「30年来の夢がかなった」
シャープ、光で配向する液晶パネル新技術「UV²A」を開発 − 今後のAQUOSに順次搭載
シャープ(株)は、これまでのASV方式に代わる液晶パネル新技術「UV2A」を新たに開発。今年10月から稼働する堺工場、また現在の主力工場である亀山第2工場で順次生産を開始し、2010年には両工場で生産するパネルのほぼ全量を新パネルに入れ替える。これに伴い、同社の液晶テレビ“AQUOS”に搭載されるパネルも順次UV2Aに変更していくほか、他メーカーに対する外販も行う。本日、記者向けの説明会が開催された。
同社ではこれまで垂直配向(VA)型液晶の方式として、独自開発のASV技術を用いてきた。ASVは、1つの画素の中で複数の方向に液晶分子を配列させるマルチドメイン配向に適し、大面積でも均一化しやすいというメリットを持っているが、一方でカラーフィルターやTFT基板にリブやスリットを構成する必要があり、構造や生産プロセスが複雑であるほか、コストが高い、開口率が低く光の利用効率が低い、また微少なリブやスリットで全体を制御するためパターン配光に制約があり、自由な画素の設計が行いづらいなどのデメリットがあった。
新技術のUV2Aは、高分子薄膜にUV光を照射すると高分子が照射方向に向き、液晶分子がその方向に沿って並ぶというもの。光を使って配向を行う、世界初の新技術だ。実現には、全く新しい分子構造の光配光膜材料を独自開発したことが大きく寄与したという。同社 代表取締役副社長の井淵良明氏は「液晶開発で40年の歴史を持つ当社が『液晶分子の気持ちになって考えた』技術」と説明。また同社 常務執行役員 研究開発本部長の水島繁光氏も「従来技術の課題を解決する、現在において理想的な配向技術。液晶技術者たちの30年来の夢がかなった」とその意義を強調する。
液晶分子の長さが2ナノメートルであるのに対し、新技術の配向精度は±20ピコメートルと、これまでの方法に比べ精密かつ均一に配向させることができる。さらに新技術では、これまで必要だったリブやスリットが一切不要になり、開口率が従来比で20%以上向上する。これにより、同じ輝度の場合バックライトの光量をその分抑えることができ、低消費電力化にも貢献できるという。さらに光漏れが減ることにより、コントラスト比も向上。パネルのネイティブコントラスト比は5,000対1と、同社従来比で1.6倍以上になる。
またこれまでの技術では、リブの周辺にある液晶分子から順番に、“ドミノ倒し”のように液晶分子が応答していたが、新技術ではすべての分子を一斉に応答させることができるため、パネルの応答速度も向上。黒から白への応答速度は4msecとなり、これまでの2倍となった。同社では「高速応答化により240Hz駆動やフルHD 3D表示への対応も容易に行える」と説明している。
加えて、1画素あたりの液晶分子の配列方向を、「理論的には無制限」に増やすことができるのも特長の一つ。これまでのASVでは4方向に配列していたが、この数を増やすことでさらにきめ細かな開口率制御が可能になり、画質向上につながる可能性がある。なお、発表会場に展示していた試作パネルは垂直配向で、現在のASVと同じ4方向での制御を行っていた。「試作パネルを4方向にしたのは、現在のVA方式と同じ方法で作るとこうなる、ということをご理解いただくため。UV2Aのポテンシャルは高く、今後様々な応用が可能になる」(水島常務執行役員)という。
さらに構造がシンプルであるため、生産性も高まる。これまでのリブやスリットを作成するレジスト塗布や露光、現像といった固定が一切不要になり、より素早く、低コストでパネルを生産することが可能になる。また、構造がシンプルな分、画素の1つ1つを微細化することも用意で、4K2Kやスーパーハイビジョンなどへの対応も見据えているという。
井淵副社長は発表会の冒頭、「2001年にAQUOSをデビューさせて以来、ASV方式を採用してきた。液晶テレビは年間1億台を超える市場に育ったが、次世代の液晶テレビには超高画質、省エネ性といった要件が求められる。このためASVに代わる技術としてUV2Aの開発に着手した」と背景を説明。また、今回実用化に成功した意義についても「TFTの歴史に残る世界初の技術だ」と胸を張った。
また水島常務執行役員も、「AQUOSは今年で9周年を迎えた。次世代テレビでは、低消費電力などの『環境性能』、大画面で高解像度、3Dにも対応した『高画質』、シンプルな画素構造と製造プロセスの『高生産性』の3点を同時に満足させるパネルが求められる。」とし、「これを実現し、液晶パネルを“ジェネレーション・チェンジ”させるのがUV2A。30年来、夢の技術だったものを世界で初めて実現させた。シャープの液晶はこれで大きく変わる」と自信を見せた。
なお発表会では、ソニーやパナソニックなどが相次いで発表している3Dテレビの開発状況についても言及された。「開発は他社に遅れることなくやっている。これまでは3D方式自体に技術的課題があると考え、展示会などではお見せしていなかった」という。近い将来、同社の3Dテレビが披露されることになりそうだ。
同社ではこれまで垂直配向(VA)型液晶の方式として、独自開発のASV技術を用いてきた。ASVは、1つの画素の中で複数の方向に液晶分子を配列させるマルチドメイン配向に適し、大面積でも均一化しやすいというメリットを持っているが、一方でカラーフィルターやTFT基板にリブやスリットを構成する必要があり、構造や生産プロセスが複雑であるほか、コストが高い、開口率が低く光の利用効率が低い、また微少なリブやスリットで全体を制御するためパターン配光に制約があり、自由な画素の設計が行いづらいなどのデメリットがあった。
新技術のUV2Aは、高分子薄膜にUV光を照射すると高分子が照射方向に向き、液晶分子がその方向に沿って並ぶというもの。光を使って配向を行う、世界初の新技術だ。実現には、全く新しい分子構造の光配光膜材料を独自開発したことが大きく寄与したという。同社 代表取締役副社長の井淵良明氏は「液晶開発で40年の歴史を持つ当社が『液晶分子の気持ちになって考えた』技術」と説明。また同社 常務執行役員 研究開発本部長の水島繁光氏も「従来技術の課題を解決する、現在において理想的な配向技術。液晶技術者たちの30年来の夢がかなった」とその意義を強調する。
液晶分子の長さが2ナノメートルであるのに対し、新技術の配向精度は±20ピコメートルと、これまでの方法に比べ精密かつ均一に配向させることができる。さらに新技術では、これまで必要だったリブやスリットが一切不要になり、開口率が従来比で20%以上向上する。これにより、同じ輝度の場合バックライトの光量をその分抑えることができ、低消費電力化にも貢献できるという。さらに光漏れが減ることにより、コントラスト比も向上。パネルのネイティブコントラスト比は5,000対1と、同社従来比で1.6倍以上になる。
またこれまでの技術では、リブの周辺にある液晶分子から順番に、“ドミノ倒し”のように液晶分子が応答していたが、新技術ではすべての分子を一斉に応答させることができるため、パネルの応答速度も向上。黒から白への応答速度は4msecとなり、これまでの2倍となった。同社では「高速応答化により240Hz駆動やフルHD 3D表示への対応も容易に行える」と説明している。
加えて、1画素あたりの液晶分子の配列方向を、「理論的には無制限」に増やすことができるのも特長の一つ。これまでのASVでは4方向に配列していたが、この数を増やすことでさらにきめ細かな開口率制御が可能になり、画質向上につながる可能性がある。なお、発表会場に展示していた試作パネルは垂直配向で、現在のASVと同じ4方向での制御を行っていた。「試作パネルを4方向にしたのは、現在のVA方式と同じ方法で作るとこうなる、ということをご理解いただくため。UV2Aのポテンシャルは高く、今後様々な応用が可能になる」(水島常務執行役員)という。
さらに構造がシンプルであるため、生産性も高まる。これまでのリブやスリットを作成するレジスト塗布や露光、現像といった固定が一切不要になり、より素早く、低コストでパネルを生産することが可能になる。また、構造がシンプルな分、画素の1つ1つを微細化することも用意で、4K2Kやスーパーハイビジョンなどへの対応も見据えているという。
井淵副社長は発表会の冒頭、「2001年にAQUOSをデビューさせて以来、ASV方式を採用してきた。液晶テレビは年間1億台を超える市場に育ったが、次世代の液晶テレビには超高画質、省エネ性といった要件が求められる。このためASVに代わる技術としてUV2Aの開発に着手した」と背景を説明。また、今回実用化に成功した意義についても「TFTの歴史に残る世界初の技術だ」と胸を張った。
また水島常務執行役員も、「AQUOSは今年で9周年を迎えた。次世代テレビでは、低消費電力などの『環境性能』、大画面で高解像度、3Dにも対応した『高画質』、シンプルな画素構造と製造プロセスの『高生産性』の3点を同時に満足させるパネルが求められる。」とし、「これを実現し、液晶パネルを“ジェネレーション・チェンジ”させるのがUV2A。30年来、夢の技術だったものを世界で初めて実現させた。シャープの液晶はこれで大きく変わる」と自信を見せた。
なお発表会では、ソニーやパナソニックなどが相次いで発表している3Dテレビの開発状況についても言及された。「開発は他社に遅れることなくやっている。これまでは3D方式自体に技術的課題があると考え、展示会などではお見せしていなかった」という。近い将来、同社の3Dテレビが披露されることになりそうだ。