2chオーディオやシアターシステムの間に置くだけ
”ステレオ”のセンタースピーカーが立体音場を創り出す!”TRINI★STAR“ NDR1を聴く
思わず目を引く特徴的な外観を持つワイズエポック”TRINI★STAR“シリーズは、これまでにないアドオン型のセンタースピーカーだ。ステレオスピーカーの間に本機を置くと、左右上下独立の4個のユニットが立体音場を創り出してくれるという。今回林 正儀氏が、”TRINI★STAR“シリーズのフラグシップモデルとなる「NDR1」の効果を検証した。
イベントでも何度か見かけたが、ワイズエポックの「TRINI★STAR」シリーズはユニットを十字に配置した特異なフォルムということもあって、強烈なインパクトを放っているのは事実だ。どう使うのだろうか? そもそも何でこのようなアイテムが必要なんだろうか……。論より証拠、一度でもその音場創成効果を体験してしまうと、これはとてつもない発明だと誰もが確信するはずである。
■これまでにないアドオン型のセンタートゥイーター
「TRINI★STAR」シリーズは、これまでにないアドオン型のセンタートゥイーターだ。通常のセンタースピーカーはモノラルだが、本機はステレオ仕様。ここが根本的な違いで、そのまま手持ちのスピーカーにつないで使い、音質を飛躍的に改善する世界初のアイテムなのだ。理論は少し難解だが、ステレオ再生で原理的に損なわれていた明快な定位やアタック感を復元するものだという。
図説のとおり、スピーカー1台によるモノラル再生の場合は、音源の波面はきれいな同心円を描きリスナーに届く。それがステレオの2音源となると、互いに波面が干渉しあうのは分かるだろう。空間を共有する以上これは当然だ。結果、リスニングポジションでは左右のスピーカーから届く音波の谷間となって、少しても首をふると定位が不鮮明になったりアタック音の到達が遅いためになまった音、リアルさの欠如したサウンドになるのだという。
■左右上下独立の4個のユニットが音場創成効果を生む
それを改善すべく開発されたのが、「TRINI★STAR」シリーズだ。初期の「TRINI★STARmini」や改良型の「miniSE」といった無垢削り出しのヒバ木材のコンパクトな製品が好評だったが、今回試聴するのは堂々たる風貌のフラグシップモデル「NDR1」である。
左右上下独立の4個のユニットはスキャンスピーク製。無秩序にあちこちを向いているように見えるかも知れないが、その方向と位置の精度は研究につぐ研究の結果たどりついたものだ。左右は4kHz、前後は10kHz以上で放射音のトリニスター効果(音場創成効果)が出るような設計。これを収めたエンクロージャーは60mm厚のウォルナットとホワイトアッシュの無垢削り出しを効果的に組み合わせたリアルウッドで、精度と剛性を高める専用台がオプションで用意されている。ネットワークはパーツにこだわり外付けとした。本体と外付けネットワークの間は、付属のZonotone製特注ケーブルでつなぐ。広い部屋やハイエンドスピーカーに対応する完璧な仕様である。
使いこなしのポイントは主に2つ。置く位置は、本体を精度アップしたおかげでシビアさを要求しないが、左右のセンター位置だけはメジャーで計って正しく決めよう。少し前に出す程度がベター。
もうひとつは背面の2つのツマミだ。「エフェクト」は効果の調整つまみで、OFF〜4の5段階がある。メインスピーカーの能率との兼ね合いで調整すれば良いわけだが、これは支配力が強くちょっとかける程度の2か3くらいがおすすめ。「リフレッシュ」は録音ソースによって鮮度を高める際に使いたい。
■一旦トリニスター効果を味わうともとには戻れない印象
メインスピーカーのモニターオーディオGX300と組んでみよう。OFFで完全にスルーとなるから比較試聴に重宝だが、一旦トリニスター効果を味わうともとには戻れない印象である。聞き慣れたアウラやシャンティなどの女性ボーカルの膨らみや輪郭のにじみのようはものがすっと消える。高性能な一眼レフカメラのようにフォーカスがぴたっと決まった。すると声の表情に生気が増して、口の動きが滑らかになり断然ニュアンスが深まっている。空間に高く放出する高域成分が、メインスピーカーの波面のディップを修復しているのだろうか。不思議だが乱れがおさまり奥行や高さも生まれ、音像に丸みのような立体感が感じられる。2次元のステレオが3次元になったような効果である。ソプラノ4人とアルトがステージに並び、首の振り方や呼吸のタイミング、そして背面の壁、天井までの距離さえ実感できるのは驚きだ。
距離といえば、花井悠希のソロヴァイオリンと伴奏ピアノの重なりが、エフェクトのレベルでおもしろいようにかわることを体感。OFFではどことなく平面的だったのが、1から2、さらに3……と効果を高めるに従って、ヴァイオリンだけ残してピアノが遠ざかっていく。よく聴くとペダルが下にあり、鍵盤を叩く左手と右手の高さが揃うということもわかるのだ。オペラは人の重なりまで感知できるようで、オーケストラは下のピットから確かに聞こえてくる実在感もすごい。録音のよい管弦楽やジャズのビッグバンドなどは、目の前に悠然とステージが広がり、ライブをS席で聴くような上質なホールトーンに包まれた。
ステレオ再生の精度がアップしたことは、ロックやポップス、民族音楽など含めたどのソースでも歴然だが、やはりワンポイントのようなナチュラルな録音の方が効果が高いとも感じた。録音のクオリティまで検知できる効果は新しい発見である。これは体験したもの勝ちだろう。
【執筆者紹介】
林 正儀 Masanori Hayashi
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。
