【一条真人の体当たり実験室】BD-Jを自分で作る − オーサリングソフト「Click to Disc」を試してみた
■ようやく出てきたBD-J対応オーサリングソフト
Blu-ray DiscがDVDから進化した点は、単に容量が大きくなって、映像がハイビジョン化しただけではない。ご存じの通り、コピープロテクションやメニュー機能に関しても大きな進化を遂げている。DVDビデオでは、メニュー機能は単純にユーザーが再生するビデオクリップやチャプターを選択するだけのものだったが、BDではこの部分にBD-JというJava系言語を使い、よりインタラクティブなものが作成できるようになっている。
しかし、今まではこのBD-J機能は市販ビデオコンテンツに使われていただけで、BD-Jに対応した市販オーサリングソフトは存在しなかった。そのため、ユーザーがブルーレイビデオディスクを作成する場合でも、DVDビデオと同様のシンプルメニューしか作成できなかったわけだ。そんな状況のなか、ついにBD-Jを使ったBDオーサリング対応ソフト「Click to Disc」が登場した。
ただし、これは残念ながら市販ソフトではなく、ソニーのパソコン「Vaio」の一部機種にバンドルされるソフトだ。現在、Click to DiscはVaioに広くバンドルされているが、当然、BD-Jオーサリングができるのは、記録型ブルーレイドライブ搭載機種に限られる。今回はそのなかからディスプレイ一体型モデル「Vaio typeL」の22インチモデル「VGC-LT81DB」を使って、Click to DiscでのBD-Jオーサリングにトライしてみた。
■Click to Discでできること
BD-Jは多彩な機能を持つプログラミング言語でネットワークにも対応しており、インターネット経由でムービーをダウンロードしてストリーミング表示することも可能だ。とはいえ、Click to Discは民生用ソフトなので、そこまでの機能には対応していない。Click to DiscのBD-Jモードの特徴的な機能を挙げると、以下のようになる。
・チャプタ一覧表示
本編を再生中に、画面の下部にディスクに収録している動画をサムネイル表示させ、選択して再生することができる。
・シンクロ再生
同時刻に複数のビデオカメラやデジタルカメラで撮影した映像を、切り替えて表示させることができる機能。結婚式などで同時に複数のビデオカメラで撮影した映像を活用するには面白い。当然、同時刻に撮影した複数の映像がない場合は意味がない。
・動画メニュー
ディスクメニューの背景にディスクに含まれる動画をランダムに切り替え、BGMとともに表示する。
・プレイリスト
プレイリストによって動画を分類できる。プレイリストは起動メニューから選択することができ、目的のプレイリストの動画を連続再生することができる。
・カレンダービュー
カレンダー表示のなかに、その日に撮影した動画のサムネイルを表示。日付を選択すると、その日に撮影した動画を再生することができる。
■Click to Discの構成
Click to Discは「Click to Disc」と「Click to Disc Editor」の2つのソフトから構成されている。Click to Discはウィザードに従って、操作していくだけで、ビデオカメラから映像を取り込んでBD-Jディスクを作成できるソフト。
Click to Disc Editorはビデオカメラからの映像取り込みに加え、既存のビデオファイルの読み込みも可能。そして、プレイリストの編集や動画のトリミングなど、より細かい編集作業をすることができる。このソフトでは常に完成イメージを確認しながら作業できるため、ディスク編集が行いやすい。
ビデオカメラの映像をBDにバックアップしたいだけで、面倒なオーサリングをしたくないという方は、Click to Discだけでも前述のようなBD-J機能を駆使したビデオディスクを作成することができる。
