ガジェット【連載】佐野正弘のITインサイト 第139回
ライカ監修「AQUOS R9 Pro」とハッセルブラッド監修「OPPO Find X8」比較レビュー。カメラの違いは?
ドイツのライカカメラとスウェーデンのハッセルブラッドといえば、世界的なカメラの老舗として知られており、愛好者も多いメーカーでもある。そしてここ最近、その両社のブランドを冠したスマートフォンが相次いで登場しているようだ。
その1つは、シャープの新しいフラッグシップモデル「AQUOS R9 Pro」。シャープは2021年からライカカメラと提携しているスマートフォンメーカーの1つで、昨今のハイエンドモデル “AQUOS R” シリーズは、いずれもライカカメラが監修したカメラを搭載したことを大きな特徴として打ち出している。
そしてもう1つは、中国のOPPO(オッポ)がおよそ3年ぶりに日本市場に投入したハイエンドモデル「OPPO Find X8」。日本では長らくハイエンドモデルが投入されなかったため知らない人も多いだろうが、実はOPPOは2022年からハッセルブラッドと提携しており、OPPO Find X8はそのハッセルブラッドが監修したカメラを搭載している。
そこで今回は、非常に近いタイミングで投入され、なおかつ老舗カメラメーカーの監修を受けたことを大きな特徴としている、AQUOS R9 ProとOPPO Find X8を、カメラに重点を置いて比較してみたいと思う。
ただあらかじめ断っておく必要があるのは、実は海外では最上位モデルの「OPPO Find X8 Pro」も販売されており、本来ならそちらがAQUOS R9 Proの対抗モデルになること。残念ながら日本では販売されなかったため、今回はOPPO Find X8を対象とし、性能よりも双方の性格の違いを比較することが主な趣旨となることをご了承いただきたい。
まずは軽く本体サイズとスペックについて確認しておこう。AQUOS R9 Proは約6.7インチのディスプレイを搭載しており、サイズは約78W×162H×9.3Dmm、重量は約229g。一方のOPPO Find X8は約6.6インチのディスプレイを搭載しており、サイズは約74W×157H×7.9Dmm、重量は約193gとなっていることから、ボディはAQUOS R9 Proの方が大きい。
両機種ともにカメラ部分は中央に配置されており、円形のデザインを取り入れている点は共通しているが、その出っ張りはAQUOS R9 Proの方が高い。これには後述するカメラやイメージセンサーのサイズ、そしてOPPO Find X8が望遠カメラに「W型プリズム」という独自構造を採用し、出っ張りを抑えていることなどが違いに影響している。
また性能に関しては、AQUOS R9 Proがクアルコム製の「Snapdragon 8s Gen 3」を搭載し、メモリは12GB、ストレージは512GB。OPPO Find X8はメディアテック製の「Dimensity 9400」を搭載し、メモリは16GB、ストレージは512GB。いずれも新しいハイエンド向けのチップセットを搭載しており、非常に性能が高いことは間違いない。
では、両機種の大きな特徴となっている背面のカメラの性能はどうだろうか。まずAQUOS R9 Proについてだが、前機種「AQUOS R8 Pro」までは性能が高い1つのカメラで全ての画角を補う仕組みだったのに対し、今回はライカカメラが監修した「バリオ・ズミクロン」カメラシステムを採用。広角(シャープの表記は「標準」)・超広角(シャープの表記は「広角」)・望遠カメラの3眼構成で、全て約5030万画素画素数のイメージセンサーを搭載している。
ただ、個々のカメラが採用するイメージセンサーには違いがあり、広角カメラは従来通り1インチ超の大型センサーを搭載する一方、超広角カメラをマクロカメラに対応させ、1インチセンサーの弱点でもあった接写をカバーできるようになった。また、望遠カメラは光学2.8倍ズーム相当の撮影が可能で、最大20倍までのデジタルズーム撮影にも対応していることから、AQUOS R8 Proと比べると撮影シーンの幅は大きく広がっている。
一方のOPPO Find X8のカメラだが、こちらも広角・超広角・望遠ともに約5000万画素のカメラを搭載。望遠カメラは先にも触れたようにW型プリズムを採用することで、本体の出っ張りを抑えながらも光学3倍ズーム相当の望遠撮影に対応し、なおかつこれまでより2.5倍大きいイメージセンサーを搭載できるようになったとしている。ちなみにデジタルズームは最大で120倍まで対応しており、さすがに品質は落ちるがかなり遠方を撮影できるのはメリットだ。
