話題のミラーレス一眼がついに登場
会田肇のソニー「NEX-5」「NEX-3」ファーストインプレッション
ソニー“α”NEXシリーズの第一印象。それは「バランスが悪いなぁ」というものだった。ボディは今回、「NEX-5」と「NEX-3」の2種類が用意されたわけだが、とくにフルHD動画対応のAVCHDが撮影できるNEX-5はボディのスリム化が徹底されていて、レンズとのバランスがさらに悪く感じる。
これまでミラーレス機と言えばマイクロフォーサーズ機を見慣れていたせいもあるだろう。ソニーのミラーレス機は、本体の徹底的なスリム化を目指したこともあり、その分だけAPS-Cサイズのセンサーに対応させたレンズに、妙に大きさを感じてしまうのだ。
ただ、これはあくまで見ただけの第一印象に過ぎなかった。手にしてみるとカメラとしての印象は一変する。通常のカメラと同じようにホールドしてみると、カメラが手にしっくりと馴染んでくるのだ。「え、どうして?」そう思い、右手でホールドしたグリップ部分を確認してみた。すると親指/人差し指/中指の3本の指でグリップ部分をしっかりホールドし、その上で薬指部分がボディ下の凹んだ部分を軽く支えるような格好になっている(NEX-3にこの凹みはない)。
つまり、正面から見るとわずかに凹んだ底面が、右手での確実なホールドに大きく貢献していたのだ。重量バランス的にも、バッテリーがグリップ部分に収納されることもあって良好なフィーリングだ。これで左手でレンズをグリップすればもう完璧。サイズからは想像できないほど、しっかりとカメラをホールドしたまま撮影ができる。
ところで、その本体のスリム化は実に徹底したものだった。今年2月、PMAで展示されたモックアップからは「ミラーレスの割には厚みが結構ある」という印象を持っていた。
それが今回、製品を見てわかったのだが、この厚みはバリアングル式モニターを備えたことによるものだった。このモニターが本体に食い込むように一体感を持たせているため、モックアップでは厚みのあるデザインで表現されていたのである。だから、これを除けば、本体サイズはコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)並み。もともとソニーはコンデジの薄型化は得意するところでもあり、同社にとってフランジバックを短くできるミラーレス機の小型化は、それほどの苦労ではなかったかもしれない。
操作系は“一眼”カメラとして見ると、相当にシンプルだ。操作系は右側に集中し、その数はコンデジとほとんど変わらない。オリジナルのコントロールホイールとグラフィカルなインターフェースを組み合わせることで、ほとんどの操作をこなせるように設計されているのだ。ホイールの上下にはソフトキーが一つずつ配置され、各種設定はこの3つのボタンを組み合わせて操作する。モニター上には常に各ボタンの役割が表示されており、これを見ながら操作する仕組みだ。
このインターフェースはとても使いやすい。メニューを押すとモニター上には一目で機能がわかるアイコンが表示され、ホイールを回して中央を押すとそれぞれのメニューに入っていける。また、背景のボケ具合を自在にコントロールできるモードもあるのだが、この時はホイールを回すことでボケ具合をモニターで確認しながら設定できる。
この時も「ぼかす」「くっきり」といった表現を使い、さらにその操作がどんな意味を持っているのかも「撮影アドバイス」ボタンによりガイドされる。これは他のモードでも同様で、初心者でも取扱説明書なしで、その機能を使うメリットがわかるようになっているのだ。
撮影でのフィーリングもかなり良好だった。ライブビュー時は常に被写体との距離を自動認識し、ある一定のところまでピントを合わせて待機。シャッターを半押しすると完全にピントを合わせ、シャッターが下りる仕組みを採っている。つまり、シャッターを押してからピントを合わせるのに比べて、圧倒的な速さでピント合わせを実現しているのだ。おかげでピントが合うまでの一連の動作は実にスピーディ。速度優先連続撮影モードなら7コマ/秒、通常モードでも2.3コマ/秒で撮影できる。シャッターボタンのストロークも適度にあり、シャッター音も心地よい。この辺は一眼らしいフィーリングだ。
また、マニュアルフォーカス時は画面の中央部を拡大表示して対応。被写体が拡大されるためピント合わせはしやすくなるのだが、この拡大部分を任意に移動することはできなかった。
一方動画撮影は、NEX-5のみフルHDのAVCHDに対応し、同時にMP4モードも用意。NEX-3はMP4のみの対応となる。動画撮影は背面上部にある動画専用ボタンを押せば、どのモードからでも動画撮影に入れる。