なお、作成したBD-Jディスクの再生環境は、PLAYSTATION3(要最新ファーム)および2008年1月以降発売のVAIOで「WinDVD BD」をプリインストールしているモデルに限られる。同社のブルーレイレコーダーでの再生は保証されていないことになる。
■Click to Discで映像を取り込む
それでは実際のClick to DiscでのBD-Jディスク作成を見てみよう。
まず、映像を取り込む必要がある。スタートメニューから起動すると、起動メニューが表示されるので、まずは取込先と転送先を選択する。
転送先はDVDかBDかハードディスクが選択できる。BDに関しては、BD-J、普通のメニュー、メニューなしが選択できる。当然、BD-Jディスクを作成するなら「ブルーレイディスク(Javaメニュー付き)」を選択する必要がある。
取り込み元は、DVカメラの場合は「ビデオカメラ(i.Link接続)」を、HDDビデオカメラやメモリースティックに記録するタイプの場合は「ハンディカム(HDD、メモリースティック)」を選択する。DVDディスクやデジカメ、アナログ入力端子からの取り込みも選択できる。選択後に「開始」で取り込み処理が開始され、後はメッセージに従って作業していけばいい。
なお、ここで「編集ソフトウェアを起動する」をクリックすることで、メニューを編集できる。実行するとメニューデザインの選択ダイアログが表示され、好きなものを選択できる。それぞれBGMが異なっており、BGMを変更することはできない。なお、バックの映像はサンプルなので、実際のディスク作成時は、BDに収録されている映像が自動的にセレクトされて使われる。
HDD/フラッシュメモリからの取り込みの場合、続いてビデオカメラからの取り込み画像の選択処理になる。ビデオカメラ内の映像がスキャンされ、表示される。デフォルトではすべてが転送対象だが、目的の映像だけを選択して転送することもできる。選択後、「開始」をクリックすると取り込みが開始される。
続いて、セットしてあるディスクメディアの認識が行われる。ディスクにすでに「Click To Disc」で作成したデータがある場合、追記を選択することもできる。すでにデータが書かれているBD-REメディアの場合、メディアを初期化して書き込むこともできる。
■取り込みからディスク作成までワンクリックで行える
続いてビデオカメラの映像が転送される。DV/HDVカメラの場合、DVテープがスキャンされ、映像のある部分が自動認識され、DVキャプチャが行われる。ビデオ映像の取り込み後、ファイルの変換、データの書き込みが行われて、ディスク作成が終了となる。この間、ユーザーには何もする必要がない。
全体的な作業としては、ユーザーはビデオカメラを接続して、取込先、作成ディスクの種類を選択して、開始ボタンをクリックするだけで、後はソフトが勝手に作業をしてくれる。AVCHDビデオカメラでは、取り込みビデオを選択する必要があるし、すでにデータのあるディスクへの追記などでは処理を選択する必要があるが、DVやHDVビデオカメラであれば、本当にワンクリックで処理が終わってしまう。まさに「ワンクリック作成」だ。
■「Click to Disc Editor」でBD-Jメニューを作成
次に「Click to Disc Editor」を見てみよう。Click to Disc Editorでは、起動時にまず作成メディアを選択する必要がある。デフォルトで選択されているのはBD-Jになる。
Editorが起動すると、まず表示されるのは、コンテンツの登録画面。このダイアログに、ディスクに焼きたい動画などをドラッグ&ドロップするだけでプレイリストに登録される。
これでドラッグ&ドロップしたファイルが登録され、「できあがりイメージ確認」画面が表示される。まずは登録したプレイリストの「チャプタ一覧」で取り込んだ映像のサムネイルが表示される。AVCHDのようなデジタルビデオカメラで撮影したビデオクリップの場合、ここでは1つ1つのビデオファイルが1つのチャプターとして表示される。
これに対して、HDV/DVビデオカメラからDVキャプチャーで取り込んだ素材は1つのファイルの映像を切れ目が自動認識され、複数のチャプターに分割されて表示される。
