Amazon、生成AI搭載「Alexa+」発表。自然会話に対応/3月から米国で提供開始

「Alexa+」米国で3月中に提供開始へ
米Amazonが独自の英語による自然会話に対応するパーソナルアシスタント「Alexa+」を発表した。Alexaをベースに他社の生成AIテクノロジーも柔軟に組み合わせて、今後何万ものスキルやサービスをAlexa+対応のデバイスから音声等による操作で動かせるサービス体系を発展させる。米国では今後数週間以内、つまり3月中には一部のEchoデバイスに対応する形でAlexa+を始動する。
同社は米国時間2月26日に、ニューヨーク・マンハッタンのイベント会場「Spring Studios」を会場に、200人を超えるジャーナリスト・アナリストを集めて新製品発表会を開催した。
2023年に前任者のデイヴ・リンプ氏を引き継ぎ、パノス・パネイ氏がAmazonの新しいデバイス&サービスのシニア・バイス・プレジデントに就任した。パネイ氏は米マイクロソフトで19年以上に渡り、Surfaceシリーズなどのハードウェア製品やWindowsの開発を統括してきた責任者だ。今回の発表会はパネイ氏がステージに立ち、Alexa+のプレゼンテーションを行った。

月額19.99ドルの有償サービス/プライム会員は無料
Alexa+はAmazonのスマートディスプレイ、Echo Showシリーズの21型・15型・10型・8型からソフトウェアアップデートにより順次対応する。21型のAmazon Echo Show 21は2025年2月時点で日本未発売のプロダクトだ。
Alexa+は月額19.99ドル(約2,900円)で有償提供されるサービスだが、Amazonプライム会員には無料で開放する。Alexa+のアップデート対応とともに、Echo Showシリーズはアプリのコンテンツをホーム画面に表示するウィジェットのデザインなど、ユーザーインターフェースを使いやすくして提供する。

またEcho Showシリーズの場合はAlexaを起動した時に画面の下側がブルーに光るスポットライトもアップデートする。Alexa+が処理を実行したタスクの内容に合わせて、スポットライトの中央部分にハートマークやカレンダーなどのアイコンがアニメーションで表示される。
Amazonは2019年ごろにあらゆるテキストの言語を自然な音声ストリームに変換するAmazon PollyというAI音声ジェネレータを公開した。直近では2023年のEchoシリーズの発表会では、独自に学習させたLLMをベースにした生成AIチャット機能の「Alexa, let’s chat」も披露している。誰もが使いやすい、自然な音声会話によるユーザーインターフェースは、Amazonが2014年にAlexaをローンチして以来一貫して追い求めてきた。

現地で体験したAmazon「本気の挑戦」。Alexaと“人間レベル”のフリートークも、日本上陸に期待
Amazon デバイス&サービス事業部門は、ユーザーとの会話能力が向上するAlexaの新サービスなどを多数発表した。
2023/09/24
Alexa+はAlexaの体験をベースにしながら、AWS(Amazon Web Service)の基幹AI技術の上に独自のアーキテクチャを組み、ゼロから新しくつくり上げている。
Amazon Novaや外部パートナーであるAnthropicのClaude、MetaのLlamaのような生成AIの基盤モデル(FM)を組み合わせて、これらをオーケストレーション(指揮)するAmazon Bedrockが外殻として支える。
その上に自動音楽生成のSuno AIのような用途に特化したエキスパートAIを足して、サービスを拡張できる自由度も確保した。


野球チケット購入やUberの配車など多彩な外部サービス連携も
米国ではAlexa+の提供開始とともに、ユーザーはまるで人間に話しかけるような感覚でEchoデバイスと会話を交わしながら多くのサービスが利用できる。例えばTicketmasterのチケット販売サービスは、希望する日時や上限価格を条件としてAlexa+に伝えて、ひいきにするMLB球団の主催試合の観戦チケットを検索・購入する。Uberの配車サービスを依頼したり、好みの食材に合わせたレシピをAlexa+に提案してもらうデモを、Alexa&Fire TV部門のバイスプレジデントであるダニエル・ラウシュ氏が記者会見のステージで実演した。
例えば、Echo Showシリーズが搭載するAlexa+と会話しながら、見守りカメラのRingが記録したビデオから来訪者があった時間帯の映像を呼び出して確認したり、スマート照明のオン・オフや詳細設定を音声で細かく行うこともできる。Amazon Alexaが得意とするスマートホーム連係の機能だ。

Amazonが外部デベロッパに提供するAlexa+のSDKは、元はAlexaのSDKをベースにしていることから基礎部分での互換性が保たれている。例えばWork with Alexaに対応する家電メーカーのサウンドバーやスマート家電は、Alexa+のスタート後も従来通りに使える。あるいはAlexa+のSDKを元に新しい機能を追加することも可能だ。

Alexa+に関連する生成AIサービスは多くがクラウドベースで処理される。デバイスの性能に依存する部分が少ないことから、当初はスマートディスプレイのEcho Showシリーズから対応を開始するが、やがてはAmazonが2017年以降に発売したすべてのEchoデバイスに対応を拡大する予定だ。モバイル版のAmazon Alexaアプリや、Fire TVシリーズのプロダクトが搭載するAlexaの機能にもアップデートをかける。
Alexa+は音楽や動画再生も賢く支援/日本への展開は?
Alexa+はホームエンターテインメントのデバイスやサービスの、音声による直感操作も可能にする。発表会場ではパネイ氏が宅内の複数の部屋に配置したAlexa搭載スマートスピーカーの「Echo Show」シリーズに対して、「家中で音楽を再生して、でも赤ちゃんは起こさないで」と会話するように伝えて「子供部屋以外のすべてのスピーカー」で音楽を再生する使い方を例示した。

動画配信のAmazonプライム・ビデオは、コンテンツの詳細情報や要約、ボーナスコンテンツなどをメタデータとして格納するX-Rayの技術を組み合わせて、「Amazon Musicで配信されている人気の楽曲」を、サウンドトラックに使っている映画の「特定の場面」に音声検索でジャンプする画期的な使い方も組み込めそうだ。

Amazonは本日の発表会の時点では、Alexa+の日本を含む米国外への展開について情報を伝えなかった。Amazonは複数の異なる生成AIモデルを結び付けて、Alexa+に対応するサービスを容易に発展・拡大できるプラットフォームをつくった。そのため、言語の翻訳に強いLLMを組み合わせれば様々な言語に対応することは以前に比べて難しくはないはずだ。
一方、Amazonは日本を含む世界の各国と地域への展開に際して文化的な整合性を高めたり、パートナーとの連係を慎重に図りながらユーザーが安心して使えるサービスに練り上げるための時間は惜しまない考えだ。そのうえで、なるべく早い時期に質の高いサービスを届けることを目指すという。
今回の発表会ではAlexa+に対応する新しいデバイスの発表もなかった。Alexa+はデバイスの形態やパフォーマンスに依存することなく使えるパーソナルアシスタントではあるが、話題を集めるためにも面白いサービスを一緒に発表してもいいと筆者は思う。例えば次に日本でローンチする頃に合わせて「Alexa+対応」のスマートデバイスがお披露目されることも期待したい。