新600シリーズは実はCMシリーズの直系モデルなのだが、CM1とCM7は800シリーズと同時に開発された兄弟モデルなので、新600シリーズは紛れもなく800シリーズとつながっているのである。なおCM1とCM7は全世界規模で高い人気を維持しており、今後も続投となるのでご安心を。 これでB&Wのメインストリームは800、700、600という3つのラインナップにまとめられ、すっきりわかりやすくなった。なお、型名末尾は大型モデルほど数字が小さくなるという、上位シリーズのルールがそのまま当てはまる。 シリーズ全体を見渡すとトールボーイ型、センタースピーカー、サブウーファーを含むフルラインナップがすでに欧州で公開されているが、市場への導入は2機種のブックシェルフ型「686」「685」からスタートする。同時発売の「HTM62」については、他の製品が出揃った段階でマルチチャンネルシステムとして紹介する機会があると思う。 |
||||||||||||||||||||
「新600シリーズはCM1の直系」と紹介したが、それではどのぐらい似通っているのか。それを知るためには、両者の相違点をリストアップした方がずっと早い。それ以外の要素はほとんど共通しているからだ。
主な違いを列記しよう。1.ユニット構造の細部、2.キャビネット製法、3.ネットワーク構成部品のグレード、この3点だけである。それぞれについて細かく見ていこう。 ユニットの基本構造と素材はほぼ共通し、アルミ振動板を用いたノーチラストゥイーターとウォーブン・ケブラーコーンウーファーを組み合わせた2ウェイシステムである。トゥイーターの磁気回路にネオジウムを奢っていることも変わらない。フランジ部分の形状こそ異なるものの、基本構造はほぼ同じで、4kHz〜50kHzという広帯域にわたって低歪みの特性を有する。ウーファーはバランスドライブ構造を見送ってフェイジングプラグ方式としているが、振動板の素材など基本はこちらも共通。686が130mm、685が165mmと口径が異なるため、出力音圧レベルは後者が4dB大きくなる。
キャビネット製法の違いは、CMシリーズが3方留め突き板仕上げでB&Wデンマーク工場で生産されるのに対し、600シリーズはよりシンプルな製法で塩ビ仕上げとなる。 3番目のネットワーク構成部品については、コイルやコンデンサーがカスタム部品から通常部品になる程度の差で、回路構成に変更はない。ただし、686のネットワークに含まれるアッテネーション抵抗は685には不要のため、後者の回路の方がいっそうシンプルになっている点は要注目。現行DM600シリーズとの違いは数が多いので省略するが、ターミナルが大型のバイワイヤリング仕様になったことは大いに歓迎したい。ユニットの作りやキャビネットの仕上げから受ける印象は高級機を連想させるものがあり、確実に1クラス上の質感を身に付けていることは間違いない。
|
||||||||||||||||||||
オーケストラのスケール感はCM1の方が僅かにゆとりがあるが、686が再現する奥行方向の深さにはかなり驚かされた。フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団のマーラー交響曲第2番はダイナミックレンジの広大さが並外れた録音だが、その厳しいソースの最弱音で音像がにじまず、息を呑む緊張感を再現したのは見事というしかない。686と685にはCM1と一部の形状が異なるダクトプラグが付属し、低音のコントロールが3段階に加減できるようになっている(プラグなし+2段階)。低音楽器の質感はドーナツ状ブラグを挿入した状態が一番自然だが、部屋の特性によっては密閉状態での駆動も試してみる価値がありそうだ。 |
||||||||||||||||||||
トゥイーターの素性の良さは685の方が明瞭に出ており、686に比べると僅かだが音調が落ち着く方向に変化して、なめらかさとしなやかさが増す。チェロを例にとると、最高音域の音色に艶と柔らかさが加わり、表情が一歩深まる印象を受けた。楽器を変えずに弓だけ変えたときのような音色の変化だが、聴く人が聴けばはっきり差がわかる。 このクラスのスピーカーで、そんな微妙なニュアンスの違いを聴き取れるとは予想していなかったので、今回の600シリーズ姉妹モデルの聴き比べは大きな収穫であった。このカテゴリーのベンチマークになりうる強力なスピーカーの誕生である。 |
||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
・B&W
オフィシャルサイト |
||||||||||||||||||||
|