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マイクロソフトと東芝、HD DVD機器の開発に向けた協業関係の強化を発表

公開日 2005/06/27 20:16
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米国・マイクロソフト コーポレーションと(株)東芝は、本日東京都内において共同で記者会見を行い、両社が所有するデジタル家電とPC分野の技術を相互に持ち寄り、デジタル家電やPCの開発と普及促進を目的とした協業関係をさらに強化していく方針を明らかにした。会場にはマイクロソフトからビル・ゲイツ氏、東芝から先頃社長に就任したばかりの西田厚聰氏が駆けつけ、両社の新たな協業関係について説明を行った。

はじめに今回の両社が取り決めた協業関係について概説しよう。今回の合意では、一つめの事項として、マイクロソフトの所有するソフトウェア、およびPCの関連技術と、東芝が所有するデジタル家電とPCの開発技術を相互に持ち寄った上で、これまでタブレットPCを中心にOS(オペレーティングシステム)として採用されてきたMicrosoft Windows CEの技術をベースとしたHD DVDプレーヤー開発の検討が行われることが明らかになった。またDVDフォーラムにおいて最新のインタラクティブ機能仕様として取り決められている「iHD」に関する協調の強化についても進められていくことで合意に達したという。

次に、PC産業のリーディングカンパニーとして、マイクロソフトと東芝は今後モバイル市場の拡大を目的として、Windowsの主要ソフトウェア技術と、東芝のハードウェア技術を統合させたモバイルPCを市場に提供するため、継続的に共同プロジェクトを推進していくことが取り決められた。両社はこれまでに新しいPCのワークスタイルを確立し、ユーザーにその利益を提供するタブレットPCとMedia Center搭載のPCの普及をワールドワイドに推進するため密接に協力してきたが、今後もとりわけWindowsの次期OSとして開発が進められている「Longhorn(ロングホーン)」を搭載したモバイルPCの開発と市場投入への注力が今回宣言された。

さらに両社からは、本年の4月に特許クロスライセンスを締結し、PCやデジタル家電分野において双方が開発した革新技術の相互利用を促進していくことで合意に達したことも明らかにされた。


(株)東芝 西田厚聰氏
本日の記者発表会では、(株)東芝より取締役 代表執行役社長の西田厚聰氏が登壇し、今回の合意について説明をおこなった。

本年6月末に東芝の新社長に就任したばかりの西田氏は、今後の東芝の戦略として「経営のスピードを成長に軸足を起きながら加速させること、攻めの経営を断行し利益ある持続的成長を実現すること」を掲げている。その上で今回のマイクロソフトとの合意について、「10年単位の将来を見据えた上で、両社の発展を実現できるもの」とその内容を高く評価した。

次世代DVD開発に関する動きとしては、Windows CEの技術をベースとして東芝がHD DVDプレーヤーを開発していく方向が検討されることとなった。このことについて西田氏は「HD DVDの拡張性と発展にとって大変意義のある協業」であるとしながら、搭載されるアプリケーションについて、マイクロソフトとディズニーが共同発表した「iHD」をさらに協調強化して、開発を加速化する方針も打ち出された。

PCに関連した合意内容については、「東芝が20年前に世界初のノートPCを世に送り出して以来、マイクロソフトと密接な協業関係を築いてきた」としながら、マイクロソフトが開発を推し進める「Longhorn」を新たなブレイクスルーの素材とするために、東芝として全力で開発をサポートし、タブレットPC、ノートPCさらに発展させて行きたいと西田氏は語る。

また今回特許クロスライセンスを締結できた成果については、「マイクロソフトと数多くの研究分野において、より密接な関係を構築することにより、製品開発期間の短縮、コスト削減を実現できることのメリットをしっかりと活かして、事業のスピードアップにつなげたい」とした。最後に西田氏は、これからのユビキタス社会にとって「CEメーカー、IT、コンテンツホルダーらが幅広い連携をつくりあげることが大切。今回の私たちの協業がユビキタス社会の実現に大きく貢献するものであると思うし、新たな市場の創出に寄与したい」とこれからの豊富を高らかに語った。


マイクロソフト コーポレーション ビル・ゲイツ氏
続いてマイクロソフト コーポレーションの会長兼チーフソフトウェアアーキテクトであるビル・ゲイツ氏が登壇し、協業関係の強化に関するコメントを行った。