この動画撮影で感じたのは、やはり被写界深度の浅いAPS-Cレンズを使ったときの高い表現力である。
標準ズームの18mm-55mmレンズを27mm相当の広角端で撮影しても、背景がきちんとボケる。望遠端でもせいぜい80mm強程度の焦点距離しかないはずだが、この時のボケ具合は感覚として300mm相当の望遠レンズを使って撮影した時のよう。これならテーブル越しに対面する被写体を撮っても望遠レンズ並みに背景が美しくぼかすことができる。これがフルHDで撮影できてしまうのと想像するだけでワクワクしてくるではないか。
実際に撮影を行ってみて、期待が持てそうだと感じたのがモニターである。上方向に最大80度、下方向に最大45度のチルトが可能となっていることは大きなメリットだ。
個人的に気に入った点はほかにもある。同社のコンデジ・DSC-TX7にも採用されていたTruBlack技術採用の「Xtra Fine」液晶の採用である。
92.1万ドット・3型のこのモニターは、その鮮明かつ美しい表示で、これまでも高く評価されてきたもの。TX7に搭載されていたタッチパネル機能が省略されているため、その分だけメリハリ感を感じさせる。屋外での視認性を高める「屋外晴天モード」も用意されているのもメリットだ。ファインダーがない本機だけにモニターの映り具合は、言わばカメラとしての使い勝手を高める生命線でもある。この部分にこうした配慮がなされたのは高く評価していいだろう。
かなり期待が持てそうなソニーのミラーレス機だが、惜しい部分もある。それはフラッシュを同梱はするものの、別体式で取り付けることだ。いくら小型軽量化を進めたと言っても、実際の使用シーンを考えたら、常に取り付けた状態で使用することが容易に想像できる。これではフラッシュが突起物となってしまうし、せっかくのデザインがあまりにもったいないと感じるのはボクだけではないだろう。オリンパスでもE-P1が登場したとき、フラッシュの非搭載は激しく指摘された部分だけに、次期モデルでの改良は必須ではないだろうか。
とはいえ、同社製コンデジでも採用されていたスイングパノラマやオートHDR、手持ち夜景モード、人物ブレ低減モード、スマイルシャッターといった機能も搭載するなど、機能面での充実ぶりは見事なもの。これにレンズ交換式カメラとしての豊かな表現力が加わるのだから、ユーザーが持つ期待の大きさは相当なものだろう。
現時点では大きめとなっているレンズの小型化など、今後の課題もなくはないが、ソニーの参入によってミラーレス一眼カメラの裾野が急速に広がっていくのは間違いないだろう。
(会田肇)
これまでミラーレス機と言えばマイクロフォーサーズ機を見慣れていたせいもあるだろう。ソニーのミラーレス機は、本体の徹底的なスリム化を目指したこともあり、その分だけAPS-Cサイズのセンサーに対応させたレンズに、妙に大きさを感じてしまうのだ。
ただ、これはあくまで見ただけの第一印象に過ぎなかった。手にしてみるとカメラとしての印象は一変する。通常のカメラと同じようにホールドしてみると、カメラが手にしっくりと馴染んでくるのだ。「え、どうして?」そう思い、右手でホールドしたグリップ部分を確認してみた。すると親指/人差し指/中指の3本の指でグリップ部分をしっかりホールドし、その上で薬指部分がボディ下の凹んだ部分を軽く支えるような格好になっている(NEX-3にこの凹みはない)。
つまり、正面から見るとわずかに凹んだ底面が、右手での確実なホールドに大きく貢献していたのだ。重量バランス的にも、バッテリーがグリップ部分に収納されることもあって良好なフィーリングだ。これで左手でレンズをグリップすればもう完璧。サイズからは想像できないほど、しっかりとカメラをホールドしたまま撮影ができる。
ところで、その本体のスリム化は実に徹底したものだった。今年2月、PMAで展示されたモックアップからは「ミラーレスの割には厚みが結構ある」という印象を持っていた。
それが今回、製品を見てわかったのだが、この厚みはバリアングル式モニターを備えたことによるものだった。このモニターが本体に食い込むように一体感を持たせているため、モックアップでは厚みのあるデザインで表現されていたのである。だから、これを除けば、本体サイズはコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)並み。もともとソニーはコンデジの薄型化は得意するところでもあり、同社にとってフランジバックを短くできるミラーレス機の小型化は、それほどの苦労ではなかったかもしれない。
