パソコンで音楽を聴くメリットは前回お話しました。具体的にはCDの音をパソコンに取り込んだり、インターネットで音楽を購入し、携帯プレーヤーで持ち歩けるといった内容でしたね。今回はもう一歩踏み込んで、どんな方法で行われるのか見てみましょう。
■「メディアプレーヤー」を使いこなそう
基本中の基本は、「メディアプレーヤー」の活用です。windowsで音楽や映画、アニメなどの動画コンテンツを楽しむためのソフトとしてお馴染みですね。大概のwindowsのパソコンにプリインストールされています。それに、「メディアプレーヤー」を使えば、例えば音楽CDの保存というのも、ディスクをセットするだけといってよい手軽さで簡単にコピーが可能。「CDから音楽を取り込む」を選び、「OK」ボタンをクリックするだけです。CDだけでなく、レコードやテープなどのアナログ音源も、PC対応の機器を使用すればデジタル化して保存・整理ができますよ。
さて、ネットから音源を手に入れるにはどうするのでしょうか。これも「メディアプレーヤー」から、
mora winや
OnGen、
listenJapan、
HMV DIGITAL、
e-onkyo musicなど、多くのオンラインストアにアクセスができます。購入したい楽曲を探すにはキーワードからの検索とアーティストのリストから選ぶ方法とがあり、購入前に楽曲の一部試聴もできたりするので安心。支払いはクレジットカードが一般的です。
DAPへの転送ですが、これも「メディアプレーヤー」のようなパソコンで音楽を管理するためのソフトがあると便利ですね。でもDAPのすべてが「メディアプレーヤー」でOKかというと、そうではなく、例えばiPodなら「iTunes」という専用ソフトが必要ですし、パナソニックのD-snapシリーズであれば「SD-Jukebox」。ソニーのウォークマンの場合は「SonicStage」というように、それぞれ対応ソフトが異なるのです。
ところであなたの手持ちのDAPは、ハードディスク型、フラッシュメモリー型のどちらでしょうか?持ち運べる曲数、つまり記録容量をとるか、ネックレスのように首からぶらさげて使える小型軽量さをとるかで、メリットとデメリットが分かれますね。例えばフラッシュメモリー型の2GBだと、1曲4分として500曲くらいはOKですが、40GBのハードディスク型なら余裕の1万曲!こうなるとまさに携帯ジュークボックスで、パソコンの音楽(家中の音楽)をすべて持ち歩ける感じですね。一方、フラッシュメモリーはメカ部がなく、振動に強いのもメリット。また、USB接続でパソコンからデータ転送する場合も、本体ごとサクっとさして使えたりするので便利です
■携帯音楽プレーヤーの(メモリーオーディオ)の記録・再生の仕組み
そんな携帯プレーヤーの内部の仕組みは、どうなっているのでしょう。
大体のイメージは図のとおりです。これはメモリーカード(半導体メモリー)に圧縮・転送された音楽データが、プレーヤーの中でどのように処理され、イヤホンやヘッドホンで音楽として聴けるのかを示しています。
ここで「圧縮・暗号化された音楽信号」とあるのは、オンラインストアで販売される楽曲の多くが、著作権保護のための暗号がかけられているからです。これはDRM(デジタル・ライツ・マネージメント)というもの。具体的な実装形態はさまざまで、メモリーカードなどの記録媒体に内蔵されたり、音声や動画のプレーヤーソフトやファイルの送受信・転送ソフトにもかけられてますよ。
暗号の解読とあわせて、圧縮された音楽データの伸張を行い、元に戻ったデジタル音楽信号を最後にD/A変換してアナログに直すという仕組み。ヘッドホンアンプも内蔵していますし、あの小さなボディでこれだけの働きをするのはエライと思いませんか。
■USB DAC(USBオーディオインターフェース)について
さて、パソコンでCDやMP3など圧縮系の音楽を再生していて、もっといい音で聴けたらなあとは思いませんか?内蔵のスピーカーが小さいこともあるのですが、それだけならアナログ出力で外部のアンプ/スピーカーを鳴らせばよいはずですね。でもやっぱりシャカシャカとした薄っぺらな聞こえ方なのです。パソコンを使って高音質な音楽を聴くために有効な、近ごろ話題のUSB-DAC(ユーエスビー・ダック)をご紹介しましょう。
