での接続、さらに同じメーカー間のローカルなインターフェースとして、デノンのデノンリンクやアキュフェーズのHSリンクなどを使う方法です。これは自社製のDACとのやり取りをデジタルで行うもので、ハイエンドファンむけです。「条件付き」というのは、HDMIはver.2以上で、i.Linkの場合はすべてのi.Link機器どうしでOKというわけじゃなく、事前に確認が必要だったりします。
というわけで一般的にお勧めなのは、アナログの5.1ch。デジタル伝送は、AV用ということを承知の上でHDMIで行うのがベターでしょう。最新のAVアンプはver.1.3が多いので、問題なくSACDマルチの高音質が楽しめるはずです。またプレーヤーについては、SACDマルチも映像付きソース(DVD)もこなすユニバーサルプレーヤーでもOK。この場合はピュアダイレクトなど映像OFFの機能で、純度の高いサウンドが得られるでしょう。
■SACDマルチのスピーカー配置〜ITU−R配置(サークル配置)
最後にSACDマルチでの、スピーカー配置の研究です。大ざっぱに言ってしまえばホームシアターのシステムをそのまま使えばOKということですが、実はSACDの場合はある決めごとがあるのです。ITU−R配置って聞いたことがありますか? ITUとは国際電気通信連合。そこで推奨するのは、別名「サークル配置」とも呼ばれる図4の上の図のようなものです。
一般のAV配置が長方形の部屋の四隅を基本にスピーカーを並べるのに対して、ITU−R配置ではコンパスで円を描くように。リスナーから各チャンネルへの距離をイコールにとります。さらに正面からみた各スピーカーの開き角まで、センターとフロントL/Rとは各30度。リアについは各100〜120度となるよう規定されています。
実際にはフロントの3本が近く、リアがぐっと広がっている感じ。設置場所が限られる家庭ではちょっと実現しにくい配置ですが、これはSACDの制作現場の配置なので、無理にあわせることもないのです(でも知識は必要ですよ)。ホームシアターとの兼用で良く、AVアンプの自動音場補正を使ってきちんと調整をすれば、十分にSACDらしい自然な包囲感が得られるはずです。
次回はサンプリング周波数と量子化ビット数、クロックなどについてじっくり解説しましょう。
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