従来品から画質大幅向上
【更新】シャープ、裸眼対応のタッチパネル付き3D液晶を開発 − 2D/3D切替表示も可能
シャープ(株)は、裸眼で立体視が行え、2D/3Dの表示切り替えが可能なタッチパネル付きの3D液晶ディスプレイを開発したと発表した。同社では、デジカメや携帯電話などのモバイル機器に適した3D液晶と説明している。
本日の発表会には、常務執行役員 液晶事業統轄 兼 液晶事業本部長の長谷川祥典氏が出席し、同技術について説明した。
開発品の画面サイズは3.4型で、画素数は480×854ドット。輝度は500cd/m2で、コントラスト比は1,000対1。駆動速度は60Hzで、バックライトにはLEDを用いている。
3D表示方式には視差バリア(パララックスバリア)方式を採用し、3D表示時には横方向の解像度が半分に落ちる。なおディスプレイの向きを90度回転させても、バリアの向きを変更することで3D表示が行える。
CGシリコン技術の進化によってパネルの配線幅を微細化し、さらに視差バリアの高精度な貼り合わせ技術と作り込みにより光の効率を高めたことで、クロストークを大幅に低減した。
また3D液晶スイッチパネルとタッチパネルを一体化することで、モジュールの厚みも従来の2Dタイプと同等に抑えた。これにより搭載する製品を薄くすることが可能。
なお、3D表示時のスイートスポットは視差バリアのスイッチパネルの厚みを調整することで、約20〜50cmのあいだで変更できるという。発表会場でデモを行っていた開発品はスイートスポットが30cmに設定されていた。また、適切な3D視聴が行える角度は±3cmで、横からのぞき込んだりした際には立体視は行えない。
開発品のタッチパネルは静電容量方式で、マルチタッチにも対応。タッチペン操作に対応する抵抗膜(感圧)方式に対応させるためには、パネル前面に抵抗膜や空気層などを設ける必要があるが、この場合にはパネルデバイスが厚くなり、輝度が下がるほか、空気層で光が乱反射するなどのデメリットが発生する。
実際に生産するパネルは、当初は3〜5インチクラスの製品を想定しているとのことだが、「10インチを超えるようなもの、パソコンなどもこの技術で対応できる可能性がある」(長谷川氏)という。
発表会のあとで行われたデモでは、多くの開発品が並び、画面タッチで3D表示の写真を切り替えるデモや動画表示デモ、また縦と横のどちらでも3D表示が行えることを示すデモなどが行われていた。さらに、開発試作品の2眼カメラを用い、リアルタイムの3D動画を表示するデモも見ることができた。
■「来年度以降は50%以上を3Dレディーに」
3Dテレビが各メーカーから続々と発表されているが、長谷川氏は「同じような流れが大型ディスプレイからモバイル端末にもやってくる。それはもう目の前に来ている」と指摘。
これまで同社では様々な液晶技術を開発してきたが、長谷川氏は「表示品位が低い、モジュールの厚みに制約がある、3D表示が一方向のみ、コンテンツが揃わなかったなどの問題があり、どれも定着しなかった」と説明。今回の開発品では「すべてのお客様に安全して使ってもらえるために改善を行った」とし、具体的に「表示品位の改善」「低クロストーク」「モジュール厚みがアップしないタッチパネル」の3点を挙げた。
また長谷川氏は、「2D表示の品位にもこだわった」とし、「2Dの画質をきちんとしてこそ3Dが活きてくる。我々としては『3Dレディー』ということを訴えていきたい」と述べた。
長谷川氏は、想定されるアプリケーションとしてスマートフォンや携帯電話、デジカメ、デジタルフォトフレーム、ポータブルメディアプレーヤー、PC、そしてゲーム機を挙げた。携帯電話メーカーとはすでに商談が進んでいるという。ニンテンドー3DSにこの開発品が搭載されるのではないかという観測もあるが、「具体的なメーカーさんの名前やプロジェクト名については差し控えたい。ゲームメーカーさんとの商談が進んでいるかということについては、お答えするとお分かりになってしまうので答えられない」と述べた。
既存のモバイル向け液晶のうち3D対応パネルがどの程度の比率になるかという質問に対して長谷川氏は、「この開発品でモバイル機器の3Dレディーを狙っていき、将来的にはすべて3D対応にしたい」と力強く宣言。「今年度は10〜20%、来年度以降は50%以上を3Dレディーにしたい。さらに、白黒がカラーになったように、2Dを全部3Dレディーに切り替えるということも遠い将来は視野に入れていきたい」と述べた。
さらに、「テレビよりもモバイルの方が3Dの普及が早いのではないか」という質問に対して長谷川氏は、「ご指摘の通り、コンテンツによってはモバイルのほうが早くなる可能性もある」と回答した。
なお、パネルの製造は同社の三重工場で行う。今回の製品を製造するにあたり、大規模な設備投資を行う必要はなく、数十億円規模に抑えられるという。2010年度上期に、タッチパネル機能を省略したタイプから順次量産を開始する。
以下、上記文中で紹介した以外の質疑応答をご紹介する。
