NC性能の高さは折り紙付き。では音質は?
【レビュー】定番モデルの実力は本物か? ボーズのノイズキャンセリング・イヤホン「QuietComfort 20」
2013年6月に発表された「QuietComfort 20 Acoustic Noise Cancelling headphones(以下:QC20)」は、ボーズ初のインイヤー型のノイズキャンセリング(NC)機能搭載モデルだ。
ハウジングの外側と内側に、騒音モニター用のマイクロホンを設置。外側は外部の騒音を、内側は耳に入り込んでくるノイズをキャッチする。キャッチしたノイズは、ケーブルの途中にあるコントロールモジュールに送られ、リアルタイムで逆位相の音波を生成することによりノイズを打ち消すという仕組み。今では他社も採用する方法だが、これを考案したのがボーズであり、オーバーヘッド型のジャンルでは発案から35年以上の開発の歴史がある。
そんな基本性能はそのままに今回、QC20のカラーリングが一新された(関連ニュース)。ブラックとホワイトの2色展開で、本体やケーブル、コントロールモジュールをそれらのベースカラーで仕上げたほか、ケーブルにはターコイズカラーのラインが施されたことが特徴。プラグの外周にも同色があしらわれている。
これまで同社のカラーリングはスピーカーを含め、ブラックやシルバーなどのどちらかといえばマニッシュなテイストだった。ところが近年、スポーツ仕様の「SoundSport in-ear headphones」やカジュアルなオーバーヘッド型「SoundTrue on-ear headphones」などで、ポップな配色が用いられるようになってきている。
本機もその路線にあるといって良いだろう。しかし、ただ単に明るい配色を採用したわけではなく、マットな質感ともあいまって上品に仕上がっている。この派手になり過ぎないところがボーズらしい。
ノイズキャンセリング機能と同様、心地よいフィット感をもたらす「StayHear +」チップも引き続き採用。しなやかでどこか有機的なフォルムを持つラバー状のイヤーチップによって耳穴に押しこむことなく固定できる。
また、ボディにポートを設けることで自然な低域を創出する「TriPortテクノロジー」や、独自の音質補正機能「アクティブ・イコライゼーション」、ボタンをプッシュすると周囲の音も聞くことが可能な「Awareモード」も継承されている。これらは、QC20が高い基本性能を元々有していたことの証左だ。
■iPhoneと組み合わせて試聴。「開かれた音」と表現したくなるイヤホン
さて、iPhoneと組み合わせていくつかのアルバムを聴いてみよう。まず、16年振りにオリジナルメンバーが集結した、ブラーの新作『The Magic Whip』。ひねりのあるメロディーをポップに聴かせるあたりは、まぎれもない彼らのサウンド。ロックバンドだが、攻撃的、破滅的ではなく、音空間を重視したサウンドプロダクションもこのバンド不変のものだ。
「Ice Cream Man」はエレクトロニクスなどをからめたバンドサウンドで、寂しいようなあるいはとぼけたような歌声も印象的だ。では、NC機能をオンにして装着。するとこの曲をふんわりとした音場で聴かせてくれた。ギターやドラムスなどが耳の周囲に漂うようなイメージ。これはイヤーチップの形状に寄るところが大きいと思えた。耳を塞ぐようにして使うのがイヤホンだ。しかし、本機では逆に「開かれた音」と表現したくもなる。
ちなみに、自宅のリビングの窓を開け放って使用したが、道路を通過する自動車の騒音がすっと静まる。NCの効果はやはり大きい。しかし、力まかせに抑え込んでいるのではない。自然な音場とのバランスが図られているのである。
続く「Thought I Was A Spaceman」もエレキギターの残響などを活かした創り込んだサウンドスケープ。ここでも本機は大きな空間を頭の周囲に描き出す。弱音もすくいあげ、左右に広がってゆくのがわかる。ドラムスにはしなやかさを感じた。また、エレキギターの高域も荒れず、マイルドにまとめている。これは解像度高く、音楽をひりひりと聴かせるイヤホンとは対照的。本機が生み出すのは、ゆったりと聴き疲れのしない、音場重視のサウンドである。
中島ノブユキの『散りゆく花』も聴いてみた。ピアノやアコースティックギター、バンドネオン、バイオリンなどで紡がれるしっとりとした作品。それを本機は極めて滑らかに表現した。同時に、腕利きのミュージシャンが発する抑揚に富んだ演奏も伝えてくれた。やがて、それらの音が一体化し、大きなうねりとなって聴こえてくる。