さて、「できあがりイメージの確認」という名前通り、これは作成するBD-Jディスクのイメージそのままとなる。左のツリーを見るとこのBD-Jディスクのメニュー構造がわかる。最初に表示されているこの画面は、BD-Jディスク再生時には、トップメニュー>プレイリスト>プレイリスト一覧>プレイリスト1>チャプタ一覧で表示されるのと同じものだ。
なお、左のツリーをクリックすることで、どの階層のメニューもプレビュー表示することができる。
ちなみに、素材を一度、登録した後でも追加することも可能で、「できあがりイメージ確認」画面に動画ファイルをドラッグ&ドロップすれば、プレイリスト登録ダイアログが表示され、好きなプレイリストに動画を登録できる。既存プレイリストに追加することもできるし、新しいプレイリストを作成することも可能だ。
ツリーの「カレンダー」を開くと、カレンダー機能でのプレビューも簡単にできる。さらに「メニューデザイン」を選択で、Click to Disc同様、メニューデザインを選択できる。選択できるメニューは変わらないのが残念なところ。
「できあがりイメージの確認」では、忠実な再生イメージを確認できるわけだが、「書き込み素材の確認・編集ページ」では、プレイリストの作成やビデオクリップのプレイリストへの登録などが簡単に行える。
また、「おまかせイベント分割」機能を使うと、撮影日時などに基づいて、自動的にビデオクリップが分類されてプレイリスト登録される。これは特定のプレイリストごとにも、すべての登録動画にも行うことができる。ビデオクリックを撮影日時別に素早く分類したいときは便利な機能だ。編集後、「ディスク作成開始」をクリックすると、ブルーレイメディアへの書き込みが開始される。
■完成したBD-Jメニューを動画で確認
【PS3起動メニュー編】
【カレンダー編】
【シンクロ再生編】
【 チャプター一覧編】
■BD-R追記ではPS3再生でトラブル発生
Click to Discは追記に対応していおり、必要に応じてClick to Discで作成したBD-Jディスクにビデオデータを追加できるのだが、BD-Rメディアを使った場合はどうか、ということもテストしてみた。使ったメディアはソニー製の2倍速対応のもので、何度かBD-Rメディアに追記してオーサリングしても、さすがにVAIOのBDプレーヤーソフト「WinDVD BD」で再生する分には問題なかった。
前述のようにClick to Discで作成したBD-Jディスクの再生環境は、PS3と2008年1月以降発売の VAIO で「WinDVD BD」をプリインストールしているモデルということなので、PS3での再生もテストしてみたところ、BD-REでは完璧な動作だったが、BD-Rでは少々トラブルが発生した。
1回目の追記では問題なかったものの、2回以上の追記ではチャプター表示させた場合、サムネイルが黒くなって映像が表示されないなどのトラブルが起きた。さらに、場合によっては、ポップアップメニューがなかなか表示されないこともあった。
また、複数回追記したBD-Jディスクは、PS3のプレーヤー起動時のメディア認識にも時間がかかり、再生開始までやや待たされる。これは書き換え可能なBD-REと異なり、データを追加しかできないBD-Rでは、追記した場合は複数のファイル管理情報を持つことになり、それらの情報を取得してからではないと処理が行えないためではないかと思う。
チャプター一覧表示に関しては、Click to Discのソフト的なアップデートで対応可能かも知れないとも思うが、起動時の処理が遅くなる原因が前述の推測の通りとすれば、メディアの特性の問題なので、改善される可能性は薄いだろう。
結論として言うと、オーサリングしたBD-JディスクをVAIO以外のプラットフォームで再生する予定があり、さらに何回も追記をするような使い方をするなら、BD-RではなくBD-REメディアを使うのがお薦めだ。
■BD-Jに対応したClick to Discで何が変わる?