Q:3Dというと常にコンテンツの問題がつきまとうが、これについてはどうなのか。専用のコンテンツがあればより良いのか。
A:テレビには3D映画などがあるが、モバイルで3Dを定着させるためにはモバイルで使えるアプリケーションが必要。例として今回は二眼カメラでの3D映像をデモさせていただいているが、将来的にはメールやウェブコンテンツも3D化するだろう。そのような規格も決まりつつある。コンテンツプロバイダーとコラボレーションしながらコンテンツを増やしていきたい。
Q:シャープ自社での、このパネルを使った商品化の時期、どんな分野で搭載するかなど、具体的なビジョンがあれば教えて欲しい。
A:自社機器については担当分野ではないので回答できない。ただし、自社にも紹介はしている。
Q:新たに設備投資は発生するのか。
A:パネルは三重工場で生産できるのでそう大きな設備投資は必要ない。貼りつけ装置は多少必要だがそう規模は大きくない。
Q:パネル価格下落が収益の圧迫材料になっているが、3Dについてはどのくらいの価格プレミアムにするのか。
A:2009年度はどちらかというと買い手市場だった。今年の後半から需給が逼迫思想で、下落率は下がるのではないか。付加価値については比較論となるが、我々としては付加価値を認めてほしいと思っている。具体的にどの程度のプレミアムになるかという数値はお答えできない。ただしコストが割高になるのは間違いない。
Q:視差バリアは2002年からやられていたが、暗くなるというデメリットがあった。レンチキュラーでなく、なぜ今回は視差バリアを採用したのか。
A:レンチキュラーの場合は2D表示の精細度が落ちるし、90度回転させた場合の3D表示もできない。2Dできっちり使えて、さらに3Dも見られるという仕様にしているので、今回は視差バリアを採用した。
Q:テレビ用の3Dコンテンツもこれで見れるのか。
A:多少の変換は必要だが、同じコンテンツが使える。
Q:テレビ向けの3D方式と比べたときのメリット、デメリットを教えて欲しい。
A:3Dの方式はいろいろあるが、これは見る位置が限られるということ。色々なところで楽しむのがいいのであればメガネ方式がいい。
Q:実際にデモを見たが、小型ディスプレイならもっとキレイに見れるのではないかと思った。なぜテレビのようにきれいに感じなかったのか。
A:テレビ向けの3D映像は30ニットとか40ニットとか、暗い場所で見ることが多いが、本開発品は明るい環境下で見ても明るい映像が視聴できる。つまり同じ環境で見れば明らかに輝度が高く、高精細な映像になっている。
Q:テレビ用の3D対応液晶パネルの開発状況は。
A:3Dテレビについても特徴技術を活かしてシャープならではの開発を行っている。改めて準備ができたらお伝えしたい。
本日の発表会には、常務執行役員 液晶事業統轄 兼 液晶事業本部長の長谷川祥典氏が出席し、同技術について説明した。
開発品の画面サイズは3.4型で、画素数は480×854ドット。輝度は500cd/m2で、コントラスト比は1,000対1。駆動速度は60Hzで、バックライトにはLEDを用いている。
3D表示方式には視差バリア(パララックスバリア)方式を採用し、3D表示時には横方向の解像度が半分に落ちる。なおディスプレイの向きを90度回転させても、バリアの向きを変更することで3D表示が行える。
CGシリコン技術の進化によってパネルの配線幅を微細化し、さらに視差バリアの高精度な貼り合わせ技術と作り込みにより光の効率を高めたことで、クロストークを大幅に低減した。
また3D液晶スイッチパネルとタッチパネルを一体化することで、モジュールの厚みも従来の2Dタイプと同等に抑えた。これにより搭載する製品を薄くすることが可能。
なお、3D表示時のスイートスポットは視差バリアのスイッチパネルの厚みを調整することで、約20〜50cmのあいだで変更できるという。発表会場でデモを行っていた開発品はスイートスポットが30cmに設定されていた。また、適切な3D視聴が行える角度は±3cmで、横からのぞき込んだりした際には立体視は行えない。
開発品のタッチパネルは静電容量方式で、マルチタッチにも対応。タッチペン操作に対応する抵抗膜(感圧)方式に対応させるためには、パネル前面に抵抗膜や空気層などを設ける必要があるが、この場合にはパネルデバイスが厚くなり、輝度が下がるほか、空気層で光が乱反射するなどのデメリットが発生する。
実際に生産するパネルは、当初は3〜5インチクラスの製品を想定しているとのことだが、「10インチを超えるようなもの、パソコンなどもこの技術で対応できる可能性がある」(長谷川氏)という。
発表会のあとで行われたデモでは、多くの開発品が並び、画面タッチで3D表示の写真を切り替えるデモや動画表示デモ、また縦と横のどちらでも3D表示が行えることを示すデモなどが行われていた。さらに、開発試作品の2眼カメラを用い、リアルタイムの3D動画を表示するデモも見ることができた。
■「来年度以降は50%以上を3Dレディーに」
3Dテレビが各メーカーから続々と発表されているが、長谷川氏は「同じような流れが大型ディスプレイからモバイル端末にもやってくる。それはもう目の前に来ている」と指摘。
