<検証!PS3 “現在”の実力>第2回:ソニー最新BDレコーダーとBD再生クオリティを比較する
●PS3のBDビデオ再生画質を再検証する
PLAYSTATION3をAV機器して導入したユーザーにとって、何より魅力なのはBDビデオの再生機能であろう。2006年11月11日の発売当初は単体BDプレーヤーがほとんど存在せず、価格も20万円以上の価格帯で落ち着いていた中、発売当初から49,980円(20GB版)という手頃な価格で登場し、BD再生環境の裾野を広げたのは記憶に新しい。
BDプレーヤーとしてのスペック面にも妥協はなく、発売当初からHDMI端子による1080p映像の出力に対応しており、BDビデオが対応している最高スペックの映像に対応。さらに2007年5月24日のソフトウェア更新によって、BDビデオに収録された24コマ映像をダイレクトに出力する1080/24p出力も可能とした。BDビデオプレーヤーに求められる基本機能をすべて網羅する製品として、現在でもこれほど手頃なものは他にない。
このような状況を踏まえ、今回、“2008年におけるPS3の実力検証企画”第一弾としてテストするのは、BDビデオプレーヤーとしての画質比較だ。
ライバル機種として選んだのは、同じソニーが発売する2008年冬のBDレコーダー新ラインナップから、エントリー機の「BDZ-T55」とフラッグシップの「BDZ-X100」(関連ニュース)の2モデル。両機種ともHDMI端子の1080/24pの出力に対応しているのはもちろん、共通の高画質化回路「CREAS(クリアス)」の搭載によって再生クオリティの向上を図った。「BDZ-X100」はソニー最新の高画質処理技術「DRC-MFv3」の搭載によって、更にクオリティ面で差別化を図っている。なお、今回テストしたBDZ-X100の画質の追い込みは途中段階のものだったことを付け加えておく。
リファレンスのモニターには、パイオニアのプラズマ”KURO”の最新モデル、「KRP-600A」を用意した。BDビデオ再生クオリティの評価にはBDビデオソフトの『あの頃、ペニーレインと』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(共にSPE)を使用した。
●PS3の映像クオリティをレコーダー2機種と比較
BDの画質検証からスタートしてみよう。
まずは、とりあえずのリファレンスとして、PS3でBD-ROM『あの頃、ペニーレインと』を再生すると、自然な精細さのある映像を見せてくれた。映像はチャプター1の冒頭を筆頭に、屋内、屋外、人物の顔アップと、複数のチャプターを連続して再生している。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』で視聴したチャプター2の映像は、夜のカフェが舞台で、色とりどりの鮮やかなネオンの光景が美しい。なお、PS3はBDビデオの再生時には細かな画質調整を行えないため(各種NRの設定はDVD、BD-Rなどのみ)、設定を変えずに視聴している。
次に「BDZ-T55」の映像を再生してみると、まず全体に密度を増したような映像の精細さと、陰影の美しさに目を引かれる。たとえば『あの頃ペニーレインと』にある屋外のシーンでは、輝くようなハイライト部から日陰までの階調の美しさに独特の”味”を感じる。またPS3に比べ映像の立体感が高く、人物が背景から浮き上がって見える。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の映像では色の乗りが深くなっているほか、キリっと締まった鮮鋭感ある映像で、シャープに人物を捉えている。映像回路「クリアス」の持つ「HDリアリティエンハンサー」による鮮鋭感の向上と「Super bit Mapping」による高階調化の効果はなかなか大きいようだ。
「BDZ-X100」の映像は「BDZ-T55」の傾向をさらに強めた印象。一目見ただけで違いが分かる、圧倒的に高精細で立体感のある映像。『あの頃、ペニーレインと』を見ても全体に精細感が上がり、画面内の小物ひとつに注目しても緻密で立体的に浮き上がってくるし、映像のコントラストもダイナミックで、美しいタッチで描き出す。また、ノイズ感もかなり抑えられている。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の映像では、色を特に鮮やかに表現して鮮烈な色彩を際立たせ、人物は映像から浮き出るような立体感がある。PS3との違いを列挙したが、細部を見る以前に、一目見た時点でまるで別の作品を見ているかのように感じてしまった。「DRC-MF v3」の効果恐るべし、といったところか。
さて、最後に再びPS3で視聴してみると…。一言で言えば、非常にナチュラルな映像という印象に落ち着く。BDレコーダーの両機種と比較してしまうと、見た目の印象からして柔らかく、立体感もやや弱い。色はベタっと乗せたように見えてしまい、階調も潰れ気味でキレがない。これではさすがに太刀打ちできているとは言えない。
もっとも「BDZ-T55」「BDZ-X100」の映像は、PS3の映像と比較する以前に、各種高画質化処理の効果の高さゆえ、”キレイ過ぎる”と感じられる部分もある。そういった意味では、常にフラットなPS3に対して、各種色調整や”HDリアリティエンハンサー”、”DRC設定”(X100のみ)なども駆使して、BDビデオに収録された映像以上の高画質を追求したBDレコーダー、という棲み分けも可能だろう。
●次回はBDプレーヤーとの対決を実施
今回のBDビデオ再生クオリティテストは、2年前に発売されたPS3と、今月〜来月発売の最新鋭機種の比較ということもあり、PS3にとってはなかなか苦しい戦いとなってしまった。だが、PS3が3万9800円であるのに対してBDZ-T55の予想実売価格は約11万円、BDZ-X100は約28万円と価格差も大きい。PS3自体のクオリティも決して低いというわけでもなく、最新技術を投入したBDレコーダーにはさすがに敵わなかった、というニュアンスで捉えて欲しい。
さて、次回は再度PS3のBDビデオ再生画質にスポットを当てたい。用意するライバル機は、PS3とほぼ同一価格帯となるソニーのBDプレーヤーエントリー機「BDP-S350」と、ハイエンドBDプレーヤー「BDP-S5000ES」を予定している。単体プレーヤーに対してPS3の実力がどれほど通用するか、改めて検証してみよう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
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第1回:モンスターマシンの激変ぶりを振り返る
PLAYSTATION3をAV機器して導入したユーザーにとって、何より魅力なのはBDビデオの再生機能であろう。2006年11月11日の発売当初は単体BDプレーヤーがほとんど存在せず、価格も20万円以上の価格帯で落ち着いていた中、発売当初から49,980円(20GB版)という手頃な価格で登場し、BD再生環境の裾野を広げたのは記憶に新しい。
BDプレーヤーとしてのスペック面にも妥協はなく、発売当初からHDMI端子による1080p映像の出力に対応しており、BDビデオが対応している最高スペックの映像に対応。さらに2007年5月24日のソフトウェア更新によって、BDビデオに収録された24コマ映像をダイレクトに出力する1080/24p出力も可能とした。BDビデオプレーヤーに求められる基本機能をすべて網羅する製品として、現在でもこれほど手頃なものは他にない。
このような状況を踏まえ、今回、“2008年におけるPS3の実力検証企画”第一弾としてテストするのは、BDビデオプレーヤーとしての画質比較だ。
ライバル機種として選んだのは、同じソニーが発売する2008年冬のBDレコーダー新ラインナップから、エントリー機の「BDZ-T55」とフラッグシップの「BDZ-X100」(関連ニュース)の2モデル。両機種ともHDMI端子の1080/24pの出力に対応しているのはもちろん、共通の高画質化回路「CREAS(クリアス)」の搭載によって再生クオリティの向上を図った。「BDZ-X100」はソニー最新の高画質処理技術「DRC-MFv3」の搭載によって、更にクオリティ面で差別化を図っている。なお、今回テストしたBDZ-X100の画質の追い込みは途中段階のものだったことを付け加えておく。
リファレンスのモニターには、パイオニアのプラズマ”KURO”の最新モデル、「KRP-600A」を用意した。BDビデオ再生クオリティの評価にはBDビデオソフトの『あの頃、ペニーレインと』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(共にSPE)を使用した。
●PS3の映像クオリティをレコーダー2機種と比較