市販ビデオタイトルの場合と比較すれば、Click to Discで使えるBD-J機能はごく限られたものだ。しかし、それはコンシューマー用途のツボを押さえた的確なものであると感じた。
Click to Discでは、簡単な作業でBDにビデオカメラやデジカメで撮影した映像を追加記録していくことができる。そして、この追加した映像を含め、ディスク上のすべての映像をカレンダー機能で日付から簡単に探すことができる。Click to Discはユーザーを映像の分類検索作業から解放してくれる。
また、もし同時に複数の機器で撮影した映像があれば、シンクロ再生することも可能だ。これらのBD-Jの機能はユーザーが特に設定を行う必要がなく、単にClick to DiscでビデオカメラからBDに映像をバックアップするだけで使うことができる。
Click to Discは、BDが単に容量が大きいだけでなく、使い勝手の面でも“次世代”を実現したことを感じさせてくれるソフトだ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。
Blu-ray DiscがDVDから進化した点は、単に容量が大きくなって、映像がハイビジョン化しただけではない。ご存じの通り、コピープロテクションやメニュー機能に関しても大きな進化を遂げている。DVDビデオでは、メニュー機能は単純にユーザーが再生するビデオクリップやチャプターを選択するだけのものだったが、BDではこの部分にBD-JというJava系言語を使い、よりインタラクティブなものが作成できるようになっている。
しかし、今まではこのBD-J機能は市販ビデオコンテンツに使われていただけで、BD-Jに対応した市販オーサリングソフトは存在しなかった。そのため、ユーザーがブルーレイビデオディスクを作成する場合でも、DVDビデオと同様のシンプルメニューしか作成できなかったわけだ。そんな状況のなか、ついにBD-Jを使ったBDオーサリング対応ソフト「Click to Disc」が登場した。
ただし、これは残念ながら市販ソフトではなく、ソニーのパソコン「Vaio」の一部機種にバンドルされるソフトだ。現在、Click to DiscはVaioに広くバンドルされているが、当然、BD-Jオーサリングができるのは、記録型ブルーレイドライブ搭載機種に限られる。今回はそのなかからディスプレイ一体型モデル「Vaio typeL」の22インチモデル「VGC-LT81DB」を使って、Click to DiscでのBD-Jオーサリングにトライしてみた。
■Click to Discでできること
BD-Jは多彩な機能を持つプログラミング言語でネットワークにも対応しており、インターネット経由でムービーをダウンロードしてストリーミング表示することも可能だ。とはいえ、Click to Discは民生用ソフトなので、そこまでの機能には対応していない。Click to DiscのBD-Jモードの特徴的な機能を挙げると、以下のようになる。
・チャプタ一覧表示
本編を再生中に、画面の下部にディスクに収録している動画をサムネイル表示させ、選択して再生することができる。
・シンクロ再生
同時刻に複数のビデオカメラやデジタルカメラで撮影した映像を、切り替えて表示させることができる機能。結婚式などで同時に複数のビデオカメラで撮影した映像を活用するには面白い。当然、同時刻に撮影した複数の映像がない場合は意味がない。
・動画メニュー
ディスクメニューの背景にディスクに含まれる動画をランダムに切り替え、BGMとともに表示する。
・プレイリスト
プレイリストによって動画を分類できる。プレイリストは起動メニューから選択することができ、目的のプレイリストの動画を連続再生することができる。
・カレンダービュー
カレンダー表示のなかに、その日に撮影した動画のサムネイルを表示。日付を選択すると、その日に撮影した動画を再生することができる。
■Click to Discの構成
Click to Discは「Click to Disc」と「Click to Disc Editor」の2つのソフトから構成されている。Click to Discはウィザードに従って、操作していくだけで、ビデオカメラから映像を取り込んでBD-Jディスクを作成できるソフト。
Click to Disc Editorはビデオカメラからの映像取り込みに加え、既存のビデオファイルの読み込みも可能。そして、プレイリストの編集や動画のトリミングなど、より細かい編集作業をすることができる。このソフトでは常に完成イメージを確認しながら作業できるため、ディスク編集が行いやすい。
