アナログファンにとって大切なのは、愛用のプレーヤーやアナログディスクをいつまでもベストのコンディションに保つことです。CDよりもずっと繊細な気配りが必要なアナログだからこそ、定期的なクリーニングやメンテナンスが大切というもの。ではプレーヤーのどの箇所をクリーニング&メンテすればよいのでしょうか。図にまとまてみました。
手軽なところで、まずダストカバーとキャビネットの掃除です。空中に舞うチリやホコリが、いつの間にか積もって白くなっていませんか。指で拭けば一目瞭然。タバコのヤニや油分が付着していることもあるでしょう。このように目に見えるとことからきれいにする習慣が大切で、固く絞ったやわらかい布などで拭きとります。
次はターンテーブルマットです。大切なレコードをのせる部分だけに、そこにホコリが付着していればレコード盤そのものもホコリ攻撃にみまわれてしまいます。布やウエットティッシュできれいに拭いておきたいものです。
プレーヤーをいつもきれいにしておくことはアナログファンのマナーでもあり、ハイクオリティな再生につながるのですよ。
さあ、ここからが本番ですよ。レコード盤そのものと音溝をトレースする針先(カートリッジ部分)、そしてたくさんの接点をもつトーンアームも大切なお掃除ポイント。トーンアームから見ていきましょう。
この図はカートリッジで拾った微細なアナログ信号が、どのような経路でアンプまで導かれるのか。その流れを示していますね。大変だなあと思うでしょう。シェルに取りつけられたカートリッジから4本のリードチップ、そしてトーンアームの内部配線へと信号が流れていき、アームの出口で今度は5ピン − RCAのフォノケールへと引き渡されるのです。そのあとはご覧のとおりで、上流から下流まで何と「7つの接点」が待ち受ける!
その一ヵ所でも汚れや不具合による接触不良などによる不具合があれば、雑音にさらされたり、最悪、音が出ないなど、正しいアナログ再生ができないわけです。これだけでもCDプレーヤーの手軽さとは段違いであることがわかるでしょう。
必要以上に神経質になる必要はありませんが、できれば定期的にこれらの箇所の掃除ををしてあげましょう。中でも日々のメンテナンスとして大切なのが、アームの先端にあるカートリッジです。
カートリッジのクリーニングというと針先用のスタイラスクリーナーがまずあげられますね。でもその前にまず接点磨きから……。
シェルごとアームから抜いて、接合部を見ましょう。4本のピンが汚れてはいませんか。これは図のようにきれいな布を敷き、軽く擦るようにしてクリーニングします。頑固な油汚れの場合は接点クリーナーの併用がオススメです。これは液自体に洗浄効果や接点復活の効果があり、アンプなどの接点用のものがそのまま使えますよ。トーンアーム側の接合部も綿棒できれいに掃除しましょう。
■針先(スタイラス)のクリーニング
さて問題の針先です。スタイラスに少しでも繊維のような糸クズが着いていると、それだけでピリピリというノイズが出たり音が歪んで聞こえますね。もともと盤に付着していたものが、音溝をトレースすることによってスタイラス側にからみついたり、様々な汚れがこびりつくることもあるのです。でも安易に指先で取り払おうとしてはダメ。針を傷めてしまっては困りますね。
日ごろの備えとして、必ずスタイラスクリーナーを用意しましょう。これにも乾式と湿式の2タイプがあります。乾式はブラシなどで糸クズのよう大きなゴミを取るのに便利。一方湿式の方はクリーニング液付きで、針先に固く付着した汚れを溶かして除去します。オーディオテクニカの
AT607なら蓋にブラシが固定されているのでお手軽です。
作業はシェルをトーンアームに取りつけたままでもOKですが、外して行った方が初心者にはやりやすいでしょう。ひとつだけ注意すべきポイントがあります。それはブラシを動かす方向で、「針元から先にむかって」そっと拭くようにすること。「必ずレコードの進行方向にそって」と覚えましょう。逆なでは御法度、往復運動もイケマせんゾ!また湿式の場合は、完全に液が乾いてから演奏するよう注意してください。針先が十分乾燥する前に演奏すると、砥石のような作用をしてレコードを痛めることがあります。
またあれば便利なのが、針先を見るミラーやルーペです。ミラー付きのブラシになっているタイプもあります。これがあれば、アームについた状態のまま汚れ具合や針先のコンディションがチェックでき鬼に金棒です。
■レコード盤のクリーニング
最後は大切なレコード盤のメンテナンスです。保存や取扱いのことをまずお話すると、日の当たるところや湿気のあるところを避けるのはもちろんですが、必ず立ててレコード棚(またはケース)などに置くようにします。横に重ねたり、斜めにしてはいませんか?それは反ったり盤を傷めるもとですよ!
またレコードをかけるときの持ち方も、初心者はわからないでしょう。盤面を直接手で触ってはいけません。指紋などの汚れがついたりすり傷のもと。手の油や垢がバクテリアの栄養分となってカビが生える原因になるのです。両手で盤の左右を持ち、そのまま静かにターンテーブルに乗せましょう。(B面をかけたいときは、そのままくるりと半回転させればよいのです)。そのときの注意としては、センタースピンドルをねらって迷わずセットします。レコード愛好家は、ヒゲとよばれる擦りキズなどつけないことが自慢ですよ。
ときどきは盤面のクリーニングをしてみましょう。レコードクリーナーは、ベルベットを貼ったもの(やはり乾式と湿式がある)が一般的ですが、ほかにもアームタイプのものや粘着ローラー式など色々あります。いずれにしても、デリケートな盤面に触れるわけですから、細心の注意が必要ですね。ディスクをターンテーブルに乗せ、やさしくやさしく拭くように……。ゴシゴシやってはいけません。かといって、ターンテーブルの回転にまかせてただクリーナーを当てておくだけでは、不十分。必ず手作業で行うことです。
先ほどの針先のクリーニングで拭く方向があったように、アナログレコードでも約束ごとがあります。「溝にそって」大きな円を描くような感じで拭きましょう。そう、CDが中心から放射状に拭くのがセオリーだったのとは対照的ですね。アナログ盤でこれをやってしまうと、ホコリが取れないばかりか、溝にキズをつけかねません。気をつけましょう。
それでも拭き残しはありますが、何回か繰りかえすうちにホコリが少なくなってくることがわかりますよ。きれいになった盤面は気持ちがよいものです。パチパチノイズや何となく歪みっぽいなあという感じがなくなり、高音質がよみがえるはずです。
また冬の乾燥した季節につき物なのが、帯電です。ビニールのレコード盤は帯電しやすく、これがチリやホコリを吸いつけて再生音を劣化させますね。できれば帯電防止スプレーなども常備したいものです。
というわけで、アナログ最終回の今回は、アナログレコード再生のたのめ各種アクセサリーを紹介しつ、クリーニングのノウハウを伝授してきました。
次回は「放送&録音編」で、FMやAMなど各種放送の仕組みやPCMラジオ、インターネットラジオの話題です。
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