<NHK技研公開2007>スーパーハイビジョン撮影・圧縮・伝送の新技術を公開
NHK放送技術研究所の公開展示「技研公開」が今年も開催される。一般公開は5月24日(木)から28日(日)。
61回目となる今回のテーマは“未知を探る・未来を創る”。スーパーハイビジョンの撮影に対応する、3,300万画素を実現した撮像素子をはじめ、テレビ放送に関わる最新の技術が公開されている。本日22日はプレスデイとして、報道関係者を対象に展示を公開した。
本項では「スーパーハイビジョン」関連の展示内容をご紹介する。
■谷岡所長が語る「次なる映像技術」
公開に先立ち、放送技術研究所 所長 谷岡健吉氏が挨拶を行った。同氏は「技研では、各種放送、デバイス、PDP、高感度カメラなど、様々な分野で先端の技術を実現してきた。技研の特徴は基礎から応用までを一貫してやることだ。今回のキーワードは“未知を探る・未来を創る”とし、次の時代の構想を実際に体験してもらおうと思っている。また、地デジが全国スタートしたこともあり、放送の未来を示していかなければならないと思っている」と、今回の技研公開に対する意気込みを語った。
また、スーパーハイビジョンの開発が順調に進んでいることを説明した上で、「スーパーハイビジョンは2次元映像の究極のシステムとなるが、これで映像に関する研究が終わってしまうというわけではない。次なる技術として立体テレビの研究に着手している」と語った。
なお立体テレビは“目が疲れない”“自然な画”“寝転がってでも見られる”といった目標を掲げ研究が進められており、今回の展示でもその技術の一端を見ることができる。
■世界初3,300万画素撮影技術
今回の最も大きなトピックとなるのが、スーパーハイビジョン1画面分と同じ7,680×4,320画素、すなわち約3,300万画素の撮像素子の開発だ。これまでスーパーハイビジョン映像は、800万画素の撮像素子4枚(R、G、G、B)を使い、画素ずらし手法を使うことで撮影してきた。しかし、今回の素子を使用することで、R、G、B 3枚だけでより正確な撮影が可能になる。
本素子はCMOS技術を使用することで、高速、広帯域の信号出力やAD変換などの機能を集積可能にしている。なお信号出力は12bit 16並列で行われる。
今回の展示では、単板で撮影した白黒映像を公開。撮影した映像をフル解像度で表示できるディスプレイがないため、4分割した映像を表示し、その解像度の高さを確認することができる。
■スーパーハイビジョン映像体験
450インチ(10m×5.5m)の巨大スクリーンを設置した視聴室で、7,680×4,320画素のスーパーハイビジョン映像と、22.2chの高臨場感音響を体験することができる。投写システムは昨年と同様で、映像は2台のプロジェクターを使って投射される。
合計約4分間のスーパーハイビジョン映像は、今回の公開用に編集されたものだ。まず初めに地球に隕石が衝突するCG映像が上映される。この映像は、NHKスペシャル「地球大進化」で使われたCGをスーパーハイビジョン化したもので、直径400kmの隕石が現在の地球に衝突した場合のシミュレーションを大画面で体感することができる。次に上映されるのは、競走馬ディープインパクトが有馬記念で最後のレースに挑んだときの映像。数千、数万という観客を高解像度で映し出した映像は圧巻だ。そして最後に上映されたのが、スーパーハイビジョンとしては初の空撮映像。東京のビル群を映し出した映像では、渋谷から六本木までを一望する超広範囲のアングルながら、遙か下方を走る自動車の姿まで確認できた。
■スーパーハイビジョンのH.264圧縮技術
スーパーハイビジョン映像信号をMPEG4 AVC/H.264に変換する世界初の技術も初めて公開された。16台の符号化ユニットによる符号化装置を使い、同信号をリアルタイムでMPEG4 AVC/H.264に変換。容量を1/100〜1/200に高圧縮することで、信号の伝送を容易にすることが可能となる。圧縮された信号は、16台の複合ユニットによる複合装置でスーパーハイビジョン映像信号に戻すことが可能だ。
■スーパーハイビジョン衛星放送システム
スーパーハイビジョンの伝送技術としては、衛星放送システムを使った新技術も展示された。新技術では、BS放送で使用されている12GHz帯の上の帯域である、21GHz帯の衛星伝送路を使うことで、スーパーハイビジョンの圧縮信号を複数チャンネル同時に伝送することが可能となる。本技術は、500Mbpsの信号を伝送可能な広帯域変調記の開発により実現したという。
■高精細プラズマディスプレイ
技研では、スーパーハイビジョン映像を家庭で楽しめるようにするため、PDPの開発も続けている。スーパーハイビジョンを100インチに表示するためには、画素ピッチが0.3mmであることが条件だ。
本ブースでは、これまで公開してきたものと同じ6.5インチ、画素ピッチ0.3mmのPDPを展示。しかし今回出展したディスプレイは、放電セル構造を改善することにより、発行効率を1.5倍(0.8から1.1)に改善しているという。
