VIERA Linkは序章に過ぎない − パナソニックが考えるホームネットワークの未来形(増田和夫レポート)
●テレビを中心としたホームネットワーク構築の第一歩
パナソニックがホームネットワークに本腰を上げた!というのが、VIERA Linkの印象だ。ユーザーサイドから見ると、VIERA Linkは、テレビのリモコンで複数のAV機器が操作できる便利な機能といえる。ユニバーサルリモコンやAV機器のコントロール規格は以前からあったが、HDMIケーブル1本で、AVデータとともに全ての機器を制御できるのは、とても手軽で新しい。
そうしたシンプルさがウリなのだが、実はVIERA Linkには大きな可能性が秘められている。それはテレビを中心としたホームネットワークの構築である。発表会でパナソニックマーケティング本部 本部長の牛丸俊三氏が「VIERA Linkで、VIERAは見るテレビから使うテレビへ進化する。VIERAがホームネットワーク元年を作る」と述べたことからもわかるように、VIERAをホームネットワークの中心に置く、という壮大な構想が込められているのである。この発言からは、ホームネットワークの主導権をPCではなくテレビが取る、という強い意志が感じ取れる。
まず、VIERA Linkの使い勝手から見てみよう。VIERA Linkの対応機種など、概要は関連記事を参照してほしい。
VIERAのGUIにLink機能を後付けした感はあるが、パナソニックらしい家電的でシンプルな操作性で、ネットワークの難しさは微塵も感じられない。VIERAの外部入力は系統が多いので、この切り替えが自動になるだけでも便利に感じられる。操作のタイムラグも許容範囲で、DIGAをクイックスタート状態にしておけば、さらに快適に使えるだろう。
●HDMIの新規格「CEC」を素早く取り入れた
つぎに接続規格という観点から見てみよう。VIERA Linkによるコントロールは、同社の対応機器に限られるので、独自の接続規格に思える。しかし、実はHDMIの規格に準拠したものなのである。HDMIの規格には、現在のところ最新のバージョン1.2aから、CEC(Consumer Electronics Control)という家電機器の電源制御などのコマンドが定義されている。VIERA Linkは、そのCEC準拠のコマンドを採用している。さらにHDMIには、各メーカーで自由に定義できる拡張エリアが規格されている。VIERA LinkによるレコーダーやAVアンプの制御などは、この拡張エリアを活用しているのだ。
「HDMIの規格に則った接続でも、双方向制御が可能なことに気が付いた。VIERA Linkは、そうしたアイデアの成果」(松下電器産業の開発担当者 松尾景介氏、以下同)。HDMIで見過ごされてきた機能を活用したアイデア機能といえるだろう。一社独自の規格にした点については「独善的な意図はなく、ユニバーサルデザインで操作性を統一し、誰でも簡単に使えるためにVIERA Linkを採用した。他社を含めた広い連携を望んでいる」。ハードウエア的には「VIERA Linkの実現に、特殊な制御LSIの追加は不要なので普及はしやすいと思う」。
●DLNA、PLCとの役割分担も視野に入っている
ホームAVネットワークというとDLNAガイドライン機器が一般的だが、DLNAについては「決してDLNAを否定していない。DLNAとは役割分担で連携していく。部屋の中はVIERA Linkで、部屋をまたぐネットはDLNAという役割分担を考えている」。
さらに、「冷蔵庫や洗濯機、セキュリティといった家全体のPLC(Power Line Communication:電力線ネットワーク)との連携も視野に入れている」ともいう。HDMIの実用上の有効長は約10メートル程度という点から考えても、こうした分担がリーズナブルだろう。ユーザーとの距離で図示すると、VIERA Linkが同心円の中心に窓口として位置し、その周りにDLNAが来て、さらに外側をPLCが包むという構図になる。各ネットワークをブリッジ(橋渡し)すれば共存できる、という発想だ。DLNA対応といっても「PC的ではなく、現状のDLNA機器よりも実用性のある、便利で使えるDLNA対応の家電を考えている」。PC周辺機器とはひと味違った、誰でも使えるDLNA家電が期待できそうだ。
●VIERA LinkはPC勢に対する家電カルチャーからの挑戦状
ここまで聞くと、VIERA Linkは壮大なチャレンジの第一歩であることがわかるだろう。ホームネットワークの中心にはどんな機器が座るのか、次世代ゲーム機なのか、AV対応PCなのか、それともセットトップボックスなのか、という議論は以前からある。実際に各メーカー間で熾烈な競争が続いているが、VIERA Linkは「ホームネットワークの中心をテレビにする」というパナソニックの明快な宣言といえるだろう。
今回のVIERAの映像回路「新PEAKS プロセッサー」には、性能アップを図った新カスタムLSI「UniPhier(ユニフィエ)」が搭載され、「使うテレビ」にふさわしいインテリジェント化が図られている。つまりこれは、AV対応PCでリビングを狙うPC勢などに対する、家電カルチャーからの挑戦状といえるだろう。総合家電メーカーであり、住宅産業まで関連会社に持つパナソニックならではの戦略といえそうだ。
VIERA Linkが、限られた接続規格に終わるのか、それともパナソニックの言うような大きな広がりを見せるのかは未知数だ。デファクト化するためには、対応機器の充実や家庭内インフラの整備など課題は多いが、「テレビに繋がる機器、例えばビデオカメラなどをVIERA Link対応にしてゆく」という宣言には期待できる。
確固としたAVクオリティの基準と、豊富な家電ノウハウを備えるパナソニックが、ネットワークに本腰を入れた意義は大きい。野心的な試みとして今後も注目したい。
(増田和夫)
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。
パナソニックがホームネットワークに本腰を上げた!というのが、VIERA Linkの印象だ。ユーザーサイドから見ると、VIERA Linkは、テレビのリモコンで複数のAV機器が操作できる便利な機能といえる。ユニバーサルリモコンやAV機器のコントロール規格は以前からあったが、HDMIケーブル1本で、AVデータとともに全ての機器を制御できるのは、とても手軽で新しい。
そうしたシンプルさがウリなのだが、実はVIERA Linkには大きな可能性が秘められている。それはテレビを中心としたホームネットワークの構築である。発表会でパナソニックマーケティング本部 本部長の牛丸俊三氏が「VIERA Linkで、VIERAは見るテレビから使うテレビへ進化する。VIERAがホームネットワーク元年を作る」と述べたことからもわかるように、VIERAをホームネットワークの中心に置く、という壮大な構想が込められているのである。この発言からは、ホームネットワークの主導権をPCではなくテレビが取る、という強い意志が感じ取れる。
まず、VIERA Linkの使い勝手から見てみよう。VIERA Linkの対応機種など、概要は関連記事を参照してほしい。
VIERAのGUIにLink機能を後付けした感はあるが、パナソニックらしい家電的でシンプルな操作性で、ネットワークの難しさは微塵も感じられない。VIERAの外部入力は系統が多いので、この切り替えが自動になるだけでも便利に感じられる。操作のタイムラグも許容範囲で、DIGAをクイックスタート状態にしておけば、さらに快適に使えるだろう。
●HDMIの新規格「CEC」を素早く取り入れた
つぎに接続規格という観点から見てみよう。VIERA Linkによるコントロールは、同社の対応機器に限られるので、独自の接続規格に思える。しかし、実はHDMIの規格に準拠したものなのである。HDMIの規格には、現在のところ最新のバージョン1.2aから、CEC(Consumer Electronics Control)という家電機器の電源制御などのコマンドが定義されている。VIERA Linkは、そのCEC準拠のコマンドを採用している。さらにHDMIには、各メーカーで自由に定義できる拡張エリアが規格されている。VIERA LinkによるレコーダーやAVアンプの制御などは、この拡張エリアを活用しているのだ。
「HDMIの規格に則った接続でも、双方向制御が可能なことに気が付いた。VIERA Linkは、そうしたアイデアの成果」(松下電器産業の開発担当者 松尾景介氏、以下同)。HDMIで見過ごされてきた機能を活用したアイデア機能といえるだろう。一社独自の規格にした点については「独善的な意図はなく、ユニバーサルデザインで操作性を統一し、誰でも簡単に使えるためにVIERA Linkを採用した。他社を含めた広い連携を望んでいる」。ハードウエア的には「VIERA Linkの実現に、特殊な制御LSIの追加は不要なので普及はしやすいと思う」。
●DLNA、PLCとの役割分担も視野に入っている
ホームAVネットワークというとDLNAガイドライン機器が一般的だが、DLNAについては「決してDLNAを否定していない。DLNAとは役割分担で連携していく。部屋の中はVIERA Linkで、部屋をまたぐネットはDLNAという役割分担を考えている」。
さらに、「冷蔵庫や洗濯機、セキュリティといった家全体のPLC(Power Line Communication:電力線ネットワーク)との連携も視野に入れている」ともいう。HDMIの実用上の有効長は約10メートル程度という点から考えても、こうした分担がリーズナブルだろう。ユーザーとの距離で図示すると、VIERA Linkが同心円の中心に窓口として位置し、その周りにDLNAが来て、さらに外側をPLCが包むという構図になる。各ネットワークをブリッジ(橋渡し)すれば共存できる、という発想だ。DLNA対応といっても「PC的ではなく、現状のDLNA機器よりも実用性のある、便利で使えるDLNA対応の家電を考えている」。PC周辺機器とはひと味違った、誰でも使えるDLNA家電が期待できそうだ。
●VIERA LinkはPC勢に対する家電カルチャーからの挑戦状
ここまで聞くと、VIERA Linkは壮大なチャレンジの第一歩であることがわかるだろう。ホームネットワークの中心にはどんな機器が座るのか、次世代ゲーム機なのか、AV対応PCなのか、それともセットトップボックスなのか、という議論は以前からある。実際に各メーカー間で熾烈な競争が続いているが、VIERA Linkは「ホームネットワークの中心をテレビにする」というパナソニックの明快な宣言といえるだろう。
今回のVIERAの映像回路「新PEAKS プロセッサー」には、性能アップを図った新カスタムLSI「UniPhier(ユニフィエ)」が搭載され、「使うテレビ」にふさわしいインテリジェント化が図られている。つまりこれは、AV対応PCでリビングを狙うPC勢などに対する、家電カルチャーからの挑戦状といえるだろう。総合家電メーカーであり、住宅産業まで関連会社に持つパナソニックならではの戦略といえそうだ。
VIERA Linkが、限られた接続規格に終わるのか、それともパナソニックの言うような大きな広がりを見せるのかは未知数だ。デファクト化するためには、対応機器の充実や家庭内インフラの整備など課題は多いが、「テレビに繋がる機器、例えばビデオカメラなどをVIERA Link対応にしてゆく」という宣言には期待できる。
確固としたAVクオリティの基準と、豊富な家電ノウハウを備えるパナソニックが、ネットワークに本腰を入れた意義は大きい。野心的な試みとして今後も注目したい。
(増田和夫)
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。