ビクター、リアプロの薄型化&壁掛けを実現する新光学技術を開発
日本ビクター(株)は、リアプロジェクションテレビの薄型化を実現する新技術として「スリムファンクション光学エンジン」を開発したと発表。本日記者発表会を行った。
本技術は、これまでの光学エンジンに凹面ミラーを加えることでプロジェクションテレビ(PTV)の奥行きを小さくすることか可能な新技術。「袴」と呼ばれる画面下部のサイズを大きくすることなく、製品の薄型化を実現している。大幅なコストアップ要因にもならないという。発表会に展示した試作機は58V型で、約27cmの奥行きを実現している。なお、現行の50V型モデルは約43cmだ。
同社現行モデルなどに採用されている従来の投写方法は、光学エンジンから投写した光をテレビ背面の鏡に反射してスクリーンに投影する仕組み。この方法ではある一定の光路距離が必要で、大幅な薄型化は困難だった。
また、光学部と背面ミラーの間に凸面ミラーを追加し薄型化を図る方法では、凸面ミラーからの反射光が投写レンズにあたるのを防ぐために「袴」を高く設計する必要があった。
今回開発した方法では、凸面ミラーの代わりに凹面ミラーを採用。反射光の縮小を利用することで、光学エンジンとミラーをより小さい容積に収めることに成功し「袴」を大きくすることなく薄型化を実現した。
さらに本技術では、凹面ミラーを使うことで光射出部が縮小。これにより不要光の進入を低減することができ、コントラスト比の向上を実現している。また、ホコリが進入しにくい構造とすることにも成功している。
製品の開発コストは、凹面ミラーの追加分だけ高くなるが、背面ミラーの面積が従来の4分の1で済むことや、特殊な投写レンズを必要としないことから、大きくコストアップすることはないという。
本技術を採用した製品は壁掛けにも適しているという。背面をフラットな設計にできるとともに、吸排気口を全て側面に設けることができ、壁に密着させて設置することが可能となっている。
発表会に出席した専務取締役 技術開発本部長の山口南海夫氏は、PTVの市場動向と同社の取り組みについて説明を行った。
同社は、D-ILAデバイスを使用したPTVを北米で2004年に市場導入して以来、フルHD化、ラインナップ拡充という展開を進めてきた。北米市場での販売実績は縮小するのではという予想に反し、年々実績を伸ばしている。世界的な傾向で見ても50インチ以上のテレビではPTVの需要が最も高いという。
また同氏は、「PTVは、液晶、プラズマと比較して1インチあたりの価格や質量、消費電力などの点で性能が高く、問題点だった製品の奥行きに関しても今回の技術で解決することができる」と説明した。
壁掛けについて説明した技術開発本部 DPユニット長の中垣新太郎氏は、「液晶、プラズマは、放熱や設置金具の関係上、壁に密着して設置することはできなかった。新技術による製品は、壁掛けならぬ“壁ピタ”を実現することができる」とアピールした。
発表会で行われた質疑応答の主な内容は以下の通り。
Q.商品化が実現したら、PTVラインナップ全てをこの薄型にするのか?
A.まだ決めていない。従来方式を残すという考え方もあるが、新技術を採用していくのがいい方向だと思っている。
Q.本技術を採用することによるトレードオフはあるか?
A.ある。スクリーンに対して真っ直ぐ投写する方法が、光学系としては一般的に画質がよいとされている。しかし今回は性能を落とすことなく設計することができており、斜めから投射するデメリットも克服できている。
Q.2005年度の全世界でのPTVの販売実績は300万台とのことだが、2006年度の予測は?
A.少なくとも3割増くらいになるのではと予想している。
Q.凹面ミラーによって縮小化を実現した光射出部の大きさはどれくらいか?
A.具体的には決定していないが、これくらい(写真参照)。
Q.試作機は58V型だが、50V型の場合の奥行きは?
A.具体的な数字は決まっていない。従来方法のモデルではインチが代わると比例的に奥行きが増したが、今回の方法を使った場合はあまり奥行きは変わらない。
Q.技術的には現行の50〜70インチくらいに適用できるのか?
A.制約は少ない。58インチ以上から採用したいと思っている。
Q.いつ製品化する予定か?
A.2007年の早い時期にやっていきたい。
Q.コストは現行モデルに比べどれくらい上がるのか?
A.生産数量などでも変わってくるので具体的な数字は控えたい。
Q.国内でのPTVの市場概況は?
A.国内では年2万台くらい。知名度が低いのが原因だと思う。普及には時間がかかりそうだ。
Q.国内投入の時期は?