ビデオカメラの映像をBDにバックアップしたいだけで、面倒なオーサリングをしたくないという方は、Click to Discだけでも前述のようなBD-J機能を駆使したビデオディスクを作成することができる。
なお、作成したBD-Jディスクの再生環境は、PLAYSTATION3(要最新ファーム)および2008年1月以降発売のVAIOで「WinDVD BD」をプリインストールしているモデルに限られる。同社のブルーレイレコーダーでの再生は保証されていないことになる。
■Click to Discで映像を取り込む
それでは実際のClick to DiscでのBD-Jディスク作成を見てみよう。
まず、映像を取り込む必要がある。スタートメニューから起動すると、起動メニューが表示されるので、まずは取込先と転送先を選択する。
転送先はDVDかBDかハードディスクが選択できる。BDに関しては、BD-J、普通のメニュー、メニューなしが選択できる。当然、BD-Jディスクを作成するなら「ブルーレイディスク(Javaメニュー付き)」を選択する必要がある。
取り込み元は、DVカメラの場合は「ビデオカメラ(i.Link接続)」を、HDDビデオカメラやメモリースティックに記録するタイプの場合は「ハンディカム(HDD、メモリースティック)」を選択する。DVDディスクやデジカメ、アナログ入力端子からの取り込みも選択できる。選択後に「開始」で取り込み処理が開始され、後はメッセージに従って作業していけばいい。
なお、ここで「編集ソフトウェアを起動する」をクリックすることで、メニューを編集できる。実行するとメニューデザインの選択ダイアログが表示され、好きなものを選択できる。それぞれBGMが異なっており、BGMを変更することはできない。なお、バックの映像はサンプルなので、実際のディスク作成時は、BDに収録されている映像が自動的にセレクトされて使われる。
HDD/フラッシュメモリからの取り込みの場合、続いてビデオカメラからの取り込み画像の選択処理になる。ビデオカメラ内の映像がスキャンされ、表示される。デフォルトではすべてが転送対象だが、目的の映像だけを選択して転送することもできる。選択後、「開始」をクリックすると取り込みが開始される。
続いて、セットしてあるディスクメディアの認識が行われる。ディスクにすでに「Click To Disc」で作成したデータがある場合、追記を選択することもできる。すでにデータが書かれているBD-REメディアの場合、メディアを初期化して書き込むこともできる。
■取り込みからディスク作成までワンクリックで行える
続いてビデオカメラの映像が転送される。DV/HDVカメラの場合、DVテープがスキャンされ、映像のある部分が自動認識され、DVキャプチャが行われる。ビデオ映像の取り込み後、ファイルの変換、データの書き込みが行われて、ディスク作成が終了となる。この間、ユーザーには何もする必要がない。
全体的な作業としては、ユーザーはビデオカメラを接続して、取込先、作成ディスクの種類を選択して、開始ボタンをクリックするだけで、後はソフトが勝手に作業をしてくれる。AVCHDビデオカメラでは、取り込みビデオを選択する必要があるし、すでにデータのあるディスクへの追記などでは処理を選択する必要があるが、DVやHDVビデオカメラであれば、本当にワンクリックで処理が終わってしまう。まさに「ワンクリック作成」だ。
■「Click to Disc Editor」でBD-Jメニューを作成
次に「Click to Disc Editor」を見てみよう。Click to Disc Editorでは、起動時にまず作成メディアを選択する必要がある。デフォルトで選択されているのはBD-Jになる。
Editorが起動すると、まず表示されるのは、コンテンツの登録画面。このダイアログに、ディスクに焼きたい動画などをドラッグ&ドロップするだけでプレイリストに登録される。
これでドラッグ&ドロップしたファイルが登録され、「できあがりイメージ確認」画面が表示される。まずは登録したプレイリストの「チャプタ一覧」で取り込んだ映像のサムネイルが表示される。AVCHDのようなデジタルビデオカメラで撮影したビデオクリップの場合、ここでは1つ1つのビデオファイルが1つのチャプターとして表示される。
これに対して、HDV/DVビデオカメラからDVキャプチャーで取り込んだ素材は1つのファイルの映像を切れ目が自動認識され、複数のチャプターに分割されて表示される。
さて、「できあがりイメージの確認」という名前通り、これは作成するBD-Jディスクのイメージそのままとなる。左のツリーを見るとこのBD-Jディスクのメニュー構造がわかる。最初に表示されているこの画面は、BD-Jディスク再生時には、トップメニュー>プレイリスト>プレイリスト一覧>プレイリスト1>チャプタ一覧で表示されるのと同じものだ。