また他にも、100インチを超える大型ディスプレイを目指した基礎検討として、画素ピッチ0.36mmの16インチPDPも開発。さらに、低消費電力化を目指し、酸化マグネシウムの代わりに酸化ストロンチウムカルシウムを電極保護膜に用いたPDPも展示している。
(Phile-web編集部)
61回目となる今回のテーマは“未知を探る・未来を創る”。スーパーハイビジョンの撮影に対応する、3,300万画素を実現した撮像素子をはじめ、テレビ放送に関わる最新の技術が公開されている。本日22日はプレスデイとして、報道関係者を対象に展示を公開した。
本項では「スーパーハイビジョン」関連の展示内容をご紹介する。
■谷岡所長が語る「次なる映像技術」
また、スーパーハイビジョンの開発が順調に進んでいることを説明した上で、「スーパーハイビジョンは2次元映像の究極のシステムとなるが、これで映像に関する研究が終わってしまうというわけではない。次なる技術として立体テレビの研究に着手している」と語った。
なお立体テレビは“目が疲れない”“自然な画”“寝転がってでも見られる”といった目標を掲げ研究が進められており、今回の展示でもその技術の一端を見ることができる。
■世界初3,300万画素撮影技術
今回の最も大きなトピックとなるのが、スーパーハイビジョン1画面分と同じ7,680×4,320画素、すなわち約3,300万画素の撮像素子の開発だ。これまでスーパーハイビジョン映像は、800万画素の撮像素子4枚(R、G、G、B)を使い、画素ずらし手法を使うことで撮影してきた。しかし、今回の素子を使用することで、R、G、B 3枚だけでより正確な撮影が可能になる。
本素子はCMOS技術を使用することで、高速、広帯域の信号出力やAD変換などの機能を集積可能にしている。なお信号出力は12bit 16並列で行われる。
今回の展示では、単板で撮影した白黒映像を公開。撮影した映像をフル解像度で表示できるディスプレイがないため、4分割した映像を表示し、その解像度の高さを確認することができる。
■スーパーハイビジョン映像体験
450インチ(10m×5.5m)の巨大スクリーンを設置した視聴室で、7,680×4,320画素のスーパーハイビジョン映像と、22.2chの高臨場感音響を体験することができる。投写システムは昨年と同様で、映像は2台のプロジェクターを使って投射される。
合計約4分間のスーパーハイビジョン映像は、今回の公開用に編集されたものだ。まず初めに地球に隕石が衝突するCG映像が上映される。この映像は、NHKスペシャル「地球大進化」で使われたCGをスーパーハイビジョン化したもので、直径400kmの隕石が現在の地球に衝突した場合のシミュレーションを大画面で体感することができる。次に上映されるのは、競走馬ディープインパクトが有馬記念で最後のレースに挑んだときの映像。数千、数万という観客を高解像度で映し出した映像は圧巻だ。そして最後に上映されたのが、スーパーハイビジョンとしては初の空撮映像。東京のビル群を映し出した映像では、渋谷から六本木までを一望する超広範囲のアングルながら、遙か下方を走る自動車の姿まで確認できた。
■スーパーハイビジョンのH.264圧縮技術
スーパーハイビジョン映像信号をMPEG4 AVC/H.264に変換する世界初の技術も初めて公開された。16台の符号化ユニットによる符号化装置を使い、同信号をリアルタイムでMPEG4 AVC/H.264に変換。容量を1/100〜1/200に高圧縮することで、信号の伝送を容易にすることが可能となる。圧縮された信号は、16台の複合ユニットによる複合装置でスーパーハイビジョン映像信号に戻すことが可能だ。
■スーパーハイビジョン衛星放送システム
スーパーハイビジョンの伝送技術としては、衛星放送システムを使った新技術も展示された。新技術では、BS放送で使用されている12GHz帯の上の帯域である、21GHz帯の衛星伝送路を使うことで、スーパーハイビジョンの圧縮信号を複数チャンネル同時に伝送することが可能となる。本技術は、500Mbpsの信号を伝送可能な広帯域変調記の開発により実現したという。
■高精細プラズマディスプレイ
技研では、スーパーハイビジョン映像を家庭で楽しめるようにするため、PDPの開発も続けている。スーパーハイビジョンを100インチに表示するためには、画素ピッチが0.3mmであることが条件だ。
本ブースでは、これまで公開してきたものと同じ6.5インチ、画素ピッチ0.3mmのPDPを展示。しかし今回出展したディスプレイは、放電セル構造を改善することにより、発行効率を1.5倍(0.8から1.1)に改善しているという。
また他にも、100インチを超える大型ディスプレイを目指した基礎検討として、画素ピッチ0.36mmの16インチPDPも開発。さらに、低消費電力化を目指し、酸化マグネシウムの代わりに酸化ストロンチウムカルシウムを電極保護膜に用いたPDPも展示している。
(Phile-web編集部)