2013年に登場したヒットモデル
ボーズのロングセラーPCスピーカー「Companion2 III」は“ハイレゾ時代”にも通用するか?
世に多くの傑作小型スピーカーを送り出してきたボーズの製品群の中でも、PCスピーカーはその開発力で常に高い音質評価を獲得しているカテゴリーだ。現在のPCスピーカーラインナップは、「M3」直系の「Computer MusicMonitor」のほか、小型スピーカー+サブウーファーの「Companion5 multimedia speaker system」がPCゲーミングや映画再生向けにアピールされているなど、使用シーン別にいくつかの製品が揃えられている。そんな中、このPCスピーカーカテゴリー全体のエントリー機として位置づけられているのが、2013年6月発売以来のロングセラーモデルである「Companion2 Series III multimedia speaker system(以下、Companion2 III)」だ。
Companion2 IIIの位置づけは、PCにぴったりなマルチメディアスピーカーシステム。デスクトップ、ノートPCを問わず、ディスプレイの横に並べてフィットする80W×190H×150Dmmのサイズを備える。ブラックカラーの筐体はPCデスク上に設置してもシックな外観。PCリスニングを主眼に置いたモデルだけあって、筐体全体がわずかに上向きとなっており、PC前で音楽を聴くニアフィールド・リスニングを想定して設計されている。
PCとの接続は、3.5mmステレオミニ端子経由で行う。前面にヘッドホン端子も備える仕様は、PC用スピーカーとして標準的な構成だ。なお注意してほしいのは、電源は付属ACアダプターから給電するタイプであること。USB給電であればノートPCと共に持ち歩けるのだが、本機は宅内でデスクトップPCやノートPCと組み合わせる想定なのだろう。
前世代モデルからの進化点は、DSP搭載によるボーズ独自の「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」による広がりあるサウンドだ。もっとも、発売から2年を経たモデルとして気になるのは前機種比較よりも、最新のPCスピーカーとして通用するかどうか。早速その実力を検証してみた。
■圧倒的な空間再現力。”ハイレゾ”音源で更に実力を引き出せる
まず、iTunesに取り込んであった圧縮音源の宇多田ヒカル『Automatic』を聴いてみると、そのサウンドは低音に肉厚なビートを刻ませつつ、広がりあるサウンドを伝えるタイプ。特に低音は一般的なスピーカーと比べても積極的に音圧感を出す“迫力志向”で、ノートPCの内蔵スピーカー等からのアップグレード機として用いた場合、その圧倒的な音質差を実感するだろう。ストリングスは、スピーカーの設置位置を遙かに超えたスケール感で広がり、女性ボーカルは繊細ながら声をソリッドに立たせるタイプ。特に音空間の広がりを求めるなら一級品だ。
現在の音楽リスニングにどれだけ通じるかという点では、“ハイレゾ”音源への対応度も気になるところ。スペック上は特に“ハイレゾ”準拠が謳われていないCompanion2 IIIだが、USB-DAC経由でハイレゾ音声入力を試したところ、音質差は如実に表れた。
96kHz/24bit版の宇多田ヒカル『Automatic』を聴くと、先ほどの圧縮音源と比較して低音のビートはより締まりある“情報量志向”のサウンドに、シンバルの金属の刻みも繊細なリズムが聴き分けられる情報量を備える。ボーカルの鳴りは圧縮音源とは若干異なり、ソリッドさよりむしろ音楽空間のなかで存在感を発揮する傾向だ。
他ジャンルの楽曲、ジャズなどでは特に音空間の再現性に優れ、弾けるように鳴るアコースティックギターのサウンドは、弦の動きも見えてくるようだ。低音を効かせたEDMやJ-POPともよくフィットする。個人的には、迫力重視で気持ち良くスッと鳴らすイメージの強いボーズのスピーカーだったが、Companion2 IIIは徹底して空間志向。特にUSB-DACを接続してハイレゾ環境で聴けば、その真の実力も引き出せることがわかった。
■YouTube等の映像作品も見事な音空間を再現
PC用スピーカーとして常用できるCompanion2 IIIだけに、そこで鳴らすことを想定している“音”は本格的な音楽リスニングだけではないだろう。例えばYouTubeで公開されている映画予告編のサウンドを鳴らすといった使用シーンもちろん考えられている。
公開予定の大作SF映画の予告編PVをPCブラウザで再生してみると、PCの画面外にまで余裕で広がるBGMは絶品。迫るように聴こえるセリフと正確な音空間が生み出され、効果音のスケール感も抜群。こういった映像作品は「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」を搭載するCompanion2 IIIの得意なソースなのだ。
