前回に引き続きパナソニックの録画機能付テレビ、ビエラ“PZR900シリーズ”をチェックしよう。本編に入る前にこの録画機能付きテレビという表現がしっくりこないので、誰かが格好いい呼び方を思いつくまで筆者はこの製品ジャンルを“レコーダーテレビ”と本コラムでは呼びたいと思う。
前回はテレビ本体の録画機能に注目し、操作感などを紹介した。今回はテレビのHDDに録画した番組を、同社のBDレコーダー“DIGA”につないでHDDにダビングし、その後BDやDVDに保存する方法をご紹介したい。今回はディーガシリーズのフラッグシップモデル「DMR-BW930」をテストに使用することにした。PZR900シリーズに録りためたコンテンツを、i.Link接続でレコーダーのHDDに移せる機能には以下ご覧の“DIGA”各機種が対応している。
【対応機種】
DMR-BW930/BW830/BW730、BW900/BW800/BW700/BW200、XW300/XW100/XW200V、XW51/XW31/XW41V、XW120/XW320
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本機能は、今冬の薄型テレビで筆者が注目するPZR900シリーズの中でも一番魅力を感じている機能なので、じっくりと使い勝手を検証してみたいと思う。
テレビとレコーダーの接続だが、映像と音声は通常通りHDMIケーブルで接続する。ダビング用にはi.Linkケーブルを使って接続しよう。レコーダー側は最新モデルでなくても対応機種があるのがうれしい。接続の準備はこれだけだ。
接続を終えたら次はレコーダー側の設定を行う。マニュアルを確認しながらであれば、迷わず設定できるだろう。PZR900シリーズのHDDからレコーダーへのダビング操作は簡単だった。PZR900シリーズの録画リストからダビングしたい番組を選んで、サブメニューを開きダビングを選べば操作は完了だ。ただ、ダビング中はテレビ、レコーダーの双方で録画ができないので、あらかじめ録画予約の状況を確認しておきたい。ちなみにダビングには実時間がかかってしまうため、2時間の映画ならその間は録画ができないことになる。
PZR900シリーズとDMR-BW930を使ってみて、あらためて“レコーダーテレビ”の便利さと、光ディスクとの連携がいかに快適かを実感できた。今回テストに使った番組は何気なくテスト用に録画したのだが、再生してみるとかわいいエゾモモンガのドキュメントだった。たぶんNHKのドキュメンタリー番組「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」の編集版だと思うが、エゾモモンガの愛くるしい仕草が短くまとまっており、つい保存したくなる番組だった。
おそらく多くの“レコーダーテレビ”のユーザーは、「見たら消す番組を録画する」という用途がほとんどだろう。筆者も保存版はレコーダー、タイムシフト視聴は“レコーダーテレビ”というように使い分けている。
「メモ代りの録画だから」と高をくくっていても、“レコーダーテレビ”で録画した番組の中で「消したくない番組」に出会ってしまうことがある。これが厄介だ。これまでの“レコーダーテレビ”だと、東芝のREGZAは最新モデルが同社のDVDレコーダーVARDIAへダビングできるが、無劣化ではない。日立のWoooシリーズはiVDRという特殊なHDDにハイビジョンを無劣化で記録できるが、コストはBDメディアよりもかかってしまう。ご存じのとおりBDならまとめ買いをすれば、片面1層の25GBが1枚300円を切る価格で手に入る。1GBあたりの単価で比べるとかなりDVDに近づいている。メディアの価格と容量を考えると、やはりハイビジョン記録はBDだろう。
“レコーダーテレビ”を使うメリットは他にもある。WOWOWや110度CSなどのデジタル放送の有料放送は、個別のB-CASカードで契約をする。だから一般的にはテレビではなく、録画できるレコーダーにセットしたB-CASカードで契約するはずだ。レコーダーで契約すると録画は便利だが、有料放送を視聴するためにはテレビの入力切り替えが必要になり、チャンネル切替えにレコーダーのリモコンが欠かせない。これがかなり不便だ。AV機器の操作になれていれば苦はないが、そうでない場合は有料放送は手軽に楽しめないだろう。
一方で、“レコーダーテレビ”で有料放送を契約し、楽しめる環境を整えればテレビのリモコンだけで一般放送も有料放送もシームレスで楽しめ、多くの方々が多チャンネルの恩恵に預かれるはずだ。必要ならばテレビで録画して、BDレコーダーにダビングすれば長期保存も可能だ。やはり録画ファンなら、レコーダー選びに血道をあげるより、まずテレビを“レコーダーテレビ”に買替えるべきだろう。現在、これらの条件を満たしている“レコーダーテレビ”はPZR900シリーズしかないので、録画ファンは要注目のモデルであると言える。
PZR900シリーズは前回のレビューでも触れたとおり、ネット機能、アクトビラ対応など、この先5年は陳腐化しない先進的なスペックを備えたテレビだと感じている。確かに個々の機能を見比べれば、他にも優秀な製品があるだろうが、今年の冬モデルで選ぶなら、本機は5年先を見越したスペックを搭載していると感じる。今後“レコーダーテレビ”が進化すべき、ポイントを探ってみよう。
まず「W録画機能」はマストだろう。録画機能が便利になるほどに、色んな番組を録画したくなり、予約がかち合うものだ。家族で共有するテレビともなれば、録画権争いは必至。有料放送に加入するともうそれだけで予約はいっぱいになりかねない。ただし、テレビとレコーダーで求められるスペックの違いは、レコーダーでW録画を実現するにはツインチューナーで済むが、テレビの場合はさらに視聴用に1チューナーをフリーにしておかないと、W録画時にチャンネル切替えができなくなる。そう考えると理想の“レコーダーテレビ”は「トリプルチューナー搭載」が必要条件になる。
次にマルチタスク化だろう。ダビング中に録画ができないとなると、せっかくトリプルチューナーを搭載しても意味がない。テレビからBDレコーダーへのダビング中でも、新規録画ができる仕様がベストだ。
最後に録画した映像の「持ち出し機能」はぜひ欲しい所だ。パナソニックならSDカードに録画番組を書き込んで、例えばニンテンドーDSで再生するとか、ソニーならメモステに書きだして、PSPやウォークマンで再生するなど多彩な使い方ができれば、録画番組を効率よく視聴できること間違いなしだ。ちなみにREGZAの上位モデルはワンセグチューナーが搭載されており、地デジ録画時に同じ番組をワンセグで録画し、SDカードにダビングできる。録画番組は同社のポータブルメディアプレーヤー“gigabeat”や、対応する携帯電話で楽しめる。
とまぁ、妄想大爆発だが、不景気風が吹き止まない昨今、出てくる製品は小粒ばかりで筆者の物欲は風邪をひきそうだ。せめてこれぐらいの夢と妄想を抱えて新年を迎えたいと思っている。
(レポート/鈴木桂水)