2Dも3Dもハイレベルに楽しみたい! そんな欲張りなあなたにピッタリのモデルがある。それがソニーの<ブラビア>「HX800」だ。ソニーのオリジナル・イノベーション技術である4倍速テクノロジー「モーションフロープロ240Hz」が世代を重ね、液晶特有の動きに対する弱点を見事に克服した。その成果が現れたシリーズの技術的バックボーン、そしてインプレッションをたっぷりとお届けすることにしよう。
HXシリーズは、HX900とHX800の2ラインから成り、<ブラビア>全体の中では、3D対応(メガネ、トランスミッター別売)と4倍速(240Hz駆動)に対応した、画質重視のハイエンドグループに属する。HX900とHX800の主な違いは、HX900が52型/46型の2モデルを持ち、ソニー独自のオプティコントラストパネルと直下型LEDによる部分駆動で、「<ブラビア>史上最高の画質」を謳うのに対し、HX800は、46型と40型の2モデル。後述のクリアブラックパネルとエッジ型LEDによる部分駆動タイプ。充分な高画質を確保しつつ、パネル部のスリム化や意欲的な価格設定がなされたシリーズだ。今回は、「リビング高画質」とも呼べる画質、機能、価格を高次元でバランスさせたHX800に注目し、その魅力を紹介する。
Sony 液晶テレビ HX800 series(左:KDL-46HX800/右:KDL-40HX800) 【SPEC】●チューナー:地上・BS・110度CSデジタル、地上アナログ、CATV地上アナログ、CATVパススルー ●3D機能:別売3D対応メガネTDG-BR100/TDG-BR50対応、別売3DシンクロトランスミッターTMR-BR100対応 ●主な映像入力端子:HDMI×4、D5×2、ビデオ×2 ●外形寸法・質量:1085W×688H×260Dmm・19.2kg(KDL-46HX800・スタンド含む)、952W×613H×250Dmm・16.4kg(KDL-40HX800・スタンド含む) |
クリアブラックパネル/オプティコントラストパネル
明るい部屋でも鮮やかな色彩や奥行き感の
ある映像を再現するパネル。HX800に搭載された
「クリアブラックパネル」は外光が当たることで
画面が白っぽく見える白ぼやけを最小限に抑える。
上位機HX900では「オプティコントラストパネル」を
搭載。外光の反射とパネル内部からの映像光の
拡散を徹底的に抑えている。
HX800は、HX900と同じく「モーションフロープロ240Hz」を搭載し、残像感が極めて少なく安定感の高い画質を実現している。「モーションフロープロ240Hz」の特長は、単に液晶パネルを4倍速で駆動するのではなく、中間コマの生成精度が高い点にある。僅か60分の1秒という、まばたきの数分の1という短時間に、リアルタイムで適切な中間コマを3枚描き出すのには、映像エンジンの処理能力の高さに加え、アルゴリズムの洗練度が効いてくる。ソニーは、撮影するカメラ、伝送システム、テレビ受像器の全てに渡って長年の技術蓄積を持ち、4倍速液晶テレビにおいても2008年に世界で初めて製品化を果たした。先駆者として蓄積してきたノウハウは揺るぎないアドバンテージだ。その他、ソニー独自の液晶パネル技術も注目に値する。HX900に採用されているオプティコントラストパネルは、外光の反射を抑え、映像光を高純度に取り出す事で、究極の画質を目指す。一方、HX800に採用されているクリアブラックパネルは、明るめのリビングでも充分な黒の締まりを実現。拡散しない手法で映り込みを抑え、キレのある色と解像度感が持ち味。
また、LEDの採用に関しても、「QUALIA005」(2004年)でいち早く製品化を果たすなど、その制御の巧みさには一日の長がある。LEDの明るさと制御技術を活かした4倍速「クリアモード」は、HX800では元画像を尊重しつつ、LEDバックライトオフによる黒挿入で残像感を低減しながらも、画面の明るさも損なわない。総じて、リビング用途として最適化した高画質の資質を持っているのだ。
2Dと遜色の無い優れた3D画質を得るには、明るさや情報量を確保するという意味からも、ベースとなる2D画質の能力の高さがそのまま3D画質の評価に直結する。HX800では、4倍速駆動をベースとした左目用映像と右目用映像の超高速切換と、LEDバックライトのオン/オフの組み合わせにより、左目用の映像は左目のみに、右目用の映像は右目のみに確実に届けられ、左右の映像が混じらない事で、優れた立体感とナチュラルで疲れにくい3D画質を実現している。発光効率が高く高速オン/オフに適したLEDを用いる事によって、2D映像と違和感の無い画面輝度を実現しているのもポイントである。ソニー独自の立体視メガネは、偏光板が一般的な2枚構成に対し1枚で明るさアップに寄与している他、メガネ上部のひさしが頭部にフィットし、照明などの外光漏れを防ぐ事で、メガネレンズ内側の映り込みを排除している。明かりのあるリビングでもクリアな視界を確保できるのが美点だ。