ボーズのPCスピーカーの入門機として、11,500円のモデルだが、「マルチメディアスピーカー」という名称の通り、音楽だけでなく映像作品でも活躍する実力を備えている。定番ロングセラーモデルは、やはりその音質の高さで支持を集め続けていることを実感した。
(折原 一也)
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Companion2 IIIの位置づけは、PCにぴったりなマルチメディアスピーカーシステム。デスクトップ、ノートPCを問わず、ディスプレイの横に並べてフィットする80W×190H×150Dmmのサイズを備える。ブラックカラーの筐体はPCデスク上に設置してもシックな外観。PCリスニングを主眼に置いたモデルだけあって、筐体全体がわずかに上向きとなっており、PC前で音楽を聴くニアフィールド・リスニングを想定して設計されている。
PCとの接続は、3.5mmステレオミニ端子経由で行う。前面にヘッドホン端子も備える仕様は、PC用スピーカーとして標準的な構成だ。なお注意してほしいのは、電源は付属ACアダプターから給電するタイプであること。USB給電であればノートPCと共に持ち歩けるのだが、本機は宅内でデスクトップPCやノートPCと組み合わせる想定なのだろう。
前世代モデルからの進化点は、DSP搭載によるボーズ独自の「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」による広がりあるサウンドだ。もっとも、発売から2年を経たモデルとして気になるのは前機種比較よりも、最新のPCスピーカーとして通用するかどうか。早速その実力を検証してみた。
■圧倒的な空間再現力。”ハイレゾ”音源で更に実力を引き出せる
まず、iTunesに取り込んであった圧縮音源の宇多田ヒカル『Automatic』を聴いてみると、そのサウンドは低音に肉厚なビートを刻ませつつ、広がりあるサウンドを伝えるタイプ。特に低音は一般的なスピーカーと比べても積極的に音圧感を出す“迫力志向”で、ノートPCの内蔵スピーカー等からのアップグレード機として用いた場合、その圧倒的な音質差を実感するだろう。ストリングスは、スピーカーの設置位置を遙かに超えたスケール感で広がり、女性ボーカルは繊細ながら声をソリッドに立たせるタイプ。特に音空間の広がりを求めるなら一級品だ。
現在の音楽リスニングにどれだけ通じるかという点では、“ハイレゾ”音源への対応度も気になるところ。スペック上は特に“ハイレゾ”準拠が謳われていないCompanion2 IIIだが、USB-DAC経由でハイレゾ音声入力を試したところ、音質差は如実に表れた。
96kHz/24bit版の宇多田ヒカル『Automatic』を聴くと、先ほどの圧縮音源と比較して低音のビートはより締まりある“情報量志向”のサウンドに、シンバルの金属の刻みも繊細なリズムが聴き分けられる情報量を備える。ボーカルの鳴りは圧縮音源とは若干異なり、ソリッドさよりむしろ音楽空間のなかで存在感を発揮する傾向だ。
他ジャンルの楽曲、ジャズなどでは特に音空間の再現性に優れ、弾けるように鳴るアコースティックギターのサウンドは、弦の動きも見えてくるようだ。低音を効かせたEDMやJ-POPともよくフィットする。個人的には、迫力重視で気持ち良くスッと鳴らすイメージの強いボーズのスピーカーだったが、Companion2 IIIは徹底して空間志向。特にUSB-DACを接続してハイレゾ環境で聴けば、その真の実力も引き出せることがわかった。
■YouTube等の映像作品も見事な音空間を再現
PC用スピーカーとして常用できるCompanion2 IIIだけに、そこで鳴らすことを想定している“音”は本格的な音楽リスニングだけではないだろう。例えばYouTubeで公開されている映画予告編のサウンドを鳴らすといった使用シーンもちろん考えられている。
公開予定の大作SF映画の予告編PVをPCブラウザで再生してみると、PCの画面外にまで余裕で広がるBGMは絶品。迫るように聴こえるセリフと正確な音空間が生み出され、効果音のスケール感も抜群。こういった映像作品は「TrueSpace ステレオ・デジタル・シグナル・プロセッシング回路」を搭載するCompanion2 IIIの得意なソースなのだ。
ボーズのPCスピーカーの入門機として、11,500円のモデルだが、「マルチメディアスピーカー」という名称の通り、音楽だけでなく映像作品でも活躍する実力を備えている。定番ロングセラーモデルは、やはりその音質の高さで支持を集め続けていることを実感した。
(折原 一也)