富士通テン槌本社長インタビュー1「受け入れやすかったタイムドメイン理論」
<左>槌本隆光・富士通テン社長 <右>12cmユニットを搭載したECLIPSE TD 512(¥100,000/1本) |
―― カーAVCメーカーの御社がホームオーディオ市場に参入するということで、市場は大変興味を持っていますね。
槌本 AV機器ということでは、前身の神戸工業時代にはテレビ、ラジオなどを手掛けており、カーオーディオに関しては昭和30年から始めております。この46年にわたるカーオーディオ事業のなかで蓄えてきた音響技術のノウハウは多く、これを生かした新規事業を展開したいと考えていました。
―― そういうなかでECLIPSE TDシリーズが出てきたわけですが、その経緯をお伺いしたいのですが。
槌本 富士通グループ内では、以前から音に関連した製品を受託生産していましたが、このタイプのスピーカーは当初、富士通のデスクトップパソコンFMV用のスピーカーとしてスタートしました。一昨年の7月ころから開発を始め、昨年5月にパソコンとバンドルされて発売されることになりました。開発段階にかなり良い音の出るスピーカーができてきたという報告を受け、私も聴いてみたのですがこれがなかなか良くできていて驚きました。その時の担当エンジニアから「この技術を使ったもっと本格的なものをやりたい」という話を聞かされ、それで一昨年の暮れにタイムドメイン社の由井社長に会いに行ったのです。由井さんが提唱されているこの理論は、私には非常にわかりやすかったんですね。私は特にオーディオが好きというわけでもありませんし、物理屋でコンピューターを中心に仕事をしてきましたから、オーディオの感性という部分は良く理解できなかったところがありました。それがこの理論を伺ったときに、一気に氷解するような感じがしまして、この理論を実現するような製品を作ってみたいと思いました。
―― 基本的にはカーオーディオに携わってこられた方々が中心になっているわけですよね。
槌本 そうですね。カーオーディオの分野で初めてDSPサウンドプロセッサーを使ったのも当社ですし、音に対する深い思い入れはありました。しかし車に載せるものですから、まず第一に非常に過酷な条件に耐えられる製品が要求されます。ホームオーディオのように感性に訴える部分が第一の製品とは最も違う部分ですよね。そういうエンジニアたちにもタイムドメインという理論はわかりやすかったようで、その理論を実現するスピーカーを作るために彼らも様々なアイデアを出していったわけです。
(つづく/Senka21編集部)