注目ヘッドホン SPECIAL REVIEW
SHURE “SE”シリーズ最高峰のハイエンド・カナル型イヤホン「SE535」を聴く
完実電気(株)が取り扱うSHUREから、カナル型イヤホン“SE”シリーズの最上位モデルに位置づけられる新製品「SE535」が好評発売中だ。注目を浴びる本機の実力を中林直樹氏がレポートする。
最高峰にふさわしい見晴らしのよいサウンド
SHURE「SEシリーズ」のハイエンドに位置づけられているのが、この「SE535」である。テクノロジーの面でも、人気の面でもイヤホンの分野を牽引してきたこのブランドで、最高峰に立つとはどのようなことか、今回の試聴を通じてそれがはっきりしてきた。
まず、機構を見ていこう。ドライバーはマイクロドライバー(バランスド・アーマチュア型)を低域用に2基、高域用に1基搭載。それらを巧みにチューニングし、バランスが良く、立体感のあるサウンドに仕上げている。
例えば筆者が最近リファレンスとして使用しているスウェーデンのジャズボーカリスト、リグモール・グスタフソンとウィーンのストリングスカルテットの共演アルバム『Calling You』(輸入盤)から「Makin' Whoopee」をプレイ。コントラバスは不必要に膨らまず、小気味良くタイトに響く。時にリズムを刻み、時にメロディー奏でるビオラやバイオリンは、まとまりがよく適度なグルーブを生んでいる。ボーカルは、その旋律の上ではっきりと存在感を示し、サウンドに立体感を与えている。声は生々しく、かすれやブレスもリアルだ。そして、これらのトータルバランスの秀逸さにも驚いた次第。
リイシューされたばかりのビートルズ『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』(青盤)から「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を試聴しよう。リンゴの手数の多いドラミングが、実に空間的に響いてくる。フロアタムから、スネア、ハイハットなどドラムのセッティングが見えるようだ。途中で立ち現れるハープの音色もニュアンスに富み、楽曲の中で重要なアクセントとなっていることがわかる。ジョンのボーカルには厚みや暖かみがたっぷりと乗っている。
これらの音づくりは、ドライバーの性能だけでなし得るものではない。エルゴノミック、つまり人間工学に基づいたボディデザインとの融合で到達したサウンドである。イヤホンの開発にあたって人間工学をよりどころにすることは何も、このブランドに限ったことではない。しかし、音の出口であるノズルとハウジングの取り付け角度と、軽量かつ薄さを追求した本体がもたらす抜群のフィット感を体験すれば、確固たる理念がそこに息づいていることがわかるはずだ。密閉感の高さや着け心地の良さが、高性能のドライバーと相まって、見晴らしの良いサウンドスケープを出現させているのだ。
【問い合わせ先】
完実電気(株)
TEL/03-5821-1321
【SE535 SPECIFICATIONS】
●型式:バランスド・アーマチュア型 ●再生周波数帯域:18〜19,000Hz ●インピーダンス:36Ω ●ケーブル長:約1.6m ●付属品:フォーム・イヤーチップ(S/M/L)、ソフト・フレックス・イヤーチップ(S/M/L)、イエロー・フォーム・イヤーチップ、トリプルフランジ・イヤーチップ、標準アダプター、レベルコントローラー、航空機内用アダプター、キャリングケース
中林直樹氏 プロフィール
オーディオビジュアルの専門誌で編集に携わった後、独立。現在の肩書きは文筆業。そうしているのは、オーディオビジュアルはもとより、多種多様な業界や媒体に携わっているがゆえ。音楽の趣向も同様に節操なきありさまで、ジャズやルーツミュージック、前衛音楽にも触手を伸ばす。
最高峰にふさわしい見晴らしのよいサウンド
SHURE「SEシリーズ」のハイエンドに位置づけられているのが、この「SE535」である。テクノロジーの面でも、人気の面でもイヤホンの分野を牽引してきたこのブランドで、最高峰に立つとはどのようなことか、今回の試聴を通じてそれがはっきりしてきた。
まず、機構を見ていこう。ドライバーはマイクロドライバー(バランスド・アーマチュア型)を低域用に2基、高域用に1基搭載。それらを巧みにチューニングし、バランスが良く、立体感のあるサウンドに仕上げている。
例えば筆者が最近リファレンスとして使用しているスウェーデンのジャズボーカリスト、リグモール・グスタフソンとウィーンのストリングスカルテットの共演アルバム『Calling You』(輸入盤)から「Makin' Whoopee」をプレイ。コントラバスは不必要に膨らまず、小気味良くタイトに響く。時にリズムを刻み、時にメロディー奏でるビオラやバイオリンは、まとまりがよく適度なグルーブを生んでいる。ボーカルは、その旋律の上ではっきりと存在感を示し、サウンドに立体感を与えている。声は生々しく、かすれやブレスもリアルだ。そして、これらのトータルバランスの秀逸さにも驚いた次第。
リイシューされたばかりのビートルズ『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』(青盤)から「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を試聴しよう。リンゴの手数の多いドラミングが、実に空間的に響いてくる。フロアタムから、スネア、ハイハットなどドラムのセッティングが見えるようだ。途中で立ち現れるハープの音色もニュアンスに富み、楽曲の中で重要なアクセントとなっていることがわかる。ジョンのボーカルには厚みや暖かみがたっぷりと乗っている。
これらの音づくりは、ドライバーの性能だけでなし得るものではない。エルゴノミック、つまり人間工学に基づいたボディデザインとの融合で到達したサウンドである。イヤホンの開発にあたって人間工学をよりどころにすることは何も、このブランドに限ったことではない。しかし、音の出口であるノズルとハウジングの取り付け角度と、軽量かつ薄さを追求した本体がもたらす抜群のフィット感を体験すれば、確固たる理念がそこに息づいていることがわかるはずだ。密閉感の高さや着け心地の良さが、高性能のドライバーと相まって、見晴らしの良いサウンドスケープを出現させているのだ。
【問い合わせ先】
完実電気(株)
TEL/03-5821-1321
【SE535 SPECIFICATIONS】
●型式:バランスド・アーマチュア型 ●再生周波数帯域:18〜19,000Hz ●インピーダンス:36Ω ●ケーブル長:約1.6m ●付属品:フォーム・イヤーチップ(S/M/L)、ソフト・フレックス・イヤーチップ(S/M/L)、イエロー・フォーム・イヤーチップ、トリプルフランジ・イヤーチップ、標準アダプター、レベルコントローラー、航空機内用アダプター、キャリングケース
中林直樹氏 プロフィール
オーディオビジュアルの専門誌で編集に携わった後、独立。現在の肩書きは文筆業。そうしているのは、オーディオビジュアルはもとより、多種多様な業界や媒体に携わっているがゆえ。音楽の趣向も同様に節操なきありさまで、ジャズやルーツミュージック、前衛音楽にも触手を伸ばす。