イベントでも何度か見かけたが、ワイズエポックの「TRINI★STAR」シリーズはユニットを十字に配置した特異なフォルムということもあって、強烈なインパクトを放っているのは事実だ。どう使うのだろうか? そもそも何でこのようなアイテムが必要なんだろうか……。論より証拠、一度でもその音場創成効果を体験してしまうと、これはとてつもない発明だと誰もが確信するはずである。
■これまでにないアドオン型のセンタートゥイーター
「TRINI★STAR」シリーズは、これまでにないアドオン型のセンタートゥイーターだ。通常のセンタースピーカーはモノラルだが、本機はステレオ仕様。ここが根本的な違いで、そのまま手持ちのスピーカーにつないで使い、音質を飛躍的に改善する世界初のアイテムなのだ。理論は少し難解だが、ステレオ再生で原理的に損なわれていた明快な定位やアタック感を復元するものだという。
図説のとおり、スピーカー1台によるモノラル再生の場合は、音源の波面はきれいな同心円を描きリスナーに届く。それがステレオの2音源となると、互いに波面が干渉しあうのは分かるだろう。空間を共有する以上これは当然だ。結果、リスニングポジションでは左右のスピーカーから届く音波の谷間となって、少しても首をふると定位が不鮮明になったりアタック音の到達が遅いためになまった音、リアルさの欠如したサウンドになるのだという。
■左右上下独立の4個のユニットが音場創成効果を生む
それを改善すべく開発されたのが、「TRINI★STAR」シリーズだ。初期の「TRINI★STARmini」や改良型の「miniSE」といった無垢削り出しのヒバ木材のコンパクトな製品が好評だったが、今回試聴するのは堂々たる風貌のフラグシップモデル「NDR1」である。
TRINI★STAR NDR1 【Y's EPOCHの製品情報】【製品データベース】 ¥840,000(税込)2011年8月24日発売 カラー:木目/ブラック 別売専用スタンド(¥42,000)も有り |
左右上下独立の4個のユニットはスキャンスピーク製。無秩序にあちこちを向いているように見えるかも知れないが、その方向と位置の精度は研究につぐ研究の結果たどりついたものだ。左右は4kHz、前後は10kHz以上で放射音のトリニスター効果(音場創成効果)が出るような設計。これを収めたエンクロージャーは60mm厚のウォルナットとホワイトアッシュの無垢削り出しを効果的に組み合わせたリアルウッドで、精度と剛性を高める専用台がオプションで用意されている。ネットワークはパーツにこだわり外付けとした。本体と外付けネットワークの間は、付属のZonotone製特注ケーブルでつなぐ。広い部屋やハイエンドスピーカーに対応する完璧な仕様である。
使いこなしのポイントは主に2つ。置く位置は、本体を精度アップしたおかげでシビアさを要求しないが、左右のセンター位置だけはメジャーで計って正しく決めよう。少し前に出す程度がベター。
もうひとつは背面の2つのツマミだ。「エフェクト」は効果の調整つまみで、OFF〜4の5段階がある。メインスピーカーの能率との兼ね合いで調整すれば良いわけだが、これは支配力が強くちょっとかける程度の2か3くらいがおすすめ。「リフレッシュ」は録音ソースによって鮮度を高める際に使いたい。
■一旦トリニスター効果を味わうともとには戻れない印象
メインスピーカーのモニターオーディオGX300と組んでみよう。OFFで完全にスルーとなるから比較試聴に重宝だが、一旦トリニスター効果を味わうともとには戻れない印象である。聞き慣れたアウラやシャンティなどの女性ボーカルの膨らみや輪郭のにじみのようはものがすっと消える。高性能な一眼レフカメラのようにフォーカスがぴたっと決まった。すると声の表情に生気が増して、口の動きが滑らかになり断然ニュアンスが深まっている。空間に高く放出する高域成分が、メインスピーカーの波面のディップを修復しているのだろうか。不思議だが乱れがおさまり奥行や高さも生まれ、音像に丸みのような立体感が感じられる。2次元のステレオが3次元になったような効果である。ソプラノ4人とアルトがステージに並び、首の振り方や呼吸のタイミング、そして背面の壁、天井までの距離さえ実感できるのは驚きだ。
距離といえば、花井悠希のソロヴァイオリンと伴奏ピアノの重なりが、エフェクトのレベルでおもしろいようにかわることを体感。OFFではどことなく平面的だったのが、1から2、さらに3……と効果を高めるに従って、ヴァイオリンだけ残してピアノが遠ざかっていく。よく聴くとペダルが下にあり、鍵盤を叩く左手と右手の高さが揃うということもわかるのだ。オペラは人の重なりまで感知できるようで、オーケストラは下のピットから確かに聞こえてくる実在感もすごい。録音のよい管弦楽やジャズのビッグバンドなどは、目の前に悠然とステージが広がり、ライブをS席で聴くような上質なホールトーンに包まれた。
ステレオ再生の精度がアップしたことは、ロックやポップス、民族音楽など含めたどのソースでも歴然だが、やはりワンポイントのようなナチュラルな録音の方が効果が高いとも感じた。録音のクオリティまで検知できる効果は新しい発見である。これは体験したもの勝ちだろう。
10月21日〜23日まで開催される「オーディオ&ホームシアター展 TOKYO」にて、今回ご紹介した“TRINI★STAR”NDR1を実際に試聴できます。ブースは富士ソフトアキバプラザ 6F「F6-4」です。評論家による解説も有り。奮ってご来場ください。 「オーディオ&ホームシアター展」のY's EPOCHブースで行われた評論家・村井裕弥氏による講演を、動画でご覧頂けるようになりました。詳しくは下記URLから。 http://www.ys-epoch.com/news/?p=985 |
【執筆者紹介】
林 正儀 Masanori Hayashi
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。