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藤井氏「私は100万円でも買う」 − RD-A1発表会&質疑応答レポート

公開日 2006/06/22 18:15
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東芝より本日発表された、世界初のHD DVDドライブ搭載レコーダー「RD-A1」。ここでは、記者発表会の模様をくわしくお伝えする。

まず登壇したのは、同社執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏。風邪を引いて声が嗄れており、「HD-XA1」発表時(関連ニュース)のような迫力はなかったものの、プレゼンテーションが進むにつれて口調は次第にヒートアップした。

執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏

DVD機器の市場予測。HD DVD対応機が2011年には9割を超えると予想

藤井氏は冒頭、地上デジタル放送の普及動向について説明。2006年末までに82%、2008年までに99%の世帯で地上デジタルの視聴が可能になることを確認した。藤井氏は、地上デジタルへ完全に移行する2011年に向け、HD DVDレコーダーやプレーヤーの需要が急速に増加すると予測。DVDプレーヤー・レコーダーのうち、HD DVD対応モデルが、2008年度には45%、2011年には95%に伸長するとの見込みを示した。

今回のレコーダー発表について藤井氏は、「3月31日にプレーヤーを発表して以来、レコーダーはいつ出るのかと多くの方に聞かれた。この間、プレーヤーとレコーダーは、本質的にコンセプトが異なるのではないかという結論に達した。プレーヤーは、コンテンツプロバイダーとの共生が基本であり、より美しく、より安く提供することが重要。これに対してレコーダーは、ハイビジョンコンテンツを大量に録画できることが重要で、HD DVDは大容量HDDに録画した番組を保存するときに使用することになる」と説明。

プレーヤーとレコーダーは全く別のものであると主張

藤井氏は続けて、「今回、当社ではRD-A1を『HD DVD搭載ハードディスクレコーダー』と位置づけている。多くの方は『HD DVDレコーダー』と名付けると考えていたと思うが、あえて本質をついたネーミングにした。実際のHDD+DVDレコーダーの使われ方でも、99%の方はまず初めにHDDに録画している。レコーダーの本質はHDDだ」と、本機の位置づけを説明した。

藤井氏は、HD-XA1の発表時に、「レコーダーをワールドカップ前に間に合わせたい」と発言していたが、これについては「本機については、ワールドカップ全64試合を録画できるというコピーまで決まっており、何とか間に合わせたかったが開発が遅れた。ただし、7月中旬に出すことができたのも奇跡的で、それほど次世代光ディスクレコーダーの開発は難しい」と述べた。

藤井氏は、今後のHD DVD対応機器の展開についても言及。アメリカやヨーロッパでは、HDDを内蔵しないHD DVDのストレートレコーダーの展開も予定しているようだ。また、HD DVD搭載のカーナビも将来的に投入を検討する。

今後のHD DVD対応機器の展開

大容量HDDの必要性をアピール

さらに藤井氏は、Blu-ray DiscとHD DVDの規格競争についても持論を展開した。「新聞等では、下らない規格競争は止めたほうがいい、という論調が目立つが、私はそうは考えない。人間は、美しい映像に慣れると元の映像に戻ることはできなくなるからだ。また、光ディスクはなくなり、すべてHDDへダウンロードするソリューションになると予測する方もいる。少し前、ネットの浸透で新聞や雑誌がなくなると騒いだ方がいたが、結局そうならなかったのと同様に、この予測も間違っている。ダウンロードは10年から15年後にポピュラーになるだろうが、DVDやHD DVDは決して無くならない」。

RD-A1については、「東芝の技術の全てを集めた製品だ。ある記事で、ウチの技術陣が、『プレーヤーの時は499ドルという縛りがあったので入れたいものが入れられなかった』と語っていたが、今回は好きにやってもらった。一切BD陣営からケチがつかない製品を作ってもらった」と説明。「今回は『技術のHD DVD』をアピールできた。私自身は100万円でも買いたい」と述べ、製品への自信を強くアピールした。

製品の詳細については、デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部 部長の伊藤眞一氏が説明。伊藤氏はまず、「当社は、2001年に世界初のHDD搭載DVDレコーダー『RD-2000』を発売した。HDD容量は30GBだった」とRDシリーズの歴史を振り返り、同社の先進性をアピール。製品の特徴については、「1TBの大容量HDDを搭載したこと、HD DVDソフトの再生やDVDの録画再生に対応した互換性の高さ、業界最高の高画質・高音質設計を施したこと」の3点を強調。製品のスペックをくわしく説明した後、「RD-A1は非常に気合いが入った製品。このような製品を発売できたことを誇りに思っている」と述べた。

デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画部 部長の伊藤眞一氏

RD-2000がRDシリーズの原点

RD-A1の特徴

続いて、ゲストスピーカーとして、日立マクセル(株)ディスク製品事業グループ アドバンスドディスク事業部 設計部 副技師長の田村礼仁氏が登壇。先日発表(関連ニュース)したHD DVDメディアを紹介し、「HD DVDはDVDフォーマットを継承するもので、ディスク構造は同じ0.6mm。DVDの生産設備を最大限活用できる」とHD DVDを評価した。また、新製品については、狭トラックピッチに対応した高精度スタンパー、またCD-RやDVD-Rで培った色素技術を投入したと説明。また、HD DVD-RWについては「独自のHD-BCM相変化記録膜でHD DVD-RW開発をリードしている」とし、規格化完了次第、2006年秋以降を目途に1層/2層ディスクを発売することを表明した。