これまで同社では様々な液晶技術を開発してきたが、長谷川氏は「表示品位が低い、モジュールの厚みに制約がある、3D表示が一方向のみ、コンテンツが揃わなかったなどの問題があり、どれも定着しなかった」と説明。今回の開発品では「すべてのお客様に安全して使ってもらえるために改善を行った」とし、具体的に「表示品位の改善」「低クロストーク」「モジュール厚みがアップしないタッチパネル」の3点を挙げた。
また長谷川氏は、「2D表示の品位にもこだわった」とし、「2Dの画質をきちんとしてこそ3Dが活きてくる。我々としては『3Dレディー』ということを訴えていきたい」と述べた。
長谷川氏は、想定されるアプリケーションとしてスマートフォンや携帯電話、デジカメ、デジタルフォトフレーム、ポータブルメディアプレーヤー、PC、そしてゲーム機を挙げた。携帯電話メーカーとはすでに商談が進んでいるという。ニンテンドー3DSにこの開発品が搭載されるのではないかという観測もあるが、「具体的なメーカーさんの名前やプロジェクト名については差し控えたい。ゲームメーカーさんとの商談が進んでいるかということについては、お答えするとお分かりになってしまうので答えられない」と述べた。
既存のモバイル向け液晶のうち3D対応パネルがどの程度の比率になるかという質問に対して長谷川氏は、「この開発品でモバイル機器の3Dレディーを狙っていき、将来的にはすべて3D対応にしたい」と力強く宣言。「今年度は10〜20%、来年度以降は50%以上を3Dレディーにしたい。さらに、白黒がカラーになったように、2Dを全部3Dレディーに切り替えるということも遠い将来は視野に入れていきたい」と述べた。
さらに、「テレビよりもモバイルの方が3Dの普及が早いのではないか」という質問に対して長谷川氏は、「ご指摘の通り、コンテンツによってはモバイルのほうが早くなる可能性もある」と回答した。
なお、パネルの製造は同社の三重工場で行う。今回の製品を製造するにあたり、大規模な設備投資を行う必要はなく、数十億円規模に抑えられるという。2010年度上期に、タッチパネル機能を省略したタイプから順次量産を開始する。
以下、上記文中で紹介した以外の質疑応答をご紹介する。
Q:3Dというと常にコンテンツの問題がつきまとうが、これについてはどうなのか。専用のコンテンツがあればより良いのか。
A:テレビには3D映画などがあるが、モバイルで3Dを定着させるためにはモバイルで使えるアプリケーションが必要。例として今回は二眼カメラでの3D映像をデモさせていただいているが、将来的にはメールやウェブコンテンツも3D化するだろう。そのような規格も決まりつつある。コンテンツプロバイダーとコラボレーションしながらコンテンツを増やしていきたい。
Q:シャープ自社での、このパネルを使った商品化の時期、どんな分野で搭載するかなど、具体的なビジョンがあれば教えて欲しい。
A:自社機器については担当分野ではないので回答できない。ただし、自社にも紹介はしている。
Q:新たに設備投資は発生するのか。
A:パネルは三重工場で生産できるのでそう大きな設備投資は必要ない。貼りつけ装置は多少必要だがそう規模は大きくない。
Q:パネル価格下落が収益の圧迫材料になっているが、3Dについてはどのくらいの価格プレミアムにするのか。
A:2009年度はどちらかというと買い手市場だった。今年の後半から需給が逼迫思想で、下落率は下がるのではないか。付加価値については比較論となるが、我々としては付加価値を認めてほしいと思っている。具体的にどの程度のプレミアムになるかという数値はお答えできない。ただしコストが割高になるのは間違いない。
Q:視差バリアは2002年からやられていたが、暗くなるというデメリットがあった。レンチキュラーでなく、なぜ今回は視差バリアを採用したのか。
A:レンチキュラーの場合は2D表示の精細度が落ちるし、90度回転させた場合の3D表示もできない。2Dできっちり使えて、さらに3Dも見られるという仕様にしているので、今回は視差バリアを採用した。
Q:テレビ用の3Dコンテンツもこれで見れるのか。
A:多少の変換は必要だが、同じコンテンツが使える。
Q:テレビ向けの3D方式と比べたときのメリット、デメリットを教えて欲しい。
A:3Dの方式はいろいろあるが、これは見る位置が限られるということ。色々なところで楽しむのがいいのであればメガネ方式がいい。
Q:実際にデモを見たが、小型ディスプレイならもっとキレイに見れるのではないかと思った。なぜテレビのようにきれいに感じなかったのか。
A:テレビ向けの3D映像は30ニットとか40ニットとか、暗い場所で見ることが多いが、本開発品は明るい環境下で見ても明るい映像が視聴できる。つまり同じ環境で見れば明らかに輝度が高く、高精細な映像になっている。
Q:テレビ用の3D対応液晶パネルの開発状況は。
A:3Dテレビについても特徴技術を活かしてシャープならではの開発を行っている。改めて準備ができたらお伝えしたい。