HOME > ニュース > ソニー、「エレクトロニクスビジネスの再生」へ向けた中期経営方針を公開

ソニー、「エレクトロニクスビジネスの再生」へ向けた中期経営方針を公開

公開日 2005/09/22 20:02
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ハワード・ストリンガー氏
ソニー(株)は本日都内の施設において記者会見を開き、2005年度の連結業績見通しに関する修正内容と、ソニーグループの中期経営方針について、グループ会長のハワード・ストリンガー氏をはじめとする代表者が説明を行った。


中鉢良治氏

大根田伸行氏
本日会場に姿を現したのは、ソニー(株)代表取締役会長兼グループCEOのハワード・ストリンガー氏、同社代表取締役社長兼エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏、執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏である。

2005年7月28日に発表した2005年度の連結業績見通しを修正し、営業損益が200億円の赤字となることを明らかにした。売り上げについては当初見通しから変更なしの7兆2500億円となった。今回の損益見通しの修正の理由について同社は、今回発表したグループの中期経営方針で追加された構造改革に伴い、500億円の減額修正が行われたためとしている。なお、当期純損益についても、7月28日時点での見通しが修正され、100億円の赤字が見込まれている。以下に、本日の記者会見で明らかにされた、ソニーグループの「復活」をかけた中期経営方針の内容について紹介しよう。

【ソニーグループの基本戦略】

はじめに会長ハワード・ストリンガー氏より、ソニーグループの基本戦略に関する説明が行われた。


ヒット商品へ経営資源を集中させる

PS3の円滑な立ち上げへグループをあげての協力体制を敷く
ストリンガー氏は「近年、デジタルテクノロジーが急速に発展する一方、多くの製品が驚くべき勢いでコモディティー化し、価格の下落が進んでいる。ソニーにとって、商品の差別化を図ってブランドを護ることが大切である」と語り、ブランド力と製品力の強化を図るため、ソニーグループの最重要課題として「エレクトロニクスの復活」を掲げた。今後グループの経営資源を、エレクトロニクス分野では薄型大画面テレビ「BRAVIA」をはじめ、ハイビジョンムービー、デジタルカメラ、ウォークマン、ゲーム分野ではPSPや来春発売を予定するPS3、その他の分野では映画・音楽コンテンツのビジネスやモバイル機器など、いわゆる「ヒット商品」へ集中させる考えが明らかにされた。


エレクトロニクス事業ではシンプルな組織構成を構築していく
同時にグループ内で大がかりな構造改革を実施する方針も示された。具体的な内容については、同社がこれまでに敷いてきたカンパニー制を廃止するとともに、組織レイヤーを削減し、よりシンプルな組織構成をつくり全社横断機能を強化するというものである。ストリンガー氏は「ソニーが各領域で様々な競争相手に直面し、危機にさらされていることを自覚しなければならない。殊にエレクトロニクスの組織体制において“コミュニケーション力”と“迅速な対応力”を獲得するために必要な改革だ」と語る。その他、構造改革の主な施策としては先に挙げたヒット商品への事業の絞り込みや、本社および間接部門の効率化、モデル数の削減、生産拠点の統廃合、大幅な人員削減、資産の売却などが含まれている。

今回示された中期経営方針については、部門・地域の枠を超えたレビューチームの意見、販売店・顧客・投資家からの意見、そして2000を超える従業員からの提案について、新経営陣が就任後100日間に渡って検討してきた結果に基づいて策定したものであるとストリンガー氏は語る。「新組織体制のもと、今回の構造改革と成長戦略を同時に推進させる。構造改革のプランについては2005年、2006年中にほぼ完了させ、継続して遂行する成長戦略は2006年、2007年から効果が発生するだろう」とした。ストリンガー氏はまた、今回の説明においてソニーのコミットメントとして、下記の具体事項を明確に示した。

【ソニーのコミットメント】

・簡素で効率的な組織体制の構築
・2000億円のコスト削減の必達(FY06末までに80%、残りはFY07末までに実現)
ー10,000人の人員削減
ーモデル数を20%削減
ー生産拠点を65箇所から11箇所削減
・1200億円の非戦略的な不動産・出資等の整理
・計画の進捗状況を適時に報告することにより説明責任を果たす
・収益性の改善
ーFY06:連結全体での黒字化
ーFY07:5%の連結営業利益率を目指す