アルバムに収録された楽曲は、すべて落ち着いたもので、演出的な盛り上がりはない。しかし、その練られた構造や巧みな演奏は聴けば聴くほどあらわになる。そして音楽の世界にいつの間にか包まれているのである。この感覚は、外来ノイズがカットされたことによる静寂と、まろやかな音質、柔らかな音場があるからこそ出現するものだ。
(中林 直樹)
ハウジングの外側と内側に、騒音モニター用のマイクロホンを設置。外側は外部の騒音を、内側は耳に入り込んでくるノイズをキャッチする。キャッチしたノイズは、ケーブルの途中にあるコントロールモジュールに送られ、リアルタイムで逆位相の音波を生成することによりノイズを打ち消すという仕組み。今では他社も採用する方法だが、これを考案したのがボーズであり、オーバーヘッド型のジャンルでは発案から35年以上の開発の歴史がある。
そんな基本性能はそのままに今回、QC20のカラーリングが一新された(関連ニュース)。ブラックとホワイトの2色展開で、本体やケーブル、コントロールモジュールをそれらのベースカラーで仕上げたほか、ケーブルにはターコイズカラーのラインが施されたことが特徴。プラグの外周にも同色があしらわれている。
>>ボーズ製品サイトはこちら |
これまで同社のカラーリングはスピーカーを含め、ブラックやシルバーなどのどちらかといえばマニッシュなテイストだった。ところが近年、スポーツ仕様の「SoundSport in-ear headphones」やカジュアルなオーバーヘッド型「SoundTrue on-ear headphones」などで、ポップな配色が用いられるようになってきている。
本機もその路線にあるといって良いだろう。しかし、ただ単に明るい配色を採用したわけではなく、マットな質感ともあいまって上品に仕上がっている。この派手になり過ぎないところがボーズらしい。
ノイズキャンセリング機能と同様、心地よいフィット感をもたらす「StayHear +」チップも引き続き採用。しなやかでどこか有機的なフォルムを持つラバー状のイヤーチップによって耳穴に押しこむことなく固定できる。
また、ボディにポートを設けることで自然な低域を創出する「TriPortテクノロジー」や、独自の音質補正機能「アクティブ・イコライゼーション」、ボタンをプッシュすると周囲の音も聞くことが可能な「Awareモード」も継承されている。これらは、QC20が高い基本性能を元々有していたことの証左だ。
■iPhoneと組み合わせて試聴。「開かれた音」と表現したくなるイヤホン
さて、iPhoneと組み合わせていくつかのアルバムを聴いてみよう。まず、16年振りにオリジナルメンバーが集結した、ブラーの新作『The Magic Whip』。ひねりのあるメロディーをポップに聴かせるあたりは、まぎれもない彼らのサウンド。ロックバンドだが、攻撃的、破滅的ではなく、音空間を重視したサウンドプロダクションもこのバンド不変のものだ。
「Ice Cream Man」はエレクトロニクスなどをからめたバンドサウンドで、寂しいようなあるいはとぼけたような歌声も印象的だ。では、NC機能をオンにして装着。するとこの曲をふんわりとした音場で聴かせてくれた。ギターやドラムスなどが耳の周囲に漂うようなイメージ。これはイヤーチップの形状に寄るところが大きいと思えた。耳を塞ぐようにして使うのがイヤホンだ。しかし、本機では逆に「開かれた音」と表現したくもなる。
ちなみに、自宅のリビングの窓を開け放って使用したが、道路を通過する自動車の騒音がすっと静まる。NCの効果はやはり大きい。しかし、力まかせに抑え込んでいるのではない。自然な音場とのバランスが図られているのである。
続く「Thought I Was A Spaceman」もエレキギターの残響などを活かした創り込んだサウンドスケープ。ここでも本機は大きな空間を頭の周囲に描き出す。弱音もすくいあげ、左右に広がってゆくのがわかる。ドラムスにはしなやかさを感じた。また、エレキギターの高域も荒れず、マイルドにまとめている。これは解像度高く、音楽をひりひりと聴かせるイヤホンとは対照的。本機が生み出すのは、ゆったりと聴き疲れのしない、音場重視のサウンドである。
中島ノブユキの『散りゆく花』も聴いてみた。ピアノやアコースティックギター、バンドネオン、バイオリンなどで紡がれるしっとりとした作品。それを本機は極めて滑らかに表現した。同時に、腕利きのミュージシャンが発する抑揚に富んだ演奏も伝えてくれた。やがて、それらの音が一体化し、大きなうねりとなって聴こえてくる。
アルバムに収録された楽曲は、すべて落ち着いたもので、演出的な盛り上がりはない。しかし、その練られた構造や巧みな演奏は聴けば聴くほどあらわになる。そして音楽の世界にいつの間にか包まれているのである。この感覚は、外来ノイズがカットされたことによる静寂と、まろやかな音質、柔らかな音場があるからこそ出現するものだ。
(中林 直樹)