BDの画質検証からスタートしてみよう。
まずは、とりあえずのリファレンスとして、PS3でBD-ROM『あの頃、ペニーレインと』を再生すると、自然な精細さのある映像を見せてくれた。映像はチャプター1の冒頭を筆頭に、屋内、屋外、人物の顔アップと、複数のチャプターを連続して再生している。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』で視聴したチャプター2の映像は、夜のカフェが舞台で、色とりどりの鮮やかなネオンの光景が美しい。なお、PS3はBDビデオの再生時には細かな画質調整を行えないため(各種NRの設定はDVD、BD-Rなどのみ)、設定を変えずに視聴している。
次に「BDZ-T55」の映像を再生してみると、まず全体に密度を増したような映像の精細さと、陰影の美しさに目を引かれる。たとえば『あの頃ペニーレインと』にある屋外のシーンでは、輝くようなハイライト部から日陰までの階調の美しさに独特の”味”を感じる。またPS3に比べ映像の立体感が高く、人物が背景から浮き上がって見える。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の映像では色の乗りが深くなっているほか、キリっと締まった鮮鋭感ある映像で、シャープに人物を捉えている。映像回路「クリアス」の持つ「HDリアリティエンハンサー」による鮮鋭感の向上と「Super bit Mapping」による高階調化の効果はなかなか大きいようだ。
「BDZ-X100」の映像は「BDZ-T55」の傾向をさらに強めた印象。一目見ただけで違いが分かる、圧倒的に高精細で立体感のある映像。『あの頃、ペニーレインと』を見ても全体に精細感が上がり、画面内の小物ひとつに注目しても緻密で立体的に浮き上がってくるし、映像のコントラストもダイナミックで、美しいタッチで描き出す。また、ノイズ感もかなり抑えられている。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の映像では、色を特に鮮やかに表現して鮮烈な色彩を際立たせ、人物は映像から浮き出るような立体感がある。PS3との違いを列挙したが、細部を見る以前に、一目見た時点でまるで別の作品を見ているかのように感じてしまった。「DRC-MF v3」の効果恐るべし、といったところか。
さて、最後に再びPS3で視聴してみると…。一言で言えば、非常にナチュラルな映像という印象に落ち着く。BDレコーダーの両機種と比較してしまうと、見た目の印象からして柔らかく、立体感もやや弱い。色はベタっと乗せたように見えてしまい、階調も潰れ気味でキレがない。これではさすがに太刀打ちできているとは言えない。
もっとも「BDZ-T55」「BDZ-X100」の映像は、PS3の映像と比較する以前に、各種高画質化処理の効果の高さゆえ、”キレイ過ぎる”と感じられる部分もある。そういった意味では、常にフラットなPS3に対して、各種色調整や”HDリアリティエンハンサー”、”DRC設定”(X100のみ)なども駆使して、BDビデオに収録された映像以上の高画質を追求したBDレコーダー、という棲み分けも可能だろう。
●次回はBDプレーヤーとの対決を実施
今回のBDビデオ再生クオリティテストは、2年前に発売されたPS3と、今月〜来月発売の最新鋭機種の比較ということもあり、PS3にとってはなかなか苦しい戦いとなってしまった。だが、PS3が3万9800円であるのに対してBDZ-T55の予想実売価格は約11万円、BDZ-X100は約28万円と価格差も大きい。PS3自体のクオリティも決して低いというわけでもなく、最新技術を投入したBDレコーダーにはさすがに敵わなかった、というニュアンスで捉えて欲しい。
さて、次回は再度PS3のBDビデオ再生画質にスポットを当てたい。用意するライバル機は、PS3とほぼ同一価格帯となるソニーのBDプレーヤーエントリー機「BDP-S350」と、ハイエンドBDプレーヤー「BDP-S5000ES」を予定している。単体プレーヤーに対してPS3の実力がどれほど通用するか、改めて検証してみよう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
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第1回:モンスターマシンの激変ぶりを振り返る