テレビが急加速しながら多機能化している。薄型テレビの差別化は「高画質・大画面・付加機能」の3本柱だが、そのうち画質と画面サイズはパネルの違いで決まるところが大きいが、付加機能については各社がそれぞれの工夫により個性的な機能を開発し、利便性を高めている。ユーザーの側としては、画質・画面サイズの魅力だけでなく付加機能に優れる製品を選ぶことができれば、購入してからのテレビライフが一層と豊かになるというものだ。この付加機能については、低価格の普及機から高画質モデルまで、薄型テレビを選ぶ際の重要なファクターだと筆者は考えている。
今夏モデルに搭載される付加機能は大きく分けて2種類ある。まずはHDMI接続による連係機能により、他のAV機器を操作するリンク機能だ。パナソニックの“VIERA Link”やシャープの“AQUOSファミリンク”など、テレビのリモコンで、本機能に対応するレコーダーやサラウンド機器が操作できるというものだ。これは新しい機能を追加提案するというよりも、操作を簡単にすることに主眼を置いた機能だ。例えばテレビのリモコンでレコーダーを操作して録画再生をシームレスで行うことができる。AV機器の操作を苦手とするユーザーには好評だが、テレビ側にHDDを内蔵して簡易な操作を実現するというアプローチもある。
もう一つはLANなどのネットワークを使った機能がある。テレビからインターネットへ接続したり、LAN経由で対応するレコーダーに録画した映像を再生することができる。筆者が注目しているのはこのテレビが備えるネットワーク機能だ。なかでもDLNA機能を使って別室に設置したレコーダーの映像を離れた部屋で楽しむという使い方だ。さらにテレビ向けのインターネットポータルサービス「アクトビラ」に対応する機種も増えてきた。今回はテレビが備えるネットワーク機能に注目し、多彩なネットワーク機能を備えるソニーの“BRAVIA”「KDL-26J3000」を使って検証してみたい。
【ソニールームリンク】
ソニールームリンク(以下ルームリンク)はホームネットワークの共通規格DLNAに準拠したネットワーク機能。ソニーの製品だけでなく、DLNAに対応した製品であればLAN経由で情報を共有できる。例えばLAN上にDLNA対応のレコーダーがあれば、録画番組をネットワーク上のテレビから呼び出して視聴が楽しめる。
【アプリキャスト】
テレビ番組とインターネットの情報を同時に表示して、テレビ&ネットの“ながら見”を実現する機能。コンテンツはアプリと呼ばれるパッケージになっており、小画面でも見やすいよう情報が整理されているのが特徴。コンテンツはアプリキャスト専用で、ちょうど携帯電話で言うところのiモードのアプリのように楽しめる。例えば占い、ニュース、ヤフーオークションの出品物チェックなどのサービスが揃う。さらに詳しい情報を知りたい場合は、フルサイズのWebページにもアクセスして表示できる。現時点ではまだコンテンツの数が少ないが、今後は拡充が予定されているという。
【アクトビラ】
テレビ専用のポータルサイト「アクトビラ」に対応。アプリキャストがソニー独自のサービスなのに対して、アクトビラはパナソニック、シャープ、東芝など家電メーカー各社のテレビでも利用可能なサービスだ。通常のWebコンテンツよりもテレビで利用しやすく、リモコンでの直感的な操作が可能な親和性の高いレイアウトになっている。
このようにKDL-26J3000にはルームリンク、アプリキャスト、アクトビラという3種類のネットワーク機能が備わっている。中でも今回、筆者が最も注目したのがルームリンク機能だ。筆者の自宅リビングには、ソニーのBDレコーダー「BDZ-V9」が設置してある。KDL-26J3000を仕事部屋に設置すれば、ルームリンクを使うことでBDZ-V9に録画した番組を仕事部屋でも視聴できるだろうと考えた。またKDL-26J3000をリビングに設置すれば仕事場のパソコンに保存したMPEG動画をリビングで楽しめるのだ。これはかなり便利だろう。
筆者はWOWOWに加入しており、BDZ-V9を使って番組の録画・視聴を行っている。今では保存するまでもない番組を他の部屋で見る場合、一度DVDに記録した後に別部屋のプレーヤーで再生していた。しかしルームリンクを使えばダビングをしなくても仕事部屋でBDZ-V9の録画番組が楽しめるのだ。
TVパソコンユーザーなら、自室のパソコンに録画した番組を、デスクトップだけでなくリビングでもくつろぎながら楽しみたいと思うこともあるだろう。ルームリンクを使えばそんな使い方も夢ではなくなる。LAN接続環境さえあれば実現できるので、面倒な配線は不要だ。実際の使いごこちをご紹介しよう。
実際にアプリキャストを使ってみるとその便利さに改めて驚かされた。テレビが単体で置いてある部屋でも、まるでHDD内蔵テレビのように録画番組を楽しめるのはとても快適だった。BDZ-V9は著作権保護に対応したDTCP-IP規格に対応しているので、デジタル放送のハイビジョン番組をそのままの画質でネットワーク上で視聴できる。この機能によりWOWOWのデジタル放送番組のコンテンツをBDZ-V9に録り、KDL-26J3000で楽しむという使い方も可能だった。
BDZ-V9で録画を行っている最中でも、録画済み番組をルームリンクで楽しめることも非常に便利だと感じた。ルームリンクはDLNA規格なので、同様の機能を備えるテレビでも同じような快適操作を実現できるだろう。
一方で使っていて気になったこともある。今回東芝のレコーダー「RD-A600」も接続したが、ネットワーク上で認識はするものの、録画済番組の再生はできなかった。RD-A600もDTCP-IP規格に対応している製品なので、本来であればBDZ-V9と同様にネットワーク経由での動画再生が可能だと思ったのだが、今回のテストでは実現しなかった。本件の詳細については引き続き調査を進めるので、次回以降の本コラムで続報をお伝えするつもりだ。
【お詫びと訂正】記事掲載後、改めてテスト環境を確認したところRD-A600のLANケーブルが外れていたことが判明しました。テストはもう一台接続していたRD-S600を筆者が勘違いして操作しその使用感を記事化してしまいました。RD-S600はDTCP-IP規格に対応していないので、DLNA経由してのデジタル放送番組の再生ができませんでした。改めてRD-A600を接続し確認したところ録画したハイビジョン番組を再生できました。操作感はBDZ-V6と同じく快適であることを付け加えさせていただきます。
これからは一般の家庭でも複数のレコーダーを設置する機会が増えそうだ。その際、テレビの側にルームリンクのようなDLNA機能が備わっていれば、録画番組の共有が簡単にできて便利だろう。テレビの付加機能としては最も重要視したい機能の一つだと実感できた。
次回はアプリキャストとアクトビラの使い勝手を検証しようと思う。ご期待いただきたい。
−次号の掲載は9月11日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−