では実際のところ、両機種で撮影した写真にはどれくらいの違いがあるのだろうか。同じ時間・場所で実際に撮影した写真を何枚か並べて比べてみよう。
これらの写真を見比べてみて分かるのは、どちらも非常に高い品質の写真を撮影できること。そしてもう1つは、色味にかなり違いがあることだ。OPPO Find X8は全体的に明るい色の発色を強くする傾向にあるのに対し、AQUOS R9 Proは比較的見たままに近い色合いとなる傾向が強いと感じる。
こうした違いには、もちろん監修するカメラメーカーの違いも影響しているのだろうが、元々日本や米国のメーカーは自然な発色を重視することが多いのに対し、中国や韓国のメーカーは見栄えを重視するため発色を良くすることに注力する傾向が強かった。国によるカメラ開発の文化的違いも、双方の違いには影響しているのかもしれない。
他にも双方のカメラにはいくつかの特徴がある。実際、AQUOS R9 Proはシャッターキーを搭載していることから、カメラを横にした状態で非常に撮影がしやすくなっているほか、専用のアタッチメントを装着すればカメラ用のレンズフィルターを装着して撮影することも可能。よりカメラに近い撮影にこだわっているようで、同じくライカカメラと提携し、カメラを開発している中国Xiaomi(シャオミ)の「Xiaomi 14 Ultra」を意識している部分もありそうだ。
一方でOPPO Find X8は、生成AIを活用した写真の編集機能に力が入れられている。実際、写真撮影後に「AIエディター」という機能を使うと、写真上のオブジェクトを消す「AI消しゴム」のほか、ガラスなどの写り込みやピンボケを除去する機能なども備わっている。
実際にこれら機能を使ってみると、非常に強力な効果が得られると感じるのだが、一方で生成AIの技術を活用しているだけあって、たとえばピンボケを除去する際にはどうしても元の被写体とは似て非なる修正が施されてしまう。生成AIの限界を考慮した上で活用することを心がけたい。
こうして見ると、両機種は提携するカメラメーカーだけでなく、カメラ自体の設計思想、その活用の仕方などについても違いがあることが分かる。カメラに重点を置いていることは共通しているものの、性格にかなりの違いがあることが理解できるのではないだろうか。
それだけに、カメラでの撮影を目的として両機種を検討しているのであれば、その違いを体感するためにも可能な限り実際に触れてみることをお勧めしたい。
その1つは、シャープの新しいフラッグシップモデル「AQUOS R9 Pro」。シャープは2021年からライカカメラと提携しているスマートフォンメーカーの1つで、昨今のハイエンドモデル “AQUOS R” シリーズは、いずれもライカカメラが監修したカメラを搭載したことを大きな特徴として打ち出している。
そしてもう1つは、中国のOPPO(オッポ)がおよそ3年ぶりに日本市場に投入したハイエンドモデル「OPPO Find X8」。日本では長らくハイエンドモデルが投入されなかったため知らない人も多いだろうが、実はOPPOは2022年からハッセルブラッドと提携しており、OPPO Find X8はそのハッセルブラッドが監修したカメラを搭載している。
そこで今回は、非常に近いタイミングで投入され、なおかつ老舗カメラメーカーの監修を受けたことを大きな特徴としている、AQUOS R9 ProとOPPO Find X8を、カメラに重点を置いて比較してみたいと思う。
■シャープ「AQUOS R9 Pro」とOPPO「OPPO Find X8」のハイエンド機種比較
ただあらかじめ断っておく必要があるのは、実は海外では最上位モデルの「OPPO Find X8 Pro」も販売されており、本来ならそちらがAQUOS R9 Proの対抗モデルになること。残念ながら日本では販売されなかったため、今回はOPPO Find X8を対象とし、性能よりも双方の性格の違いを比較することが主な趣旨となることをご了承いただきたい。
まずは軽く本体サイズとスペックについて確認しておこう。AQUOS R9 Proは約6.7インチのディスプレイを搭載しており、サイズは約78W×162H×9.3Dmm、重量は約229g。一方のOPPO Find X8は約6.6インチのディスプレイを搭載しており、サイズは約74W×157H×7.9Dmm、重量は約193gとなっていることから、ボディはAQUOS R9 Proの方が大きい。
両機種ともにカメラ部分は中央に配置されており、円形のデザインを取り入れている点は共通しているが、その出っ張りはAQUOS R9 Proの方が高い。これには後述するカメラやイメージセンサーのサイズ、そしてOPPO Find X8が望遠カメラに「W型プリズム」という独自構造を採用し、出っ張りを抑えていることなどが違いに影響している。
また性能に関しては、AQUOS R9 Proがクアルコム製の「Snapdragon 8s Gen 3」を搭載し、メモリは12GB、ストレージは512GB。OPPO Find X8はメディアテック製の「Dimensity 9400」を搭載し、メモリは16GB、ストレージは512GB。いずれも新しいハイエンド向けのチップセットを搭載しており、非常に性能が高いことは間違いない。
■両機種のカメラ性能の違いをチェック
では、両機種の大きな特徴となっている背面のカメラの性能はどうだろうか。まずAQUOS R9 Proについてだが、前機種「AQUOS R8 Pro」までは性能が高い1つのカメラで全ての画角を補う仕組みだったのに対し、今回はライカカメラが監修した「バリオ・ズミクロン」カメラシステムを採用。広角(シャープの表記は「標準」)・超広角(シャープの表記は「広角」)・望遠カメラの3眼構成で、全て約5030万画素画素数のイメージセンサーを搭載している。
ただ、個々のカメラが採用するイメージセンサーには違いがあり、広角カメラは従来通り1インチ超の大型センサーを搭載する一方、超広角カメラをマクロカメラに対応させ、1インチセンサーの弱点でもあった接写をカバーできるようになった。また、望遠カメラは光学2.8倍ズーム相当の撮影が可能で、最大20倍までのデジタルズーム撮影にも対応していることから、AQUOS R8 Proと比べると撮影シーンの幅は大きく広がっている。
一方のOPPO Find X8のカメラだが、こちらも広角・超広角・望遠ともに約5000万画素のカメラを搭載。望遠カメラは先にも触れたようにW型プリズムを採用することで、本体の出っ張りを抑えながらも光学3倍ズーム相当の望遠撮影に対応し、なおかつこれまでより2.5倍大きいイメージセンサーを搭載できるようになったとしている。ちなみにデジタルズームは最大で120倍まで対応しており、さすがに品質は落ちるがかなり遠方を撮影できるのはメリットだ。
では実際のところ、両機種で撮影した写真にはどれくらいの違いがあるのだろうか。同じ時間・場所で実際に撮影した写真を何枚か並べて比べてみよう。
これらの写真を見比べてみて分かるのは、どちらも非常に高い品質の写真を撮影できること。そしてもう1つは、色味にかなり違いがあることだ。OPPO Find X8は全体的に明るい色の発色を強くする傾向にあるのに対し、AQUOS R9 Proは比較的見たままに近い色合いとなる傾向が強いと感じる。
こうした違いには、もちろん監修するカメラメーカーの違いも影響しているのだろうが、元々日本や米国のメーカーは自然な発色を重視することが多いのに対し、中国や韓国のメーカーは見栄えを重視するため発色を良くすることに注力する傾向が強かった。国によるカメラ開発の文化的違いも、双方の違いには影響しているのかもしれない。
他にも双方のカメラにはいくつかの特徴がある。実際、AQUOS R9 Proはシャッターキーを搭載していることから、カメラを横にした状態で非常に撮影がしやすくなっているほか、専用のアタッチメントを装着すればカメラ用のレンズフィルターを装着して撮影することも可能。よりカメラに近い撮影にこだわっているようで、同じくライカカメラと提携し、カメラを開発している中国Xiaomi(シャオミ)の「Xiaomi 14 Ultra」を意識している部分もありそうだ。
一方でOPPO Find X8は、生成AIを活用した写真の編集機能に力が入れられている。実際、写真撮影後に「AIエディター」という機能を使うと、写真上のオブジェクトを消す「AI消しゴム」のほか、ガラスなどの写り込みやピンボケを除去する機能なども備わっている。
実際にこれら機能を使ってみると、非常に強力な効果が得られると感じるのだが、一方で生成AIの技術を活用しているだけあって、たとえばピンボケを除去する際にはどうしても元の被写体とは似て非なる修正が施されてしまう。生成AIの限界を考慮した上で活用することを心がけたい。
こうして見ると、両機種は提携するカメラメーカーだけでなく、カメラ自体の設計思想、その活用の仕方などについても違いがあることが分かる。カメラに重点を置いていることは共通しているものの、性格にかなりの違いがあることが理解できるのではないだろうか。
それだけに、カメラでの撮影を目的として両機種を検討しているのであれば、その違いを体感するためにも可能な限り実際に触れてみることをお勧めしたい。