ソニーのイノベーション・テクノロジー「4倍速」 | |
3D 従来の3D映像では映像が二重に見えることが多い。ソニーは「モーションフロープロ240Hz」でこの問題を解決。クロストークの少ない映像を実現した。 |
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3D 4倍速と同様に早くから手がけてきたLEDバックライト制御技術も熟成の域に入った。他に先駆けて搭載を進めてきた技術が結晶し、クロストークの非常に少ないくっきりとした明るい3D映像を実現した。ソニー製品が3D視聴においてリビングでの視聴にも適しているのは、こういった背景があるためだ。 |
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2D 「モーションフロープロ240Hz」で1秒間60コマの映像のコマ間に3コマの映像を新たに生成。コンテンツを4倍のコマ数で表現でき、残像感を低減させる。枚数が多いほど映像が滑らかに見えるこの技術は、ソニーが最初に手がけたものだ。 |
HD画質の基本は1920×1080画素による精細感。一般的には、表示パネルがフルHDと言えども、動画像では残像感や色かぶりなどが伴い、実際にフルHD映像の緻密さを享受するのは難しい。HX800に搭載された「モーションフロープロ240Hz」は見事にこの課題を解決し、ソース映像以上の解像度を引き出す事に成功している。例えば、CG映画を含むアニメの場合、24コマ/秒や30コマ/秒といった動画を240コマ/秒に補間して切り換える事で、残像感が知覚できないレベルに到達している。さらに、高精度な中間コマ生成による240コマ/秒化は、ソース映像をより滑らかで濃密に描き出している。静止画の連続である動画像の場合、時間あたりの情報量の増加は、解像度感の向上にも効く。CGアニメの場合、クリエイターにとってコマと言う概念は無いはずで、制作、伝送、受像に関わるシステムの都合で「コマ」に分割されているに過ぎない。そう考えると、高次元の240コマ化は、ソース映像の持つ情報量を忠実に再現するだけでなく、滑らかさを含む解像度感の向上によって、ソース映像を超え、クリエイターの意識に迫るアプローチを行っているとも言えるだろう。
「モーションフロープロ240Hz」の残像低減能力をチェックするなら、スポーツ映像に注目すると良い。例えば、サッカーでボールを追うように映像全体が左右にパンするようなシーンと、カメラが静止した状態で選手が激しく動くシーンの両方に注目して欲しい。全体がパンするシーンでも画面全体の精細感が失われない。選手が激しく動くシーンでは、予測不可能な上下左右の不規則かつ複雑な動きでも、ディテールが維持されることに気づく。これは、「モーションフロープロ240Hz」を軸とするソニー高画質化技術が結集した大きな成果と言える。映画ファンの場合、24コマ/秒によるジャダー感に愛着を持つ人も多いだろう。そのような場合は「クリアモード」を利用すると良い。黒画面の挿入と中間コマの補間を組み合わせ、残像感の低減とソース映像のオリジナリティを両立した映像は、映画特有の雰囲気を醸し出す。また、HX800で特筆すべきは、エッジ型LEDバックライト方式でありながら、部分駆動に対応している点である。LEDは完全消灯が可能で、照明を落とした環境でも漆黒の表現が可能だ。黒部分の多い映画映像においては、色つきの無い深い黒が、引き締まったダイナミックな映像を見せる。暗部の階調表現も繊細かつ滑らかで、ナチュラルな陰影の表現は、映像全体の立体感に大きく寄与している。
2D映像で極められたHX800の動画表現力は、3Dの完成度も大きく押し上げている。2D同様、3Dでも妥協は一切無い。左目用映像と、右目用映像を利用する3D映像では、階調再現能力、映像の切換能力や明るさなど、2Dテレビの2倍以上の能力があって、はじめて2D映像と同等のナチュラルな映像が得られる。HX800の3D映像は、まず、ソニーが有する卓越した2D画質を基礎とする階調表現の豊かさに注目したい。人物など丸みをもつ被写体は繊細な陰影を持ち、画面では明部から暗部へのグラデーションで表現される。階調が不足すると、本来の丸みは表現できず、平面的になったり、最悪の場合は擬似輪郭が現れて破綻した映像となる。これでは、せっかくの3Dも、平面映像を前後に重ねた書き割りのようになってしまう。
モノスコチャートを確認し、ディスプレイの
