“静かな力強さ”を表現
トライオードの注目モデル「TRV-845SE」を井上千岳が聴く
リーズナブルな価格と丁寧な仕上げで人気の高い管球式アンプのトライオードから、注目すべきモデルが登場した。型番からもわかるとおり、3極管845を使用したプリメインアンプ「TRV-845SE」(504,000円/税込)である。
845は大型の直熱3極管としてファンが多い。3極管独特の繊細で緻密な音色と出力の大きさを兼ね備えた真空管として、ある意味では管球ファンのイメージに理想的な出力管として映るからかもしれない。そして直熱管という構成が、真空管も最も純粋な姿として認識されるのだろう。
本機はそうした純度の高さを最大限に発揮させるため、この出力管をクラスAのシングルで使用している。そしてドライバーにやはり著名な3極管2A3を採用し、初段には双3極管6SN7を搭載して、純A級全段3極管による構成を完成した。
2A3は300Bと並んでやはり管球ファンから高い信頼を寄せられているが、本来出力管として使用される真空管をドライブ段に使うことで、845の性能をフルに引き出そうという設計である。300Bをドライバーに使うのは珍しくないが、2A3はあまり見かけることがない。トライオード社としても2A3の使用は初めてということである。
プリメインアンプという構成だが、プリ部はCR型として設計されているようだ。また通常のアンバランス入力3系統のほかにPre−in入力も設け、パワーアンプとして使用することも可能である。さらにXLRバランス入力も1系統装備されている。
巨大な電源および出力トランスは重量も相当なものになるが、このほか独ムンドルフ製コンデンサーやKOA製高品質カーボン抵抗など、パーツにも高品位部品を厳選使用している。またプリメインアンプとしては初のリモコンも付属する。底部のインシュレーターは、径70mmのアルミ削り出し特注品である。
■あえて力感を強調しすぎない繊細な表現
845は大型であるせいか、比較的元気のいい音調を得ることもできる。しかし本機では力感を強調することなく、純A級という構成を生かす意識もあるのか穏やかでナイーブな再現に徹している。現代の管球式ならレンジを思い切り広げることも不可能ではなかったはずだが、あえてそれを避け、あるがままの出方に任せて純度の維持を図っているように思われる。
アカペラでは声の肉質感を大事にした印象で、決して大味にはならない粒の揃った音色で音像を丁寧に浮かび上がらせる。ハーモニーのやや厚手な感触は、駆動力を余裕として生かしたエネルギーの反映ともいえそうだ。
ジャズは線の太いウッドベースや量感のあるキックドラムなど低域の安定感を土台に、充実した質感が描かれている。過剰な響きを抑え、芯の詰まった骨太のタッチを聴き取ってほしいというメッセージのようである。
オーケストラはピラミッド型のバランスから、鮮烈でデリケートな音調を引き出そうとしているかのようだ。瞬発的なエネルギーを秘めながら、当たりは滑らかでダイナミズムにも誇張がない。静かな力強さを感じさせる再現性といってよさそうである。
845は大型の直熱3極管としてファンが多い。3極管独特の繊細で緻密な音色と出力の大きさを兼ね備えた真空管として、ある意味では管球ファンのイメージに理想的な出力管として映るからかもしれない。そして直熱管という構成が、真空管も最も純粋な姿として認識されるのだろう。
本機はそうした純度の高さを最大限に発揮させるため、この出力管をクラスAのシングルで使用している。そしてドライバーにやはり著名な3極管2A3を採用し、初段には双3極管6SN7を搭載して、純A級全段3極管による構成を完成した。
2A3は300Bと並んでやはり管球ファンから高い信頼を寄せられているが、本来出力管として使用される真空管をドライブ段に使うことで、845の性能をフルに引き出そうという設計である。300Bをドライバーに使うのは珍しくないが、2A3はあまり見かけることがない。トライオード社としても2A3の使用は初めてということである。
プリメインアンプという構成だが、プリ部はCR型として設計されているようだ。また通常のアンバランス入力3系統のほかにPre−in入力も設け、パワーアンプとして使用することも可能である。さらにXLRバランス入力も1系統装備されている。
巨大な電源および出力トランスは重量も相当なものになるが、このほか独ムンドルフ製コンデンサーやKOA製高品質カーボン抵抗など、パーツにも高品位部品を厳選使用している。またプリメインアンプとしては初のリモコンも付属する。底部のインシュレーターは、径70mmのアルミ削り出し特注品である。
■あえて力感を強調しすぎない繊細な表現
845は大型であるせいか、比較的元気のいい音調を得ることもできる。しかし本機では力感を強調することなく、純A級という構成を生かす意識もあるのか穏やかでナイーブな再現に徹している。現代の管球式ならレンジを思い切り広げることも不可能ではなかったはずだが、あえてそれを避け、あるがままの出方に任せて純度の維持を図っているように思われる。
アカペラでは声の肉質感を大事にした印象で、決して大味にはならない粒の揃った音色で音像を丁寧に浮かび上がらせる。ハーモニーのやや厚手な感触は、駆動力を余裕として生かしたエネルギーの反映ともいえそうだ。
ジャズは線の太いウッドベースや量感のあるキックドラムなど低域の安定感を土台に、充実した質感が描かれている。過剰な響きを抑え、芯の詰まった骨太のタッチを聴き取ってほしいというメッセージのようである。
オーケストラはピラミッド型のバランスから、鮮烈でデリケートな音調を引き出そうとしているかのようだ。瞬発的なエネルギーを秘めながら、当たりは滑らかでダイナミズムにも誇張がない。静かな力強さを感じさせる再現性といってよさそうである。