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東芝“REGZAシリーズ”開発者・本村氏に聞く − 録画も楽しめる薄型大画面テレビの魅力

公開日 2007/04/09 12:45
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東芝の液晶テレビシリーズREGZA(レグザ)のニューモデルが2007年4月20日から順次発売される。今回ラインアップを一新するのは、HDDを内蔵する「REGZA Hシリーズ」とスタンダードモデルの「REGZA Cシリーズ」。各ラインアップにフルHDパネル搭載モデルが加わるなど、基本スペックを向上させながら、eSATA対応HDDの増設機能の搭載など、レグザらしい新機能も満載している。ラインアップの詳細や機能については既報を参照していただきたい。

今回はレグザシリーズの商品企画と開発を担当する、(株)東芝 テレビ事業部 地域第三部日本担当参事の本村裕史氏に、開発の経緯と製品の魅力についてお話を伺った。

(インタビュー/鈴木桂水)

■最上位機Zシリーズの高画質を受け継いだH3000/C3000シリーズが誕生した

(株)東芝 テレビ事業部 地域第三部 日本担当 参事 本村裕史氏

━━2006年3月に“レグザ”のブランドが誕生して以来約1年が経ちました。当初26V型以上の薄型テレビで国内市場のシェア15%以上を目標とされていらっしゃいましたが、現在その目標はどの程度達成されているのでしょうか。
本村氏:シェアの数字は当初の目標にほぼ近づいています。それよりも“レグザ”のブランドがスタートして以来、製品の画質に対する評価が高まっており、2006年末の商戦では店頭での指名買いが大きく増えたと聞いています。大々的なCM戦略よりも、各媒体での評価のおかげで「高画質の薄型テレビなら“レグザ”」というイメージが着実に定着しているようです。

━━レグザを開発するにあたって大きなポイントとなったところは何ですか。
本村氏:一番は画質です。薄型テレビの映像は、やもすれば作られすぎた映像になりすぎて、赤が極端に強かったり、緑が青々しすぎる場合があります。東芝はブラウン管テレビから、リアルな映像を再現することを心がけて来ました。ですから、まず完成の域に達していたブラウン管の映像を目指して画作りを行いました。そのために開発されたのが、バス幅14ビット精度高画質化処理技と魔法陣アルゴリズム・プロです。これによりブラウン管のような豊かな階調表現を実現しました。一方では、バス幅を14ビットにすると、回路が複雑になり設計部門の負担が倍増しします。当初、社内でもこれを開発するのは難しいという声もありましたが、担当開発者が熱心に取り組み実現することができました。普通であれば諦めてしまう事かもしれませんが、レグザの開発チームがこのブランドに託す思いが大きかったのです。より美しく、それでいて自然な映像を正確に表示させたいという気持ちが製品にこめられています。レグザは“ホンモノ”の美しさを追い求めるために進化してきました。そして今回発売する「H3000シリーズ」と「C3000シリーズ」は、現在発売中のZシリーズ譲りの高画質回路を搭載しています。フルHDパネル搭載機もラインナップを拡充しています。


フラグシップモデルの“Zシリーズ”と同等の画質が今回実現されたという、最新“H3000シリーズ”

本村氏の説明を補足するとこうなる。映像処理回路のバス幅が広いほどに、映像に関わる情報を大量に処理できる。いわば通行量の多い道路の道幅を広げるようなものだ。道幅が広くなると交通量は増え、通過速度も速くなる。たとえばグラデーションのような夕焼け空や、人肌を滑らかに表示するにはより多くのデータを高速で処理しなければならない。バス幅が狭いと、処理が追いつかずに画面にノイズが発生してしまう。

大量に送られてきたデータを処理する回路が「魔法陣アルゴリズム・プロ」だ。この回路により、階調表現力を4,096階調まで高め、よりブラウン管に近い色の移ろいを表現できるようになった。また階調表現が適正になることで、映像が引き締まり、立体感のある表示を実現したという。確かにレグザの最上位モデルZシリーズをテストしてみると、グラデーションなどの表示の滑らかさに驚かされることが多々あり、その高画質回路による効果を実感することができる。

■録画も楽しめるレグザH3000シリーズは300GBのHDDを搭載

━━最新モデル「H3000シリーズ」と「C3000シリーズ」の特徴を教えて頂けますか。
本村氏:本体にHDDを内蔵するHシリーズは録画もできるレグザです。外部にレコーダーを接続しなくてもテレビだけでハイビジョン録画が楽しめます。手軽にテレビ録画ができるので、ファミリーユースとしてもっと快適に使っていただけるシリーズです。新モデルでは、画質の向上と外部に接続したeSATA対応のHDDに録画番組を保存できるようになりました。ご要望の多かったフルHDパネルは、H3000シリーズの37V型以上のモデルとC3000シリーズの42V型モデル搭載しました。H3000シリーズの画質は最上位モデルのZシリーズと同等と言えるでしょう。C3000シリーズは高画質とお求めやすい価格を両立させたスタンダードモデルです。フルHD搭載機は42V型のみなりますが42V型から20V型まで「新メタブレイン・プロ」を搭載して、高画質再現を可能にしました。

