【特別企画】画質・音質を徹底検証
パイオニア「SC-LX88/78」レビュー − 想像以上の進化を遂げた革新的AVアンプ
2014年はサラウンドの最新技術「ドルビーアトモス」が発進したことで、AVアンプの新たな進化に注目が集まった。演算能力の向上、多様なスピーカー配置への対応など、Atmosに関連した課題をクリアすることがまずは重要だが、もちろん進化はそこにとどまらない。音源の情報量が拡大してチャンネル数が増えればそれだけアンプへの要求は高まり、基本性能のさらなる向上が不可欠となる。今回もまた新フォーマットの登場がAVアンプの本質的な進化を促すのだ。
パイオニアは2014年秋にSCシリーズの陣容を更新し、SC-LX58、SC-LX78、SC-LX88の3機種を投入した。このレビューではその上位2機種に焦点を合わせ、進化の中身をじっくり検証する。
高い基礎体力を持つ最高峰AVアンプ
SC-LX78とSC-LX88はデジタル回路、アンプなどの基幹部分が共通で、9ch構成のダイレクトエナジーHDアンプを積むことも変わらない。機能・性能面での大きな違いはSC-LX88のみUSB-DACを搭載していることと、出力の数値が若干異なる(LX88は810W/9ch、LX78は770W/9ch)ぐらいで、ホームシアター用アンプとしての基本構成と基礎体力はほぼ同格とみなしていいだろう。どちらもアップデートによるドルビーアトモス対応を実現しているので、多次元サラウンド再生に本格的に取り組みたい人には2機種とも有力な候補になり得る。
2機種に共通する重要な開発テーマの一つが、低音の質感を向上させて一段階上のサウンド・クオリティを実現することだ。PWM変換を受け持つオペアンプ部とゲート駆動ICを独立させた構成を受け継ぐなど、ダイレクトエナジーHDアンプの熟成を進めるとともに、オペアンプやコンデンサーなど部品レベルの吟味も怠らず、音の追い込みは細部に及んでいる。
そして、オーディオ回路のかなめであるDACにはESS社のES9016Sを2基搭載し、全チャンネルごとの動作環境の違いを解消したことが大きい。DACのポテンシャルを完全に引き出すことを念頭に置いて音を追い込んでいるため、アンプの総体で音の方向がしっかり定まっている印象を受ける。ドルビーアトモスに新しく採用されたオブジェクトベースの手法を駆使し、リアルな多次元音響を実現するためには、音色やエネルギーバランスなど全チャンネルの基本性能を高い次元で揃えることが不可欠で、アンプ全体としての統一を図ることが深い意味を持つのだ。
低音再生能力を機能面で強化するため、自動音場補正機能MCACCにもリファインが行われ、MCACC Proに進化した。サブウーファーの出力を2系統用意したうえで自動または手動によるデュアルサブウーファーEQ調整を追加し、超低音の質感向上を狙っているのだ。サブウーファー帯域の遅延を解消し、本来の音色を取り戻すことはすべての音域に効果が及ぶため、確実な音質改善につながる。AVアンプの低音再生能力向上をパイオニアが牽引してきたことに異論の余地はないが、MCACC Proはそのリードをさらに広げる役割を担う。なお、SC-LX88にはミリ単位の精度でスピーカーの位置調整ができる「プレシジョンディスタンス」機能を導入しており、時間軸精度の改善に効果を発揮する。これらの改善がドルビーアトモスの表現力向上に果たす役割も、もちろん無視することはできない。
音質改善技術のなかには、プレシジョンディスタンス以外にもSC-LX88だけに採用されたノウハウがある。たとえば電源トランスから発生する漏洩磁束を厳密にコントロールし、オーディオ回路への影響を最小に抑え込むチューニング手法もその一つだ。昨年の最上位モデルSC-LX87にも採用されていたこの技術は、特定の方向への磁束漏れを抑えることで基板付近での磁束ノイズ分布を低減させ、再生音の純度を高める効果が期待できる。それによって普通に聴き取れるレベルの差が出るのか、それとも限られた次元での微妙な差なのか、気になるところだが、それは実際の試聴のなかで探っていきたい。
入力端子にも装備の違いがある。デジタル入力については両機種の差はほぼないのだが、アナログのマルチチャンネル入力はSC-LX88にしか付いていないのだ。BDP-LX91など、マルチチャンネルのアナログ出力を利用している場合は注意しよう。
ドルビーアトモスのスピーカー配置はLX88、LX78いずれも3つのパターンを用意している。聴き手の位置の真上やや前方に2本のトップミドルスピーカーを追加し、フロントワイドとの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/Fw配置、同じく2本のトップミドルとフロントハイトの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/FH配置、4本のトップスピーカー(トップフォワード/トップバックワード)を追加する5.2.4ch-TFw/TBw配置の3パターンだ。
パイオニアは2014年秋にSCシリーズの陣容を更新し、SC-LX58、SC-LX78、SC-LX88の3機種を投入した。このレビューではその上位2機種に焦点を合わせ、進化の中身をじっくり検証する。
高い基礎体力を持つ最高峰AVアンプ
SC-LX78とSC-LX88はデジタル回路、アンプなどの基幹部分が共通で、9ch構成のダイレクトエナジーHDアンプを積むことも変わらない。機能・性能面での大きな違いはSC-LX88のみUSB-DACを搭載していることと、出力の数値が若干異なる(LX88は810W/9ch、LX78は770W/9ch)ぐらいで、ホームシアター用アンプとしての基本構成と基礎体力はほぼ同格とみなしていいだろう。どちらもアップデートによるドルビーアトモス対応を実現しているので、多次元サラウンド再生に本格的に取り組みたい人には2機種とも有力な候補になり得る。
2機種に共通する重要な開発テーマの一つが、低音の質感を向上させて一段階上のサウンド・クオリティを実現することだ。PWM変換を受け持つオペアンプ部とゲート駆動ICを独立させた構成を受け継ぐなど、ダイレクトエナジーHDアンプの熟成を進めるとともに、オペアンプやコンデンサーなど部品レベルの吟味も怠らず、音の追い込みは細部に及んでいる。
そして、オーディオ回路のかなめであるDACにはESS社のES9016Sを2基搭載し、全チャンネルごとの動作環境の違いを解消したことが大きい。DACのポテンシャルを完全に引き出すことを念頭に置いて音を追い込んでいるため、アンプの総体で音の方向がしっかり定まっている印象を受ける。ドルビーアトモスに新しく採用されたオブジェクトベースの手法を駆使し、リアルな多次元音響を実現するためには、音色やエネルギーバランスなど全チャンネルの基本性能を高い次元で揃えることが不可欠で、アンプ全体としての統一を図ることが深い意味を持つのだ。
低音再生能力を機能面で強化するため、自動音場補正機能MCACCにもリファインが行われ、MCACC Proに進化した。サブウーファーの出力を2系統用意したうえで自動または手動によるデュアルサブウーファーEQ調整を追加し、超低音の質感向上を狙っているのだ。サブウーファー帯域の遅延を解消し、本来の音色を取り戻すことはすべての音域に効果が及ぶため、確実な音質改善につながる。AVアンプの低音再生能力向上をパイオニアが牽引してきたことに異論の余地はないが、MCACC Proはそのリードをさらに広げる役割を担う。なお、SC-LX88にはミリ単位の精度でスピーカーの位置調整ができる「プレシジョンディスタンス」機能を導入しており、時間軸精度の改善に効果を発揮する。これらの改善がドルビーアトモスの表現力向上に果たす役割も、もちろん無視することはできない。
音質改善技術のなかには、プレシジョンディスタンス以外にもSC-LX88だけに採用されたノウハウがある。たとえば電源トランスから発生する漏洩磁束を厳密にコントロールし、オーディオ回路への影響を最小に抑え込むチューニング手法もその一つだ。昨年の最上位モデルSC-LX87にも採用されていたこの技術は、特定の方向への磁束漏れを抑えることで基板付近での磁束ノイズ分布を低減させ、再生音の純度を高める効果が期待できる。それによって普通に聴き取れるレベルの差が出るのか、それとも限られた次元での微妙な差なのか、気になるところだが、それは実際の試聴のなかで探っていきたい。
入力端子にも装備の違いがある。デジタル入力については両機種の差はほぼないのだが、アナログのマルチチャンネル入力はSC-LX88にしか付いていないのだ。BDP-LX91など、マルチチャンネルのアナログ出力を利用している場合は注意しよう。
ドルビーアトモスのスピーカー配置はLX88、LX78いずれも3つのパターンを用意している。聴き手の位置の真上やや前方に2本のトップミドルスピーカーを追加し、フロントワイドとの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/Fw配置、同じく2本のトップミドルとフロントハイトの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/FH配置、4本のトップスピーカー(トップフォワード/トップバックワード)を追加する5.2.4ch-TFw/TBw配置の3パターンだ。