ソニーのコミットメントを示したストリンガー氏は「これにより“ソニー・ユナイテッド”として戦う意気込みを示したつもりだ。今こそが変革のはじまりであり、今回示した経営方針はアトラクティブな競争を実現するための戦略である」と意気込みを語った。

【エレクトロニクスの再生計画】

続いて代表取締役社長中鉢良治氏より、ソニーのエレクトロニクス事業に関する再生計画の詳細が説明された。中鉢氏は「今期は残念ながら遂に赤字の結果となってしまった。ソニーのエレクトロニクスは業績不振の要因をしっかりと認識する必要がある」と語り、それらの要因が「ソニーらしさが伝わらない」「使い方がわからない」などの「顧客視点の欠如」、差異化技術開発の滞りなどによる「技術力の低下」、そして現場とカンパニーの不整合などによる「オペレーション力の低下」にあると指摘した。

その上で中鉢氏は、「カスタマービューポイント」に立った商品戦略の見直し、テレビ・ビデオレコーダー・デジタルイメージング・ウォークマンなど重点商品カテゴリーにおける「No.1ポジションの追求」、設計/生産/販売のオペレーション力強化のための「現場イニシアティブ」を確立し、「小さな本社」と「強い現場」を実現することが3つの緊急課題であるとした。

中鉢氏はまた、エレクトロニクス事業に関する構造改革の内容も明らかにした。はじめに「事業の絞り込み」については2007年までに1300億円のコスト削減を実現するため、今後15カテゴリーを対象とする不採算事業へのアクションプランを決定するとともに、2005年に対して20%におよぶモデル数の削減、11の生産拠点統廃合が実施される。また本社および間接部門の効率化に700億円という目標値が示され、合計で2000億円のコスト削減が目標となった。

また株式・不動産などの資産について、2007年末までに1200億円を売却するとともに、ワールドワイドで10,000人の人員削減も実施される。

これらの取り組みから着実に成果をあげ、2007年度には営業利益率4%を実現する目標値が中鉢氏により示された。


テレビ事業の再建計画
エレクトロニクス事業の復活において「テレビ事業の速やかな再建は不可欠」と語る中鉢氏は、「先に発表したBRAVIAの導入には、ソニーのテレビ事業における確実な復活の手応えを感じている」とした。「今後も急激な価格下落が起きることを前提」としながら、中鉢氏によって各デバイスごとにテレビ事業の再建計画が示された。

【TV事業の再建:06年下期 黒字化を実現】

■CRT:拠点の集約を加速させる
■液晶テレビ:ソニーパネル搭載の「BRAVIA」シリーズに注力
・S-LCDから供給を受けることによって競争力を高める 
・大画面LCD市場を攻略
■リアプロジェクションテレビ:HLCD+SXRD「BRAVIA」シリーズに注力 
・部品調達の拠点を国内から中国へシフト→普及価格帯へ商品をぶつけていく
・SXRD搭載モデルについては“究極高画質商品”として売っていく
■基本設計体制:日本に一極集中し、部品点数も30%近く削減 


HDワールドについてもソニーグループ全体で取り組む姿勢を明らかにした
テレビ以外のデバイスにおける成長計画も中鉢氏により明らかにされた。その中核に位置づけられたコンセプトは「ソニーを挙げてハイ・ディフィニションを推進していく」というもの。2007年までには、HD対応を現状の35%から75%へ引き上げる。またBlu-rayについては専用機のみならず、ゲーム機「PS3」においても対応を実現することによって一気に普及させる考えを示した。

またソニーの成長戦略を支える施策についても言及し、2006年にはCellを応用したモバイル商品を検討していることや、有機EL開発に集中した次世代ディスプレイデバイス開発本部を新設することなどが明らかにされた。


エレクトロニクス事業に新体制を構築していく
組織・機構改革に関する内容については中鉢氏からも繰り返し説明されたが、コンシューマーエレクトロニクス分野における「4事業本部+1部門」体制の実現、現在パーソナル、ホーム、カーの3つに別れているオーディオ事業の統合・一本化、組織レイヤーの削減など具体的な内容が示された。またエレクトロニクス事業においても全社横断機能を強化し、研究開発体制に力を入れる考えを明らかにした。


【会場質疑応答】

最後に本日の会場で行われた質疑応答の内容を紹介する。

:エレクトロニクス事業における「事業の絞り込み」についてはどのカテゴリーをカットするのか
:今回提示した「対象15カテゴリー」について、具体的な内容は申し上げられないが、ここ何ヶ月かで「実行」していくつもりだ(中鉢氏)

:前会長・出井氏の体制下で実行しようとしてきた改革内容とどこが違うのかがわからない。大がかりにな構造改革がこれから成果として明らかになっていくのか
:基本的な戦略は出井氏のものと一緒に見えるかもしれないが、今回の改革がもたらす変化は大きなものであると思っている。組織改革についてはダイナミックな会社をつくりあげるだろう。これまでに体制が分散化していたことによる問題が、組織に横串を刺した変革を行うことでスピードが上がっていくだろう。エキサイティングな会社の変革だと思っている。さらに重要なのは今後この改革を「実行」していくことだ。プランを示しただけで満足するのではなく、フォローアップを継続していくことが大事だ。決断力を持って、行動で示さなければならない。ソニーは大きな変貌を遂げるだろう(ストリンガー氏)

:ソニーBMGの統合による効果はまだ日本では明らかになっていない。両社が一体化するための施策について、またどう変えていくのかを教えて欲しい
:両者の統合についてまだ具体的な計画はないが、複雑な要素について充分に考えながら協力関係を築きあげていきたい(ストリンガー氏)

:事業の絞り込み対象として、「パソコン」「金融事業」「ロボット」「クオリア」は挙がっているのか
:絞り込みカテゴリーの対象については今日の時点では戦略上、具体的な内容は言えない。今後絞り込みを実行しながら、皆様に成果としてお伝えしていく。なお、事業の絞り込みについての「15のカテゴリー」はエレクトロニクスに限った話だ。「ロボット」についてはR&Dの領域では縮小を考えている。技術は今後AIに有効に活用していく。「クオリア」については新規の開発はとどめおく考えだ。ビジネスは続行、サービスは継続する。今はこれに開発体制を集中させる計画はない。金融ビジネスについてはソニーグループにおいて継続的に高収益を維持していきながら、自立成長可能な環境を整備していく。IPOはFY07に延期するが、これを売るとか撤退するといった話では全然ない(中鉢氏、大根田氏)

:有機ELについて今から種をまくとなると、利益として回収できる時期がかなり先になるが?何年先を見ているのか?
:有機ELの小型のものについては既に量産・商品化している。テレビというビジネスユニットとしては、これまで継続してやってきたものをさらに続けて行き、どれくらいのキラーアプリケーションに育てられるのかを見ながら取り組んでいきたい。今後の事業化については検討していく(中鉢氏)

:エレクトロニクス事業について今期の赤字はどれくらいなのか。黒字化の目処は
:セグメント別の見通し公開についてはご容赦いただきたい。2006年には黒字になるよう計画している(大根田氏)

:中国市場に向けた新しい戦略について教えて欲しい
:中国はかつてソニーのAV機器の生産基地だった。今後中国市場の大きな購買ポテンシャルも期待したい。中国で設計し、製造し、販売するという体制を現在整えている。そしてもう一つ、技術大国としての中国にも注目したい。さらには中国のコンテンツで世界向けのものも開発していきたい(中鉢氏、ストリンガー氏)

:営業利益率、連結売上高の目標は、充分実現可能な数値か。それとも厳しいもの考えているのか。達成できなかったらどのような経営責任を取るつもりなのか
:今回のプロジェクトには説明責任を果たすことをコミットメントとした。達成が困難と見通した際には、そのたびごとに調整し、ゴール達成を実現するための仕組みとしている。勿論厳しいターゲットと思っているが、このチャレンジングな数字は意義があると考えている。困難ではあるがアチーバブルだ(ストリンガー氏、中鉢氏)

:スカイパーフェクトコミュニケーションズの株式保有についてはどうなるのか。同社の経営にはどのように関わっていくのか
:スカイパーフェクトの株を手放すような報道が一部があったが、今現在その計画はない。従来通りにこのプラットフォームを有効に活用したいと考えている(大根田氏)

【問い合わせ先】
ソニー(株)
TEL/03-5448-2111


(Phile-web編集部)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック