最先端の技術を投入したセパレート型高級CDプレーヤー「PerfectWave Transport(PWT)」がPS Audioから登場した。読み取り速度の高精度な制御により、データを先行して読み取り、64MBのバッファから再生、「I2S」接続のDAC「PerfectWave DAC(PWD)」にジッターレス伝送を行う次世代志向の製品だ。
さらに、DVD-Rに保存した192kHz/24bitデータなどマスター音源の再生に対応するほか、インターネット接続をサポートしてCD情報を専用サーバーから取得する機能も搭載。タッチパネル操作の新しさとともに、CDプレーヤーの使い勝手を大きく進化させている。PWTおよびPWDには、下記のような特徴がある。
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冒頭でも紹介したように、IS2接続によるジッターレス伝送やバッファ再生、インターネット接続など数々の機能を搭載しているPerfectWave。それでは両機の音質傾向はどのようなものだろうか。 試聴は音元出版の試聴室で実施。本機のボリューム調整機能を活用し、アキュフェーズのパワーアンプ「A-45」、スピーカーにはモニターオーディオ「GS60」というシンプルな組み合わせで試聴した。PWTとPWDはHDMIケーブルで接続している。
まずはボーカルで音像のリアリティをチェック。ジェーン・モンハイトとムジカ・ヌーダのアルバムを聴く。前者はホーン楽器やピアノを加えた厚みのあるサウンド、後者はペトラ・マゴーニのボーカルとベースだけのシンプルな組み合わせという対照的な2枚だ。 モンハイトは声の質感がとてもなめらかで、子音に突っ張り感がなく、スーッと耳に浸透する柔らかさがある。声の低音域にゆったりとしたボディ感があるが、音像に余分なふくらみはなく、ベースやピアノの中低音もいい具合に引き締まっている。ムジカ・ヌーダのデュオはステージを包み込むライブ会場の深い間のなか、密度の高い声とテンションの高いベースの低音が同時に放たれ、きれいに溶け合う様子をリアルに再現した。 深みのある音場感は本機が得意とする表現とみて間違いない。ギドン・クレーメルが独奏を弾くモーツァルトはソロとオーケストラの余韻がステージ後方に吸い込まれていく動きが見えるし、コパチンスカヤの演奏でもオーケストラとヴァイオリンの位置関係が正確に浮かび上がる。楽器が増えて音圧が上がっても見通しの良さを失わない点にも、ジッターレス再生のメリットを感じた。余韻の密度はデジタルフィルターの設定で微妙に変化するが、空気の浮遊感はネイティブモードが一番自然に感じる。
リファレンスレコーディングのHRx音源は空間のスケールがひとまわり大きくなり、本機の見通しの良い空間再現力、遠近感豊かな描写がいっそう際立ってくる。DVD-Rのデータを読み込んでいるとはいえ、使い勝手はCDと変わらないのだが、音に別格といえるほどの柔らかさがそなわっていることに驚かされる。 バッファメモリの搭載とI2Sによるジッターレス伝送の導入は、セパレート型プレーヤーのメリットを完全に引き出す。それが今回の試聴で実感した筆者の結論だ。 |
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上記の山之内氏による解説にあるように、注目すべき点が多いPerfectWave。個人的にも気になっていたのだが、なかなか実際の製品に触れられる機会に巡り会えずにいた。そこで、今回の記事を担当することになったことをこれ幸いと、記者が自分でも製品のセッティングを体験してみた。 まずは両製品を箱から取り出しラックへ。過去のイベントなどで展示されていた通り、DACの上にトランスポートを重ねて設置する。質量はひとりで持つにも充分な軽さで、もちろん設置に際して特に体力は必要ない。かといって安っぽさを感じさせるような“軽すぎ感”もなく、ほどよい重さといったところだろうか。
続いて、スピーカー類との接続のために端子部のある本体背面に回る。実は、こういう仕事に従事していながら記者は結構な機械オンチで、「I2S」接続など未知の機能を備えた本機に多少の不安を覚えていたのだが、結果から言うとあっけないほど簡単にセッティングを終えられてしまった。 作業としては、「Perfect Wave Transport」と「Perfect Wave DAC」それぞれの「I2S」端子をHDMIケーブルでつなぎ、DACのアナログアウトプット(製品では「Analog Outputs」と英語で記載されている)からプリメインアンプと接続するだけ。プリメインアンプとスピーカー間は、もちろん通常のオーディオと変わらぬ方法でスピーカーケーブルでつなげばよい。
ちなみに、PWDはディスクリート出力段とボリュームコントロールも備えているため、次項にある山之内氏による音質評価レポートの試聴時セッティングのようにプリアンプ無しでパワーアンプに直結することも可能だ。 さて、そうして各種の接続が完了したあとはPWTとPWD、そしてプリメインアンプの電源を入れればOK。スイッチを入れるとPWT本体のディスプレイに「INSERT DISC」と表示され、これで一通りの準備は完了だ。
ここからは付属のリモコン、もしくは筐体前面に搭載されたタッチパネル式のディスプレイに表示されるボタンに触って、通常のプレーヤーと同じように操作すればよい。リモコンには10キーが用意されており、アルバムなどでダイレクトの楽曲呼び出しも可能だ。
ちなみに、本体での操作はすべてタッチパネル上で行うため、ハードウェア的なボタンは一切装備されていない。そのため、「INSERT DISC」とだけ表示された状態で、開閉用のボタンがない本体での操作でトレイを開くためにはどうすればいいのか、ほんの数秒だけだが記者は迷ってしまった。とりあえず画面にタッチしてみたらトレイが開いたのだが、こんなところで機械オンチな自分を再認識した記者だった。 なお、ディスプレイへの各種表記はすべて英語でなされている。PWDに搭載されたアップサンプリング機能やフィルター機能などを利用するには当然この英語表記の壁を乗り越えなくてはならないわけだが、アイコンが備えられていたり表記がシンプルだったりするため、英語が苦手だという人でも問題なく使えるのではないだろうか。実際に、説明書などを一切読まずに操作を始めてしまった記者でも問題なく使え、直感的に操作できる点は非常に好印象だと感じた。
また、PWTの背面にはLAN端子も用意されており、インターネット接続も可能。ディスクを入れると、インターネットからタイトルなどの楽曲情報や作品ジャケット画像を自動検索してダウンロードしてくれる。
この際のデータが蓄積されているのは、PS Audioが自社サーバで運営している「PS GlobalNet」というデータベースサービス。データベース上に作品データやジャケット画像がない場合、パソコンからユーザー自身が登録することができる。こうして大勢のユーザーによって情報が日々アップデートされていくというわけだ。 実際に記者も複数のCDで試してみたが、クラムボンやマキシマム ザ ホルモン、吾妻光良&The Swinging Boppersといった世界的に見ればマニアックな(日本国内でも一般的にはそれほどメジャーでないかもしれない)邦楽ミュージシャンの作品情報も見つかることに驚いた。 しかし、その一方でビルボード1位を獲得したバラード曲が収録されているEXTREMEのアルバム「PORNOGRAFFITTI」の登録がないなど、洋楽ミュージシャンでも作品情報が見つからないケースにも遭遇した。このあたりは、実際に自分がPerfect Waveのユーザーとなった際にどんどん情報を登録していくべきだろう。 また、同機能では製品本体のディスプレイ表示が日本語表示に非対応であるという問題点も現在は存在する。前述の邦楽ミュージシャンの作品情報についても、タイトルなどで日本語表記の部分は「a」や「z」などの文字の羅列に置き換えられてしまった。もし自分で情報登録する際には、日本のミュージシャンについてはローマ字表記するなどしたほうが良さそうだ。今のところ予定はないようだが、いつの日かファームウェアアップデートで日本語にも対応してくれることを期待したい。 全体を通してみると、このネットワーク機能は、ネットワークオーディオに興味を持っている人にとって、その魅力を体験するまさに“はじめの一歩”なのではないかと感じた取材だった。 なお、以前からアナウンスされているように、PWDは将来的にアップデートによりNASなどに収納したデータをLAN経由で再生したり、DLNAに対応したりする予定。背面の専用スロットに「PS Audio Network Bridge」を追加するこのアップデートは、どうやら本国アメリカでは年内をメドに提供できるように調整が進んでいるらしい。「PerfectWave」のネットワークオーディオとしての進化に期待が膨らむ記者だった。
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