日立マクセル(株)ディスク製品事業グループ アドバンスドディスク事業部 設計部 副技師長の田村礼仁氏

今回発売するHD DVDディスクの概要

同じくゲストスピーカーとして登壇した三菱化学メディア(株)取締役 最高技術責任者の吉田秀実氏は、HD DVD-R の2層ディスク「VR150T1」を7月下旬に発売すると発表。先日のHD DVDメディア発表時(関連ニュース)には「近日発売」としていたが、発売時期が確定したことになる。また吉田氏はHD DVD-Rの開発にあたり、AZO色素を新たに開発したこと、2003年に同社が世界で初めて発売したDVD-R 2層ディスクの技術を投入したことを説明した。今後は「2倍速、4倍速の高速メディアを開発し、製品化の努力を続けていく」とした。

三菱化学メディア(株)取締役 最高技術責任者の吉田秀実氏

HD DVD向けのAZO色素を新たに開発した

続いて、コンテンツプロバイダーを代表し、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンのマーケティングディレクター、野端正人氏が登壇。「DVDの普及拡大が一段落し、ソフトも少し落ち着いている状況だ。ソフトメーカーとしては、コンテンツの内容などを工夫して対処しなければならないが、一方でハードウェアの進化に期待するところも大きい。人間には、一度良いもの、便利なものを経験すると元に戻れないという性がある。より良いコンテンツを、一層かんたんに体験できるのがHD DVDだ」と述べ、「アポロ13」など、この秋発売するHD DVDソフト6タイトルを紹介した。詳細は別項でお伝えする。

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン マーケティングディレクター 野端正人氏

今秋発売する「APOLLO13」のメニュー画面

以下、発表会で行われた質疑応答の模様をご紹介する。

Q: この価格、しかも1機種のみで残念と感じる方も多いのでは。年末に向けた、今後のレコーダーの展開を教えて欲しい。

A: 高いというご指摘だと思うが、1号機なので期待をこめて作り上げた。年末に向けてどういう展開をするかは大きな検討課題だ。(伊藤氏)

A: プライス付けは難しい。RD-XD72やXD92を出した直後ということもあり、悩みの種だった。ぜひ購入してもらって、高いかどうかご確認いただきたい。ただ、REGZAの47インチとRD-A1をセットで買っても100万円以下だ。数年使うことを考えたら、1日あたりの単価は安いのではないか。また、第2弾以降の製品の価格も問題になる。半年後に15万円になるのだったら誰も買う人がいないだろう。本当に価格設定は難しい。だが私は、レコーダーの普及については全然心配していない。ラインナップについても、基本的には松竹梅を揃えていきたい。(藤井氏)

Q: 東芝サムスン ストレージ・テクノロジーから記録型ドライブをデバイスとして発売する予定は? COMPUTEXで参考出展していたようだが、量産出荷の目途は?

A: 正直に言うと、現在のドライブは東芝製でないものも入っていて答えにくい。ドライブがキーコンポーネントであることは認識しており、様々なかたちで披露できるのでは。東芝本体のことなら何でも答えられるが、他社のことなのでフライング回答できない。

Q: 40万円は素晴らしい値付けではないか。SD9500の伝統が生きているように感じた。今回、398,000円という価格にした理由は何か。数字にこだわって説明して欲しい。

A: 税込サンキュッパという価格だが、私は長嶋さんの大ファンで、3という数字が好き。だから3を入れたかったということがある。また、マジックプライスというものがあり、だからアメリカではプレーヤーを499ドルに設定した。国内では40万円台の製品があまりなく、40万円を超えると50万円台以上になる傾向がある。いずれにしても、これを大幅に下回る製品を2006年末に投入することは考えていない。今回の398,000円という価格は、夜も眠れないほど考えに考えた末、最終的に私が決めた。もっと上の価格を考えたこともあったが、REGZAと一緒に買って頂きたいのでこの価格になった。

Q: HD DVDレコーダーはワールドカップに間に合わせたいと発表していたが、結局は遅れてしまった。その内幕を教えて欲しい。

A: HD DVDレコーダーに1TB HDDを搭載することは早々に決まっていた。「ワールドカップ全64試合を録画できる」というキャッチコピーまで決まっていたが、開発が遅れ、ワールドカップ開幕に間に合わなかった。だが、7月中旬に出せるのも奇跡的と言えるほど、開発は難しかった。VARDIAの機能も全部入れ、スペックも高めたことで開発が遅れてしまった

Q: HD DVDプレーヤーの販売台数はどの程度か。また、期待値と比較してどうか。
A: プレーヤーはアメリカで2万台を販売した。10月以降の販売に大いに期待している。今年に6〜70万台を販売するという目標は変えていない。上方修正する可能性もある。

Q: HD DVDディスクはBDより安価に販売できるか?
A: メディアメーカー様に聞いて頂きたいが、東芝のコスト分析によると、理論的にはHD DVDの方が安い。

Q: 海外と日本で、レコーダーについての意識は異なると聞く。海外での展開をどうやっていくか?
A: 非常に期待している。アメリカは90%がプレーヤーで、ヨーロッパでは85%。録画の中心はHDDになるのは確実で、HDDレコーダーを海外でも拡販していきたい。ただしRD-A1は国内展開のみとなる。

(Phile-web編集部)

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