極上サウンド・レポート、GML xrcd24のマスタリング現場を直撃取材〜その1〜
左)日本ビクター(株)のマスタリングエンジニア、小鐵徹氏 右)GML幻の音源を収録したアナログテープ |
今回のオリジナルマスターテープの内容は、伝説の美人・JAZZヴォーカリストであるクリス・コナーと増田一朗カルテットによる1977年のセッションである。この時に収録されたのが『MISTY』と『JUST IN TIME』の2曲。リールケースには貴重なクリス・コナーの直筆サインが記されている。さらにその当時、現場での録音を担当した人物は、オーディオ評論家はいわずもがな、腕利き録音エンジニアとしても名高い斎藤宏嗣氏という、役者が揃い踏みしたお宝トラックなのだ。
今回は「xrcd24」のマスタリングプロセスを、小鐵徹氏の「匠みの技」を拝見しながら皆様にご紹介していきたいと思う。
現在のCDは通称「四分三(シブサン)」、「弁当箱」などと呼ばれるこの「Uマチックテープ」という磁気テープに16bitの音声信号を記録してマスター音源をつくり、このマスターを工場に持ち込んで商品を製造して行く。「xrcd(Extended Resolution Compact Disc)24」は、マスタリングおよびコンパクト・ディスクの製造工程を改善することにより、原音への高い忠実度を実現し、リスナーにすぐれた音質を提供するコンパクト・ディスクである。24bitの高品位な音声信号を記録できる能力を持つ、光磁気ディスク(MO)に記録され、マスター音源がつくられる点が通常のCDと大きく異なる。このMOには24bitで65分、16bitで100分の音楽データを記録することができる。
今回の“幻の音源”が録音されているアナログテープは、はじめに写真のSTUDER製「A80」というオープンリールデッキで再生され、小鐵氏が音の「色づけ」作業を行うミキシングコンソールに送られる。通称「卓」とも呼ばれるミキシングコンソールでの音の「色づけ」作業は、「映画や舞台でいうところのメイキャップアーティストの仕事に例えられるのではないでしょうか」と小鐵氏は語る。
「マスタリングエンジニアの腕の見せ所は、ミュージシャンの要望に細かく応えながら、オリジナルの録音が持っている良さを、いっそう際立たせていくことだと思います」と語る小鐵氏。小鐵氏のワザによって、絶妙な味付けを加えられた音源は、ビクター製24bitA/Dコンバーター「AD-9621」を用いてデジタル信号に変換される。本機を経由した音声信号は、光磁気ディスク(MO)に情報を記録するSONY製マスターディスクレコーダー「PCM-9000」へと出力され、マスター音源が完成するのだ。同じマスタリングルームには、CD用のマスター製作に用いられる「PCM1630」も配置されていたが、どちらの機器も今では既に生産を終了しているという貴重な製品なのである。
>>レポートその2へ続く
(Phile-web編集部)