なお、左のツリーをクリックすることで、どの階層のメニューもプレビュー表示することができる。
ちなみに、素材を一度、登録した後でも追加することも可能で、「できあがりイメージ確認」画面に動画ファイルをドラッグ&ドロップすれば、プレイリスト登録ダイアログが表示され、好きなプレイリストに動画を登録できる。既存プレイリストに追加することもできるし、新しいプレイリストを作成することも可能だ。
ツリーの「カレンダー」を開くと、カレンダー機能でのプレビューも簡単にできる。さらに「メニューデザイン」を選択で、Click to Disc同様、メニューデザインを選択できる。選択できるメニューは変わらないのが残念なところ。
「できあがりイメージの確認」では、忠実な再生イメージを確認できるわけだが、「書き込み素材の確認・編集ページ」では、プレイリストの作成やビデオクリップのプレイリストへの登録などが簡単に行える。
また、「おまかせイベント分割」機能を使うと、撮影日時などに基づいて、自動的にビデオクリップが分類されてプレイリスト登録される。これは特定のプレイリストごとにも、すべての登録動画にも行うことができる。ビデオクリックを撮影日時別に素早く分類したいときは便利な機能だ。編集後、「ディスク作成開始」をクリックすると、ブルーレイメディアへの書き込みが開始される。
■完成したBD-Jメニューを動画で確認
【PS3起動メニュー編】
【カレンダー編】
【シンクロ再生編】
【 チャプター一覧編】
■BD-R追記ではPS3再生でトラブル発生
Click to Discは追記に対応していおり、必要に応じてClick to Discで作成したBD-Jディスクにビデオデータを追加できるのだが、BD-Rメディアを使った場合はどうか、ということもテストしてみた。使ったメディアはソニー製の2倍速対応のもので、何度かBD-Rメディアに追記してオーサリングしても、さすがにVAIOのBDプレーヤーソフト「WinDVD BD」で再生する分には問題なかった。
前述のようにClick to Discで作成したBD-Jディスクの再生環境は、PS3と2008年1月以降発売の VAIO で「WinDVD BD」をプリインストールしているモデルということなので、PS3での再生もテストしてみたところ、BD-REでは完璧な動作だったが、BD-Rでは少々トラブルが発生した。
1回目の追記では問題なかったものの、2回以上の追記ではチャプター表示させた場合、サムネイルが黒くなって映像が表示されないなどのトラブルが起きた。さらに、場合によっては、ポップアップメニューがなかなか表示されないこともあった。
また、複数回追記したBD-Jディスクは、PS3のプレーヤー起動時のメディア認識にも時間がかかり、再生開始までやや待たされる。これは書き換え可能なBD-REと異なり、データを追加しかできないBD-Rでは、追記した場合は複数のファイル管理情報を持つことになり、それらの情報を取得してからではないと処理が行えないためではないかと思う。
チャプター一覧表示に関しては、Click to Discのソフト的なアップデートで対応可能かも知れないとも思うが、起動時の処理が遅くなる原因が前述の推測の通りとすれば、メディアの特性の問題なので、改善される可能性は薄いだろう。
結論として言うと、オーサリングしたBD-JディスクをVAIO以外のプラットフォームで再生する予定があり、さらに何回も追記をするような使い方をするなら、BD-RではなくBD-REメディアを使うのがお薦めだ。
■BD-Jに対応したClick to Discで何が変わる?
市販ビデオタイトルの場合と比較すれば、Click to Discで使えるBD-J機能はごく限られたものだ。しかし、それはコンシューマー用途のツボを押さえた的確なものであると感じた。
Click to Discでは、簡単な作業でBDにビデオカメラやデジカメで撮影した映像を追加記録していくことができる。そして、この追加した映像を含め、ディスク上のすべての映像をカレンダー機能で日付から簡単に探すことができる。Click to Discはユーザーを映像の分類検索作業から解放してくれる。
また、もし同時に複数の機器で撮影した映像があれば、シンクロ再生することも可能だ。これらのBD-Jの機能はユーザーが特に設定を行う必要がなく、単にClick to DiscでビデオカメラからBDに映像をバックアップするだけで使うことができる。
Click to Discは、BDが単に容量が大きいだけでなく、使い勝手の面でも“次世代”を実現したことを感じさせてくれるソフトだ。
(一条真人)
執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。