  サイズ 型番 パネル解像度 映像処理回路 EPG HDMI入力
H3000シリーズ
(HDD内蔵モデル)
52V型 52H3000 1,920×1,080 メタブレイン・プロ レグザ番組表・ファイン 2系統
46V型 46H3000
42V型 42H3000
37V型 37H3000
32V型 32H3000 1,366×768
Z2000シリーズ
(フラグシップモデル)
47V型 47Z2000 1,920×1,080 メタブレイン・プロ レグザ番組表・ファイン
※Z2000シリーズの番組表は2007年4月23日よりデジタル放送からのダウンロード 、またはサーバーからのダウンロードでアップグレードサービスを開始予定
3系統
42V型 42Z2000
37V型 37Z2000
32V型 32Z2000 1,366×768
C3000シリーズ
(スタンダードモデル)
42V型 42C3000 1,920×1,080 メタブレイン・プロ レグザ番組表 2系統
37V型 37C3000 1,366×768
32V型 32C3000
26V型 26C3000



H3000シリーズの録画機能の詳細について、本村氏から説明を受ける筆者

H3000シリーズでは内蔵HDDへの手軽な録画機能を実現している
━━H3000シリーズの録画機能について教えてください。
本村氏:H3000シリーズは300GBのHDDを内蔵し、ハイビジョン放送をそのままの画質で最大約39時間(地上デジタルハイビジョン放送約17Mbps時)も録画できます。ただ、HDD内蔵テレビを家族で1台のみ共有する場合は、HDD容量が足りなくなることもあると思いますので、eSATA対応の外付け型HDDを増設できるようにしています。eSATA対応のHDDは大容量の記録メディアとしても価格がこなれているので、本体のHDDがいっぱいになっても、録画コンテンツを外付けHDDにムーブして、どんどんハイビジョン録画が楽しんでいただけるようになっています。

■eSATA対応の増設HDDに対応し、ハイビジョン番組の“とりあえず録画”が楽しめる

━━今回eSATA対応のHDDを選んだのはなぜでしょうか。
本村氏:H3000シリーズは内蔵HDDがカセットタイプになっており、手軽に交換できるようになっています。しかし、専用のHDDは価格に割高感が出るのも事実です。パソコン用の周辺機器でもあるeSATA対応HDDなら、容量も自由に選べますし、専用のHDDよりも安価で入手できるのがメリットです。

eSATA対応HDDによるH3000シリーズの録画機能を紹介する本村氏

本体内蔵の300GB HDDだけでなく、eSATA対応のHDDを増設して録画が楽しめる

━━パソコン用のeSATA対応HDDをテレビ録画用に使用してもトラブルは発生しないのでしょうか。
本村氏::今回接続できるHDDとしては、当社で検証を済ませたHDDに限らせていただいています。現在はアイ・オー・データ機器のeSATA対応HDDが確認済みですが、ただ今バッファロー製の製品についても先方と一緒に検証を進めています。今後は対応機器が増えてくると思います。

━━東芝の“ヴァルディア”シリーズなど、デジタルビデオレコーダーを使うのとH3000シリーズのような録画も楽しめるテレビの違いは何であるとお考えですか。
本村氏:テレビに録画機能が付く最大のメリットは「操作が簡単」ということに尽きます。視聴中の番組をリモコンの録画ボタンを押すだけで保存できます。番組予約は番組表を表示して番組を選ぶだけで予約が完了します。私もテレビの開発に携わる仕事をしていますが、「テレビを消している時間も大切」だと考えています。例えば家族の団らんに、テレビを消したことで自然と会話が生まれてくるというご経験はありませんか?テスト勉強や宿題のあるお子さんがいれば、家の中で極力テレビを消されることでしょう。一方でテレビを使ってもっと気軽に録画が楽しめれば、テレビ番組を自分の生活のペースに合わせて視ることもできるようになります。食事中や勉強中に視れなかった番組は、取りあえず録画して後でゆっくり楽しめば良いのではないでしょうか。日常にテレビ録画が浸透するには、“テレビのタイムシフト”を気軽に行えるような製品が必要だと思います。ですので、当社としては録画も楽しめるレグザH3000シリーズを、これからのテレビ文化の基本となるべきスタイルとして考え、ファミリーユースのコアになるモデルと位置づけています。一方で、VARDIAシリーズなどのレコーダーはDVDなどに保存するいわばライブライリーを楽しむのに欠かせません。H3000シリーズで録画した番組は著作権保護の観点から、録画を行った製品のみで再生ができるようになっています。一方、ヴァルディアを使えば各種DVDメディアに番組をアーカイブすることもできますし、高度な編集も可能です。両方を揃えると豊かな録画が実現するはずです。