基本性能をチェックする筆者この点HX800の3D映像は、2Dの高品位でナチュラルな陰影表現をそのままに、人物もその場に実在するかのような有機的な曲面をリアルに描き出す。「モーションフロープロ240Hz」によって、左目用映像と右目用映像の混じりを極限まで抑えたクロストーク特性の良さは、立体感の向上のみでなく、目の疲れも軽減できる。映画などの長時間視聴で重視したい性能だ。また、LEDによる画面輝度の向上と、その明るさを損なわないソニー独自の偏光板1枚構成の3Dメガネとの相乗効果で、3D視聴時の映像の明るさは特筆に値する。これは、明るくダイナミックな映像は、3D感の向上に寄与する他、明かりのあるリビングでも、鮮明な3D映像が楽しめるメリットをもたらす。また、偏光板を1枚にする事で、蛍光灯やLED照明などのチラツキを感じにくくできる効果があり、この点でも明るいリビングとの相性が良い。3D視聴メガネを装着した際の色味の変化は、テレビ側で自動的に色調補正を行うが、この度合いも的確で、違和感の無いナチュラルさが没入感をさらに高めてくれる。2D画質に裏付けされたHX800の3D画質が、映像の世界をよりリアルに見せてくれるということだろう。
ソニーの画作りは、土台となる基本画質が非常に高いレベルまで突き詰められている点で特筆に値する。白の色味を示す色温度は実直かつ高精度に基準の6500Kでチューニングされているほか、豊かで滑らかな階調再現性と忠実なガンマ特性により、高画質な映画素材をありのままに描き出し、レファレンスとして通用するレベルに達している。確固たるベースの上に施された画作りは秀逸で、各自の好み調整も楽しんで欲しい。
独自技術によりS/Nは最高水準レベルに到達 HX800を含む上位3機種には「モーションフロープロ240Hz」が搭載されており、コンサートライブ等のビデオ系映像の動きの自然さは他社機に大差を付けている。2DBD映画ソフトはLEDバックライトの設計が巧みで光線描写の美しさと階調の自然さ、S/Nは液晶中最高水準。明室内で3Dメガネを装着して観る3DBD『くもりときどきミートボール』のHX800の映像は空間の歪みが少ない。より3Dに特化した仕様で明るさを確保しているLX900に比べるともう少しキレが欲しくなる瞬間があるが、消灯して暗室に変えると評価が逆転する。HX800の方が精細感が高く映像の奥行きが深く見通しがよくなり立体感も非常にシャープになる。この差はオプティコントラストパネルを用いるLX900と、クリアパネルを使用するHX800との差が現れているように感じる。映像を適切な環境で凝視する映像ファンなら、40/46型3D視聴機としてHX800は最良の選択だろう。(大橋伸太郎) |
コンテンツを問わず残像感がほとんどない HX800の映像はすっきりと洗練されている。2D視聴では、隅々まで均質な明るさと緻密さがいきわたっている印象。持ち前のユニフォーミティのよさと併せて輪郭や色のキレがよく、動きの早いスポーツや映画、放送コンテンツを問わず残像感がほとんどない。ソニーらしい抜けのよさがどのソースからも実感でき、4倍速パネルの威力を見せつけられる思いだ。映画『NINE』のデリケートな陰影表現や女優の肌のしっとり感などもみごとで、光のコントロールが絶妙。3D映像は他のどのメーカーよりも明るくキレがよい。それに色の鮮度感が上々。クロストークが巧みに抑えられており、エッジも非常に綺麗に現れる。このことこそがソニー製品の3D映像の特徴だ。「モーションフロープロ240Hz」がさらに生きてくる印象であり、アニメ、実写ものなどダイナミック感のある立体映像は、画面狭しと動きまわる様々な被写体をクリアに映し出し、観るものの気分を明らかに高揚させてくれる。(林 正儀) |
現行液晶テレビの中でもっとも卓越した画質 現行液晶テレビ中でもっとも卓越した画質を備えたモデル、それが「HX」であり、ここで紹介する「HX800」である。LEDエッジライトを用いてエリアドライブを図り黒浮き対策を入念に行い、かつ「モーションフロープロ240Hz」による動画ボケ対策を行って液晶モデルのさらなる画質向上に果敢に挑戦したことが実際の画によく現れている。また高性能パネルの搭載も画質向上に寄与している。コントラストの良さと優れた繊細感、さらに視野角の広さと熟成された技術が実っているのだ。このパネル性能を生かし切ったのがソニー史上最強のブラビアエンジン技術だ。また、3Dへの対応力も群を抜いている。まさに早くから240Hzドライブ化を図ってきた成果が実ったもので液晶方式につきまとう課題を、果敢な挑戦でクリアした。そこで描写される豊かな立体感と緻密さに富んだ映像こそが求めていた3D映像である。この高度なベースがあれば今後への期待も大きく膨らむ。(村瀬孝矢) |