はじめにゲイツ氏は「PCはこれまでに大きな、斬新なことをいくつも実現してきたが、これからも無限に発展するだろう。マイクロソフトよりも長い歴史を持つ企業である東芝と強力なリレーションシップを築くことで、その可能性をさらに広げていくことができるだろう」とし、期待を顕わにした。

今回両社が合意に至った成果については「東芝のハードウェア、マイクロソフトのソフトウェア、双方の発展にどのように影響してくるかに注目したい。とりわけ次世代OSのLonghornの発展について大きく貢献し欲しいと期待している」とした。HD DVDプレーヤーの実現についてゲイツ氏は、「Windows CEの強みを活すことによって、例えばデジタル家電機器とPCの連動を高めていくなど、便利な使い方がいくつも考えられる。コンシューマーデジタルライフの新しい発展をともに実現できる、最高のパートナーシップだろう」と評価する。

さらに両社の特許クロスライセンシーについては「研究開発に大きな力を入れている東芝との協調であるからこそ活きてくるパートナーシップである。その関係を強化していくことにより、今後あらゆる新たな分野において協力がしやすくなり、将来にいくつもの可能性を生み出すことだろう。エンジニアの夢を共同で実現できることを大変うれしく思う」と喜びを語った。

最後に本日の記者会見で行われた質疑応答の内容をご紹介する。


Q:今回HD DVDで展開される協業関係について、Blu-ray Disc(以下:BD)側で同様に実現する可能性はあるのか
A:(ビル・ゲイツ氏)マイクロソフトは現在、次世代デジタルフォーマットに対しては中立の立場を取っているが、HD DVDのグループに参加して活動を行っており、Windowsとの接続に関しては東芝と協業することのメリットを重視している。現在は今後どれだけ早くHD DVDとつながることができるかについて力を入れて検討している段階であるが、これは今後BDをまったく検討に入れていないということを意味するものではない

Q:BD陣営とiHDを軸に同じ協力関係を取っていくことは有り得るのか
A:(ビル・ゲイツ氏)iHDの開発についてはマイクロソフトも深く関わっているので、今後広く採用されることを期待している。今回このようにHD DVDグループは東芝とのパートナーシップにより展開できる運びとなったが、BD側でも広く採用されることを期待したい

Q:マイクロソフトの次世代ゲーム機にはどのデジタルフォーマットが採用されるのか
A:(ビル・ゲイツ氏)当社は先頃次世代のゲーム機として「Xbox 360」を発表したばかりであり、今年からエリア別に出荷を開始したいと考えている。私もこれを市場のブレイクスルー・プロダクトとして、登場を心待ちにしている。発売当初は現行のDVDのフォーマットで動かすものとなるだろうが、将来はHD DVD、またはほかの次世代フォーマットを採用することも一生懸命検討しているところだ

Q:今回の発表はBD陣営との「統合」問題にどのような影響を与えるのだろう
A:(西田厚聰氏)現在東芝としては、統合問題については「統合できればそれに越したことはない」というスタンス。これは変わらないままだ。振り返ればPCの市場において、かつて「スーパーマルチドライブの採用」が問題になったときに同じような議論が巻き起こったが、当社はその時「ユーザーの使いやすさ」を第一に考えて正しい選択を行うことができたと考えている。ユーザーの立場に立って常に考えるという考え方は、次世代フォーマットにであろうと東芝不変のポリシーである。Windows CEをベースにHD DVDの開発を進めていくという発表内容については、どういうインパクトを与えるか、皆様のご想像にお任せしたい。ただ、マイクロソフトのサポートは私たちにとって大変心強いバックアップだと考えている

Q:マイクロソフトにとって、特許クロスライセンスを締結した日系大手企業はこれで富士通と東芝の2社となったが、今後どういった技術を持った企業と協業していきたいと考えているのか
A:(ビル・ゲイツ氏)今回の発表会であくまでフォーカスをあてて欲しい点は私たちが東芝とのパートナーシップを強化していくということだ。私たちのパートナーシップがほかの様々な企業にとって模範になるようなものにしたい。知的財産をきちんと理解するという上でも大変重要なことであると考えている。

(Phile-web編集部)

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