A.まだそこまでは決まっていない。まず北米からと考えている。
(Phile-web編集部)
本技術は、これまでの光学エンジンに凹面ミラーを加えることでプロジェクションテレビ(PTV)の奥行きを小さくすることか可能な新技術。「袴」と呼ばれる画面下部のサイズを大きくすることなく、製品の薄型化を実現している。大幅なコストアップ要因にもならないという。発表会に展示した試作機は58V型で、約27cmの奥行きを実現している。なお、現行の50V型モデルは約43cmだ。
同社現行モデルなどに採用されている従来の投写方法は、光学エンジンから投写した光をテレビ背面の鏡に反射してスクリーンに投影する仕組み。この方法ではある一定の光路距離が必要で、大幅な薄型化は困難だった。
また、光学部と背面ミラーの間に凸面ミラーを追加し薄型化を図る方法では、凸面ミラーからの反射光が投写レンズにあたるのを防ぐために「袴」を高く設計する必要があった。
今回開発した方法では、凸面ミラーの代わりに凹面ミラーを採用。反射光の縮小を利用することで、光学エンジンとミラーをより小さい容積に収めることに成功し「袴」を大きくすることなく薄型化を実現した。
さらに本技術では、凹面ミラーを使うことで光射出部が縮小。これにより不要光の進入を低減することができ、コントラスト比の向上を実現している。また、ホコリが進入しにくい構造とすることにも成功している。
製品の開発コストは、凹面ミラーの追加分だけ高くなるが、背面ミラーの面積が従来の4分の1で済むことや、特殊な投写レンズを必要としないことから、大きくコストアップすることはないという。
本技術を採用した製品は壁掛けにも適しているという。背面をフラットな設計にできるとともに、吸排気口を全て側面に設けることができ、壁に密着させて設置することが可能となっている。
発表会に出席した専務取締役 技術開発本部長の山口南海夫氏は、PTVの市場動向と同社の取り組みについて説明を行った。
同社は、D-ILAデバイスを使用したPTVを北米で2004年に市場導入して以来、フルHD化、ラインナップ拡充という展開を進めてきた。北米市場での販売実績は縮小するのではという予想に反し、年々実績を伸ばしている。世界的な傾向で見ても50インチ以上のテレビではPTVの需要が最も高いという。
また同氏は、「PTVは、液晶、プラズマと比較して1インチあたりの価格や質量、消費電力などの点で性能が高く、問題点だった製品の奥行きに関しても今回の技術で解決することができる」と説明した。
壁掛けについて説明した技術開発本部 DPユニット長の中垣新太郎氏は、「液晶、プラズマは、放熱や設置金具の関係上、壁に密着して設置することはできなかった。新技術による製品は、壁掛けならぬ“壁ピタ”を実現することができる」とアピールした。
発表会で行われた質疑応答の主な内容は以下の通り。
Q.商品化が実現したら、PTVラインナップ全てをこの薄型にするのか?
A.まだ決めていない。従来方式を残すという考え方もあるが、新技術を採用していくのがいい方向だと思っている。
Q.本技術を採用することによるトレードオフはあるか?
A.ある。スクリーンに対して真っ直ぐ投写する方法が、光学系としては一般的に画質がよいとされている。しかし今回は性能を落とすことなく設計することができており、斜めから投射するデメリットも克服できている。
Q.2005年度の全世界でのPTVの販売実績は300万台とのことだが、2006年度の予測は?
A.少なくとも3割増くらいになるのではと予想している。
Q.凹面ミラーによって縮小化を実現した光射出部の大きさはどれくらいか?
A.具体的には決定していないが、これくらい(写真参照)。
Q.試作機は58V型だが、50V型の場合の奥行きは?
A.具体的な数字は決まっていない。従来方法のモデルではインチが代わると比例的に奥行きが増したが、今回の方法を使った場合はあまり奥行きは変わらない。
Q.技術的には現行の50〜70インチくらいに適用できるのか?
A.制約は少ない。58インチ以上から採用したいと思っている。
Q.いつ製品化する予定か?
A.2007年の早い時期にやっていきたい。
Q.コストは現行モデルに比べどれくらい上がるのか?
A.生産数量などでも変わってくるので具体的な数字は控えたい。
Q.国内でのPTVの市場概況は?
A.国内では年2万台くらい。知名度が低いのが原因だと思う。普及には時間がかかりそうだ。
Q.国内投入の時期は?
A.まだそこまでは決まっていない。まず北米からと考えている。
(Phile-web編集部)