操作系は“一眼”カメラとして見ると、相当にシンプルだ。操作系は右側に集中し、その数はコンデジとほとんど変わらない。オリジナルのコントロールホイールとグラフィカルなインターフェースを組み合わせることで、ほとんどの操作をこなせるように設計されているのだ。ホイールの上下にはソフトキーが一つずつ配置され、各種設定はこの3つのボタンを組み合わせて操作する。モニター上には常に各ボタンの役割が表示されており、これを見ながら操作する仕組みだ。
このインターフェースはとても使いやすい。メニューを押すとモニター上には一目で機能がわかるアイコンが表示され、ホイールを回して中央を押すとそれぞれのメニューに入っていける。また、背景のボケ具合を自在にコントロールできるモードもあるのだが、この時はホイールを回すことでボケ具合をモニターで確認しながら設定できる。
この時も「ぼかす」「くっきり」といった表現を使い、さらにその操作がどんな意味を持っているのかも「撮影アドバイス」ボタンによりガイドされる。これは他のモードでも同様で、初心者でも取扱説明書なしで、その機能を使うメリットがわかるようになっているのだ。
撮影でのフィーリングもかなり良好だった。ライブビュー時は常に被写体との距離を自動認識し、ある一定のところまでピントを合わせて待機。シャッターを半押しすると完全にピントを合わせ、シャッターが下りる仕組みを採っている。つまり、シャッターを押してからピントを合わせるのに比べて、圧倒的な速さでピント合わせを実現しているのだ。おかげでピントが合うまでの一連の動作は実にスピーディ。速度優先連続撮影モードなら7コマ/秒、通常モードでも2.3コマ/秒で撮影できる。シャッターボタンのストロークも適度にあり、シャッター音も心地よい。この辺は一眼らしいフィーリングだ。
また、マニュアルフォーカス時は画面の中央部を拡大表示して対応。被写体が拡大されるためピント合わせはしやすくなるのだが、この拡大部分を任意に移動することはできなかった。
一方動画撮影は、NEX-5のみフルHDのAVCHDに対応し、同時にMP4モードも用意。NEX-3はMP4のみの対応となる。動画撮影は背面上部にある動画専用ボタンを押せば、どのモードからでも動画撮影に入れる。
この動画撮影で感じたのは、やはり被写界深度の浅いAPS-Cレンズを使ったときの高い表現力である。
標準ズームの18mm-55mmレンズを27mm相当の広角端で撮影しても、背景がきちんとボケる。望遠端でもせいぜい80mm強程度の焦点距離しかないはずだが、この時のボケ具合は感覚として300mm相当の望遠レンズを使って撮影した時のよう。これならテーブル越しに対面する被写体を撮っても望遠レンズ並みに背景が美しくぼかすことができる。これがフルHDで撮影できてしまうのと想像するだけでワクワクしてくるではないか。
実際に撮影を行ってみて、期待が持てそうだと感じたのがモニターである。上方向に最大80度、下方向に最大45度のチルトが可能となっていることは大きなメリットだ。
個人的に気に入った点はほかにもある。同社のコンデジ・DSC-TX7にも採用されていたTruBlack技術採用の「Xtra Fine」液晶の採用である。
92.1万ドット・3型のこのモニターは、その鮮明かつ美しい表示で、これまでも高く評価されてきたもの。TX7に搭載されていたタッチパネル機能が省略されているため、その分だけメリハリ感を感じさせる。屋外での視認性を高める「屋外晴天モード」も用意されているのもメリットだ。ファインダーがない本機だけにモニターの映り具合は、言わばカメラとしての使い勝手を高める生命線でもある。この部分にこうした配慮がなされたのは高く評価していいだろう。
かなり期待が持てそうなソニーのミラーレス機だが、惜しい部分もある。それはフラッシュを同梱はするものの、別体式で取り付けることだ。いくら小型軽量化を進めたと言っても、実際の使用シーンを考えたら、常に取り付けた状態で使用することが容易に想像できる。これではフラッシュが突起物となってしまうし、せっかくのデザインがあまりにもったいないと感じるのはボクだけではないだろう。オリンパスでもE-P1が登場したとき、フラッシュの非搭載は激しく指摘された部分だけに、次期モデルでの改良は必須ではないだろうか。
とはいえ、同社製コンデジでも採用されていたスイングパノラマやオートHDR、手持ち夜景モード、人物ブレ低減モード、スマイルシャッターといった機能も搭載するなど、機能面での充実ぶりは見事なもの。これにレンズ交換式カメラとしての豊かな表現力が加わるのだから、ユーザーが持つ期待の大きさは相当なものだろう。
現時点では大きめとなっているレンズの小型化など、今後の課題もなくはないが、ソニーの参入によってミラーレス一眼カメラの裾野が急速に広がっていくのは間違いないだろう。
(会田肇)