ここでeSATA対応HDDについて説明しよう。eSATAとはパソコンの周辺機器の規格で「External Serial ATA(外付け用のシリアルATA)」の略だ。周辺機器の接続に使われるUSB2.0のデータ転送速度は(60MB/秒)だが、eSATAはそれよりも約2.5倍高速な150MB/秒でのデータ転送が可能である。これによりデータ容量の大きいハイビジョン映像を外付け機器へ録画する場合は、データの転送レートがボトルネックになるが、eSATA接続を採用することでこれを実現できる。ちなみに本項執筆時点での筆者調査では、アイ・オー・データ機器の250GBモデル「HDC-UX250」で実売価格は1万8,800円、300GBモデルの「HDC-UX300」で2万800円だった。現在2層記録できる書き替え型のBDメディアの価格が25GBで2,480円、50GBだと5,980円がアベレージの価格であることを考えれば、HDDの方が割安であるということになる。ただし今回のレグザの場合は、セキュリティ機能により本体に登録できるのは4台までで、録画した機体でのみ再生できる仕様になっている。また外付けHDDへの直接録画はできず、一度本体のHDDに録画した後、外付けHDDへムーブして保存する。


■「7ch・6時間表示」に対応、グッと見やすくなったEPGを搭載

━━今回から採用された「レグザ番組表・ファイン」について教えてください。
本村氏:高精細フォントによる高解像度表示を実現して小さな文字も読みやすくしました。それにより表示できる情報量が格段に増えて、番組名だけでなく番組の内容も一目で確認できるようにしました。その情報量は新聞のテレビ欄並みなので、番組探しから放送内容の確認までとにかく重宝するものと思います。

従来の「6ch・5時間」による「レグザ番組表」

「レグザ番組表・ファイン」では、一画面に表示できる範囲を「7ch・6時間」に拡大している

━━「レグザ番組表・ファイン」が搭載されているのがH3000シリーズと、4月23日からアップグレード提供されるZ2000シリーズのみですが、Cシリーズでは対応しないのでしょうか。
本村氏:実は本機能はH3000シリーズへの搭載を視野に、Z2000シリーズをベースに開発していました。その後開発を進めていくうちに、とても便利なのでZ2000シリーズのユーザーの皆様にもご提供したいと考え、このたびアップグレードサービスによりご提供させて頂くことになりました。残念ながら今回C3000シリーズへの対応は見送らせて頂きました。


■120Hz駆動パネルは期待の次期“Zシリーズ”に採用か?

━━今回のラインアップでは動画表示に強い、120Hz駆動パネルを搭載されなかったようですが、その背景を教えて頂けますか。
本村氏:既に欧米ではCES2007などのイベントでも発表されているので、国内にも問い合わせが多い事は存じております。120Hz表示に対応すれば動きの速い映像を表示したときにブレやボケが軽減します。ただ、これは映像回路が処理するアルゴリズムの調整を確実に行わないと、逆にノイズが発生することもあります。まずは欧米の製品を先行させて、その状況を見ながら国内製品のハイエンドモデルにも投入していく予定です。

━━次期“Zシリーズ”から120Hz駆動パネルになるのでしょうか。
本村氏:ご期待いただければと思います。当社は“Zシリーズ”では最新の技術をふんだんに盛り込んだ“最高品質の薄型大画面テレビ”を目指しています。欧米で発表する120Hzモデルをさらにブラッシュアップして、国内のモデルにも搭載できるように鋭意開発中です。


今回ファミリーユースとスタンダードタイプを一新した“レグザ”シリーズ。特にH3000シリーズは外付けHDDに対応して録画機能をさらに強化してきた。松下電器の“ビエラ”やシャープの“アクオス”シリーズがレコーダーとの連携を強化する中、メディアへの保存よりも簡単な録画操作を前面に押し出しているのが、“レグザH3000シリーズ”だ。今後、HDD内蔵型の薄型大画面テレビが創り出していくエンターテインメントにいっそう注目して行きたい。

【ケースイメモでインタビューを総括!】
・2007年春夏の新商品はHDD搭載のHシリーズとスタンダードモデルのCシリーズで展開
・H3000シリーズはフルHD搭載機を充実させ、Z2000シリーズと同等の画質を実現した
・H3000シリーズは安価な外付けHDDの増設に対応
・Zシリーズの後継機は120Hz対応で秋以降の発売が期待される



鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら


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