パソコンの音が悪い理由は、ずばり内部で発生するさまざまな輻射ノイズにあります。内部はデジタルノイズの嵐といってよいでしょう。もともとオーディオ機器ではないパソコンには無理な注文ですが、もし不要輻射の影響のない出力の仕方ができたりハイクオリティなDACが使えれば、PCサウンドが一変するはずですね。それが話題のUSB接続というもの。
図の一般的なアナログ接続と、USB接続とを見比べると一目瞭然。アナログ出力の場合には、PC内部のチープなDACを使いノイズで汚れた音楽信号しか取り出せませんでした。そのDACの前から、直接デジタル信号のまま出力してしまうのがUSB接続です。ノイズの影響を受けず、しかも高級なUSBインターフェース内蔵のDACをふんだんに使うことができるので、そのままホームオーディオで聴いても、グッと高音質になるわけです。
PCサウンドの救世主ともいえるUSB-DACは、内外の各メーカーら発売されていますよ。海外はPS AUDIOやベルカントなどが、ハイエンドユーザーに人気ですね。電源にこだわったり(PCからの電源供給に頼らない)、同軸/光デジタル出力まで備えた高級仕様。「これがパソコンの音か!」とビックリするはずです。
USBオーディオのメリットは、もちろんiPodなどの携帯プレーヤーでも享受できます。USB対応ステレオ製品は珍しいものではなく、1万円前後のUSBオーディオプロセッサー(オンキヨーのWAVIO SE-U33GX+Jなど)や、アナログレコード用のフォノイコライザー内蔵タイプも発売されています。時代のニーズに合わせてオーディオの裾野が広がっていくのはよいことですね。
■高音質音楽配時代来たる!
USBオーディオと並び、注目を集めているのが高音質配信です。これまではMP3に代表される圧縮音源で、平均128kbps程度のビットレートでしたね。どれだけ小さくなるかは1秒あたりのデータ量で決まり、圧縮なしで記録するWAVE(ウェーブ)形式に比べて、1/10程度でした。
高音質で録るなら、32kbpsや64kbpsじゃなく128kbps以上、192kbpsといった高いビットレートがおすすめ……というのがこれまでだとすれば、いまやCDをしのぐ大容量&高音質音楽配信の時代です。96kHz/24bitでジャズやクラシックの名演をじっくりと楽しませるe-onkyo music(日)やMusic Giants(米)、リンレコード(英)といった内外の高音質音楽サイトに注目しましょう。
高音質音楽サイトでの技術的な話題といえば、ロスレスコーデックでしょう。WMA LosslessやWindows Media Audioなどのロスレスフォーマットがその代表で、圧縮系の非可逆変換(圧縮後のデータが元データと同じに戻らない)とは違い、データロスが殆どないものです。ビットレートは最大8Mbpsといいますから、従来のざっと40倍以上。これは聴き応えがありますよ。ブロードバンド環境にあるのであれば、ぜひトライすべきでしょう。
というわけで、手軽な携帯音楽プレーヤーからPCを含めた高音質化のノウハウ(USB-DACの活用)、高音質サイトの話題など色々と解説してきました。新しいカテゴリーの製品として、キーボードやUSB付きのオンキヨー/HDオーディオコンピュータや、iPodからデジタル出力できるWadiaの170i Transport(
製品データベース)も登場。生録ファンには、ステレオマイクを備えたポータブル型のリニアPCMレコーダーから目が離せませんね。これはまた録音機のところで触れましょう。
次回からはテーマを改め、アナログ再生について基礎からやさしく解説します。
参考文献:
500円でわかる「パソコンで音楽!」簡単、便利、自由に聴こう!
出版:学研
ISBN:978-4-05-604829-2
¥525(税込)
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「林 正儀のオーディオ講座」記事一覧はこちら
http://www.phileweb.com/magazine/audio-course/archives/summary.html