約6万円。CESで話題をさらったモデルが商品化
【更新】ソニー、3Dヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」を発売 − 有機EL×2枚でクロストークフリー実現
ソニーは、有機ELパネルを採用し、3D映像の表示にも対応したヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」を11月11日に発売する。価格はオープンだが6万円前後での販売が予想される。
同社は今年1月のCESで3D対応ヘッドマウントディスプレイを参考出展していたが、これをブラッシュアップして商品化した。
メインターゲットはBlu-ray 3D対応BDレコーダーやプレーヤーの所有者、また3D立体視ゲームが用意されたPS3のユーザー。安全上の理由から、使用対象年齢は16歳以上としている。
製品は、頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ部(以下HMD部)と、映像入出力や映像処理を行うプロセッサーユニット部に分かれている。
■有機EL×2枚でクロストークフリーの3D映像を実現
HMD部には、0.7インチで1,280×720ドットのソニー製有機ELパネルを、右眼用と左眼用の2枚搭載。なお、同社“α”新モデルに搭載されている有機ELパネルは0.5インチで、解像度はXGAだった。
有機ELの画素サイズは4μm×12μmと非常に微細。これを実現するため、白色有機EL層を発光させ、上にカラーフィルターを重ねる色分離方式を採用した。なお有機EL層はソニーモバイルディスプレイで製造し、これをソニーセミコンダクタ九州でカラーフィルターと貼り合わせ、デバイスとして出荷している。
本機では、この有機ELパネルに視野角45度の光学レンズを組み合わせた。同社では、仮想視聴距離約20mで、約750インチ相当の視聴体験が得られるとしている。750インチという画面サイズはIMAXデジタルと同程度のサイズだ。
自発光である有機ELパネルを採用したため、黒の映像の時にはまったく発光させない表示が可能。このため最低黒輝度は測定限界以下となる。またパネルの応答速度は0.01msで、速いパネルでも数msである液晶に比べ、圧倒的に動画応答性能が高い点も特徴だ。このためゲームでの利用にも適している。またパネルの色域はNTSC比で90%以上、パネルのコントラスト比は非公開。
なお、人間の最大視野は約200度程度のため、HMD部は45度を超えた範囲の映像を覆うデザインを採用。また下からの光を遮るライトシールドも付属し、これを装着することで光の侵入を防ぎ、映像への没入感を高められる。
右眼用と左眼用の映像を完全に独立させており、3D映像の視聴時に全く別の映像を表示させるため、右眼用/左眼用の映像が混ざり合うクロストークが原理上全く発生しない。また偏光板やシャッターを介す必要が無いため、明るい3D映像が楽しめる。
■バーチャルサラウンドなど音質にもこだわり
HMD部にはオープンエア ダイナミック型のヘッドホンも搭載。5.1ch バーチャルサラウンド技術「Virtual Phones Technology」も備えている。サラウンドモードは適度な残響感の「スタンダード」、映画館のような設定の「シネマ」、くっきりした定位のゲームに適した「ゲーム」、モニタースタジオ的な設定の「ニュートラル」の4モードを備えている。
そのほか本機には、オーディオ専用の32ビットDSPや高音質ヘッドホンアンプ内蔵の24ビットDACなど高品位なデバイスを多数搭載。また映像だけでなく音声についてもSBMを採用し、「Extended SBM」を搭載することで滑らかさを高めている。
なおHMDの下部にはコントロールボタンも備え、各種設定を手元で行うことが可能。またプロセッサーユニットとHDMIで接続した機器のコントロールなども行える。
HMD部の外形寸法は210×126×257mm(ヘッドバンド部含む)、質量は約420gとなる。
■ゆるめて被り、締める。独特の装着方法を採用
実際の装着方法は、ヘッドバンドのリリースボタンを押さえたまま、ヘッドバンドを後頭部方向へスライドさせ、長めに引き出す。その後バンドを頭頂部に引っかけるようにしてHMDを被り、本体が目の高さで水平になるよう、両手で持って固定。こうすると、額がヘッドパッド部に自然に密着する。
次にバンドを締めて固定する。バンドの分岐部分に指を掛け、前の方にスライドさせ、適度な締め付け感を得られる位置まで締めていく。次にヘッドホンの位置を上下左右に動かし、耳の真ん中に来るように調整する。最後に、本体底面のスライドスイッチをスライドさせると、何段階かでピントの調整も行える。
なおHMD部は、視力矯正用のメガネの上にも装着でき、いわゆる「メガネ・オン・メガネ」での使用も可能だ。ただし実際に試してみたところ、やはりメガネ非装着時の方がHMD部の装着感は高かった。
HMD部を実際に装着した動画は以下の通り。約10秒程度で装着が完了しているが、慣れたらさらに素早く装着が行えるはずだ。
■テレビとのスイッチャーの役割も兼ねたプロセッサーユニット
プロセッサーユニットにはHDMI 1.4の入力を1系統備えている。HMD部とは専用のケーブル(3.5m)で接続し、給電や映像・音声を1本で伝送する。なお専用ケーブルはHMD側の脱着が行えず、ケーブルの交換は行えない。HMDへの出力も1系統のみで、1つのプロセッサーユニットからは1台のHMDへのみ映像が出力可能な仕様だ。
またプロセッサーユニットにはHDMI出力も備えているため、入力した映像をHMD部だけでなく、テレビやプロジェクターなど、他の映像機器へそのまま出力することも可能。スイッチャーとしての機能も併せ持っていることになる。なお、プロセッサーユニットにはもちろん電源ケーブルの接続が必要となる。
プロセッサーユニットで3D映像のデコードを行い、HMD部に伝送する。ただし2D-3D変換機能は備えていない。また、もちろん2D映像の視聴も行える。
また映像処理では、有機ELの階調表現力を活かすため、8ビットの映像をビット拡張して処理し、高精度なビット丸めを行うことで14ビット相当の階調が表現できる「Super Bit Mapping for Video」(SBMV)も搭載。なお、このSBMVは有機ELパネルの特性に合わせてチューニングしたものだという。
なお本機は銀座のソニーショールーム、ソニーストア 名古屋、ソニーストア 大阪で9月10日から先行展示が行われる。
■「ニーズとシーズをともに満足させる自信作」
本日の発表会には、ソニー(株)ホームエンターテインメント事業本部 第2事業部 事業部長の加藤滋氏が出席。加藤氏は開口一番、本機について「非常に思い入れの強い製品」と述べ、自信作であることを強調した。
加藤氏は続けて、「製品には『こういうものが欲しい』というニーズから来る製品と、技術的に色々なことが可能になったから商品化に至る、シーズ(種)から来る製品がある」とし、「今回のHMZ-T1は、ニーズとシーズを同時に満足させる製品だ」と語気を強めた。
本機を投入する背景についても加藤氏は説明。「昨年の国内映画興行収入トップ10のうち、半分以上が3D対応作品だった。同時に、昨年度の国内映画興行収入は過去最高だった。まさに3D元年と呼ぶにふさわしい一年だった」と振り返った。
加藤氏はまた「ソニーは、3D映画の撮影、編集、上映すべてに関与している。同時に家庭内においても、PS3やレコーダー、プレーヤーなどの再生機器、またBRAVIAやプロジェクターなどのディスプレイで、3D化を加速させてきた」とコメント。その上で「大画面3Dを手軽に楽しめる製品を提供したい」という考えから、本機の開発・発売に至ったのだという。
技術の種、シーズについても言及。「α用の有機ELパネル開発が進んでいたし、プロジェクターでの光学系小型化技術も役立った。もちろんBRAVIAでの高画質化信号処理技術、またヘッドホン開発で培ったソニーのバーチャルサラウンド信号処理なども投入した」とし、「これらソニーの持つ技術を投入し、『圧倒的な映像美』『映画館にいるような没入感』『高純度3D』を実現した“世界初体感”を提供する」と宣言した。
加藤氏によると、開発で苦労した点は「有機ELデバイス」と「小型化」の2点だったという。有機ELデバイスについては「これだけ小さなサイズでHDを実現するので、ギリギリ開発が間に合った」とコメント。小型化については「光学系が大きくなっては頭に被れない。小型化にも苦労した」と述べた。
なお当サイトでは、本機の開発担当者・商品企画担当者へのインタビュー記事を近日掲載する予定だ。
【問い合わせ先】
ソニーマーケティング(株) 買い物相談窓口
TEL/0120-777-886
同社は今年1月のCESで3D対応ヘッドマウントディスプレイを参考出展していたが、これをブラッシュアップして商品化した。
メインターゲットはBlu-ray 3D対応BDレコーダーやプレーヤーの所有者、また3D立体視ゲームが用意されたPS3のユーザー。安全上の理由から、使用対象年齢は16歳以上としている。
製品は、頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ部(以下HMD部)と、映像入出力や映像処理を行うプロセッサーユニット部に分かれている。
■有機EL×2枚でクロストークフリーの3D映像を実現
HMD部には、0.7インチで1,280×720ドットのソニー製有機ELパネルを、右眼用と左眼用の2枚搭載。なお、同社“α”新モデルに搭載されている有機ELパネルは0.5インチで、解像度はXGAだった。
有機ELの画素サイズは4μm×12μmと非常に微細。これを実現するため、白色有機EL層を発光させ、上にカラーフィルターを重ねる色分離方式を採用した。なお有機EL層はソニーモバイルディスプレイで製造し、これをソニーセミコンダクタ九州でカラーフィルターと貼り合わせ、デバイスとして出荷している。
本機では、この有機ELパネルに視野角45度の光学レンズを組み合わせた。同社では、仮想視聴距離約20mで、約750インチ相当の視聴体験が得られるとしている。750インチという画面サイズはIMAXデジタルと同程度のサイズだ。
自発光である有機ELパネルを採用したため、黒の映像の時にはまったく発光させない表示が可能。このため最低黒輝度は測定限界以下となる。またパネルの応答速度は0.01msで、速いパネルでも数msである液晶に比べ、圧倒的に動画応答性能が高い点も特徴だ。このためゲームでの利用にも適している。またパネルの色域はNTSC比で90%以上、パネルのコントラスト比は非公開。
なお、人間の最大視野は約200度程度のため、HMD部は45度を超えた範囲の映像を覆うデザインを採用。また下からの光を遮るライトシールドも付属し、これを装着することで光の侵入を防ぎ、映像への没入感を高められる。
右眼用と左眼用の映像を完全に独立させており、3D映像の視聴時に全く別の映像を表示させるため、右眼用/左眼用の映像が混ざり合うクロストークが原理上全く発生しない。また偏光板やシャッターを介す必要が無いため、明るい3D映像が楽しめる。
■バーチャルサラウンドなど音質にもこだわり
HMD部にはオープンエア ダイナミック型のヘッドホンも搭載。5.1ch バーチャルサラウンド技術「Virtual Phones Technology」も備えている。サラウンドモードは適度な残響感の「スタンダード」、映画館のような設定の「シネマ」、くっきりした定位のゲームに適した「ゲーム」、モニタースタジオ的な設定の「ニュートラル」の4モードを備えている。
そのほか本機には、オーディオ専用の32ビットDSPや高音質ヘッドホンアンプ内蔵の24ビットDACなど高品位なデバイスを多数搭載。また映像だけでなく音声についてもSBMを採用し、「Extended SBM」を搭載することで滑らかさを高めている。
なおHMDの下部にはコントロールボタンも備え、各種設定を手元で行うことが可能。またプロセッサーユニットとHDMIで接続した機器のコントロールなども行える。
HMD部の外形寸法は210×126×257mm(ヘッドバンド部含む)、質量は約420gとなる。
■ゆるめて被り、締める。独特の装着方法を採用
実際の装着方法は、ヘッドバンドのリリースボタンを押さえたまま、ヘッドバンドを後頭部方向へスライドさせ、長めに引き出す。その後バンドを頭頂部に引っかけるようにしてHMDを被り、本体が目の高さで水平になるよう、両手で持って固定。こうすると、額がヘッドパッド部に自然に密着する。
次にバンドを締めて固定する。バンドの分岐部分に指を掛け、前の方にスライドさせ、適度な締め付け感を得られる位置まで締めていく。次にヘッドホンの位置を上下左右に動かし、耳の真ん中に来るように調整する。最後に、本体底面のスライドスイッチをスライドさせると、何段階かでピントの調整も行える。
なおHMD部は、視力矯正用のメガネの上にも装着でき、いわゆる「メガネ・オン・メガネ」での使用も可能だ。ただし実際に試してみたところ、やはりメガネ非装着時の方がHMD部の装着感は高かった。
HMD部を実際に装着した動画は以下の通り。約10秒程度で装着が完了しているが、慣れたらさらに素早く装着が行えるはずだ。
■テレビとのスイッチャーの役割も兼ねたプロセッサーユニット
プロセッサーユニットにはHDMI 1.4の入力を1系統備えている。HMD部とは専用のケーブル(3.5m)で接続し、給電や映像・音声を1本で伝送する。なお専用ケーブルはHMD側の脱着が行えず、ケーブルの交換は行えない。HMDへの出力も1系統のみで、1つのプロセッサーユニットからは1台のHMDへのみ映像が出力可能な仕様だ。
またプロセッサーユニットにはHDMI出力も備えているため、入力した映像をHMD部だけでなく、テレビやプロジェクターなど、他の映像機器へそのまま出力することも可能。スイッチャーとしての機能も併せ持っていることになる。なお、プロセッサーユニットにはもちろん電源ケーブルの接続が必要となる。
プロセッサーユニットで3D映像のデコードを行い、HMD部に伝送する。ただし2D-3D変換機能は備えていない。また、もちろん2D映像の視聴も行える。
また映像処理では、有機ELの階調表現力を活かすため、8ビットの映像をビット拡張して処理し、高精度なビット丸めを行うことで14ビット相当の階調が表現できる「Super Bit Mapping for Video」(SBMV)も搭載。なお、このSBMVは有機ELパネルの特性に合わせてチューニングしたものだという。
なお本機は銀座のソニーショールーム、ソニーストア 名古屋、ソニーストア 大阪で9月10日から先行展示が行われる。
■「ニーズとシーズをともに満足させる自信作」
本日の発表会には、ソニー(株)ホームエンターテインメント事業本部 第2事業部 事業部長の加藤滋氏が出席。加藤氏は開口一番、本機について「非常に思い入れの強い製品」と述べ、自信作であることを強調した。
加藤氏は続けて、「製品には『こういうものが欲しい』というニーズから来る製品と、技術的に色々なことが可能になったから商品化に至る、シーズ(種)から来る製品がある」とし、「今回のHMZ-T1は、ニーズとシーズを同時に満足させる製品だ」と語気を強めた。
本機を投入する背景についても加藤氏は説明。「昨年の国内映画興行収入トップ10のうち、半分以上が3D対応作品だった。同時に、昨年度の国内映画興行収入は過去最高だった。まさに3D元年と呼ぶにふさわしい一年だった」と振り返った。
加藤氏はまた「ソニーは、3D映画の撮影、編集、上映すべてに関与している。同時に家庭内においても、PS3やレコーダー、プレーヤーなどの再生機器、またBRAVIAやプロジェクターなどのディスプレイで、3D化を加速させてきた」とコメント。その上で「大画面3Dを手軽に楽しめる製品を提供したい」という考えから、本機の開発・発売に至ったのだという。
技術の種、シーズについても言及。「α用の有機ELパネル開発が進んでいたし、プロジェクターでの光学系小型化技術も役立った。もちろんBRAVIAでの高画質化信号処理技術、またヘッドホン開発で培ったソニーのバーチャルサラウンド信号処理なども投入した」とし、「これらソニーの持つ技術を投入し、『圧倒的な映像美』『映画館にいるような没入感』『高純度3D』を実現した“世界初体感”を提供する」と宣言した。
加藤氏によると、開発で苦労した点は「有機ELデバイス」と「小型化」の2点だったという。有機ELデバイスについては「これだけ小さなサイズでHDを実現するので、ギリギリ開発が間に合った」とコメント。小型化については「光学系が大きくなっては頭に被れない。小型化にも苦労した」と述べた。
なお当サイトでは、本機の開発担当者・商品企画担当者へのインタビュー記事を近日掲載する予定だ。
【問い合わせ先】
ソニーマーケティング(株) 買い物相談窓口
TEL/0120-777-886
関連リンク
トピック
- ジャンルヘッドマウントディスプレイ
- ブランドSONY
- 型番HMZ-T1
- 発売日2011年11月11日
- 価格¥OPEN(予想実売価格60,000円前後)