HOME > ニュース > ついに姿をあらわした次世代音声フォーマット「DTS-HD」とは?

ついに姿をあらわした次世代音声フォーマット「DTS-HD」とは?

公開日 2006/07/12 11:47
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE


次世代光ディスクの製品群がいよいよ本格的に動き出した。プレーヤーに続きレコーダーも発売したHD DVDは、パッケージソフトの販売も徐々に開始された。

ここでは、それらソフトに収録される各種オーディオフォーマットの中でも、特に高音質な再生を実現する「DTS-HD」に注目。6月に業界関係者向けに行われた、dts Japan(株)主催の「DTS-HDセミナー」の内容を交えながら、DTS-HDについて整理してみる。

DTS-HDは、次世代光ディスクBlu-ray Disc、HD DVDにオプションで収録可能な高音質オーディオフォーマットで、ロスレスの「DTS-HD Master Audio」と、ロッシー(非可逆圧縮)の「DTS-HD High Resolution Audio」の2種類が用意されている。それぞれの仕様は下の表の通りで、コンテンツ製作者が任意の方式を選んで収録することができる。

 DTS-HD Master AudioDTS-HD High Resolution Audio
 Blu-ray Disc HD DVD Blu-ray Disc HD DVD
ビットレート768kbps〜24.5Mbps768kbps〜18.0Mbps768kbps〜6.0Mbps768kbps〜3.0Mbps
チャンネル数最大7.1ch最大7.1ch最大7.1ch最大7.1ch
サンプリング周波数
/量子化ビット数
96kHz/24bit(最大7.1ch)
192kHz/24bit(最大6ch)
96kHz/24bit(最大7.1ch)
192kHz/24bit(最大2ch)
96kHz/24bit(最大7.1ch)
48kHz/24bit(最大7.1ch)
コーディングの詳細ロスレス・コーディング(可逆圧縮)ロッシー・コーディング(非可逆圧縮)


Blu-ray Discに収録する場合とHD DVDに収録する場合では仕様に若干の違いがあるが、ロスレスのMaster Audioはビットレート、サンプリング周波数ともに高音質にこだわった仕様であることがわかる。なお、これまでの各種DTSフォーマットの仕様は以下の通りだ。

 DTS-96/24 DTS-ES DTS Digital Surround
ビットレート768kbps〜1.5Mbps192kbps〜1.5Mbps
チャンネル数最大5.1ch6.1ch最大5.1ch
サンプリング周波数
/量子化ビット数
96kHz/24bit48kHz/24bit48kHz/24bit


DTSフォーマットは、そのエンコーディングの方法に大きな特徴がある。ディスクに収録する際に「ストリームを1本だけ記録する」というのがその特徴で、DTS-HD だけでなく従来のDTS、DTS-ES、DTS 96/24などの複数フォーマットを収録する場合でも、ディスクに記録するストリームはそれらを含んだ1本だけ。再生機は対応するフォーマット部分だけをデコードして出力するという仕組みだ。ユーザーはあまり意識する必要のない部分だが、制作サイドではエンコード作業を一度で完了することができ、手間を省いたスピーディな制作が可能となる。

エンコーディングの大まかな流れ

デコーディングはプレーヤーもしくはAVアンプで行う

DTS-HDを記録したストリームには従来のDTSの情報も含まれるため、下位互換を実現している

「DTS-HDセミナー」にはコンテンツ制作者も多数出席しており、DTS社が開発するエンコーディングソフトの紹介も行われた。同社はこれまでも同等のソフトウェアの提供を行ってきたが、今回用意する最新バージョンはDTS-HDに対応。グラフィカルでわかりやすいインターフェースを採用しており、フォーマット、チャンネルレイアウト、音質などをマウス操作で選択していくだけで目的のストリームを作成できる。

コンテンツ制作者向けのエンコーダー

ストリームタイプ、チャンネル数・・・と選択していくだけで任意のストリームを作成できる

同社は、上記エンコーダーと「Stream Player」、ProToolsのプラグイン、エラーチェックツールなどをパッケージにし、米国では1,500ドル前後で提供していくという。また、日本でも第3四半期にプロシューマー向けに販売を開始する予定だ。セミナーに出席したDTSのプロダクト・マネージャーのJohn Cary氏は、「映像がSDからHDへの発展を遂げるとともに、音声はチャンネル数の増加や制作時のワークフローの変化などが起こる」と語り、制作者同士のコミュニケーションの場として同セミナーを開催したと説明した。

プレーヤーソフトもセットで用意する

DTS の John Cary氏


現在、DTS-HDを収録したソフトはビデオアーツ・ミュージックが販売する「キース・ジャレット/東京ソロ2002」などHD DVD数タイトルが発売中だ。しかし、現在発売されているHD DVD-ROM再生対応機である東芝のプレーヤー「HD-XA1」やレコーダー「RD-A1」、ノートPC「Qosmio G30/697HS」は、DTS-HDのアナログ7.1ch出力やデジタルのビットストリーム出力に対応しない。デジタル出力に関しては、現在のHDMIのバージョン(Ver.1.2)でDTS-HDの出力をサポートしていないのが原因で、6月23日に正式発表されたVer.1.3(関連ニュース)より出力が可能となる。この1.3に対応したプレーヤーやAVアンプの登場は、2006年秋以降とも2007年に入ってからとも言われている。DTS-HDを完全な状態で楽しめるようになるまではもう少しの間、我慢する必要がありそうだ。

今後発売予定のDTS収録HD DVD/Blu-ray Disc

(Phile-web編集部)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE