阪神大震災の3D上映や「坂の上の雲」VFX技術の紹介も
NHK、第39回番組技術展を開催 − 現場から生まれたアイディアや開発技術を紹介
NHKは、放送技術局や全国の放送局から生まれたアイディアや開発技術などを展示する「第39回番組技術展」を3月7日(日)から9日(火)の期間NHK渋谷放送センターで開催した。
会場には番組制作の現場で生み出された撮影機器や、より確実・スピーディーに放送を届けることができるように開発された放送技術、データ放送の活用法、エコへの取り組みなどを展示。また特別・参考展示として、スペシャルドラマ「坂の上の雲」で多様されたVFX映像の紹介や「阪神・淡路大震災」の映像の3D上映なども展示しており、一般の方も楽しめる内容になっている。本項では展示内容の中からいくつかをピックアップして紹介する。
■現場スタッフの熱意で開発された撮影機器
番組制作の中で生まれたアイディアを紹介するコーナーでは現場スタッフによる試行錯誤の末に開発された機器が展示されており、「より質の高い番組を届けたい」という現場の熱意が伝わってくる。
「マクロ撮影クレーン」は葉の表から裏まで弧を描くようなスムーズな撮影ができるよう高知放送局が独自開発したもの。360度回転するクランクアラームを装備し、片方にカメラ、もう片方にカウンターウエイトを置くことでバランスをとるというシステムだ。カメラを上下に動かす作業を1人でできる上、小さな昆虫のフォロー撮影や花をのぞきみるような撮影など新しい映像表現を実現した。実際に高知のローカル放送で使用されているという。
2009年7月の皆既日食の撮影で使用した放送技術局 報道技術センターの「船上撮影安定台」も展示されている。NHKでは雲を避けて皆既日食を撮影するため船上で皆既日食生中継を敢行したが、その際に船が揺れても安定した映像を撮影できるようこのカメラ台を導入した。
カメラ台には揺れを感知するセンサーが内蔵されており、センサーで検出した傾きと逆方向にカメラが取り付けられているプレートを動かすことでカメラを常に水平に保つことができる。市販ビデオカメラにも搭載されているレンズ内の補正機能ではカバーできない大きな揺れにも対応できる。電源をオンにする以外の特別な作業を必要とせず、リモコンでカメラプレートの角度調整ができるなど撮影に集中できる操作性も実現している。
■高クオリティの報道を実現する放送技術
「リアルタイム音声ノイズクリーナー」は、周囲の騒音が大きい現場での生中継や、中継回線に音声ノイズが混入している場合に使用することで、明瞭度の高い放送音声を実現する装置。処理による遅延時間が少なくほぼリアルタイムにノイズ抑制が可能なことから、生放送のニュース番組などでの使用を予定しているという。
地震や津波などの災害時にニュースでよく見かけるロボットカメラによる災害発生時の映像。この映像は時間を遡って記録し、該当箇所を素早く再生できるスキップバックレコーダーという装置によるものだ。会場には名古屋放送局が開発したハイビジョン画質で最大24時間前まで遡ることができる「マルチ収録対応スキップバックレコーダー」が展示されている。さらに現在のスキップバックレコーダーは1カ所での映像しか操作できないが、本機では最大4カ所のカメラからの映像を収録、操作することができるようになっている。
■データ放送を利用した各種サービス
地デジの特長のひとつ、データ放送を利用した各地の取り組みも紹介されている。広島放送局では広島東洋カープやサンフレッチェ広島のローカル中継で、視聴者からの投稿を紹介する「応援メッセージシステム」を活用している。PC・携帯サイトから手軽に投稿可能で、受付担当者のチェック後、承認メッセージはデータ放送、PC・携帯サイトで公開される。同様の取り組みは佐賀/福岡放送局も「『3-Screens』双方向型番組連動応援メッセージ表示サービス」として実施。高校野球の佐賀大会、サガン鳥栖の中継などで実際に使用している。
またデータ放送を利用した災害向けサービスも開発する。会場ではデータ放送コンテンツ上で近所の避難所の位置情報を2次元バーコードで自動生成し、カメラ付き携帯電話で読み取った地図をブックマークできるといった使用方法も紹介されている。
■「坂の上の雲」のVFXの世界を垣間見る
スペシャルドラマ「坂の上の雲」は明治時代を再現するための街並みや日露戦争の戦争シーンなど多くのシーンでVFX(視聴効果)が使用されている。「『坂の上の雲』VFXの世界」という特別展示では、昨年放送された第1部のVFXシーンがどのような過程で制作されたのかメイキングビデオを通して理解することができる。
■阪神・淡路大震災の当時の模様を3Dで上映
15年前の阪神・淡路大震災の映像を3D上映するNHKメディアテクノロジーによる参考出展は多くの人でにぎわいをみせていた。使用するディスプレイは、走査線毎に正反対の特性を持つ偏光フィルターをディスプレイに貼付けることで小型・軽量化を実現した独自の3D対応の液晶ディスプレイ。偏光メガネを装着して視聴する。
映像は放送用ではなく記録映像として撮影されたもの。25年前から立体映像の研究を進めていたNHK技術研究所の協力を受けながら15年前に3D-HDTVカメラで撮影を行った。
会場には番組制作の現場で生み出された撮影機器や、より確実・スピーディーに放送を届けることができるように開発された放送技術、データ放送の活用法、エコへの取り組みなどを展示。また特別・参考展示として、スペシャルドラマ「坂の上の雲」で多様されたVFX映像の紹介や「阪神・淡路大震災」の映像の3D上映なども展示しており、一般の方も楽しめる内容になっている。本項では展示内容の中からいくつかをピックアップして紹介する。
■現場スタッフの熱意で開発された撮影機器
番組制作の中で生まれたアイディアを紹介するコーナーでは現場スタッフによる試行錯誤の末に開発された機器が展示されており、「より質の高い番組を届けたい」という現場の熱意が伝わってくる。
「マクロ撮影クレーン」は葉の表から裏まで弧を描くようなスムーズな撮影ができるよう高知放送局が独自開発したもの。360度回転するクランクアラームを装備し、片方にカメラ、もう片方にカウンターウエイトを置くことでバランスをとるというシステムだ。カメラを上下に動かす作業を1人でできる上、小さな昆虫のフォロー撮影や花をのぞきみるような撮影など新しい映像表現を実現した。実際に高知のローカル放送で使用されているという。
2009年7月の皆既日食の撮影で使用した放送技術局 報道技術センターの「船上撮影安定台」も展示されている。NHKでは雲を避けて皆既日食を撮影するため船上で皆既日食生中継を敢行したが、その際に船が揺れても安定した映像を撮影できるようこのカメラ台を導入した。
カメラ台には揺れを感知するセンサーが内蔵されており、センサーで検出した傾きと逆方向にカメラが取り付けられているプレートを動かすことでカメラを常に水平に保つことができる。市販ビデオカメラにも搭載されているレンズ内の補正機能ではカバーできない大きな揺れにも対応できる。電源をオンにする以外の特別な作業を必要とせず、リモコンでカメラプレートの角度調整ができるなど撮影に集中できる操作性も実現している。
■高クオリティの報道を実現する放送技術
「リアルタイム音声ノイズクリーナー」は、周囲の騒音が大きい現場での生中継や、中継回線に音声ノイズが混入している場合に使用することで、明瞭度の高い放送音声を実現する装置。処理による遅延時間が少なくほぼリアルタイムにノイズ抑制が可能なことから、生放送のニュース番組などでの使用を予定しているという。
地震や津波などの災害時にニュースでよく見かけるロボットカメラによる災害発生時の映像。この映像は時間を遡って記録し、該当箇所を素早く再生できるスキップバックレコーダーという装置によるものだ。会場には名古屋放送局が開発したハイビジョン画質で最大24時間前まで遡ることができる「マルチ収録対応スキップバックレコーダー」が展示されている。さらに現在のスキップバックレコーダーは1カ所での映像しか操作できないが、本機では最大4カ所のカメラからの映像を収録、操作することができるようになっている。
■データ放送を利用した各種サービス
地デジの特長のひとつ、データ放送を利用した各地の取り組みも紹介されている。広島放送局では広島東洋カープやサンフレッチェ広島のローカル中継で、視聴者からの投稿を紹介する「応援メッセージシステム」を活用している。PC・携帯サイトから手軽に投稿可能で、受付担当者のチェック後、承認メッセージはデータ放送、PC・携帯サイトで公開される。同様の取り組みは佐賀/福岡放送局も「『3-Screens』双方向型番組連動応援メッセージ表示サービス」として実施。高校野球の佐賀大会、サガン鳥栖の中継などで実際に使用している。
またデータ放送を利用した災害向けサービスも開発する。会場ではデータ放送コンテンツ上で近所の避難所の位置情報を2次元バーコードで自動生成し、カメラ付き携帯電話で読み取った地図をブックマークできるといった使用方法も紹介されている。
■「坂の上の雲」のVFXの世界を垣間見る
スペシャルドラマ「坂の上の雲」は明治時代を再現するための街並みや日露戦争の戦争シーンなど多くのシーンでVFX(視聴効果)が使用されている。「『坂の上の雲』VFXの世界」という特別展示では、昨年放送された第1部のVFXシーンがどのような過程で制作されたのかメイキングビデオを通して理解することができる。
■阪神・淡路大震災の当時の模様を3Dで上映
15年前の阪神・淡路大震災の映像を3D上映するNHKメディアテクノロジーによる参考出展は多くの人でにぎわいをみせていた。使用するディスプレイは、走査線毎に正反対の特性を持つ偏光フィルターをディスプレイに貼付けることで小型・軽量化を実現した独自の3D対応の液晶ディスプレイ。偏光メガネを装着して視聴する。
映像は放送用ではなく記録映像として撮影されたもの。25年前から立体映像の研究を進めていたNHK技術研究所の協力を受けながら15年前に3D-HDTVカメラで撮影を行った。